第9話
異”種”格闘技
むかしむかし中国のお話
周亜門という修行僧がおったそうな
ある日、亜門は林の中でとんでもないものを見る
それは・・・・・
亜門の予想を裏切り、なんと勝利を収めたのは
軽量の蟷螂
蟷螂の強さにいたく心を打たれた亜門はその闘法を熱心に研究し
ついには拳法を創造ってしまったそうな
『蟷螂拳』の発祥である
周家系蟷螂拳誕生のエピソード。俺のような格闘技好きの人種には結構有名なお話だったりします
史実では創始者は周亜南なる人物。劇中の人物なので「亜門」という微妙な変名を施してあるようです。勘違いして覚えないように
ちなみにこれとは別に蟷螂拳には山東省が発祥の北派系蟷螂拳があり、普及率が高いのは実はこちらほう
「拳児」で蘇崑崙が使った七星蟷螂拳なども北派系。バーチャファイターのリオン・ラファールも北派系です
山東省蟷螂拳の始祖は王朗という人物で、何度挑戦しても勝てない強敵を倒すために思案していた王朗が
すばやく飛び回る蝉を、蟷螂が一瞬で捕らえた様を見て蟷螂手のヒントを得たと言います
自分で創造した蟷螂手によって強敵に勝利した王朗はその後、北派拳法18門派の技術を集成・統合し「蟷螂拳」を完成させるのです
おっと思わず中国拳法知識をひけらかして話が脱線してしまいました。では本編に戻りましょう
『バキさんが緊張しているッ!
自分が創造りあげた想像上の蟷螂に緊張しているッ!』
ルミナの目はまだ刃牙の見ている巨大蟷螂の姿を見る事はできないが、しかしその緊張感は手に取るように伝わってくる
驚愕に大きく見開かれる目。その視線が自然に上を向く。刃牙の目には今、いったいどんな怪物が映っているのだろうか
”バオッ!!”
繰り出された見えない攻撃を側転して回避する刃牙!・・・なのか
蟷螂に対して側転キックを見舞った刃牙!・・・なのか
相手の姿が見えないのでよくワカりませんが、コンクリートの壁が大きく陥没する!・・・・ってええええええ?
想像はあくまで想像だろ!?
刃牙が意思力でダメージを負うのは理解できるとしても。想像の攻撃で壁が壊れるワケないじゃん
なんかもうゆで並にアレな感じになってきたリアルシャドー。現実と妄想の境界線はどこだ
『バキさんの言うとおりだ・・・ッ100キロの蟷螂は
200キロ以上の虎やライオンなんかよりも遥かに強いッ!』
冷静なルミナにそこんトコつっ込んでもらいたかったのに。彼も雰囲気に飲まれてこの調子です
そんなこんなで巨大蟷螂との死闘を繰り広げる刃牙ですが、その戦闘力の前に終始押され気味
「地上最強の高校生」の実力をもってしても、人間サイズの蟷螂の前ではこれほどの苦戦を強いられるものなのか
ていうか巨大蟷螂グロい
前回俺は「エイリアンとやれよ」と言いましたが。エイリアンだなコレ
『弱くて・・・簡単に勝てる蟷螂にしてしまえばいいのに・・・
なんて自分に厳しいんだ!』
しっかりしろルミナ。これは特訓なんだから厳しくて当然つーか甘くしたらやる意味ないっつーか
あまりにも長く不思議時空にあてられたせいで状況認識力が激しく低下しているようです
ホンモノの蟷螂に普通の格闘技は通用しない―
バキさんの動きは徐々に
格闘技ですらなくなっていた
もう何が何だかワカらんようになったところで次号へ続く!
第10話
その先
薄暗い部屋の中―バキさんが動いている
何も無い空中を攻撃し、何も無い空中からくる攻撃をふせぐ
僕は見ていた―なにひとつ見逃すまいと
めまぐるしいバキさんの動きを凝視し続けた
すると―
本のケースを見るとそこに入る本の形がワカるように
こんな形のペンダントがあると
もう一つのペンダントを想像するように
見えてくる
何も無い空間に 少しずつ・・・
あるハズのない姿が少しずつ・・・
見えてくる!!
バキさんの創造り出した”それ”は―
実際に目の前(?)にすると、笑ってしまいたくなるほどの
絶望的なシロモノだった
ついにルミナの視界にも姿を現し始めた体重100Kgの巨大蟷螂
実際の姿を確認するや、ゴクリと生唾を飲み込んで一歩も動けなくなるルミナ。まぁエイリアンだしなぁ
”シュバァッ”
息もつかせぬ激しい攻防の中、刃牙会心のハイキックが蟷螂の頭部にクリーンヒットする
スピード、タイミングとも文句なしのジャストヒット。スーパーへヴィ級の格闘家とてKOは免れない一撃だ
曙のように無様に前のめりにKOされる蟷螂を想像するルミナだったが― なんと
倒れないその巨体!止まらない攻撃!
その巨鎌が唸りをあげて伸びる!
これがモノホンの【穿陰掌】ッ!!
(蟷螂拳の技のひとつ。蟷螂手で放つアッパーのような振り上げ攻撃。バーチャのリオン使いなら周知だろう)
”ドガァッッ!!!”
流石に体重100Kgの蟷螂が放つ穿陰掌はリオン・ラファールのそれとは段違いのパワーです
ボールのように吹っ飛ばされた刃牙は天井に叩きつけられ、受身も取れずに床に落下する
それにしても必殺のハイキックを受けたハズの蟷螂には、なんのダメージもないのでしょうか?
『ナルホドねェ・・・悪い予感があたっちまった・・・・
蟷螂の頭部には脳がないに等しい
だから人間には必ず起こる脳震盪が無い』
カマキリには頭部への攻撃が効かない!納得できるようなできないような微妙な理由です
だってさぁ・・・・みんな、子供の頃を思い出してごらんよ。カマキリの頭なんか
子供のデコピンでも軽く吹っ飛ぶじゃん?(残酷)
刃牙の渾身のハイキックなんてクリーンヒットしたら、例え体重100Kgのサイズだろうが
頭ごと吹っ飛ぶイメージがあるぞ
ま、あくまでイメージの話だけどよ
実際はスケールの肥大化とともに外骨格生物ならではの外皮の硬さも跳ね上がっているハズ。蹴り程度で首は飛ばんか
脳震盪が期待できないとなると、打撃でこの相手をKOするのは至難のワザ
ならばコイツを倒す方法は関節技・・・・ないしは締め技か
刃牙は蟷螂の攻撃をかわしてバックを取ると、素早くチョークスリーパーを極める
「やった!ぜったいにはなすなッ!」
ようやく巡ってきたチャンスらしいチャンスにルミナも思わず吼える。このまま締め落とせるか?
『なんだこりゃ・・・・・・ッッ』
しかし技をかける刃牙に走る戦慄。人間にかけるときとは違う、言い知れぬ違和感
恐るべき昆虫の身体!果たして締め技は通用するのか?
なんかもうどうでもいい感じで次号へ続く!
第11話
ヒトとムシ
『なんだこりゃ・・・・ッッ』
うまく巨大カマキリの背後に回りこみ、死角から渾身のスリーパーホールドを見舞う刃牙に戦慄走る
人間相手ならば刃牙の目に映るのは相手の後頭部だけだ。しかしカマキリの場合は・・・
『バック奪っても しっかり見られてんじゃん・・・ッッ』
肉食動物の目は敵との距離を正確に測るために前側に。草食動物は捕食者をすぐに察知できるよう顔の横側に・・・
誰でも学校で習ったことがある、動物の「眼」の特性。昆虫の視野たるや草食動物の比ではありません
真後ろから首を絞める刃牙を、カマキリの両眼はしっかりと凝視していました。まぁ顔の面積の半分くらいが眼だしなぁ
すげえガン見です
”がきっ”
『しかも・・・おっそろしく器用!』
その長い前脚を器用に後ろに回すカマキリ。真後ろに取り付いた刃牙の首根っこをガッチリと掴まえます
グキキキ・・・・と物凄いパワーで刃牙を引っぺがすと、その鋭い顎をガチンガチンと開いて顔を近づける!
口からダラダラと涎を垂らすその姿はまさにエイリアン!
『く・・・・喰われるッッ!!』
刃牙をホールドした前脚はとてつもないパワー。まるで万力で固定したかのように、その必抵抗を抑え込みます
人間サイズの昆虫に、人間が力比べで対抗できるワケがないのだ。両足キックをくれてなんとか脱出する刃牙
頭部へのハイキックは効かない。締め技も効かない。このバケモノを倒す突破口はあるのか?
たとえ相手が誰であれ・・・・
人であれ 獣であれ
昆虫であれ
やれることは決まってる
”普通”に戦う!
「普通に戦う」て。迷いを吹っ切ったようでカッコよくも見えますが
ただヤケクソになっただけのような気もします
ゴッ!ベキッ!ガコッ!バカッ!!
『か・・・ッ硬ェ〜ッ!まるで金属だ!』
飛び込み右フック。右のミドルキック。左のローキック。アッパー・・・刃牙の繰り出す攻撃はすべてがクリーンヒット
しかし相手は人間サイズの外骨格生物。その硬い外皮の前に、まともなダメージは通らない
・・・っていうかバカか刃牙。眼ェ殴れよ。眼!
的はデカくて狙いやすいわ、ダメージは確実に通るだろうわ。最高の弱点剥き出しじゃん
お前夜叉猿と闘った時だって耳にパンチしたり喉にパンチしたりしてんだから。気付くだろ普通
でもヤルッ!
なにが起こってもヤルッ!
なにも起こらなくてもヤルッ!
弱点も急所もクソもねェッ!
ヤレることをやるッッ!!
なんと巨大カマキリ相手に飛びつき腕ひしぎを仕掛けた刃牙。見事グラウンドに捉えます
『とった・・・カマキリの逆関節・・・・人間が!』
「バキさん折れェェ――――ッッ!!」
ここ以外ない!決定的チャンスに大声で叫ぶルミナ。渾身の力を込めて体重を後ろにかける刃牙!
いっけぇー!!!!・・・・・・・って
ピタッ
ブンッ!!
力こそパワーだー!(声・若本)
とブラックゼウスのように腕一本で刃牙をブン投げるカマキリ。うーむオリバさんと力比べさせてみたい
さながら野球ボールのように軽くぶっ飛ばされた刃牙はそのまま部屋の机に頭から激突
驚くべき昆虫の身体能力!人間はどう足掻いてもその性能差の前にはかなわないのか!?
『格闘技が・・・・通用しないッッ!』
額から血ィダラダラ流しながら驚愕に目を見開く刃牙で次号へ続く。はよ終わってくれ
第12話
戦闘形態
試合や決闘じゃあるまいし
こうまでしてやることじゃないッ!!
「もういいバキさん!やめよう!もうじゅうぶんだ!
バカバカしいよこんなことォッ!!」
妄想で壁に突っ込み、額から流血してフラフラになる刃牙。たしかにバカバカしいな
見かねたルミナが特訓の中止を呼びかけますが、もはや刃牙の耳には彼の言葉は届きません
カマキリの攻撃を大きくジャンプして回避し、その側面・背面に回り込もうとしますがカマキリは素早くこれを補足
打開策を見つけられぬ戦いに、刃牙の表情にも焦燥が浮かびます
『やっぱりだ・・・昆虫の複眼に死角は存在しない!
ヤツが何処を向いていようと・・・この部屋隅から隅までがヤツの視界
どこにも逃げ場はないッッ!!』
と、そこまで考えてハッと我に返る刃牙。いま自分は何と言ったのか
『”逃げ場”・・・・?
俺は何をしてる・・・逃げるためにここにいるのか?
アイツと闘うときにも
”逃げ場”を捜すのか!?』
カマキリごときにビビってるようであの親父と闘えるハズがありません。弱気になっていた自分を叱咤する刃牙
襲いくるカマキリの攻撃をかわしながら、無我夢中で攻撃を繰り出します
頭部への打撃は効かない―
締め技も効かない―
関節技はパワー負けして取れない―
ならどうすればいい!?
考えろッッ!
蟷螂と闘う――――
闘法!!!
オ リ ジ ナ ル
”トスッ!”
瞬間。刃牙がむやみやたらに繰り出した攻撃のうち一発がカマキリの喉あたりにヒット
今までの硬い外皮とは違い、その感触はこの戦いで刃牙が初めて感じた”手応え”だった
『今の・・・ヤツの首の下に感じた柔らかな感触・・・
使った打撃は・・・・・・
これって・・・・・・』
あーこれは意外というか漫画の常というか。展開を予想した読者は結構いるんじゃないでしょうか
『目には目を歯には歯を』
ならば
カマキリに対抗するには・・・
カマキリだ!
刃牙、巨大カマキリ相手にまさかの『蟷螂拳』!
次号、巨大カマキリVS刃牙カマキリ!でいい加減決着してくれ
第13話
好機
格闘技の世界は野蛮だ。他の競技にはあり得ない考え方が存在する
格闘技にはあって、他の競技の存在しないもの
それは―
”どっちが強いんだ?”
野球とバスケットボールが戦うなんてことは絶対にあり得ない
でも格闘技は違う
ボクシングVS柔道 空手VSプロレス・・・・
異種競技とも戦える
異種生物とだってヤルッ
冒頭、ルミナの語る「格闘技」の概念から入った今週のバキ。小学生のクセになかなか物事の本質を見てるな
なるほど言われてみれば確かに。異種間で「どっちが強いか?」の白黒をつけられるのは格闘技だけです
人間の強さの探究心はどこまでも深く―
異種生物からついには想像上の巨大な昆虫へと
そしてとうとうバキさんは
異種の世界から一周回って
同種格闘の世界へと踏み込んだ
板垣先生一周しちゃったよ
言わんとする意味とか雰囲気は通じるんですけど。どうしても言葉的に笑ってしまうぞ
というワケで異種対決を飛び越えてしまった刃牙カマキリVS巨大カマキリの戦いへゴー
疾風の如き速さで翻る刃牙の蟷螂手。巨大カマキリの攻撃をかいくぐり、その喉下を的確に刺突していく
一撃くらう度にビクンビクンと震えてのたうちまわる巨大カマキリ。刃牙の攻撃はバッチリ効いてます
敵が硬い鎧に身を包んでいるのなら、鎧の隙間を狙えばいい
外骨格生物を打撃で仕留めようとするならば。狙うポイントは硬い皮膚ではなく、その節々だったわけだ。そのための蟷螂手
近づいてる・・・
「見たかルミナ。こいつらは昆虫界に天敵がいない
攻撃というものを受けたことがない
攻撃はバツグンに強力で巧いが防御はからっきし―」
ご丁寧に入るバキの解説。天敵のいないカマキリはハンターとしては優秀だが、身を守る手段に関してはド素人なのだ
痛みにのたうち、恐怖に後ずさりするカマキリ。さっきまでの苦戦が嘘のように悠然と間合いを詰める刃牙
終わりが近づいてる
決着を確信するルミナ
バキさんの勝ちだ!
猛然と飛びかかるカマキリ!
これを受け、回避行動をとる刃牙のムーブメントは・・・・・・
なにィー!!!!!
両腕を翼のように優雅に広げ、空中に飛び上がって回避!
『こッ・・・この動きって・・・・!』
鷹爪拳!?同種対決じゃなかったのかよ!蟷螂拳どこいった
カマキリの頭上から何か大技を出そうとした刃牙で次号に続く。カマキリ戦ようやく次号で決着ぽい
第14話
同種から捕食種へ
さながら優雅に翼を広げた鳥のごとく。ジャンプ一番カマキリの攻撃を軽やかに回避する刃牙
先週の引きだと空中から何か大技出しそうな感じでしたが、そのままふわりと着地。ただ回避しただけか
『な〜んか見えてきた・・・難攻不落と思われた完全格闘家
そのたたたずまいのあちらこちらに・・・・つけいる隙・・・
その動きのあたらこちらに見える・・・・
確かな弱点ッッ!!
慣れたのか この闘いに・・・ッッ』
猪のように突進してくるカマキリ。しかし同じパターンの攻撃など刃牙に通用するハズもなく
再び華麗なジャンプでこれを回避すると、今度こそ空中からの反撃を叩き込む!
”メコッ!!!”
顔面に頭突き!ひるんだカマキリの首を両脇からグサリと突き刺す蟷螂手
更にそこから三度ジャンプするや、天内悠ばりの空中連続蹴りだ!
バキさん―変化った
表情が―なんか余裕・・・
動きが―なんかアブなっかしくない
それはもう蟷螂と蟷螂と言うよりは
もっと別の何か―そう
先週の時点で既に形成優位には立っていた刃牙ですが。ここに来てその動きは更に変化
巨大カマキリの攻撃をまったくよせつけず的確にダメージを与えていくその姿は、同種対決と言うよりは―
鳥VS昆虫を見ているような―
鶴になりました。ホアー
なんじゃこりゃ。どうやらもう一周してきたようです刃牙
「昆虫界」には天敵のいないカマキリですが、それ以外となれば話は別。鳥さんなどは捕食者の代表格です
あんなにも強暴だったカマキリも今は逃げてばかり―
バキさんはますます余裕になって―
勝負は決した。何をやっても勝てないカマキリは、もはや天敵に怯えて逃げ惑うだけの”獲物”
さっきまで妄想カマキリを「見上げて」いた刃牙の視線は次第に低くなり、やがて床の上にまで落とされた
「ルミナ。弱点が見えちまえば100キロも実物大も一緒だ」
いやぁ100キロと実物大は違うだろ
というワケで。ようやくシャドーカマキリ戦 終・了!
刃牙がイメージの力を解いた瞬間に化物カマキリの姿は煙のように消え、残されたのは実物のカマキリ一匹
虫カゴに戻してやろうと手を伸ばす刃牙。その指に挑みかかるカマキリですが・・・・
「ハイハイ。よ、よ、ハイ、ホイ!」
はえー!
しかしまるで赤子をあやすかのように。挑みかかるカマキリの攻撃を軽やかにいなす刃牙の指
なるほど「実物も100キロも同じ」とはそういうことか。今の刃牙には「対カマキリ」の闘いが完全に備わっているのだ
その一連の動きを見てゴクリと息を呑むルミナ。勇次郎戦争第一戦「刃牙VS巨大カマキリ」
文句なし―バキさんの
完全勝利だ
虫カゴの中に戻されるカマキリ。ニッコリと微笑む刃牙で勇次郎戦争第1カード終了。長かったなー
さて次なる刃牙の相手は?今度は人間にしてくれよって期待して次号へ続く!
第15話
鬼の笑み
「ええ。それはもう当ホテルのプールをお気に入り頂いている様子で」
「時速20キロで流れる殺人プールをか?」
冒頭、ここはどこぞの避暑地でしょうか。山奥にたたずむモダンな雰囲気のホテルを訪れたキャプテン・ストライダム
ホテルの支配人らしき人物との会話で飛び出した単語はなんとも物騒なシロモノだった。”殺人プール”とはこれ如何に
「いやいやそのような滅多な!それは増水時のみの事でして!
普段は時速4キロを越えた時点で遊泳禁止とさせて頂いております。・・・あの方以外は」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!
なんじゃこの馬鹿プールは
滝。滝の流れを利用した流れるプール。そのアイディア自体は良いんですけど近すぎるだろ
「自然を利用していると言えば聞こえはいいがな」
「正直を申し上げますと完全な設計ミスでして・・・喜ぶのはあの方だけでございます」
やっぱり設計ミスだったのか。姉歯の仕事か
「・・・”あの方”の姿が見当たらんが?」
「潜水中かと」
「この激流の中をか!?」
うねりをあげる激流の底を思わず覗き込むストライダム。すると水飛沫とともに水上に飛び出す黒い影!
うわー!なんだこのUMA
言わずもがな「地上最強の生物」範馬勇次郎。時速20キロの殺人プールで遊泳中
トッキューの訓練でも流速5ノット(およそ時速9キロ)だからして、20キロという数字はおよそ人間の域を超えてます
「かれこれ1時間ほど上がっておりません」
「時速20キロの中でか・・・最も消耗が激しいバタフライだぞ
これは蝶というよりは鷹・・・いや。まるでマグロだな」
「マグロというよりはシャチかと」
”ドバァッッ!!”
一際高く水面上に飛び跳ねた勇次郎はそのままプールサイドに着地。どんなジャンプだ
おもむろに水中メガネを外すと、旧知の友に一瞥くれて口を開くのだった
「バケーション中だぜ。なんの用だストライダム」
「体重100キロを超えるカマキリ・・・まったく天才だなあの子は
確かにあらゆる猛獣も敵うまい。こと格闘に関しては発想の次元が違う」
ホテルの部屋に戻り、ストライダムから刃牙のイメージトレーニングについての報告を受ける勇次郎
恐竜サイズのアフリカゾウを仕留めた父親に対し、エイリアンのようなカマキリを仕留めたその息子
まさに規格外親子。もしこの世に勇次郎に勝てる人間がいるとしたら、それは息子・刃牙をおいて他には・・・・・
と、ストライダムが思いを馳せたその時!
「エフッ エフッ エフッ!」
突然むせ返ったように咳き込む勇次郎。いったいどうしたんでしょうか。まさか何かの持病が?
「ハハハハハハハハハハハ!!!」
って、この怪獣人間が病気になんぞなるハズもなく
ソファの肘掛け部分を派手にぶっ壊しながら狂ったように大笑いを始めました
「想像上のカマキリだとォ!?アハハハハ!」
顔すげえ
ひとしきり笑い終えると、やれやれというように口を開く勇次郎。その口調にはあからさまな嘲りが
「百聞は一見にしかず。百見は一触にしかず
殺されもせぬ。喰われもせぬ。いかに巨大化しようが想像は想像
実物の仔犬にも劣るシロモノよ」
勇次郎超正論。所詮イメージトレーニングだしな
息子の激闘も一笑に付す!未だ揺るがぬ父の背中で次号に続く!