阿部隆和  「いやはや・・・まったく敵ながら見事と言う他ありませんな
        主要都市に送り込んだおジャフォーマーは、
        その尽くが民家の少ない近郊部の防衛網で阻まれ迎撃
        侵攻開始から現在まで、市街地の被害はほぼゼロという状況です」

【上海】

男爵ぴーの
日本 ♂ 180cm 70kg
グラップラークラス 撹乱戦闘型『マジシャン』
溥儀禁衛隊 弐の槍 「地獄の魔術師」

鷹田総統 「ふむ・・・戦力がグラップラーだけであれば数の力で圧倒できたのだがな
       あの黒い甲冑の兵士達は完全な想定外だったよ
       これは溥儀将軍閣下の有事の備えを褒めるしかあるまい
       京都の件を教訓にしてしまったかな?流石は世界のリーダーというべきか

【北京】

ハッタリ半蔵
日本  ♂ 174cm 61kg
グラップラークラス 特殊戦闘型『忍者』
溥儀禁衛隊 参の槍 「宇宙統一忍者流」

阿部隆和  「コミュニケーションの通じる兵士達であれば一旦退かせる事もできましたが・・・
        コントロール不能のおジャフォーマー達は全滅するまで戦い続けるだけですな
        戦術度外視の実戦投入がここにきて裏目に出てしまいましたか」


【天津】

レオンハルト
ドイツ  ♂ 191cm 102kg
グラップラークラス 遠距離砲撃型『シューター』
+近接戦闘型『グラップラー』ハイブリッド
溥儀禁衛隊 四の槍 「地獄の砲弾」

鷹田総統  「ククク・・・まったく持つべきものは友だとは思わんかね阿部君?
        まさか私を退屈させない為に、
        こんなにも素晴らしい置き土産を準備していてくれたとはね」

【武漢】

もはめど・あぶどぅる
エジプト  ♂ 166cm 58kg
グラップラークラス 大属性『炎使い
フレイムマスター
溥儀禁衛隊 五の槍 「炎の占い師」

阿部隆和  「しかし指揮を執る溥儀禁衛隊は僅かに5名
        あの厄介な黒い甲冑も、流石に百万着までは存在しないでしょう
        必然的に他の都市の護りは手薄になるのではありませんか?」


【重慶】

北城透
日本  ♂ 177cm 64kg
グラップラークラス 中距離射撃型『ガンナー』
溥儀禁衛隊 六の槍 「魔弾の射手」

鷹田総統  「ハハッ!それはまた随分と希望的観測だな阿部君
        君もグラップラーならば、戦闘において都合の良い事を期待する甘い考えは捨てたまえ
        今、チェス盤の向こうに居る相手がそんな浅い布陣を敷くと思っているのかね?
        
なぁ・・・・そうだろう?後部君!!」






【大連】
ここ大連近郊には疑似ライダーシステム「オルタナティブ」を纏った漆黒の兵士達の姿はなかった
なにせこの大一番にギリギリで量産化が間に合った最新鋭兵器である
生産ラインフル稼働でも50万着を準備するのがやっと。阿部隆和の予想は正確に的を射ていたのだ
殺風景な採掘場に確認できたのは、僅かに数十人の人影だけ
全員がグラップラーではあるのだろうが、そのいずれもがおよそ屈強な肉体とは言い難い者達ばかりで、残念ながら酷く頼りなく見える

アバラの浮いたガリガリ体型の中年、大人しそうなメガネの青年の他、
異様な猫背の傴僂男、指が3本しかない男、肩の肉が異常に盛り上がった男・・・
ひと目見て健常者ではないと解る、異形の肉体を持つ男達
もしも時代が時代ならば、「フリークス」と呼ばれて大衆の奇異の目に晒される見世物となっていたであろう姿である

???? 「スマンな次郎・・・君はもう戦いから離れていたのにこんなことに巻き込んでしまって」
次郎    「み、み、水臭いこと言わないでください園長
       オデ、園長と副園長の頼みなら、どんなことだって快く引き受けます
       それにオデ・・・嬉しいんです
       10年前は壊すことしかできなかったこの力を・・・
       
今、こうしてみんなを護る為に使える事が!」

メガネの青年から「次郎」と呼ばれた三本指の大男は、見た目にそぐわないキラキラした瞳を向けながらそう返した
彼の言葉に賛同するかのように、周囲の男達が全員メガネの青年にまったく同じ熱い視線を向ける
園長と呼ばれたメガネの青年は言葉で応えることなく、深々とその頭を下げた
死地にあって、一切の見返りを要求することなく微笑む男達
彼等がどんな関係なのか知らぬ人間であっても、このやり取りだけでその絆の強さが伺えるというものであろう

???? 「見えた。話には聞いていたが・・・地平を埋め尽くす程の数だ
       
全員準備はいいか?服薬
つかうぞ」

おジャフォーマーの群れを確認したアバラ中年男性がそう言うと、懐から各々になにやら薬を取り出す男達
注射器もあればカプセル錠、粉薬、内服液と形状は様々な薬品。おもむろにそれを服用した直後、
それが戦闘開始の雄叫びであるかのように、彼等は声高らかに叫んだ

???? 
「”人為変態”!!!」

バリィッ!!!

直後。凄まじい膨張率でパンプアップする筋肉と、派手な音を立てて弾け飛ぶ衣服
長く伸びた爪が鋭利な剣のように硬質化する者、全身が頑強な鱗が覆われる者、背中から翼が生える者、触手が生える者・・・
ただでさえ異形だった彼等の肉体が、見る間に更に劇的に変化していく
僅か十数秒前とはまったくかけ離れたシルエットに変貌を遂げる男達。もはや人間とは言い難い姿の者も見受けられる
もし人々が今の彼等の姿を見たら、「化物」と呼んで恐れるだろうか?忌み嫌うだろうか?

否!きっと人々は雄々しく戦うその姿を見てこう思うだろう
我々を救う為に神が天界より遣わした
聖なる異形の戦士達だと






のび犬   Kクニエダ.Gグラップラー.Oオペレーション!!!

のび犬  「たかだか人間サイズになっただけのゴキブリ風情が・・・・」

野比のび犬
日本  ♂ 168cm 62kg
グラップラークラス 近接戦闘型「グラップラー」
+生体改造型『バイオグラップラー』
元・青幇 「義侠の雷鳴」

のび犬  「戦う為にこの世に生まれ落ちた奇跡
       
グラップラーを嘗めんなよ!」


第25話 「反撃」


【広州】
市街地に突入しようとする漆黒の波濤を、波打ち際で消し止める消波堤
ここ広州では巨大な鋼鉄の建造物を中心に、2000名弱ほどのA級グラップラーの集団がおジャフォーマー迎撃に当たっていた

対グラップラー戦闘用地上戦艦「黄龍」と、青幇の戦士達である
乱戦の中央部と化した戦艦の甲板上にどっかりと腰を降ろし、不動の佇まいで戦局を見つめるメガネの男
その両脇から目にも留まらぬ速さで躍り出たおジャフォーマーが二匹同時に襲いかかるが、
男は慌てず騒がずゆっくりとその両腕を広げると、その攻撃を音もなく静かに受け止めた

藩     「哀れなゴキブリどもよ・・・せめて苦痛を知らずに逝くがいい
       
北斗有情破顔拳!!」

藩 光輪
中国 ♂ 177cm 68kg
グラップラークラス 近接戦闘型『グラップラー』
青幇頭領にして北斗三兄弟次兄

瞬間。藩の掌から一条の閃光が迸ったかと思うと、恍惚の表情を浮かべてその動きを停止するおジャフォーマー
直後その顔面がボコボコと腫れ上がったかと思うと、凄まじい爆発音とともに内部から炸裂して弾け飛んだ
かつて長兄オリパ、末弟一体さんとともに地上最強の暗殺拳・北斗神拳を学んだ男、藩光輪である
敵に苦痛を与えぬ有情拳は彼の無限の慈悲を体現した流儀であるが、相手が人間から忌み嫌われる害虫と言えど、その慈しみの心が変わることはなかった

青幇兵1 「頭ァ!おジャフォーマー鎮圧完了しました!へへっ案外余裕でしたね!」
藩     「ばかってい!我々は他所と比べて比較的戦力が厚い!当然の結果だ!
       全員黄龍に搭乗!ここから一番近い戦場に救援に向かうぞ!!」
青幇兵1 「
アイアイサー!黄龍戦闘モードから走行モードに移行!全速前進!」




【瀋陽】

だま    「にゃーにゃにゃにゃー!にゃにゃにゃー!!」
       (行くぞサンシャイン!エンド・オブ・ワールド!)

ドガガガガガガガガガガガ!!!
戦場に悠然と立つ砂の巨人。その胸部が観音開きに開かれると、中からは黒光りする4基の大口径ガトリング砲が現れ、ギラリと敵を睨んだ
その一斉射がおジャフォーマーの群れを薙ぎ払うと、崩れた前線に向かって2人の巨漢が迷うことなく雪崩込む

ダラちゃん「二身風雷拳!!」
イグラちゃん

褐色の疾風と化した二人が駆け抜けた後、
その間に存在したおジャフォーマーはさながらハンバーガーの具材の如く綺麗スライスされ、断末魔の鳴き声も上げることなく絶命した
無限の形態に変化する砂の魔神「サンシャイン」のスタンドを操る猫
だまと、
彼の兄にして阿吽の呼吸を要する絶技「二身風雷拳」の使い手
ダラちゃん&イグラちゃんである

だま
中国 ♂ 55cm 8kg
グラップラークラス 特殊戦闘型『スタンド使い』
青幇エジプト支部長

ダラちゃん
中国 ♂ 206cm 140kg
グラップラークラス 近接戦闘型『グラップラー』
青幇エジプト支部長補佐

イグラちゃん
中国 ♂ 204cm 139kg
グラップラークラス 近接戦闘型『グラップラー』
青幇エジプト支部長補佐

ダラちゃん 「フッ久しぶりの戦闘だから正直心配だったが・・・存外に身体が憶えているものだな」
イグラちゃん「ハーイチャーンバブー!」
だま     「にゃーにゃにゃにゃー!にゃにゃにゃー!!」
        (エジプト支部は治安改善されてからずっと、戦闘らしい戦闘がなかったからね
        ま、鈍った勘は戦いながら取り戻していけばいいさ!呪いのローラー!!!)




【西安】

ヒムラー   「ヒテンミツルギスタイル!!
        
クズリュウセーン!!!アー!!!」

全方位から9匹同時に襲いかかったおジャフォーマー。誰の目にもひとたまりもないと思われた次の瞬間、
人々が目にしたのは男が放った神速の九段突きと、9匹同時に急所を貫かれて絶命するおジャフォーマーという芸術的決着だった

ヒムラー剣心
フランス ♂ 182cm 70kg
グラップラークラス 近接戦闘型『セイバー』
元・紅華会No3 現セイバー最強位「剣聖」

現「最強のセイバー」の称号を持つ男にして、シンノスケと太平の師
【剣聖】ヒムラー剣心である
かつて紅華会のグラップラーとして、組織に楯突く多くの正義グラップラーをその手にかけた「人斬り抜刀斎」としての日々
シンエモンに敗れて以来、その得物を峰と刃を逆にした逆刃刀にすることで不殺の信念を貫いてきた彼であったが
今再び彼の手中に握られているのは、研ぎ澄まされた抜身の真剣であった

ヒムラー剣心 「私の人生を180°変える事になった紅華会戦争から10年・・・
         私如きには勿体無い才気溢れる二人の弟子が、今まさに死力を尽くして戦っている
         不肖の師として私が出来る事は、彼等の露払いくらいなもの
         
なれば!今こそ私は「人斬り抜刀斎」に立ち戻ろう!
         いや・・・相手は虫だから、正しくは
「虫斬り抜刀斎」になるのか?決まらんなぁ」





【成都】
ゴキブリがそのまま人間サイズへと巨大化したおジャフォーマーは、身体的スペックも文字通り桁違いである
特にスピードに関しては初速から時速300km超の快速を可能とし、
A級以上のグラップラーであっても、機動力ではおジャフォーマーに遅れを取るケースも珍しくないだろう
だが、そんな悪魔のような怪物ゴキブリひしめく戦場を縦横無尽に駆け抜ける白銀の牙有り
総出でそれを捕らえようとするおジャフォーマーだが、数匹がかりで周囲を取り囲んでも攻撃はまったく対象に当たる気配を見せない
その様、まさしく漆黒の夜空を切り裂く銀の流星!


キー    銀河一刀流奥義・斬星狼牙!!」

トキー・クルーカー
日本 ♂ 186cm 72kg
グラップラークラス 近接戦闘型『セイバー』
IGPO九大天王 「地獄の番犬」

キー    「容疑者、鷹田モンスター軍団尖兵「おジャフォーマー」
        罪状、「一般人殺害未遂」「公務執行妨害」「器物損壊」etc・・・
        
特別捜査官権限により、
現行犯抹消エリミネートする!」





【長春】


じゃうじゃう・・・じゃうじゃう・・・おーじゃまじゃま・・・
まるでプリンのカラメルソースのように崖の上の染め上げる漆黒の絨毯と、そこから聴こえてくる地鳴りのような鳴き声
隙間なくビッシリと埋め尽くされたそれは、よく見るとウゾウゾとおぞましく蠢めいているではないか
言うまでもなくおジャフォーマーの大軍である。その数たるや少なく見積もっても10万は下らないだろうか

そのゴキブリ達のほぼ中央、10万の視線の先にその2人は立っていた

???? 「うわぁ〜・・・話は聞いてたけど本当に人間サイズのゴキブリじゃん。きっも!」
???? 「ウヌウ。やはり一箇所に大属性クラス2人は配置ミスではないのか?
       もっと戦力が手薄な地域に別れた方が効率的だったと思うが・・・」
???? 「仕方ないじゃん。あたし達どっちもまだ病み上がりで本調子じゃないし
       それにここがおそらく一番敵の数が厚いだろうから、
       一番強力な範囲攻撃持ちを配置しろってのが後部くんの指示だったし」

ガッチュ  「だからそれが気に入らんのだ!みょーは何とも思わんのか!?
       
我々を病院送りにしたのはその後部景吾本人だぞ!」

みょー流石
日本 ♀ 150cm 40kg
グラップラークラス 大属性『グランドマスター
大地使い
IGPO九大天王 ”大地母神”
ガッチュベル
日本 ♂ 100cm 20kg
グラップラークラス 大属性「サンダーマスター
雷使い
IGPO九大天王 ”雷竜王”

IGPOの誇る二人の大属性クラス、「大地」のみょー流石と「雷」のガッチュベル揃い踏みである
かつて氷帝・後部景吾との戦いに敗れ、療養のため長らく戦線を離脱していた二人だったが、今がまさにリハビリを兼ねた復帰戦となっていた
その戦いが因縁の男によって用意されたものである事に憤りを覚えるガッチュベルに対し、意に介せずといった様子で特に何の憤慨も見せないみょー
二人をの間柄を知らない人間にとっては一見して喧嘩しているように見えるが、二人にとってはいつもと変わらぬ日常茶飯事の会話内容である

みょー   「別になんとも思わないよ?未だ敵ならともかく、今は味方じゃん
       それになんたってイケメンだしね!ブ男だったらわかんなかったかも!」

ガッチュ  「ウヌウ。みょーはあんな男がタイプなのか!?
       おのれ・・・傷が完全に癒えたらあの男にリベンジマッチを申し込むのだ!」

みょー   「あららら。もしかしてやきもち焼いちゃった?ガッチュくんも男の子なのねえ・・・
       んじゃま、ちゃっちゃと片付けちゃいますか。この程度あたし達なら余裕でしょ!
       
いっくよー!!レゾナンス・クエイクーッ!!!」
ガッチュ  「バオウ・ザケルガァ!!!」

ドッガアアアアアアアアアアアン!!!
二人の大属性クラスの同時攻撃。10万は下らないテラフォーマーの軍勢の、およそ1/3程度がいきなり派手に吹き飛んだ
彼女の言う通り、この程度の数ではこの二人を止める事はできないであろう。これもまた二人にとっては日常茶飯事の出来事であった



【杭州】

街を飲み込まんと迫る漆黒の波濤。そうはさせじと立ち向かうのは、たった7つの真っ白な消波ブロック
誰がどう見ても勝ち目のない激突であるハズなのに、しかしこれはどうしたことか

???? 「有巻10番」

黒い波が消波ブロックを飲み込んだと思った次の瞬間、目にも留まらぬ速さでその配置位置を変更
漆黒の波頭は彼等の刃でズタズタに切り刻まれ、跡形もなく消滅してしまった
それはまるで、真っ黒なノートに消しゴムをかけたかの如き無機質な消去

プログラミングされた精密機械のように一糸乱れぬ動きを見せた6つの消波ブロックは、縦横無尽に敵を切り裂いた後、再び最初の位置へと戻った

有巻    「待機ダス」

有巻将
日本 ♂ 177cm 60kg
グラップラークラス 近接大属性『ウェポンマスター

IGPO九大天王 ”IGPOの白き死神”
&その麾下部隊「ミステリアスパートナー」

曰く、「戦闘の天才」 曰く、「最強の捜査官」
あらゆる武器を手にした瞬間に使いこなせるレア大属性「ウェポンマスター」であり、
非番の日に街中で偶然凶悪犯と遭遇した際には、店先に置いてあった傘でこれを撃退したのは仲間内においても伝説となっている天才グラップラー
個人の戦闘力の高さに加え、彼の忠実な部下であるミステリアスパートナーを指揮した集団戦闘において無類の強さを発揮するコマンダーとしての特性も合せ持つ
有巻将とミステリアスパートナーの派遣。
それはIGPOにとって絶対必勝の布陣を意味する

有巻    「ここは√14・・・お前らはここから先には進めんダスよ
      
 IXA・・・遠隔起動!」


【済南】

???? 「なんと面妖な・・・あれが噂の”おじゃふぉおまあ”ですか」
???? 「気持ち悪いですね姉様。ヒナコできればアレに触りたくはありません・・・」
タカネ   「何を言うのですヒナコ。確かに見た目は奇妙ですが食わず嫌いはいけません
       ほら、あの開いた羽根なんてきっと食感がパリパリして美味しいですよ」

ヒナコ   「ええええ・・・・・やっぱりあれも食べちゃうんですか?姉様」


四条タカネ(姉)
日本
 ♀ 169cm 49kg
グラップラークラス 特殊戦闘型『空間使い

IGPO九大天王 ”底なし穴ブラックホール
四条ヒナコ(妹)
日本 ♀ 154cm 42kg
グラップラークラス 近接戦闘型「グラップラー

IGPO九大天王 ”地上最強の格闘技”

およそゴキブリに埋め尽くされた戦場には似つかわしくない麗しき美女2人
四条タカネと四条ヒナコは、日本有数の大財閥である四条グループの令嬢姉妹である

そんな才色兼備の美女姉妹がIGPOの九大天王というのも驚きだが、今の二人の会話を聞いた者は例外なく自分の耳を疑うであろう
姉・タカネの能力は「時空間幽閉」&「解放」
彼女の口から吸い込まれた物体は、その瞬間この地球上には存在しない別次元へと転送される
グラップラー凶悪犯を無傷のまま身柄確保できるというメリットに加え、
大量の兵器や同僚兵士達を吸い込んで、スパイとして敵地に単身潜入することも可能とする歩く兵器庫である
妹・ヒナコは地上最強の格闘技”SUMOU”の使い手
神事として誕生したSUMOUを極めることは神に近づく事と同義とされ、その最高峰「横綱」ともなれば神にも匹敵する強さを宿す、無敵の超戦士と化す

タカネ   「もちろん。私はここで口を開けて待ってますから、
       ヒナコはどんどんおじゃふぉおまぁを投げ入れてくださいな」

ヒナコ   「わかりましたけど・・・あの数を全部残さずですか!?姉様お腹壊しません?」

タカネ   「誰に向かって言ってるのですか。私の胃袋は宇宙です」




【太原】
???? 「お気をつけて警部!」
???? 「ご苦労。降ろしたらすぐにこの空域から離脱しろ
       チンタラしてるとゴキブリどもが飛んでおいかけてくるぞ」

既に辺り一面おジャフォーマーで覆い尽くされた真っ黒な大地。上空に現れたのはIGPOの高速戦闘ヘリだった
男は運転士にそう告げると、まるで自宅の玄関を出るかの如く無造作にハッチを開けて一歩外に踏み出した
ズダァン!!!
響く轟音と巻き上がる砂煙。突然の出来事におジャフォーマーが目を凝らすと、砂煙が収まると同時にその中央に悠然と経つ人間の姿を確認する
彼等の眼前に現れたのは痩せ型の長身に帽子を目深に被り、大分年季の入ったトレンチコートを羽織った中年のグラップラーである
降って湧いた敵の姿に興奮し、誰よりも先にこの獲物を仕留めねばと我先に襲いかかるおジャフォーマー達
男は慌てず騒がず背中に背負っていた一本の日本刀をズルリと取り出し鞘に手をかけると、刃を抜き放つ事なくその場に深く腰を落とした

”居合”の構えである

その全身から立ち上る凄まじい殺気を恐れ、おジャフォーマーが僅かに動きを怯めた次の瞬間!
神速の抜刀が煌めき、漆黒の海をズタズタに切り裂いた

とっつぁん
日本 ♂ 188cm 72kg
グラップラークラス 近接戦闘型『セイバー』
IGPO九大天王 ”天剣絶刀”

とっつぁん 「警察だ。署まではついて来なくていいぜ
      俺がこの場で一匹残らず叩き斬るからな」





【鄭州】
人間サイズになったおジャフォーマーは、脳も巨大化したことによって高度な知能をも手に入れた
近接戦闘を得意とするグラップラーには近づくことなく、遠距離からの投擲攻撃で仕留めるという事を覚えたのである
革帯で作った投石機をおジャフォーマーの膂力で振り回せば、
そこから発射される岩はカノン砲並みの弾速・威力と化す
既にここ鄭州の防衛として展開していた中国陸軍グラップラー部隊は、その戦術の前に為す術なく沈黙してしまった

阻む者のいなくなった市街地に、悠々と雪崩れ込む漆黒の軍団
逃げ遅れた人間達が残っていないかと周囲を物色したその時、街角からゆらりと1人の男が姿を現した

「じゃうじ!」

隊長格と思しき個体が合図を上げると、素早く男を取り囲む見事な集団戦術を見せるおジャフォーマー
迂闊に近づく者は誰もいない。それだけグラップラーという敵の厄介さと、それを封じる戦術の有効性を理解しているのだ
360°全方位から放たれる投石。逃げ場のない男は誰の目から見ても助からない・・・・ハズであった
だが次の瞬間!
ズドドドドドドッ!!!
これはどうしたかことか
突如として真正面から飛んできた高質量の物体に、食道下神経節を貫かれてバタバタと倒れていくおジャフォーマー達
それは紛れもなく、たった今自分達が標的に向かって放った岩に他ならなかった
消え行く意識の中で首をもたげて敵に視線を見やるも、岩を「打ち返した」ような道具は特に見受けられない
それはまるで、男に向かって飛んた岩がそのまま自分達に戻ってきたかのような摩訶不可思議な現象だった

???? 「”帝塚ゾーン”・・・・怪我はないか?ナナ」
???? 「全然平気だっちゃ!いざとなったらウチの”神隠し”もあるけえね!」

帝塚国光
日本 ♂ 179cm 58kg
グラップラークラス 特殊戦闘型『空間使い

後部景吾が好敵手と認めた男
ナナ
日本 ♀ 141cm 36kg
グラップラークラス 「???

謎の力を秘めた刀「神隠し」を持つ少女


※帝塚&ナナは朋友まつりんの考案グラップラー
二人の活躍は投稿作品をご覧あ

帝塚    「フッ、無理はするなよ
       しかしまさか・・・あの男が俺達に頼み事をするとはな」
ナナ    「うふふ・・・氷の兄ちゃんもまだまだってことやね!」

遠距離攻撃に対してほぼ無敵の能力を持つ帝塚と、あの後部景吾をも恐れさせる力を秘めた刀を持つナナ
打つ手を失ったおジャフォーマー達に、この二人を攻略する戦術を編み出す時間が与えられる事はなかった




【昆明】
???? 「ひーふーみー・・・アタシは2000だな」
???? 「じゃあボクも2000で」
???? 「私は防御専門だし〜1000でいいかしらぁ〜?」

眼前に迫る巨大ゴキブリの大軍を前に、悲鳴を上げるどころか恐れるそぶりすら見せない3人のうら若き乙女達
グラップラーであることは疑う余地はないが、武器らしい武器は携帯しておらず、徒手空拳で戦うにしてはその筋肉はまるで発達していない
ただひとつ見た目で特徴的な事と言えば、
3人ともに頭から一房の髪がピョンと飛び出ていることだけだった

髪山真紅(あほ毛真拳4姉妹 長女)
日本
 ♀ 170cm 49kg
グラップラークラス 近接戦闘型『グラップラー
突き穿つ死翔のあほ毛
髪山蒼(あほ毛真拳4姉妹 次女)
日本 ♀ 167cm 46kg
グラップラークラス 近接戦闘型『グラップラー
熾天覆う七つのあほ毛

髪山紫苑(あほ毛真拳4姉妹 三女)
日本 ♀ 160cm 43kg
グラップラークラス 近接戦闘型『グラップラー
多重次元屈折あほ毛斬

真紅    「やれやれ面倒くせえ仕事だが・・・一体の援護になるなら仕方ねえか」
紫苑    「フフフ。姉さんは一体さんの事となると何でも快く引き受けるよね
       普段あんなに面倒くさがり屋のクセにさ」

真紅    「んな!?そっ!そそそそんなこたぁねえよバカ!
       アタシと一体はただの幼馴染みなだけでだな・・・!」

蒼     「お夕飯の準備途中で来ちゃったから早く戻りたいわ〜。ちょっと本気出しちゃおうかしら」

紫苑    「んじゃま、ちゃっちゃと片付けちゃいますか。あっちのどー見ても1万匹以上居るのは・・・
       
碧に任せよう」

3人とは真逆の方向。手分けした5000匹の、ゆうに倍をあるであろう大軍を前に、たった1人で立ちはだかる少女
姉達と同じく武器らしい武器は持っておらず、外見的特徴と言えばピョンと飛び出た一房であったが
、唯一その規模だけが大きく違っていた
まるで針金でも入っているかのように真っ直ぐに立ったその髪は、頭上にどこまでもどこまでも伸び・・・
さながら天を穿つ光の剣の如く屹立していた

髪山碧(あほ毛真拳4姉妹 末妹)
日本
 ♀ 157cm 42kg
グラップラークラス 近接戦闘型『グラップラー
約束された勝利のあほ毛


※あほ毛真拳 髪山4姉妹は朋友狂兵さんの考案グラップラー

動物の本能か。桁外れの圧倒的な「力」を前にして、一歩たりとも動くことができないおジャフォーマーの群れ
ただただ呆然と眼前の巨大な光柱を見上げるしかない彼等の頭上に、
それは無慈悲に振り下ろされた

碧     「約束されたエクス勝利のあほ毛カリバー―ッ!!!」



西条    「以上、各防衛ラインからの通達です
       いずれの戦局もおジャフォーマー掃討完了。民間人の死傷者は0のと事」

溥儀    「大義であった。各位に労をねぎらうように伝えてくれ」
ハナワ卿 「やりましたな上様。それにしてもあの後部という男・・・
       最初は敵のスパイではないかと疑いましたが、彼が敵でなくて本当に助かりました
       これほど恐ろしい戦術眼を持つ者がこの世に存在しようとは・・・!」

溥儀    「嘘を言っているかどうかはその者の目を見ればわかる
       おそらく彼は彼なりの決着をつけようとしているだけなのだろう
       ”我々を助けた”のではなく、彼の目的の為に”我々を利用した”のだろうな」

大日本帝国将軍、足利溥儀の元をメタル太に敗れた後部景吾が訪れたのは、今から僅かに三日前のこと
目通りした後部は近々モンスター軍団による中国全土を対象にした無差別攻撃がある事を伝えると、
大胆にもその迎撃作戦の全指揮権を自分に渡すよう要求してきた
その理由を「頭の凝り固まった出来の悪い悪友の目を覚まさせる為」と言った後部も後部だったが、なんら警戒することなくそれを承諾した溥儀も溥儀であろう
かくして常人では窺い知れぬ傑物両名の会談により、対おジャフォーマーの戦力集めと対策法が瞬く間に整備された結果、今この瞬間に至る

阿部隆和 「流石は氷帝・・・と言ったところですな。おジャフォーマー軍団全滅です閣下
       今日のところは一旦退いて態勢を立て直しますか
       基地のDG細胞培養プラントさえ無事なら、いくらでも戦力の再起は・・・」
鷹田総統 「一旦退く・・・?ハハハハハ!まだわからんのかね阿部君!
       今チェス盤の向こうにいる相手は後部景吾!我が心腹の友!
       
基地とプラントが無事だと思っているのかね」

阿部隆和 「!ジャブロー基地に高速で接近する飛行物体を感知!これは・・・!」


後部    「だな、鷹田総統。これでチェックメイトだ」

バオンッッ!!!
南米ジャブロー上空
凄まじい炎を噴き上げながら、猛スピードで風を切り裂く巨大な鉄塊

完全自動操縦モードで飛行するそれには、パイロットは乗っていない
だがその操縦席には、並の人間なら気絶しているであろう凄まじいGをまるで感じさせることなく、ゆったりとくつろぐ一人の男の姿があった


オーバーQ
日本
 ♂ 188cm 70kg
グラップラークラス 中距離射撃型『ガンナー』
ハナワ機関のジョーカー 不死の怪物






アストナーヅ 「ツインGNドライブ採用 全長30m、最高時速マッハ20
         元々は人型機動兵器用のフライトシステムとして開発された代物だが
         そのままなのは外側だけでね。中身は相当弄り回して殆ど別機と言っていい
         射撃兵装は全て取っ払って極限までスピードを追及している
         コイツは有人飛行による高々度速度レコードを塗り替える為の専用機なんだよ
         ・・・でまぁ、もう一度聞くがあんたら何者だ?ハナワ機関・・・だったっけか?」

超異次元暴走マシン『ジェットモンガロン』
ハナワ機関現当主サー・カズヒコ・ハナワ卿が、発掘兵器レストア技師の第一人者アストナーヅ・メドッソの元を訪れたのは、わずか12時間前の事

コックピットに不死の怪物を内包したそれは、今まさに南米上空を切り裂く銀の銃弾と化して目的地に直行していた
すなわち鷹田モンスター軍団本拠地・ジャブロー基地である

阿部隆和   「これは・・・速力マッハ18.8・・・高度・・・85000!?バカな!」
鷹田総統   「ジェットモンガロンだ。知らんかね?前大戦が生んだ芸術的な高速戦闘機だ
         稼働可能機を日本の将軍家が所有していたとは初耳だが・・・いや・・・違うな
         手に入れたのか。わざわざこの奇襲の為だけに・・・まったくやってくれる」

阿部隆和   「基地内の全対空装備、すぐに展開させます」
鷹田総統   「無理だな。成層圏ギリギリをマッハ20でフッ飛ぶ化け物だ
         あの基地の対空兵装ではどうにもならん」

一体彼の能力は如何なるものであるのか。遠く離れた中国の地に居ながら、まるで上空からそれを眺めているかのように現場の状況をつぶさに伝える阿部
だが鷹田総統の言葉通り、基地の対空管制オペレーターがその機影をレーダーに捉えた次の瞬間には、対空ミサイルの射角外にまで入り込まれていた
「目にも留まらぬ」とはまさにこのこと。さながら瞬間移動のごときスピードである

オペレーター 「レーダーに感あり!敵襲です!敵機は既に基地直上!
         な・・・て・・・敵機・・・きゅっ・・・
急降下ァ!」

モンスター兵 「ま、まさか・・・機体ごとこの基地にぶつけるつもりか!?
         CIWS!弾幕!急げ!急げ急げ!急がんと全員死ぬぞ!」

基地全体に緊急アラートが鳴り響き、ドーム状の屋根が展開して72基もの対空CIWS(ガトリング砲)が姿を現す
地表から天に向かって逆さに降る豪雨の如く、何億発という鋼鉄の弾丸が闇夜に向けて一斉に放たれた
ダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!
いくら最高速マッハ20の化物であろうと、真正面からまっすぐ向かってくる標的であれば、それは静止しているのと同じである
絶え間ない銃弾の豪雨はジェットモンガロンの前面装甲部に集中着弾すると、
そのキュートかつシニカルなカウルを吹き飛ばして剥き出しの動力部にまで届いた

ドッガァアアアアアアアアン!!!!

モンスター兵 「Yeah!!!」

凄まじい轟音と爆炎を噴き上げ、木っ端微塵に爆発四散するその鋼鉄のボディ
九死に一生を得た安堵と、ジャブローの夜空を彩った花火の大輪に、歓声を上げるモンスター軍団のグラップラー達であったが・・・
その大歓声は次の瞬間に凍りついてしまう。なぜならば・・・
燃え盛る炎と白煙の中から、見るもおぞましい「絶望」がその姿を現したから

オーバーQ「拘束制御術式クロムウェル
     
3号2号1号 解放」

ジャブロー基地に居合わせた全てのグラップラー達は、呆然と「それ」を見上げることしかできなかった
逃げようとする者もいない。当然である。足はすくんで一歩たりともその場を動けない
「それ」が何であるかと考えることもなかった。ただただ「それ」が自分にとっての終焉をもたらすものであると、本能で察知していた
真の恐怖と絶望に晒された時、人は泣いたり叫んだりなど出来はしないのだ
蛇に睨まれたカエルのように、静かに己の死を受け入れるしかないのである

オーバーQ 「覚悟せよ。亡霊を装おいて戯れなば
        
汝亡霊となるべし」

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
耳を劈く轟音とともに、絶対なる終焉は密林の地に舞い降りた



西条     「・・・・勝ちましたな」
ハナワ卿  「当然だ。決して安い買い物ではなかったのだからな」

溥儀     「どうやらその様子だと本丸陥としは終わったようだな
        何をやった?何が起きている?一体どんな方法を使ったのだ?」


同時刻。空中戦艦ラストエンペラーメインブリッジ
主人がおもむろに咥えた葉巻に恭しく火をつける老執事と、満足そうに頷いて煙をくゆらせる若き当主
彼の放った最強の刺客によって、モンスター軍団の本拠地が壊滅したことを溥儀は即座に悟った
いち軍略家として興味本位からその方法を問いただすと、サー・カズヒコ・ハナワ卿は爛々と目を輝かせながらこれに答えた

ハナワ卿  「実にオーソドックスな「攻城戦」を行ったまでですよ
        
破壊槌の全長は30m 速度はマッハ20ですがね
        かくして破壊槌は突き立ち、城壁は破壊され、私の兵隊は場内へと攻め上る
        軍事施設ですからシェルターになっている地下空間は無事でしょうが・・・
        まぁ激突の爆発で死んだ方が遥かにマシでしょうな
        
「何が起きているか」
        古今東西陥落寸前の城塞で起きていることなど、たった1つきりでしょう
        
それはただただ一方的な 虐殺


               ”運悪く”生き残ってしまった連中の事を考えると気の毒に耐えませんな」

燃え盛る炎と飛び散る血飛沫の中、
まるでボロ雑巾を引き千切るように生き残りを”解体”する怪物の姿

遠く離れた地で起こっているであろう惨劇を容易に想像できてしまった溥儀は、「聞くべきでなかった」といった表情を浮かべて僅かに眉をひそめた

溥儀     「これで奴等が還るべき”巣”は無くなった。ここで一気に決着をつけるぞ」

軽くかぶりを振って再び気持ちを切り替える溥儀。もはや敵の退路は断った。そして今、眼前にはあの男がいる
その視線の先には、漆黒の軍服に身を包み空中に浮遊する男と、それに付き従う作業ツナギの男があった




ターリブ老  「後曲300騎!二手に分かれて背後の敵を挟撃せい!残りはワシについて前方突撃!」
太平     「スゲエ・・・あの黒甲冑の兵隊さん達、個々の戦闘力はゴキブリと同じくらいなのに
        集団戦闘になると連中にまったく付け入る隙を与えねえ!なんて強さだ!」
砂布巾    「孫子以来人類が数千年かけて磨き上げてきた「戦術」と、それを成す為の「練度」
         これこそが溥儀軍とゴキブリ軍との絶対的な差ですな」

圧倒的な強さでおジャフォーマーを蹂躙する味方の騎兵部隊に、思わず感嘆の声をあげる太平と砂布巾
オルタナティブとトライチェイサーの騎兵1000騎が投入されて間もなく、大乱戦の趨勢は大きく傾くこととなった
残りは1万か、2万か・・・ようやく終わりが見えてきたことで周囲に視線を向ける余裕が生まれた太平は、そこで思いがけぬ光景を見る
地面に膝をついて頭を垂れたまま動かない、漆黒の鎧を纏った長髪の男。ブラック・ソード・ゼロ
もはや戦闘意欲どころか生きる気力すら失って完全無防備な彼に、1匹のおジャフォーマーが背後から襲いかかる・・・・が!
ズバァッ!
すんでのところでおジャフォーマーを切り伏せその危機を救ったのは、誰あろうさっきまで彼と死闘を繰り広げていた金髪の少年剣士だった

純一     「一体なんのつもりだ小僧。無様な俺を哀れんでいるつもりか?
        俺の人生はたった今その意味を失った。もはや生きる理由もない
        情けをかけるくらいなら、いっそお前がトドメを刺すがいい」

シンノスケ 「・・・アンタはそれで構わないのか?一体さんと戦う為に10年努力したんだろ?」
純一    「ッ!貴様・・・!貴様ァ・・・・ッ!
       貴様のような・・・生まれついて並外れた力を授かった小僧に何がわかる!
       「打倒閻王」を生きる意欲に打ち込んできた俺の10年がわかるものか!」

10年間執着の対象として追い求めてきた相手から、己のグラップラー人生を完全否定されたばかりでなく、
自分の半分も生きていない小僧から哀れみをかけられるという二重の屈辱。およそプライドの高い彼にとって耐えられるものではなかった
項垂れていた頭をガバッと振り上げ、本物の鬼のような凄まじい形相でシンノスケを睨みつけるブラックソード・ゼロ
だが目の前の少年から返ってきた言葉は、彼がまったく想像だにしていなかったものだった

シンノスケ 「わかるさ。俺もアンタと同じことを目的に10年生きてきたからな」
純一    「え!?」
シンノスケ 「俺の父上は10年前に紅華会戦争で命を落とした・・・
        物心ついたばかりで父を失った俺を不憫に思い、
        ずっと父親代わりになって接してくれたのが一体さんだ」



シンノスケ、強くなれ。お前の父のように

いや、俺よりも強くなって、この世で一番の男になれ

それが俺の望み。そしてお前の父に対する恩返しだ



シンノスケ 「アンタと違って殺意ではないけどね。一体さんを超えたいと思う気持ちは同じだろ
        俺はその期待に応えたくて、8歳の時にヒムラー師匠の元に弟子入りした
        以来5年間、苦しく厳しい修行の日々はアンタの努力にも負けてないつもりだよ」

純一    「・・・・ッ!」

生まれついての竜の騎士であるシンエモンの息子も、物心ついた時からずっと閻王を超えるべく努力していた
脳天をハンマーでブン殴られたような衝撃に打ちのめされるブラックソード・ゼロ

考えてみればごく当然のことなのに、何故自分は「自分だけが10年頑張った」などと思いこんでいたのか
閻王を超える為に10年努力してきたと言うのなら、自分とこの小僧は同じである。そこになんの違いもない
いや、同じ10年でも修行を開始した時期がまるで違う

こいつは親に甘えたい盛りの8歳という時期に、親元を離れて厳しい修行の日々を送っていたのだ。比べて自分は何をしていた?
若かりし日々の記憶が、再び純一の脳裏にフラッシュバックする




純一(15歳)「バアちゃん、俺高校ハネったら紅華会に入る構えよ!
        そしたらこのオンボロタバコ屋も豪華な御殿に建て替えてやんよ」

祖母     「純一・・・オラおめに危ない事はしてほしくないよ
        お金なんて要らないから、ずっとばあちゃんの傍にいておくれ」




Dr国枝   「グラップラーランクB+といったところか。伸び代的にはどう頑張ってもA+までだな
         残念だが幹部候補生はS級以上が最低条件だ。諦めてくれたまえ」
純一(16歳)「もしもし・・・ばあちゃんか?うん・・・うん・・・
        今月の仕送り少なくてゴメンな。まだ下っ端だから給料安くってよ・・・・」 
 




祖母     「純一・・・おめ身体は大丈夫か?いつこっちに戻ってきてもええんだよ?」
純一(16歳)「心配すんなって。実はチャンスがあんだ。もう少ししたら出世してやっから」




Dr国枝   「おめでとう純一君。手術は成功だよ
        これで君は紅華会最強のグラップラーとして生まれ変わった
        君の前に敵はない。そうだな・・・今日からこう名乗るがいい
        
”ブラックソード・ゼロ”と!」



純一(17歳)「俺は紅華会最強グラップラー!ブラックソード・ゼロ!」



走馬灯が終わった時、ブラックソード・ゼロは呆然と佇むしかなかった
自分は一体何をしてきたのか。何を勘違いしていたのか
突きつけられた自らの限界に屈し、それから逃げることで手に入れた偽りの力が今の自分の強さだったのだ
「才能がない」と断じられても当然である

シンノスケ 「だから敵ながらアンタには不思議なシンパシーを感じてたんだ
        このまま一体さんに挑むことなく死ぬのがアンタの本心ならそうしたらいい
        だがそうじゃないのなら、まだ諦めるのは早いんじゃないか?」
純一     「ハッ・・・とことん甘い小僧だ。俺はお前の大切な姉ちゃんを傷つけた男だぞ
        そんな悪党が憎くはないのか?」

シンノスケ  「それさ。マリー姉ちゃんの傷は、その全てが痕に残るようなものじゃなかった
        アンタが意図的に加減したんじゃないか?」
純一     「・・・!」
シンノスケ  「アンタは人質を取る作戦を「卑怯な手」と言った。本物の悪党はそんな事は言わない
        アンタは「卑怯」が「卑怯」であるとちゃんとわかっている人間だ」

純一     「かいかぶるな・・・・俺はそんな人間じゃない・・・
        田舎のばあちゃん一人安心させてやれない、どうしようもないチンピラだ・・・」

シンノスケから浴びせられる言葉に、純一は思い当たるフシはなかった。意図してそんなことをしていたつもりはない
だがもし無意識にそう行動していたのなら、まだチャンスが残されているのかもしれない

自分のようなクズにも、もう一度生まれ変われるチャンスが

純一     「隙だらけだぞ!小僧ォ!」

瞬間。怒号とともに傍らに突き刺さっていた漆黒の魔剣「ごはんですよ」を引き抜くと、それをシンノスケに向かって投擲する純一
あまりに咄嗟のことで一瞬反応が遅れるシンノスケ
かくしてごはんですよは純一の狙い通り、ターゲットに命中する。そう、
シンノスケの背後から襲いかかろうとしていた、1匹のおジャフォーマーに

純一     「これで貸し借りは無しだ小僧!この戦いが終わったらさっきの決着をつけるぞ!
        勝ったほうが閻王に挑戦するってことで文句はないな!?」

シンノスケ  「ああ!そういえばまだアンタの名前を聞いてなかった!」
純一     「俺か?俺の名は・・・俺の名はブラックソー・・・・いや・・・・
        
ただの”純一”だッ!!!!」

純一
日本 ♂ 182cm 75kg
グラップラークラス 改造バイオグラップラー『キメラ型』
元・鷹田モンスター軍団 ブラックソード・ゼロ

互いに背を合せ、ニヤリと笑い合う白衣の剣士と黒衣の剣士
その背に圧倒的な頼もしさを感じながら、未だ1万匹は蠢くおジャフォーマーの群れへと切り込んでいく二人であった

TO BE CONTINUED・・・


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