金閣寺地下―
城主・将軍足利溥儀を含め、世界中の人間のほんの一握りだけがその存在を知る秘密の会議室があった
円卓会議
大日本帝国将軍にして世界グラップラー連盟理事である溥儀の下、世界各国12人の要人が召集される最高機密会議である
ギリシャ最高の戦闘力を持つグラップラー集団「黄金聖闘士」を統率するSAGA教皇、アメリカ国防総省長官ラームズフェルドーン
そして世界中に市部を持つ義侠組織「青幇」の大親分にして、伝説の救世主・閻王の義兄でもある北斗神拳の使い手藩光輪など
世界に名だたるVIP達が既に円形のテーブルに着席していた

ターリブ老 「サー・カズヒコ・ハナワ卿ご到着なされました」

ハナワ卿  「遅れまして申し訳ありません皆様」

まだ少年っぽさが残る気品漂う端整な顔立ちに優雅な立ち振る舞い。歳の頃はまだ20歳そこらであろうか
黒のスーツに身を包んだ青年と、その後ろに恭しく控えていた老執事は着席しているメンバー達に向かって頭を下げた
大日本帝国特務グラップラー機関「ハナワ」
表舞台で活躍する溥儀禁衛隊とはまったく逆の存在、つまり「裏」の部分を司ってきた大日本帝国の特務機関
三代将軍溥儀が設立した禁衛隊とは異なり、初代将軍嵩氏の代から長きに渡り幕府を支えてきた懐刀である
ハナワ機関に所属するグラップラーは通常クラスのグラップラーとは一線を画した特殊能力者達が集い、
古くから日本に巣食う
妖魔・物の怪の類から人々を護ってきたとされているがその真偽は定かではない
カズヒコ・ハナワ卿は若干21歳にして父からその座を継いだ当代のハナワ機関局長である




溥儀     「よい。して”彼”はまだ到着せぬのか?」

遅参を詫びる若き臣下を咎めることなく、溥儀はもう1人この場に居なければならない人物のことを尋ねた
口元に僅かな笑みを浮かべつつ、ハナワ卿はス・・・と溥儀の隣の空間を指し示す

ハナワ卿  「既にそちらに控えております」

む、と溥儀が視線をやった瞬間
ズ・・・ズズズズズ・・・・ッ
まるで水の中に大量の墨でもブチ撒けたかのように。何もなかった空間から突然じわりじわりとまっ黒い「闇」が溢れ出したではないか
会議室に居合わせるVIP達がどよめく中、「闇」はみるみる人の形を形成していく

オーバーQ 「全員お揃いとは誠に重畳
        ただいま帰還した。我が主」
ハナワ卿  「ご苦労だった我が下僕。上様の御前だ。サングラスを取れ」

ざわ・・・ざわざわ・・・・
目の前で展開した信じられない光景に息を呑むVIP達
何も無い空間から突如として湧き出した「闇」は、瞬く間に真紅のスーツと外套を纏った長身の男へと変化してしまった
いや果たして「男」なのか。のっぺりとした身体には顔と首、胴といった起伏が見られず、頭部には細長い毛が3本生えているだけ
真っ白な顔の半分ほども占めるような大きな唇に、なにやら詐欺師まがいの丸いサングラスが怪しさを際立てている
見るも奇怪な異形の人物は、ハナワ卿に言われるがままにサングラスを外して溥儀に会釈した

溥儀     「久しいなオバケ。お前はあの時とまったく変わらぬな」
オーバーQ 
「30年ぶりほどかな?”ボウヤ”
        いやこれは失礼した。今はもう将軍になったのだったな」
溥儀     「ふ・・・おかげでこんなに老け込んでしまったよ
        今ではもうすっかりくたびれたヒゲのオッサンだ」

サングラスを外した異形の人物を、溥儀は「オバケ」と呼んだ
オバケと呼ばれた男は天下の大日本帝国将軍をボウヤ呼ばわりし、30年ぶりだと漏らす。いったいこの人物は何者だと言うのか

オーバーQ 「世界の指導者が何を言う
        数多くの傑物を見てきたが貴方ほどの器には逢ったことがない
        この私が言うのだから間違いない。自信を持つがいい」
溥儀     「ふふ。年長者の言うことは素直に受け取っておこう
        では早速報告を聞かせてもらおうかオバケ
        
鷹田モンスター軍団について調べたことを」



第9話「帝都大戦」



オーバーQ 「昔々あるところにひとりの狂った科学者がいた
        『不死身のグラップラーを作ろう。無敵のグラップラーを作ろう』
        膨大な血と狂気の果て・・・その無謀は成就しされつつあった
        だが10年前
        我等が救世主様の活躍によってその計画は台無しにされ
        その科学者もまた、自らの研究の暴走によって命を落とした」

まるで子供達に昔話を聞かせる学校の先生のように
円卓の周囲をゆっくりと歩きながら語り始めたオーバーQ
僅かに冒頭部を聞いただけで、何の話かを察した藩と溥儀は眉間に嫌悪のシワを寄せた
もしこの場に青幇ウズベキスタン支部統括者・野比のび犬とSパー伊藤が居合わせていたならば、もっと如実な拒絶反応を示したであろう

藩       「・・・Dr国枝・・・!」
溥儀     「紅華会戦争か」

オーバーQ 「そうだ。だが・・・・
        国枝は死んでもその理念までは死んでいなかった
        誰もが忘れ去ろうとした狂気の研究は
        暗い闇の底で執念深く確実にその枝葉を伸ばしていたのだ
        今や彼奴等の研究成果は恐るべき地平へと到達している
        無尽蔵に生産される人工の超級グラップラーの軍団
        まさに10年前の地獄から甦ってきた死者の群れと呼べる」

10年前。人道を踏み外した人体実験を重ね、オリパとともに紅華会という巨大組織を作り上げたマッドサイエンティスト・Dr国枝
最後は己の研究対象であったDG細胞の暴走によって命を落とした彼であったが、その忌まわしき研究を引き継いだ人間がいたのである

溥儀     「なんという事・・・ならばモンスター軍団のグラップラーは」
オーバーQ 「そう。
Dr国枝ラボのノウハウによって作り出されたものだ

ざわ・・・ざわ・・・
再びあの悪夢の大戦が繰り返されると言うのか?沸き立つドス黒い不安に騒然となるVIP達
その時だった

???   「お見事。流石ハナワ機関の切り札ノスフェラトゥオーバーQ
        ベトナムの改造プラントを潰してくれただけのことはあるな」
溥儀     「なッ!?」 

ゾッと血の気が引いて声の方向を一斉に振り向くメンバー達
いつのまに出現したのか。いや、はたまた最初からそこに居たのか―
溥儀の隣。さっきまで椅子さえなかった場所に、13番目の人影がニコニコと不敵な笑みを浮かべてふんぞりかえっていた





簡素な作業ツナギを身にまとった、機械修理工風のいい男である。どこかワルっぽい雰囲気が更に男前を際立たせている

ハナワ卿   「いつ侵入を許した?西条!オーバーQ!」
オーバーQ 「ふむ・・・この俺がなんの気配も感じなかったとはな」
西条     「警備は万全でした。セキュリティを破られた形跡もありません」
阿部隆和  「おっと銃は降ろしてくれ。俺の名は阿部隆和
        今日はモンスター軍団の特使としてここに来ている
        ここでアンタらと闘り合うつもりはないよ。それに・・・
        後ろで睨んでるおっかない人には到底勝てそうもないしね」

場に居合わせた人間が一斉に拳銃を向けると、阿部隆和と名乗った男は両手を上げて無抵抗の意思を表した
無論威嚇になったのは取り囲んだ拳銃などではなく、一瞬にして彼の背後に立って睨みを効かせていたオーバーQの小宇宙であったが
どうやら彼に本当に戦意がないらしいとことはその物腰から伺いとれた

ハナワ卿  「連中の特使だと?いったい何の用件で・・・」
阿部隆和  「本日はお集まりいただいた各国VIPの皆様へ
        我々の偉大な指導者、鷹田総統からのメッセージがあります
        それではしっかりとお聞きください」

円卓の中央に阿部が持参してきた液晶モニターが置かれ、スイッチが入れられる。ゴクリと息を呑むVIP達
ジジジッ・・・っと数秒の砂嵐とノイズ音が入った後、やがて画面の中に漆黒の軍服をまとったサングラスの男が映し出された

鷹田総統  『ん、あぁ映った映った。お役目ご苦労だったな阿部くん』
溥儀     「・・・・お前がモンスター軍団の総統か?」
鷹田総統  『やぁこれはこれは将軍閣下。お初にお目にかかる
        
鷹田延彦と申します。以後お見知りおきを』

映し出された総統の姿は、場に居合わせた人間が想像していたよりも遥かに「普通」であった
紅華会の首領オリパは全身鋼のような筋肉で覆われた巨漢であり、見るだけで畏怖を感じる存在感を持つ男だった
だがこの鷹田延彦という男はまったくの中肉中背で、見る者が視覚的に感じるような威圧感は一切ない

ハナワ卿  「ボス自ら挨拶とは舐めた真似をしてくれる・・・
        聞かせてもらおうか。いったいどういうつもりでこんな」

鷹田総統  
『黙れ小僧。お前とは話をしていない
        将軍閣下と話している。くだらない邪魔をしてくれるなよ』

ガタンッ!
ハナワ卿が口を挟んだその瞬間、穏やかな物腰に隠されていた「それ」は本性を垣間見せた
サングラスの下の目玉がぎょろりと大きく見開かれ、まるで目に見えるのではないかと思うほどの殺気が全身から放たれる
モニター越しだというのに心臓が握り潰されそうな恐怖を感じ、ハナワ卿は不覚にも椅子を引いて後ずさってしまった

溥儀     「聞いておるぞ。天魔流星を復活させる気だそうだな
        およそ信じがたい無謀な試みだ
        お前達の目的は世界征服ではないのか?それとも・・・
        アレをコントロールする術を持っているとでも言うのか?」
鷹田総統  『目的?我々の目的ですか?ふふふ・・・』

溥儀のその問いに、総統の口の両端がニッと吊りあがる
クスクスという小さな笑いを噛み殺しつつ、総統は問いに対する答えを返した

鷹田総統  『極論してしまうならば将軍閣下
        
我々には目的など存在しないのですよ』

ざわ・・・ざわ・・・
「モンスター軍団に目的は存在しない」と言う総統の発言に円卓が揺れる
世界各国重要都市を無差別に襲撃し、罪もない人々を連れ去ってグラップラーに改造してしまう悪魔の軍団
例えどんな目的があったとしても容認できない悪行を、さしたる目的もなしに行っていたなどと・・・

鷹田総統  ”目的の為なら手段を選ぶな”
        君主論の初歩だそうですがそんなことは知りませんな
        貴方は仮にも我々に対する反撃勢力の指揮者だ
        知っておくべきですよ。世の中には我々のような・・・
        
”手段の為には目的を選ばない”
        どうしようもない輩も存在するという事を」
溥儀     「戦う事。この太平の世に混沌をもたらす事・・・
        それ自体がお前達の行動原理だとでも?」

震える拳と溢れる怒りを押し殺し、静かな声で溥儀が尋ねる
一瞬の沈黙の後、鷹田総統は感心したように口の両端を大きく吊り上げて口を開いた

鷹田総統  「流石に聡明であらせられる・・・いかにも
        我等の求めるモノは理想でもなければ覇権でもあらず
        
すなわち戦闘行為そのもの
        闘争の歓喜を無限に味わう為に
        次の闘争の為に。次の次の闘争の為に!」
溥儀     「なるほど合点がいった。それ故の天魔流星か」

モンスター軍団の望みとは「闘う事」
それは「手段」そのものであり、行為を起こすことで既に満たされる
すなわち彼等にとって「目的」などというものは一切合切必要ないのだ

戦闘を永遠に継続するために世界各国に宣戦布告し「敵」を作り出し、それに対抗する為に人々をグラップラーに改造する
そこになんら意義はなく、ただひたすらに闘争を繰り返すだけの悪夢のスパイラル。およそ正気の沙汰ではない思想であった

ギリリ・・・と血が出るほど唇を強く噛み締め、ハナワ卿が吐き捨てる

ハナワ卿  「・・・狂ってるよお前ら」
鷹田総統  「ククク小僧。誰に向かって口を聞いているつもりかね?
        私は非人道的人体実験を繰り返してきた組織の首領だぞ
        狂ってる?何を今更!言うのが10年ほど遅いぞ!」
ハナワ卿  「撃て。オーバーQ」

ハナワ卿が命令を下した瞬間。既にオーバーQは手にした拳銃の引き金を引いていた
”ビシャアッ!”
阿部隆和の頭は地面に落としたスイカのように木っ端微塵に吹き飛んだ
円卓会議場に咲く真紅の花。
凄惨な光景と鼻をつく血の臭いに、各国のVIP達は目を背けて口を押さえた

対グラップラー用15mm強化拳銃「バウ砲」
オーバーQ自慢の得物である
全長45cm重量20kg。弾頭は特殊炸裂鉄鋼弾 装弾数6 
その重さゆえ一般人では扱うことのできない代物だが、グラップラーが相手でも即死に至らしめるだけの破壊力を秘めたスーパーガンだ

派手に命を散らした特使の姿に別段驚くでもなく、むしろ鷹田総統は目を細めてこれを喜んだ

鷹田総統  「いやはや特使を撃つとは・・・穏やかじゃありませんな
        素敵な宣戦布告をありがとうございます
        よろしい、ならば我々の狂気を止めてみろ健常者諸君
        盛大なもてなしの準備をして待っていていただきたい
        間もなくそちらに参上致します故

        阿部君、お役目御苦労。帰還してくれたまえ」
阿部隆和  「了解。しかしいきなり頭をブッ飛ばされるとはね」

ざわっ・・・!
鷹田総統の言葉と、その命令に対する返答にその場の人間の誰もが息を飲んだ
全員の視線がたった今頭を吹き飛ばされて即死したハズの阿部隆和の死体へと注がれるが・・・
その姿は彼がこの場に現れた時のように。影も形もなく忽然と消え失せていた

ハナワ卿  「これは一体・・・?確かに頭を吹き飛ばしたハズ」
オーバーQ 「・・・流石は特使と言ったところだな」

”特使”の消えた死体に騒然とする中、追い討ちをかけるように会場に更なる一報が飛び込んできた

ターリブ老 「バカな!京都上空に謎の飛行船団だと?
        なぜここまでの接近を許した!?防空設備は!?」
鷹田総統  「なに、10年前諸君等がエジプト攻めで使った方法だよ
        京都近辺の対空設備と防空網は全て無力化させてもらった
        では往くぞ諸君。我々1000人の精鋭がお相手仕る
        せいぜい美しい闘いの旋律を聴かせてくれたまえ」

ブツン!とモニターが切れて画面が暗転する。もうこちらからの呼びかけも通じない
鷹田モンスター軍団の大戦力がここ京都上空に現れた。対空兵器は役に立たない
想像だにしなかった出来事に、円卓会議室は水を打ったように静まり返った
各々に絶望的状況を認識したのである
敵は1000人のA級超グラップラー。対してここ京都の戦力は・・・・・・

各国VIP達が虚ろな目で首を下げる中、だがしかし溥儀だけは気落ちすることも狼狽することもなかった
ターリブ老に耳打ちし、若き特務機関局長とその懐刀である男に命令を下す

溥儀      「ターリブ、禁衛隊は既に動いておるな?」
ターリブ老  「はっ。ぬかりなく」
溥儀      「・・・ハナワ卿、オーバーQ。命令を与える
         
奴等を打ち倒せ!」

ハナワ卿   「はっ!」
オーバーQ  
「御意」






鷹田総統  「見たまえ諸君。眼下に広がる京都の灯を
        
堰を切れ!闘争の濁流の堰を切れ諸君!
        
弟一攻撃目標は洛西エリア全域
        金閣寺・高山寺・苔寺・天竜寺・仁和寺・龍安寺
        京都を象徴する全ての寺院と神社を爆破しろ
        
一片の塵も残さず燃やし尽くせ!」

ガシャン!ボヒュヒュヒュヒュヒュ!
漆黒の艦船から姿を現した無数の鉄塊は、全てを灰燼と帰す破壊の権化
無慈悲な”それら”は白煙を吹き上げて夜の空に飛び出し・・・・
人々の雑踏でごった返す、ネオン輝く京都の街へ 次々と吸い込まれるように消えた
ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!!
ドッガァーン!!!!!
手始めとして12基発射された”それら”は、世界文化遺産である龍安寺を粉々に吹き飛ばし
居合わせた何百名という人間の命を 一瞬にして奪い去った

オペレーター「第一波V1ミサイル全弾命中!大打撃!
        続いて第二波発射準備に入ります!」
鷹田総統  「上等。降下グラップラー部隊カタパルトデッキへ!
        間髪入れず着上陸作戦を開始せよ!」

戦いは轟音と爆炎で幕を開けた
突然京都の夜空に現れた漆黒の飛行船団は、見物客達に一切の警告を発することもなくミサイルで街を爆撃したのだ
雅なる古都は瞬く間に悲鳴飛び交う阿鼻叫喚の地獄へ変わり、無力なる人々は悪夢のような現実にただただ泣き叫ぶ事しかできない
そんな地上の様子を眼下に見下ろしつつ、モンスター軍団のグラップラー達は破壊の愉悦に身震いする

グラップラー 「素晴らしい・・・なんて綺麗な夜景だろう
        まるで地獄の釜の蓋が開いたようだ!」

鷹田総統  「諸君!この戦は宣戦布告にして”みせしめ”である
        構うものか。目に付いた物は片っ端から壊し・・・
        
目に付いた者は片っ端から殺せ!
        今宵、帝都は我等の晩餐と成り果てるのだ!」

その瞳に狂気の色を湛え、次々と闇の空へ身を躍らせる1000人の悪行グラップラー
容赦もなく、慈悲もなく
ただひたすら純粋な破壊の為に

地獄の落下傘部隊は、まるで黒い雪のように京の都に降り積もった





ターリブ老 「街中のいたるところで大規模火災が発生
        回線網、通信網、命令系統は全てズタズタ
        主要な軍施設、指揮中枢は通信途絶・・・
        おそらく既に連中と交戦に入ったかと思われます」
溥儀     「民草の被害は?」
ターリブ老 「・・・・・既に多数の犠牲が出ている模様です」

ギリリ・・・と歯を鳴らして席を立つと、溥儀は円卓メンバーに向かって深く首を垂れた
もはや事態は一刻の猶予も許されない

溥儀     「申し訳ない。聞いての通りです各国VIPの皆様
        あと半刻もせぬうちに連中はここ
金閣寺にやってくるでしょう
        今すぐボディガード達を供に京を脱出してください
        連中の狙いはあくまで私と京の都
        すぐさま脱出すれば貴方達に累は及ばないハズです」

藩光輪   「将軍閣下は如何なされるのですか?」
溥儀     「私は私の都と民草を守らねばなりません
        
例えこの命に代えようとも」

メンバーに京都からの脱出を指示し、自らは陣頭指揮をとる為に残る決意を表明する溥儀
誰一人として溥儀を責める者はいない
もし自分が溥儀の立場であったらならば、はたしてこの地獄に「残る」と言えただろうか?
その指導者としての高潔なる精神に、ただただ感動を覚えるばかりであった

SAGA教皇「・・・どうかご武運を
        まだまだ世界は貴方の導きを必要としております」

円卓会議室から次々とメンバーが掃けた後、溥儀はターリブとハナワ卿、執事西条、オーバーQを従えてエレベーターに乗り込んだ
なんと1000人のモンスター軍団が徘徊する都へ、たった4人の共を連れて自ら打って出るつもりなのである
必死に説得するハナワ卿であったが、溥儀は頑として聞き入れない

ハナワ卿  「会議室は核シェルターと同等の強度を持ち合わせております
        どうか上様は会議室にて我等の戦いをご覧くださいませ」
溥儀     「通信機能が回復しない会議室に朕が立て籠もってどうなる
        朕は総指揮者として兵に命令を下さねばならぬ。それに・・・
        民草が危機に瀕している時に将軍が矢面に姿を現さぬなど!
        
死ぬ時は愛する民草達と共に死んでくれるわ」

オーバーQ 「クククク・・・まったく大した将軍になったものだなボウヤ
        心配するなカズヒコ、この男は天命が決して殺すまいよ」
ターリブ老 「左様でございますな
        これくらいのピンチでどうにかなるような上様ではございません」
西条     「いやいやなんの。この程度の事、ピンチとさえ呼べませぬぞ」

若いハナワ卿がただ1人うろたえる中
老臣ターリブと西条執事、オーバーQの3人は、この太陽のような主君のポジティブさを頼もしそうに見つめていた






オペレーター「最重要攻撃目標金閣寺を視認!残存ミサイル全基発射します」
鷹田総統  「派手にやれ。あの平和主義者どもに腹いっぱい食わせるんだ
        
一斉射撃!」

ガシャン!ボヒュヒュヒュヒュヒュ!
鷹田総統の号令とともに、30基超のV1ミサイルが金閣寺に向かって一斉に放たれた
夜の闇にその優雅な姿を浮かび上がらせた世界文化遺産は
先に破壊された龍安寺のように、木っ端微塵に吹き飛んでその長い歴史に終止符を打たれる・・・・
―ハズだった

ボッボッボッボッボッ!!!
ドガドガドガドガドガドガドガァ!!
耳をつんざくような爆音が響き渡る
だがしかし金閣寺は依然健在。それもそのはず
金閣寺を粉々に吹き飛ばすハズだった鉄塊達は、何故か次々と空中で爆発していくではないか!

鷹田総統  「何だ!?何が起きている!一体何をされている!?」
オペレーター「そ、狙撃です!金閣寺の方向から対空射撃を受けています!
        対空設備なんてないハズなのに・・・・・ああっ!?」

サーチライトで照らされた先、望遠カメラは謎の「対空砲」の正体を鮮明に捉えていた











レオンハルト「35mmセミオート「砲」。最大射程5000m総重量450kg
        
『地獄の砲弾U』

        モンスター軍団・・・帝都に攻め入った愚行を悔いるがいい」

溥儀禁衛隊 四の槍
”地獄の砲弾”レオンハルト

TO BE CONTINUED・・・


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