西条    「掃除完了。お怪我はありませんな?お坊ちゃま、上様」
ハナワ卿 「ご苦労だったバトラー。引き続き敵に備えよ」

それはまさに執事が手馴れた手つきで掃除をするかの如く
溥儀と避難民達を皆殺しにせんと襲い掛かってきた100名余りのグラップラー達は
たった1人の老グラップラーの前に細切れの肉隗と化し、その醜い遺骸を人目に晒さぬよう瓦礫の下へと放り込まれた
ハナワ家バトラーにして、同時に当機関ゴミ処理係
西条秀治
かつては「死神西条」の異名で呼ばれ、京都グラップラーの2強の1人と称された使い手である
既に現役を離れて久しい老齢でありながら、その技の冴えはいささかも衰えを見せていない

一切無駄の無いベテランの手際で刺客達を「片付けた」西条は、命令通りに周囲の警戒に当たる…が
その時だった。数十m先の闇の奥にただならぬ気配を感じると、その穏やかな表情が一変した




西条    「…新手か。出て来いそこにいる男!」
???  「流石は伝説の死神。小宇宙は完璧に断ってたんだが」

ゆらり、と闇の中から現れた男の佇まいを視界に捉えた瞬間
老執事の背中にゾクリと冷たいものが走り、額からは汗がどっと吹き出した
100名のA級グラップラーを眉ひとつ動かさずに「掃除」した男が、である

西条    「坊ちゃま。上様を連れて全速でこの場から離れてください
       よいですか?後ろを振り返ることなく全速で、です」
???  「ククク…小宇宙を感じずとも解るかい?俺の強さが」

現れた男は一見して特徴の無い風貌
別段筋骨隆々の体躯でもなく、見るからに恐ろしげな武器を持っているワケでもなく
中肉中背の身体に白いTシャツ、頭にはバンダナと、とりわけ戦闘に特化した服装というワケでもない
ただひとつ彼のいでたちに違和感があるとすれば、この地獄のような戦場に似つかわしくないモノを手にしている事だけであろう

FF大林 「俺はモンスター軍団S級グラップラー
      
フードファイター大林!
      
俺の胃袋は…宇宙だ!」

フードファイター(食戦士)
自らのグラップラークラスをそう名乗った男は、
右手に持っていたホットドックを左手のコップの水に浸すと、瞬く間にそれを口の中へとかき込んでしまった

FF大林  「伝説の”京都の死神”が相手となれば不足はないが・・・
       さすがに年寄りは骨と皮ばかりで美味くなさそうだな」

ホットドッグ一本を僅か3秒ほどで飲み込んでしまった大林
じろりと西条を頭のてっぺんからつま先まで見つめると、ややガッカリしたようにそう呟いた
聞き捨てならない言葉に老紳士の白い眉毛が反応する

西条    「・・・ほう。まさかこのような老体を喰らうとでも?」
FF大林  「フッ俺はフードファイター!倒した敵は例外なく食す!
       その血肉は俺の力となり、更に強靭に進化していくのだ」
西条    「いまどき食人とは。そのような外道捨て置けませぬな」

食人鬼である
西条は理解した。目の前の男から感じる得体の知れぬ威圧感の正体は強さのみにあらず
そのおぞましく恐ろしい食癖こそが、このまとわりつくような恐怖感を成しているのだと
本能的な使命感に駆られた西条は冷や汗も止まり、冷静さを取り戻して先制攻撃に出る
『この男は危険だ。ここで倒さねばならない』
クンッ!と老執事の両腕が身体の前で素早く交差される

バゴバゴッ!バゴォン!
執事から見て右手側。大林にとって左手側の巨大な瓦礫が派手な音を立てて斜めに切断された
戮家千条鏤紐拳
その鋼線の切れ味は、肉厚数mのコンクリートなど豆腐かバターの如く両断してしまう
左手側から迫り来る変幻自在必殺の刃。当然大林は右に向かって大きく回避行動を・・・・・
取らなかった

FF大林  「ナァーイフ!!!」

その場から一歩も動くことなく、気合とともに虚空に繰り出された大林の右の手刀は
彼の”右側から”迫っていた刃鋼線を真っ二つに切り裂いていた

FF大林  「俺の貫手は全てを貫くフォーク!
       
手刀は全てを切り裂くナイフだ!」
西条    「ぬう!戮家の刃鋼線を素手で切断するとは!」

派手に破壊された右手の瓦礫は囮。同時に無音で放っていた左手からの攻撃が西条の本命だったのである
だが大林はコンマ秒以下の刹那にそれを見切り、その場から一歩も動く事無く迎撃に成功する
コンクリートをも断つ刃鋼線を素手で切り裂いて
さっきおさまったばかりの冷たい汗が、再び老執事の背中を濡らした





バオッ!
足元の粉塵を巻き上がると同時に小林の肉体が夜の闇へと消えた
ベテラングラップラーの先制攻撃をたやすく回避し、反撃に転じたその速度は。西条の予想を遥かに上回るものであった

西条    『速い!スピードはハッタリ半蔵殿に匹敵する?!』

正面に刃鋼線で防壁を張るようにしながら大きくバックステップで距離を取る西条
敵の戦闘スタイルは徒手空拳。ロングレンジを維持しなければ瞬時に敗北すると歴戦の経験が告げている
だがふわりと着地して第二撃を放とうとした瞬間、西条は視界に飛び込んできたモノに慄然として震えた
そこには狂気の笑顔を浮かべた大林の顔が、わずか数cmという距離にあったのだから

FF大林  「いただきます」
西条    『私としたことが敵の力を見誤るとは・・・・!
       
スピードはハッタリ半蔵以上!』

ガキィイイイイン!
唸る大林の豪腕。100%の死を覚悟した西条であったが
鳴り響いたのは肉を抉る音ではなく、その必殺の一撃を受け止めた金属音であった

西条の腹部を狙った大林の右腕は、その間に割りこんだ一本の皆朱の槍によって阻まれていた

ターリブ老 「油断したかの西条。お互い歳は取りたくないのう」
西条    「ターリブ老!」
FF大林  「ほぉ・・・オイボレがこの俺の拳を止めるとはな・・・
       なるほどアンタが
”神槍ターリブ”か!
       京都グラップラー伝説の二強揃い踏みとは光栄だ」

西条絶体絶命のピンチを横から救ったのは、小柄ながら歳に相応しくない筋肉質が特徴的な褐色の肌の老人
御歳82歳。将軍家三代に渡る重鎮
ターリブ・ウッディーンその人であった
グラップラークラス【槍使いランサー
かつては「槍のターリブ」と呼ばれ、帝都の軍神と畏怖された天下無敵の将軍
シンエモンが将軍家に士官するまで現役を務め、「死神西条」とともに京都二強と称された伝説のグラップラーである

ターリブ老 「覇極流千峰陣!」

バババババババババババババババババ!!
そのあまりのスピードの為、千もの穂先が同時に繰り出されているように見える早突きの槍
老いたとはいえ覇極流槍術免許皆伝の腕前はまだ衰えていない
たまらず飛びのき、伝説の老兵2人を相手に再び距離を取る大林

ターリブ老 「やれやれ。よもやこの歳になって
       再びお主と並んで戦うとは思っておらなんだわ」
西条    「ふふ・・・50年前を思い出しますな
       それじゃあまぁ・・・・」

ターリブ老 「昔取った杵柄コンビ
&西条   
推して参る!」

並び立った老兵2人が小宇宙を解放する。だがその大林の表情には微塵の焦りも見て取れない
むしろ獲物が増えたことをよろこんでいるような・・・そう、まるで給食の献立が一品増えて喜ぶ子供のように

FF大林  「来いジジイども。わさび血醤油かけて喰ってやる」





ギギギギギギ・・・・ッ!

FF大林  「ほぉ。この俺のフライパンチをそんな方法で防ぐとはな」
西条    「戮家の刃鋼線の強度を舐めてもらっては困りますな
       編み合わせればこのような芸当もできるのですよ」

空中で静止する大林の豪腕
鉄板をも容易くブチ抜くパンチを受け止めたのは、ネット状に編み込まれた西条の刃鋼線だった
自由自在に動かせる鋼鉄の刃は、使いようによっては強力な盾へと姿を変える。まさに攻防一体の奥義
必殺の一撃を思いもかけぬ方法でブロックされた大林だったが、
更に間髪入れずその頭上からつま先までを上空から凄まじい殺気が貫いた

ターリブ老 「天魔伏滅!受けてみよ天空の王者の牙!
        
竜槍技・下り飛竜
(ドラゴン・ダイブ!)!」

ズガガガガガガァアアアアアン!!
凄まじい爆音とともに吹き飛ぶ瓦礫。夜の闇を一瞬で白く濁す砂煙
大林が立っていたその場所は、さながらミサイルでも着弾したかのように跡形もなく砕け散っていた
【竜槍技・下り飛竜】
天空から降りそそぐ流星の如く、超速の衝撃波を無数に放ちながら敵の頭上を急襲する必殺の槍術
竜槍技には驚異的なジャンプ力から敵を襲う奥義が多く存在し、
その技を修めた者は天空の王者飛竜になぞらえて「※竜騎士」と称された
※伝説のグラップラークラスである「竜(ドラゴン)の騎士」とは混同しない





FF大林  「なかなかやるなジジイども・・・
       老いたりとは言え伝説の2強といった所だな」

砂煙が晴れ、瓦礫の中から再びその姿を現した大林は身体中に無数の傷を負ったものの依然健在
だが「あの攻撃で仕留められないのか?!」などと老兵2人はうろたえたりしない
この程度の攻撃で倒せない相手であることは、最初の激突で既に推し量っている
むしろ今の攻撃で傷を負った大林を見て、西条とターリブは自分達の勝利を確信した
2人はまだともに、その最大奥義を出していない
「倒せる!」
軽くアイコンタクトを交わし、伝説の2強は夜の古都を吹き抜ける疾風と化した

FF大林  「これは・・・肢曲か!流石に年寄りは珍しい技を使う」

ボヒュ!ボバァ!
唸りを上げて繰り出される大林のパンチは、その一発一発がいずれも致死の破壊力
しかし当たらない
老執事は大林の周囲を踊るように周りながら、必殺のパンチをゆらりゆらりと紙一重で回避する
まるで幻影でも相手にしているかのような脚さばきである
業を煮やした大林が身をかがめて突進しようとした時、彼は自分が罠にかかったことを悟った

FF大林  「ぬう!周囲に刃鋼線が張り巡らされている!?
       ジジイいつのまに!?」

西条    「戮家奥義千条結界陣!
       もはや一歩も動けまい!ターリブ老今ですぞ!」

突っ張った脚と振り上げた腕から流れ出す鮮血。いったい何時の間に仕掛けられたのか
大林の周囲は蜘蛛の巣のように刃鋼線で張り巡らされ、四方どこにも逃げ場のない状態に追い込まれていた
同時にここまで小宇宙を高めに高めていたターリブが満を持して突進する
その様、まさに光速で飛ぶ巨大槍!

ターリブ老 「やらいでか!これで終りじゃあ若造!
        
ハーケンディストール!」

”ドギュン!”
【ハーケンディストール】
かつて魔界で鍛えられたと言われる、伝説の魔槍を携えた戦士の奥義
この世界の鉱物・金属で最高の硬度を誇るオリハルコンでさえ紙のように貫く、防御不可能の必殺の一撃
光速で放たれた突きは凄まじい威力の指向性衝撃波をともない、大抵のグラップラーであればこの衝撃波だけで致命傷となる

動けぬ標的に防御不能の必殺突き
ベテラングラップラー2人の共闘により、完璧なシナリオで組み上げられた勝利の方程式
ターリブの両腕には、狂気の食人鬼を冥府へと屠り去る感触が伝わって・・・・伝わって・・・・・?
否!ターリブが両腕に感じたのは肉を貫いた感触ではなく、
強大な力で槍の突進を急停止させられた衝撃だった

FF大林  「残念だったな。俺は・・・

      スーパーフードファイターだ!」

驚愕に目を見開くターリブの視界に映ったのは、金色の輝く髪を逆立てた大林の姿
必殺のハーケンディストールは、たった2本の指に挟まれてその突進を阻まれていた


バキャア!
瞬間、鈍い音とともにターリブの身体は十数mも吹き飛ばされて背後の瓦礫に衝突。そのまま動かなくなった
大林の放った無造作な前蹴り
あまりの出来事に不意を突かれたせいもあるだろう
だが歴戦のグラップラーの目に、その蹴りは捉えられなかったのである

全身から噴き出すように放出される金色の闘気は、刃鋼線に触れることなくバラバラと焼き切っていく
全てがさっきまでの大林とは違っていた。「奥義でなら勝てる」と思った老兵2人の戦力分析はまったくの見当ハズレ
彼もまた本気ではなかったのだから
西条の顔が戦慄に歪む。その眼前には、対照的な大林の笑顔

FF大林 「五連・・・釘パンチ!」

黄金のオーラをまとって放たれた大林の右腕
西条は再び刃鋼戦をネット状に編み上げ、最強の盾を形成する
『さっきのパンチは防げた。これも防げる。防げるハズ!』
ズズウン!
老いとはまさにこういう事なのか。戦闘というリアルにおいて、自分の都合のいい結果を「期待」するとは愚の骨頂
腹部の痛みに膝をつきながら、だがしかし老執事をそれ以上に傷つけたのは初歩的なミスを犯した自分への叱責
大林のパンチは刃鋼線の盾を易々と貫き、西条の鳩尾に深々と突き刺さっていた
激しい後悔と、背後の主人達を守れぬ無力さに打ちひしがれながら。西条は無念の中で意識を失った



第十四話「命の重さ」


FF大林  「さて・・・しわくちゃの干物は後でいただくとして、だ
       早速で悪いがメインディッシュといかせてもらおうか」

歴戦の英傑2人を一瞬で叩き伏せておきながら、グラップラーとしてなんとも無感動な言い草
今の戦闘など、彼にとっては食前の運動にすらないというのか
コキッコキッと軽く首をならすと、舌なめずりをしながら1人の人物に向かって歩を進める大林
もちろん彼の言う「メインディッシュ」とは、大日本帝国将軍・足利溥儀のことを差し示している

ハナワ卿 「上様お逃げ・・・ぐあッ!」
FF大林  「邪魔だよ。変な髪形のメガネ坊や
       デザートで喰ってやるから大人しくしてな」

素早く拳銃を取り出して狙いを定めたハナワ卿であったが、トリガーを引こうとした時にはもう手の中にコルトパイソンはなかった
理解は痛みと同時にやってきた。拳銃は大林の目にも留まらぬスピードによって叩き落されていたのである
トリガーにかけていた人差し指が、おかしな方向に折れ曲がっていた
京都2強と呼ばれたS級グラップラーを相手にしなかったのだ。どのような得物を使おうとて普通の人間が敵うハズがない
パァン!ガッ!
絶望感に打ちひしがれたハナワ卿の視界に映ったのは、
大林の強烈な平手打ちを食らい、尖った瓦礫にしたたかに頭を打ちつける主君の姿だった

FF大林  「ふぅん。なんだかつまらんな
       世界の指導者と呼ばれる殿様でも血は俺達と同じ色か」

額から流れ落ちる鮮血。天下に轟く大徳の君主が傷を負って血を流している
「将軍様が殺されてしまう。そして次はきっと自分達だ」
呆然とその光景を見ていた避難民達は大声で嘆き、叫び・・・そして
我先にと大林に向かって飛びかかった
「敬愛する将軍様の命を守れ!」
彼らの思いは自身に迫る死の恐怖をも超越して肉体を突き動かしたのだ
足利溥儀という将軍がどれほど徳の高い人間か、どれほど民に愛されているかが推し量れるというものである

溥儀    「やめい!」

しかしそんな彼らの蜂起を一喝して制したのは、誰あろう溥儀本人であった





溥儀    「大林と申したな。朕の命はお前にくれてやろう
       その代わりというワケではないが・・・頼む!
       
民草の命だけは救ってはくれぬか!
       この通りだ!」

両膝をつき、額を地面にこすりつけるまでに頭を下げて大林に懇願する溥儀
その場に居合わせた誰もが目を疑う光景だった。
土下座である
天下の将軍足利溥儀が、今まさに自分の命を奪わんとしている刺客に土下座をしているのである
自分自身の命乞いではない。彼を慕う、
力無き民達を守る為に
恐怖と緊張で麻痺していた感情が緩んだのか、溥儀のこの言葉を聞いた民草達は一斉に嗚咽を漏らしてその場に泣き崩れた

FF大林  「ハッ!何事かと思えばそんな事か
       塵芥みてえな命の為に自己犠牲とはご苦労よな」
溥儀    「塵芥・・・だと・・・」

頭上から降ってきた言葉に思わず下げていた頭を跳ね上げ、キッと睨みつける溥儀
だが次の瞬間胸倉をムンズと掴まれると、そのまま大林の頭上にまで吊り上げられていた
一瞬にして眼下になった大林を睨みつける溥儀だったが、大林は逆に真正面からその目を見つめてこう答える

FF大林  「塵芥なんだよ!人の命なんてモンはな!
       俺が何故人を喰うようになったか教えてやろうか?
       俺は
飢饉で全滅した村の唯一の生き残りだ
       なぜ俺だけが生き残ったかって?察しの通り
       
死んだ人間の屍を喰ったのさ!!」
溥儀    「ッそうか・・・お前の村は天暗の大飢饉で・・・」

大林の食人癖は、彼が幼い時に見舞われた天災によって形成されたものだった
彼のカミングアウトに溥儀は暗い表情を見せるが、大林は気に留めるでもなく言葉を続ける

FF大林  「ハッ!別にアンタが気に病むことはないさ
       当時とはいえ通信機器もない辺鄙な村だったからな
       隔離されたボロ村が1つ消滅した。それだけの話さ
       次々にくたばる連中を喰らいながら、俺は思ったよ
       
”人の命なんて塵芥だ”
       
そしてそれを喰らって生き延びている自分の命もな」
溥儀    「・・・幼きお前が受けた痛み・・・解るとは言わん。だが」
FF大林  「ちなみに!だ!
       
俺が最初に喰らったのは自分の父親さ!
       以来俺は人の命が軽くなっちまってしょうがねえのよ!」

あまりにも想像を絶していた大林の過去
彼を諭そうとした溥儀であったが、その言葉は途中で飲み込まれてしまった
実の父を喰って生き延びたという事実に打ちのめされたのか

FF大林  「さて・・・くだらない話はここまでにしておくか」

溥儀を頭上に吊り上げたまま数m歩く大林
ガスか油が漏れているのか、激しく炎を噴き上げる瓦礫の前まで行くとそこで歩を止めた

FF大林  「将軍様の丸焼きだ。なんとも美味そうじゃないか
       最後に何か言い残すことはあるか?」

メラメラと燃え盛る炎の熱さを背中に感じながら、溥儀は静かに口を開いた

溥儀    「・・・が・・・ものか・・・!」
FF大林  「あぁ?」

最初の言葉は聞こえなかった。大林が耳に手を当てる仕草をしながら聞き返す
溥儀の口が再び開く
今度はハッキリと聞こえるように
彼の瞳を真正面から見据えながら





溥儀    「人の命が・・・
       軽くなったりなどするものか!
       やむを得ずに人を喰ったというのならば

       その分
       お前の命が重くなれ」

ドサッ!
全てを丸裸にするような澄んだ瞳
大林はまるで自分の心の中を覗かれたような気がして、反射的にその右腕を離していた
尻餅をついて落下した溥儀から数m後ずさりすると、今度は怒りに全身を戦慄かせる

FF大林  「気が変わったぜ・・・
       アンタはやはり俺の拳でミンチにすることにした
       そのあと可愛い民草達も全員喰ってやるよ!
       
飛び散りやがれ!5連釘パンチ!」

溥儀の説教が琴線に触れたのか。ターリブ・西条戦でも見せなかった憤怒の表情を露にする大林
戮家の刃鋼線でも止められなかった必殺の豪腕が唸る
一般人の溥儀がその身に浴びようものなら、まさに言葉通りバラバラの肉片と化すであろう
ハナワ卿以下、その場に居合わせた民達がが思わず目を瞑ったその時
夜の闇を切り裂いて一陣の疾風が吹いた
”ズドドドドォッ!!!!”

響き渡る轟音
人々が無惨な光景を覚悟してゆっくりと瞼と開ける
だがそこで彼らが見た物は、脳裏に描いていたモノとはまったく別の物だった

未だ五体満足で健在の溥儀
十数mも吹き飛ばされた大林

そして
2人の間に颯爽と立つ、蒼毛の獣人族の姿

                      3  種  の  カ  ウ  ン  タ  ー  パ  ン  チ
???   「トリプルカウンターの1つ・・・
        
”白鯨”!!!」

溥儀    「お主は・・・・!」

溥儀は彼を知っていた。今日の昼間、謁見室で目通りした若者である
名前はなんと言ったか
そう、たしか・・・・

J      「軽いな。アンタの命」


TO BE CONTINUED・・・


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