16話
1963年11月22日 アメリカ合衆国テキサス州ダラス
当時生まれていない若者でも誰もが知っている世界的・歴史的大事件がこの日起きた―そう
当時の大統領 ジョン・F・ケネディの暗殺である
ついこの間たけしの特番でもやったばかりのJFK暗殺。なんともタイムリーなネタで始まった今週のバキ
いったいそれがどうしたのかと言いますと。なんとあの事件から4X年経った11月22日の今日、
現大統領ジョージ・ボッシュがこのダラスでパレードを行うとの事
「忌まわしい歴史を塗り変える為」「ダラスのイメージの回復の為」などと本人はこのイベントに意欲的な様子
当のテキサス州民達の反応は割と冷ややかですが、ともかく世界的ニュースであることには違いありません
世界各国のマスメディアが殺到する中、4X年前と同じ日、同じ時刻に同じ場所へさしかかる大統領を乗せた車
当時の10倍以上の警備に守られ、笑顔で沿道の人々に手を振るボッシュ大統領・・・・・と、その時だった!
ザザァッッ!!
突然の電波混線。騒然となる現場。世界中に放送される衝撃映像
血相を変えてマイクに叫び続ける各国アナウンサー達。一体何が起きたのか
『誘拐事件です!たった今・・・・・
大統領が何者かに誘拐されました!
犯人は付近のレストランに立てこもった模様です!』
ダラスの悪夢再び。4X年の時を経て実現した大統領パレード、なんと今回は白昼堂々の誘拐劇です
衆人環視の中、屈強なSP達に警護された大統領をかっさらうなんて並の人間に出来る芸当じゃありません。きっと犯人はあの・・・
って勇次郎じゃねえ!
犯人はその息子
何やってんでしょうか刃牙。カマキリ戦を終え、いきなりアメリカに現れたと思ったら大統領誘拐とは
大統領を抱え上げて飛び跳ねるその表情は正直バカ面すぎます
「・・・・まだずいぶん若いようだが」
「18歳になったばかりです」
「ならばキミが行ったことへの十分な認識はあるハズだが」
「大統領及び誘拐及び拉致監禁。重罪ですね」
立てこもったレストランで大統領とテーブルで向かい合う刃牙。当然手荒な真似などするワケもなく紳士的です
それにしてもわざわざアメリカくんだりまでやってきてのこの凶行。いったい刃牙の目的は何なのでしょうか
「この建物は既に完全包囲されている。逃げ場はないぞ?」
「問題ありません。捕まるのが目的ですから」
「!?・・・・・・・・キミの要求は?」
なんと刃牙の目的は重罪で逮捕されることだと言う。ならばそれはいかなる理由なのか
「合衆国アリゾナ州立刑務所。そこへ収監してもらいたい」
「アリゾナ州立刑務所といえば・・・・ッ!」
刃牙の口から出たのは「アリゾナ州立刑務所」という言葉。あれれ?確かそこって・・・・・
「Mrアンチェイン ビスケット・オリバが棲む場所」
きた。”勇次郎戦争”第2戦のカードは
我等のオリバさんだァー!
今回は実物が相手ということで読者も一安心。2回も連続で妄想と戦われたらゲンナリするところでした
それにしても刃牙はオリバさんと戦うためだけに大統領を誘拐したのか。アホだろ。もう少し後先考えろよ
だってコレで世界的に有名な犯罪者になっちゃったし。とんでもない前科持ちになったワケだし・・・普通に考えたら
日本に帰ってもまっとうな生活できねえぞ。ゆで並の後先考えなさだぜ板垣!
オリバさんとは知らない仲じゃないんだから「アンタと闘いたい」ってエアメールでも出せば日本に来てくれるじゃないか
考えれば考えるほど納得できない見た目のインパクトだけ重視した板垣演出
まぁザコ囚人達を蹂躙するバキの刑務所生活なんかが見れそうなので、それはすごく楽しみではあります
「・・・もしその要求を飲めないと言ったら?」
「ソッコーあんたに暴力を加える。死なない程度にね」
脅し方も胴に入った刃牙の交渉術はほとんどヤクザ。ゴクリと唾を飲み込んだ大統領が溜息をつく
「大統領がこのザマだ。雄としては無力なものだね
負けたんだろうね、私は」
視線を落としてコーヒーを飲み干す大統領。それを見た刃牙がニッコリと笑って携帯を手渡した
「報せてやんなよ。外の人達が心配してる」
「大統領ッッ!御無事でッッッ!!」
外で待機していたSPに自分の無事を報せる大統領。「今すぐ金が必要なんだが」と付け加えます
「げ、現金を・・・?ハイ・・・・ハイ!」
大統領誘拐の身代金。何億ドル・・・・いや最低でも何百億ドルか?緊張して身構えた彼はその返答に拍子抜け
「じゅ・・・10ドルゥ? ハイ?
こ・・・・ッコーヒー代ィィィ!?」
範馬刃牙18歳。アメリカ合衆国大統領単身誘拐犯
犯行経費はコーヒー代10ドル。次号へ続く!
17話
道筋
アメリカにはペンタゴンが2つある
1つは言わずと知れた国防総省。またの名をホワイトペンタゴン
そしてもう一つはここ
建物の形が五角形ゆえ― あるいは
全米から犯罪エリートが集まるゆえ
以上2つの説があるが―
またの名をブラックペンタゴン
というワケで冒頭。大統領誘拐してはるばるやって来たましたアリゾナ州立刑務所
ほーブラックペンタゴンてなんてカッケーな。BGMダースベーダーのテーマが似合いそうな物々しい紹介です
「範馬刃牙・・・スゴい肉体だな。ここにはオリンピック級のスポーツマンも収容されているが
キミの筋密度は彼等をはるかに凌駕していると言えよう
筋肉・・・・と言えばキミはあの男に会いたいそうだね
世界で唯一刑務所を自由に出入りする囚人。アンチェイン」
滞りなく収容され、ありとあらゆる身体検査を受け終わった刃牙。係員との面接で早速本題を切り出されます
「はい」
「彼に会いたがる命知らずの腕自慢達は多いのだがね・・・正直オドろかされたよ
キミの名を告げた途端”すぐに連れてくるように”と」
お、意外と話が早い。オリバさんに直接会えるまで数週くらい消費するんじゃないかと思ってましたがスンナリです
だからエアメールの一通でも出せば済んだ事なのに(ry
10m間隔でブ厚いアクリル障壁で区切られた、特別凶悪犯罪者棟へと案内される刃牙。いるわいるわ強面だらけ
「兄ちゃんオイラの彼氏にならね!?ハムとレタス毎日わけてあげるから!」
刃牙が通路にさしかかるや壁を叩いて叫ぶ異常同性愛者の男。涎を垂らしながら虚ろな目で天井を見上げる男・・・
「目を合わせてはイカン」という看守の言葉の意味がよくわかります。さしもの刃牙も眉をひそめ、ゴクリと唾を飲み込む
しかしそんな恐ろしい囚人達よりも刃牙のド肝を抜いたのは、厚待遇なんて表現では到底納まらないオリバさんの扱われ方
「ここからは先はアンチェインのエリアになる。私の案内はここまでだ」
『こ・・・これでも監獄・・・!?』
最高級の絨毯敷きの通路。照明はシャンデリア。壁に飾られている絵画はどれも億は下らないだろうと思われる名画ばかり
花輪くんの屋敷かと見紛う豪華な廊下を進む刃牙。やがて突き当たりのドアがゆっくりと開き、中からあの男が現れた
「ウェルカム。ミスター刃牙」
擂台祭編以来の再登場!僕らのヒーローデコハゲ親父!!
”Mrアンチェイン(繋がれぬ者)”
ビスケット・オリバ!
刃牙収監→オリバさんと再会までで17話終了。非常に薄い。18話へ続く!
18話
第2の男
「友遠方より来たる また楽しからずや
まァ・・・座りな」
『ど・・・ッ どーゆー監獄だよ?』
オリバさんの部屋に通された刃牙はその広さと豪華さにただ唖然とするばかり。まるでどこかの国の王様です
「上等なコニャックが手に入ったんだ」とにこやかに酒を勧めるオリバさん。マジいいオッサン
「酒がダメなら最高級のジャスミンティーがあるぞ」、などと細かい心遣い。言い辛い目的に刃牙はなかなか口を開けません
「オリバさん・・・」
「”俺と戦ってくれ。今の俺にはそれが必要なんだ”か?
親父とやるそうじゃないか。それで俺を練習台にか」
「・・・おっしゃるとおりです」
ジョセフ・ジョースターのようなセリフ先取り。刃牙の目的などオリバさんには端っから最初からわかっていたのだ
おもむろに取り出した葉巻に火をつけながら更に続けます
「バキよ。俺ァここのナンバーワンだぜ。早い話がここで一番ケンカが強え
全米の悪党4071名が集まるここアリゾナ刑務所・・・4070名が俺の首を狙ってる
わかるかい”ボウヤ”。ボウヤは今日プロテストを受けたばかりの練習生
いきなり世界チャンピオンとデビュー戦ってワケにはいかねェ」
刃牙にはまるで甥っ子のように優しく接してくれるオリバさんではありますが。この辺に関しては譲れぬルールがあるのか
自分と闘いたいという刃牙の願いに対し、「物事には順序って物がある」とこれを拒否します
しかし刃牙とて親戚のオッちゃんちに遊びに来るために重罪を犯したワケじゃありません。ハイそうですかとは引き下がれない
「ボクシングじゃねェんだよ。今はケンカの話をしてるんだぜ?
あなたの最大のミスは俺をこの部屋に入れてしまったことだ
御免ッッ!!!」
”ベチィィッッ!!!”
まったくの無防備で葉巻をふかすオリバさんに対し、半ギレで不意打ちともいえる渾身の顔面パンチを見舞う刃牙
顔面超めり込み
自分の倍ほどもあるへヴィウェイトの相手も打撃で軽く沈める刃牙の攻撃力。読者の誰もが知るところですが・・・
「まァ落ちつけよボウヤ」
ぷふぅーっと、笑顔で刃牙の拳に煙を吹きかけるオリバさん。完全ノーダメージ
SEXパワーアップと毒から生還パワーアップでかなり強くなってるハズの刃牙なのに
この人はまったく強さの底が見えません。こうしてバキと比較してみると龍書文がどんだけ強かったかわかりますね
とりあえず体重100キロの蟷螂なんぞとは比べるべくもない強さをにじませるオリバさん。流石は俺達のヒーロー!
ビビって思わず拳を引っ込めた刃牙に対し、オリバさんは痛みなどそぶりも見せずに言葉を続けた
「来週・・・俺はファイトする。相手は4071名のナンバー2」
「―――ッ!?」
「バキよ。お前は今日その男の棲む部屋に入る」
アリゾナ刑務所に存在する謎のバトルイベント。N02の男はオリバさんと戦える権利を得られるというのか
そして今日刃牙が入れられる房は、その男と同室だと言う
ここの”ルール”は看守が優しく教えてくれるだろう
だが―お前が本当に知らねばならぬのは―
受刑者間にだけ存在する―
”掟”だ!!
規則よりもまず「掟」を知れ!そのアドバイスの意味とは!?
範馬刃牙、アリゾナ刑務所編スタート!
19話
唯一の自由
『ここが―俺の監獄・・・』
ナンバー2の男が棲むという房に相部屋にされた刃牙。消灯時間が過ぎ、暗くなった部屋を注意深く見回す
5つあるベッドのうち、2つが空きベッド。自分も含めるとこの部屋の囚人は全員で4人ということか
と、その時。寝ていた囚人の1人がむっくりと起き上がると、刃牙に向かって話しかけてきた
「バキ・・・」
『お、俺の名を・・・ッ!?』
何故かバキの名を知る囚人!この男がナンバー2なのか?ならばその正体とはッ!?
「ア・・・ッ アイアン・マイケル!」
「アイアン・マイケル!」
「アイアン・マイケル!」
「アイアン・マイケル!」
「アイアン・マイケル!」
またお前か
またお前か
またお前か
またお前か
またお前か!
もうすっかりフェイント野郎と化した元世界へヴィ級ボクシングチャンピオン。アイアン・マイケルその人です
当然刃牙のイメージなどではなく本人。何をやらかしたのかは知りませんがここアリゾナ刑務所にブチ込まれていました
「マイケル。ナンバー2って君のことだったんだ」
「・・・・・チャンピオン。言葉には気をつけるんだ」
思わぬ顔見知りの登場に緊張の糸も弛緩する刃牙。しかしその言葉に対し、マイケルは真剣な面持ちでこう返してきた
『バカを言うな。俺はナンバー1さ!』
この男の性格ならば、この台詞の後に続くのはこんな言葉のハズ。刃牙がそれを予想してニッと笑いかけた瞬間・・・
「俺などベスト10にすら入っちゃいねェ」
「・・・・ッッ!?」
思いもかけなかった返答。なんと元へヴィ級王者が、ここアリゾナ刑務所の腕っぷしランキングではベスト10圏外だと言う
「もっと言うなら俺はここのランキングとは無関係だ。早死にしたくねェからな」
いくら脇役とは言え。地下闘技場闘士として、あの最大トーナメントにも出場したほど男がこうまで怯える刑務所ランキング
オリバさんに次いでそのナンバー2に座る男とは果たしていったいどんな人物なのか
「おしゃべりはその辺にしておかねば。ミスター2に触れるぞい
眠っていはいても・・・全て”聞いて”いなさるのだからな」
2人の会話で目が覚めたのか、もう一つのベッドから起き上がった小柄な爺さんが釘を刺す
ほのめかされた『部屋にいるナンバー2』の存在に、弛緩していた刃牙の緊張が再び戻ってきた
と、同時に部屋の隅のベッドがもぞもぞと蠢き、毛布の中からニョッキリと突き出す長い手足!
でけェ――――ッ!!!
すやすやと眠る4人目の囚人は、まるで安藤さんかリーガン並の巨漢。この男がナンバー2なのか?
とりあえず寝返りをうっただけで起きてくる気配はない巨漢。爺さんはホッと胸を撫で下ろして刃牙に告げた
「もうおやすみ。お前さんには―今夜が最後の安息になるでな」
ヂリリリリリリリリリリリリ!!!
刑務所の朝は早い。けたたましくなる起床のベルで次々と目を覚ます囚人たち
刃牙も弾かれたように飛び起きる。気になるのはもちろんあの巨漢―ナンバー2!
立ったらもっとでけェ―――ッッ!!
ハチャメチャなノッポさんです。刃牙の目測では身長2m50cm以上あるとか。デカすぎだろ
アリゾナ刑務所に収監された犯罪者にしては穏やかな顔立ち。なんかキリストみたいね
「廊下に出なさい。服を着てね」
「今ここで仕掛けるか?」刃牙が身構えようとした、しかしその次の瞬間だった
なんとノッポさんが部屋の隅っこの清掃用具入れに向かって朝の挨拶を
「2・・・・」
「え!?」
驚愕する刃牙。この巨漢がナンバー2ではなかったのか?いやそれよりも清掃箱って?
バンッ!!
何がなにやらワカらぬうちに勢いよく開く清掃箱の扉!
「グッドモーニン。ミスターバキ」
中から現れたのはヒゲの似合う大変ハンサムな中年!まるでイタリアあたりの映画俳優のようなナイスガイです
清掃箱の中で眠る変人・ナンバー2登場!
おー。なんだよ面白いじゃないかアリゾナ刑務所編。カマキリ編の100倍は面白えよ
一癖も二癖もありそうな謎の男を相手に、刃牙は?次号に続く!
20話
監獄と地獄
「グッモーニンミスターバキ。歓迎するよ」
刃牙の前に姿を現したミスター2。清掃箱の中で眠る変人にして、無精ヒゲとバンダナがよく似合うナイスガイ
笑顔超爽やか
およそ凶悪犯罪者とは思えぬ表情を見せる2。新入りの刃牙にも優しく接してくれるいい人ぶりです
「キミが大統領ボッシュにしてのけたこと。心から称賛したい
ヤツの息の根を止めてくれたらもっとパーフェクトだったがね。ハハハハ
ワカらないことがあったらなんでも聞いてくれ」
「・・・なぜ清掃箱に?」
おそらく全国の読者がなにより知りたかったであろう事を一発目で聞いてみる刃牙。2は笑みを湛えたままこう答えた
「戦士ウォリアーだからね
横になりたきゃ・・・死んでから存分に楽しんだらいい」
よくワカらんがとりあえず深い返答だ。大統領を憎んでたり、自分を戦士と呼んだり・・・この人もしかして革命家か何か?
掲示板で「2がチェ・ゲバラに似てる」という書き込みがあったが、案外的を射てるかもしれん
ゴクリと唾を飲み込んで更に続ける刃牙。本人を目の前にして、その最大の目的を切り出しました
「もうひとつ。この場でアンタをブッ倒したら俺が2になれるのかな」
ルーキーの爆弾発言に凍りつく先輩ルームメイト3人。しかし当の2本人は穏やかな表情を崩さぬままで・・・?
「死ぬにはいい日だ」
普通に怒った
あんま調子こいてんじゃねェこのガキ。と。穏やかな顔から一変して”ナンバー2”の表情を垣間見せる
ナンバー2の実力や如何に?まさに房の空気が一触即発となったその時
「貴様等どこのお嬢様だァッ!パーティーの仕度でもしているのかァ!
モタモタしやがってェ!蹴飛ばされてェかウスノロどもがァッ!!」
朝の集合に遅れた刃牙達の房に怒鳴り込んできた看守。刃牙VS2の初機会はお預けとなってしまいました
「言うまでもないが貴様等は人間のクズだッ!喋る権利すらないッ!
私語は厳禁!規律違反は重罪!警告なしの即銃殺だ!」
早朝から警棒をブンブン振り回し、海兵隊の入隊式のような罵声を浴びせつつ囚人達に気合を入れる看守達
シャバでは怖いもの知らずで我を通してきた悪党達も、ここアリゾナ刑務所の厳戒態勢の中では借りてきた猫になるしかありません
「自由は何一つない!それが貴様等の人生だッ!
生きる方法はただ一つッ!不自由に徹しろッ!!」
ってアレェ?なにこれ
「貴様等に自由は一切ない」という鬼看守の訓示が飛ぶ最中、その胸ポケットからタバコを奪うミスター2
そのまま眼前で火をつけ、堂々とふかし始めました。すぱー
『バカな・・・なんで囚人がフツーにタバコ?』
ミスター2の行動をまったく咎めない看守達。まるで彼がこの場に存在していないかのような黙認ぶりです
「今日の朝食なに?」
「ポークビーンズです」
タバコを咥えたままマイケルに朝のメニューを聞く2。小さな声でそれに答えたマイケルでしたが・・ドガッ!
「私語禁止と言ったろうがァッ!!」
怒号とともにマイケルの顔面をブン殴る看守。可哀想に
「まいったなァ。ポーク苦手なんだよな」
ボリボリと頭を掻きながら呑気なことをぬかす2。なんとも言えない愛嬌があって魅力を感じるキャラクターね
そんなワケで場面は朝の食堂へと移りますが、看守達の2へ対する態度はここでも異様さを極めます
皆が同じメニューを食う中、たった一人だけ特別に作ってもらったオムレツ
しかしそれに関して1000人以上の受刑者は勿論のこと、看守の誰一人としてクレームをつける者はいない
「ねェ、拳銃変えた?前はリボルバーだったよね?へぇ・・・オートマかぁ」
看守に親しげに話しかけ、事もあろうにホルスターから拳銃を抜く2。看守の血の顔面からさーっと気が引く
チャキッ!
目にも留まらぬスピードでその銃口を看守の額に押し付ける2。いったいイキナリ何を?
「食堂に蝿はイケナイ・・・」
おおびっくり
看守の額に停まった蝿を拳銃の銃口で捕まえる早技。銃はすぐにホルスターにしまいました
「外で放してあげてよ」
そして捕まえた蝿を殺さず、外に放してくれという博愛。刃牙に対して殺気を見せた2ですが、基本的には優しい人間なのか
登場第2回にして、その底知れぬ実力と愛嬌のある振る舞いで読者を魅了するナンバー2。そして
その日最大の事件は彼の向かいにいる男が放った
見るからに強そうな大男。次号、コイツが2に粉にされる!その実力に注目せよ!
21話
自由の種類
「サムよ。悪いんだが席を譲ってもらえんかな?」
「フフ・・・ジイさんの頼みとあっちゃあな」
「ありがとう。アンタのことは覚えておくよ」
1人黙々と朝食を口にする刃牙。そのテーブルにトレーを持ってやってきたのは、あの同室の小柄な爺さん
刃牙の隣で飯を食っていたスキンヘッドの男・サムに声をかけ、その席を譲ってもらいました
イカスぜサム!
凶悪犯罪者のクセにお年寄りには優しいナイスガイ。エキストラでいいからまた再登場してほしいぞ
「2のほうを見てみな。向かいに座る男・・・挑む気だ」
刃牙の隣に座った爺さんは飯を食いながら奥のテーブルに目線を投げる。2の実力が見れるとあって刃牙も注目です
「デカいッスね」
「君の国の国技大相撲出身だ。総合格闘技に転向して僅か数試合で王座に上り詰めている
その馬鹿力を路上で発揮しちまってここに来た。罪状は傷害致死」
身長2m超えの巨漢。とりあえず経歴はジイさんが説明してくれましたがあんま強そうじゃねえな
「”ミスター2”。そう呼ばれてるんだって?
アンタが2と呼ばれるならとりあえず俺は1stとでも名乗るか」
身の程知らずキター(゜∀゜)ー!
ここアリゾナ刑務所に君臨する「1st」の存在さえも知らんとはなんたるザコ。全身からやられオーラ迸ってます
「使いづれェ・・・」
自慢の馬鹿力で普通のスプーンを先割れスプーンに大改造。あーこれはちょっと凄いな
「お前もすぐにこうしてやるぜ」みたいな面で勝ち誇る大男ですが、この一触即発の空気に周囲の囚人達はまるで無関心
「・・・周囲の反応は冷たいッスね」
「ナニが起こるかをみんな知っているからね」
スプーンを素手で割ってみせた大男のパフォーマンスに対し、我等がミスター2はいかなる態度で返答するのか?
ってなにィこれは―――――ッ!?
スプーンがプラプラだァー!(違
棒状の物体を上下に動かすとそう見える、残像を利用した目の錯覚。小学生の頃に誰でも一度はやったアレです
「ホラ・・・こんなに柔らかい。クニャクニャだ」
「おい・・・!」
宣戦布告をふざけたジョークで返された大男。額に血管を浮き出させ、思わず掴みかかろうとしたその瞬間!
今度こそ何ィ―――ッ!?
スプーンがグニャグニャだァー!!
おー凄い。なんの手品だこれは。2が一際大きく手を振った瞬間、スプーンの柄は見ての通りの複雑屈折!
言い知れぬ恐怖にかられ、反射的に星一徹のごとくテーブルをひっくり返す大男。ガッシャーン!!!
ニコニコ笑いながら座っていた2はそれを避けることもせず、顔面からスープやらソースやらベチャベチャにひっかぶってしまいます
「手品じゃなく・・・力で乗り切るしかねェなミスター2」
「俺を倒して―そして何を手に入れる?」
「不自由な中での―せめてもの自由」
2になって何が欲しい?という問いに、自由が欲しいと答えた大男。2の特別待遇は確かに「自由」と形容して違わぬ物ですが―
「ここに居る者にとって唯一の楽しみである食事。君はそれを奪った
重罪だ。君から自由を奪う」
騒ぎと収めようと走り寄ってきた警官から、目にも留まらぬ速さで拳銃を奪い取るミスター2
大男に対して威嚇するのかと思いきや、なんとグリップを彼に握らせ、その銃口を自分の額に押し当てた
「君が自分の相手をするにはこれくらいのハンデが必要だよ」と言わんばかりの2の挑発的行動
「てめェ・・・俺が撃てねェとでも」
看守達の見守る中、「どうせ撃てっこない」という思惑によるハッタリ行為なのか?しかしなにせここはアリゾナ刑務所
キレたら後先考えない連中だからこそここに居るのであって
怒り心頭に達した大男は激情の促すままにトリガーに指をかけた!!
その直後
エフェクトに稲妻飛び散る見るも強烈な金的蹴り!!
銃に意識を集中させた隙のスーパークリーンヒット。たまらずもんどり打って床を転げまわる大男
「カワイそうになァ・・・
引き金を引く以外に自由がない。2の思うツボじゃ」
恐るべし!百戦錬磨ミスター2の手管!
大男は2に銃を手渡された時、既にその自由を奪われていたのだ
「死ぬにはいい日だ」
”自由”を知るゆえ”不自由”も知り尽くす!
ミスター2、その実力底なしッ!
次号へ続く!
22話
挑戦権
「拳法・・・?」
「イヤ。2は流儀を持たん」
相手の心理を巧みに利用しての金的キックを決めた2。爺さん曰く、2の戦闘スタイルは流儀を持たない無形だという
その言葉を裏付けるように、金的の痛みから立ち直った大男が2に放った言葉とその返答
「テメェ・・・何を使いやがった!」
「なにって・・・ン〜・・・・”相撲?”」
怒り心頭でにじり寄る大男に対し、2は今使ったのは「相撲」の技だと何食わぬ顔。彼にとって技などあって無いものなのだ
「貴様・・・俺に相撲で勝ったとでも言う気か?」
「もちろんさっきのは相撲じゃない。キックしたからね・・・でも
キミが望むのなら相撲で勝負してもいい
看守くん、彼と食後の運動をしたい。体育館を借りるよ」
プライドを傷つけられていたく憤慨する大男に、なら相撲ルールで決着をつけようじゃないかという提案。どうでもいいんだが
今使ったのは相撲なのか相撲じゃないのかハッキリしろ
なかなかに言動が前後不明です2。まぁ彼に限らずバキキャラには多々あることですが
「おあつらえ向きの円があるじゃないか」
監視役の看守達3人を引き連れ体育館へと移動した二人。バスケットコートのセンターサークルを土俵に見立てるつもりか
こんなちっちぇえ土俵なんかねえよ!2は相撲見たことないんじゃないかとツッコミたい
「彼等は気にすることはない。ただの野次馬だ
大相撲アリゾナ刑務所場所・・・DOSKOI!」
蹲踞の姿勢もとらずに大男に組み付いた2。しかし相撲で食っていた彼にとって、素人の2の取っ組みなど屁のようなモノ
「これは・・・もう始まってるのか?」
あまりにも肩透かしな手応えに気の抜けた台詞を吐く大男がちょっと可愛いぞ
「ハッケヨイだっけ?」
「ワカッた・・・」
『お前は大相撲を嘗めたッ!』
と死刑囚編の烈先生の如く牙を剥く大男。2のズボンをがっしと掴む両上手!
もはや勝負にすらなってません。このまま2は大根みたいに引っこ抜かれてブン投げられて・・・・ブン・・・
上がらないッ!!!
「動かせるハズがない
ただ地面に立っているだけの君達ではね」
まるで魔法のような2の身体。大相撲で食っていた男が、自分より遥かに軽い体重の素人を投げられない!
「地面に立っている”だけ”」と相手を評する2。では自身はそうではないと言うのか?なんかカッケーぞ!
”パァン!”
2の掌打が大男の左耳を打つ。打ち込まれた空気はその鼓膜を破壊し、ここから2のトンでも技が炸裂します
画像とともに一連の動作解説いくぞ!
自分の長い髪の毛をクリクリとよじって小さな縄状にし
それを大男の左耳から挿入!敗れた鼓膜から内部へ!
ここで絶妙の力加減によって耳の中で髪の毛をほどよい具合に解き、
蝸牛やら三半規管やら、耳の中の大事な器官に
髪の毛がこんな風に絡まります
そしてブチッと。うわスプラッタ
ありえねえ絶技によって大男の内部を破壊する2。すごい!本当にすごいぞ2!
でもこれは相撲の技じゃねえぞ
「相撲で勝負しよう」と言ってわざわざ体育館くんだりまで来たというのに。まったく意味ねえー!!!
やっぱり言動が前後不明だぜ2!
三半規管を破壊されてバランス感覚を失った大男は、まっすぐに立っているのに自分が倒れかけていると思い込み、
起き上がろうとして自分から床へ倒れこんでしまって自滅で決着。そこで頭上から降ってくる2の勝利宣言
「勝負あり」
大胆にしてスマート!流麗にして苛烈!これが2の流儀!
次号へ続く!
23話
2
2の驚愕の魔技によって耳奥の器官を破壊された大男。自分の負けが信じられず、床に手をついて起き上がります
『技・・・どんな・・・張り手!?耳の中に何かが入って・・・?
俺が相撲で負けただと?認めるかよッッ!』
大丈夫、安心しろ大男。お前は相撲では負けてないから。相手の反則負けだから
再び挑みかかろうとした大男でしたが、三半規管を破壊された彼は既に歩行不能。前のめりにブッ倒れて勝負有り
まさしく「最小限の攻撃で敵の戦闘力全てを削ぎ落とした」2の戦いぶり。オリバさんや勇次郎のそれとは対極と言えます
朝の点呼の時のように。戦いを見張っていた看守の胸ポケットからタ堂々とバコを拝借して、スパスパふかしながら体育館を去る2
ひとり取り残され、耳の痛みに苦悶する可哀想な大男。すると看守の1人が彼にこう声をかけました
「ヘイ。こんな所でたった一人で何をしている?」
「・・・・・え?」
その後頭部に拳銃を押しつけ。まるで感情の感じられない顔でそう言ってのける看守
「見えるよな?あの看板」
【 NO WARNING 】
( 警 告 な し )
1人ってそんなバカな。アンタらも黙認したじゃないか!俺は2に誘われて相撲の勝負をするために・・・・ッッ!
大男が全てを理解した時はもう遅かった。看守達にとって2という人間は”居ない”事になっているのだと
「本来なら警告なしの即発砲だが。新入りのお前には大目に見て・・・
一言声をかけた」
お、大男ぉーッ!!!(号泣)
名前さえ明らかにされぬまま、なんと射殺されてしまいました。このクソったれ看守許せねえー
自分が逆立ちしても敵わない2には無視を決め込み、弱い大男に対してのみおよそ人間とは思えないようなこの扱い
このド外道は生かしちゃおけねェ〜ッ!テメエ松田さんか雪藤にでも殺されろ
体育館でアリゾナ刑務所の闇の部分が展開していた頃、食堂に戻ってきた2を出迎える刃牙
「やぁミスターバキ。マズい飯だっただろう?」
朝の無礼などすっかり水に流してくれたのか、初対面の時と同じ笑顔で話しかけてくれる2。いい人だ
「聞いたよ。実力No2だから2と呼ばれていると思っていたが・・・そうじゃない」
「その通り」
爺さんから聞いた”2”という名称の由来。それは単純にオリバさんに次ぐ腕力ナンバーツーという事ではなく・・・
「2とは二代目。ミスターアンチェイン・・・の二代目」
なんだってえ―――!!!
「2」は「二代目アンチェイン」の意味!面白くなってきたじゃないかコノヤロー
「初代がまだ健在だぜ」
「ミスターオリバの時代は終わりを告げた。皆もそれを望んでいる
彼のあのバカげた生活ぶり・・・実のところ刑務所の誰も認めちゃいない
武力だけで己の主張を通し続ける・・・オリバもボッシュも所詮はアメリカ人ってところか」
米国大統領ボッシュを引き合いに出し、「力だけで全て押し通そうとするアメリカ野郎」とオリバさんを評価する2
だから自分がオリバさんに取って代わるのだ、と。得意げな表情で説く2でしたが刃牙はハナっから喧嘩越しです
「ならアンタは違うのかい」
「喋りすぎるなァ 君は」
二度目となる刃牙の無礼な態度に、朝同様2の表情から笑顔がスーッと消える。まさに一触即発となったその時!
「私語禁止ィッ!!」
狂喜をたたえたアブない顔で刃牙に向けてすっ飛んでくる看守。若造を黙らせるべく渾身の力で警棒を振り下ろします
しかし相手は地下トーナメントチャンプ範馬刃牙。目にも留まらぬ速さで警棒を奪い取ると、2に向けこのパフォーマンス!
「この警棒・・・・
グニャグニャだァ・・・・」
先々週の2を真似てみせる宣戦布告!久々に主人公ぽくてカッコイイぞ刃牙
しかし余談であるが、画像の「ビ〜・・・ン」という擬音が電動バイブみたいでなんかイヤだな
「「「DONT MOVE動くな!!」」」
次の瞬間、拳銃を構えた看守5人に包囲される刃牙。にっこりと笑う2。とりあえずこの場は預けるといった所でしょうか
刃牙にとって拳銃を持った5人程度、勝とうと思えば勝てない相手ではありませんがここは大人しく従うのでした
「・・・・ハ〜イ」
かくして反省房へとブチ込まれた刃牙。両腕を背中に回され、指錠をはめられての拘束
身体が柔らかい刃牙ならなんて事はないんでしょうが。一般人からしてみたら相当ツラそうな体勢させられてます
「飯だッッ!」
と、その時。独房の重い扉が開き、差し込む光とともに食事をもった看守が・・・・・あれ?看守じゃない!
なんと食事を持って現れた人物はあの爺さん!
プリズンの掟を知る長老は刃牙に何を伝えるつもりなのか?2の更なる秘密が明らかになる次号へ続く!
24話
掟
はぐ・・・・もぐ・・・・ズズズ・・・・
食事を持ってきた爺さんに飯を食わせてもらう刃牙。なんで囚人に独房の食事運ばせてんだよ、と疑問に思いましたが
両腕を拘束されている囚人に飯を食わせてやるのに、看守達はわざわざ自分達の手を煩わせないという事なのでしょう
「食事はパンとカップスープのみ。ナイフもフォークも必要ない。そもそも―
こんな状態じゃスプーン一本使えんがな。初日からエライ目にあっとるな」
「あの男―何者なんスか?」
飯を平らげて一息ついた刃牙が爺さんに尋ねる。アンチェインを継ぐ者と言われる2・・・その正体は果たして何者なのか
笑いながら答える爺さん。それは―刃牙の予想の中にはまったく存在しなかった答えだった
「大統領さ」
「―と言っても誰も知らぬ国。かつては南米の一離島にすぎなかった
人口2万人にも満たぬ、小さな小さな国」
ほービックリ。なんと2は一般人が名も知らぬような小さな島国の大統領だったという
「本名ジュン・ゲバル
日系3世21歳―」
しかもモデルはマジでチェ・ゲバラなのかよ!
言われて見れば確かに似てますが。初登場の時点で「チェ・ゲバラに似てる!」と気付いた朋友は勘がいいな
それにしても21歳とは随分とまた若い。見た感じ30手前くらいかと思ってましたが・・・刃牙と4つしか違わないのか
「漢字はよくワカらぬが・・・たしかこんな字」
「純粋の”純”・・・」
「英語ではJ・ゲバルで通っておる」
正式フルネームは純・ゲバルだそうな。今後レビューの上では2と呼べばいいのかゲバルと呼べばいいのか
「もともとは盗みに恐喝・・・手の付けられん不良じゃった」
「よくあるハナシだ」
「よくあるハナシではない。ゲバルのやっていた不良とは路上ではない
海・・・・・早い話が海賊じゃな」
「・・・ッッかい・・・!?」
日本育ちの刃牙にはおよそピンとこないゲバルの素行時代。ビッケは海の子バイキング
近辺海域を通りかかる客船や貨物船を狙っては金品強奪を繰り返していたという荒くれ者ぶりです
「まァ・・・ここで終わるなら希代の不良少年ゲバル君の話でカタがつくのだが
17歳になったゲバルに転機が訪れた。島の独立を目指したのだ」
革命運動キター (・∀・)ー!
流石にチェ・ゲバラがモデルだけあります。メキシコに渡ってカストロっぽい人物とでも出会うんでしょうか?
「幼少期から祖父に武術の英才教育を受けていたゲバルは、手下にそれを伝授し始める」
カストロかけらも出てこねえー!
「流儀は無い」と言っていたゲバルですが。基礎となっているのは祖父から叩き込まれた日本の伝統武術のようです
昨日スーパージャンプ読んだばかりなので大豪院鐘鬼と煌鬼を彷彿してしまいます。真空旋風衝ー
「それを機に一味は武器の使用を禁止。青臭い正義感を振りかざしたワケではない
あくまで必勝の信念に裏打ちされたゲバルの計画
訓練は熾烈を極めた― 対徒手 対武器 対銃器 対火薬 ―
多数の犠牲者が続出しても自ら離脱を申し出る者はいなかったという
それほどにゲバルの作戦は必勝を実感できるものだったのだ」
お山の大将にすぎなかった17歳のゲバル少年は私兵達に己が武術を伝授。彼等を最強の戦士へと作り変え、期を伺う
「やがてメンバー全員の身体に傷痕が増えなくなった頃―
武器持たぬゲバル軍団が完成
ゲバルはただちに民衆へ独立を扇動した」
私兵隊の練兵を終え、ついにゲバル少年の独立戦争が幕を開ける!おお・・・なかなか引き込まれる話じゃないか
しかしながら、あまりにも若すぎる革命家ゲバルに民衆達は半信半疑。なかなか彼の言葉は彼等に伝わりません
そしてこの行動を誰よりも嫌がった人物―誰あろうアメリカ大統領ジョージ・ボッシュ
「なんとかならんのかね、あの島。独立の声が上がってるそうじゃないか」
溜息まじりに呟くボッシュ大統領。まだその反応にはどこか他人事じみた呑気さが感じられますが・・・・
事件はまさにその時起こった
いよいよ純・ゲバルの伝説が明らかに!彼はアメリカ合衆国を相手に何をしでかしたのか?次号へ続く!
25話
若き獅子
「空母でも出してさァ・・・島の上空をジェット機でさァ
2度3度往復してさァ・・・地上スレスレでシュパァーって
それでイッパツだろ。あんなちっちゃい島」
島の独立が気に入らないボッシュ大統領。独立運動を沈静させるために武力での威圧を計画してます
それにしても頭悪そうな顔だな
「お言葉ですがプレジデント。独立は基本的に尊重されるべき事柄です
リーダーと島民の考えが一致しているのであれば―」
「ジェームズ副官。ここは国民が見守るカメラの前ではないのだよ?空気読めっつーの」
穏健派のジェームズ副官が島の独立を擁護しようとしますが、暗君ボッシュはこの意見を5秒で却下
あまつさえ「空気読めっつーの」などとトンでもない暴言を
うーむ刃牙と対話した時は結構まともな男に見えたのにな。実はこんなどうしようもないヤツだったのか
「いいかね?これは2万人の国民が亡命するという事と同じなのだよ
世界の範たるアメリカ合衆国がそんな事でいいのかね」
独立とはつまり亡命と同義であると唱えるボッシュ。大将のこの言葉に後押しされてか、タカ派の大胆な意見が飛出します
「島へ軍を投入しましょう。メディアはどうにでもコントロールできる」
「レイ長官・・・キミには期待していたよ!これだよ
これこそが開拓精神だよ」
独立運動弾圧のどこがフロンティアスピリッツなのかワカりませんが。妙なカタルシスを感じて打ち震える大統領
思わず顔面にパンチ入れたくなるようなムカつく顔してます
と!まさにその時
「おやめなさい」
音もなく大統領の背後に立つ若い男!何者!?SPが拳銃を取り出そうとしますが、男はこれを大声で牽制します
「フリーズ!動けば大統領の首が360度捻転することになる
警護の3名は後ろ向きに壁に密着して両手を挙げたまえ」
「き・・・キミは・・・?」
「カモミール・レッセンと申します。あなたの身辺警護スタッフのひとり―そして
今話題に上がった小さな島の出身者。J・ゲバルの部下です」
ざわ・・・・・
件の独立指導者の部下が、今まさに大統領の命を握っているという電撃的状況。途端に緊張が走る会議室
「我々はささやかな独立を望んでいるだけです。どうか静かに見守っていただきたい」
「き・・・キミは今武器を所持していないが。つ、通用するつもりかね?」
ガタガタ震えながらも、丸腰のカモミールを相手に一応降伏勧告をしてみる大統領。しかし彼は平然とこう答えた
「アメリカ合衆国50州。現在私を含めて各州2名ずつの配備が既に完了しています
その全員が―たった一人で素手のままハイジャック、及び原子力発電所の奪取が可能です
勿論この私もね―ちょっと失礼」
会議室の大型モニターのリモコンをピピッと操作するカモミール。映し出された映像は更に場の空気を凍りつかせるものだった
「こ・・・これは私の家じゃないかッ!」
「えー、本日私はアラバマの農家出身の田舎者
G・ボッシュという人の家を訪ねてみました。おじゃましまーす」
「有名人のお宅拝見!」みたいなノリでリポーター役を務めるのは、誰あろう独立指導者J・ゲバル本人
突然の不法侵入者に表情をこわばらせる大統領夫人。見知らぬ気さくな兄ちゃんになつく、まだ何も知らぬ幼い子供達
「やぁボウヤ達。パパの事は好きかい?」
「大好きー!」
ゲバルがニコニコしながら夫人や子供達の肩を抱くと、もう大統領は恐怖でまともに画面を正視できません
「けッ・・・警備の者は何をしておるんだッ!!」
やられてました
拳銃で武装した屈強なガードマン達数人を相手に、徒手空拳で苦もなく全滅させてみせたゲバル
「ハイジャックも原発奪取も素手で可能」という、カモミールの言葉が嘘ではないことを証明します
「いかがだったでしょうかボッシュ邸
思い上がった人生を振り返り、己の盲点をかえりみる・・・無駄ではない気がします
それではまた」ブツン!
映像はここでストップ。顔面蒼白になった大統領にカモミールが笑顔で声をかける
「無論これはリアルタイムの映像・・・おわかりいただけましたかプレジデント
我々とアメリカは対等です
権利の侵害がない限り、あなたの安全は私が守る。お考えを・・・」
武器を持たぬ戦闘集団ゲバル軍団!その自由さゆえ、あらゆる場所に存在可能!次号へ続く!
26話
次世代
天下のアメリカ合衆国相手に兵器を持たず、肉体のみで喧嘩を売って島の独立を認めさせたJ・ゲバル
その単身の戦闘力は勿論、脅迫のアイディアからそれを成し遂げる行動力、部下を惹きつけるカリスマ・・・総てが桁外れです
「すごいな・・・だけどさ、それほどの実力者がなんで刑務所に?」
「ふふ・・・簡単なことさ。ここには誰がいる?そう
アメリカで一番喧嘩が強え男。ビスケット・オリバさ
兵器を持たずにG・ボッシュと対等な男―そんなオリバを仕留めてみせる・・・
ゲバルにとってはさぞかし魅力ある喧嘩だろう
『オリバと喧嘩してェ』そんな男がここにはゴロゴロしてる。アンタと一緒だよバキ」
ゲバルがこのアリゾナ刑務所に服役している理由。それは別段アメリカの罠にハメられたワケでも何でもなかった
アンチェインビスケットオリバとの喧嘩。自分と同じ理由に思わず刃牙の口元が吊り上がる
「素手の時代・・・だ」
「ふ・・・俺も最初は信じられなかった。しかしゲバルの言っていることは本当だ
とことんまで強くしちまった肉体ってやつは天下無敵
ナイフ一本、拳銃一丁持ってるだけでも金属探知機でひっかかるのに
マシンガンより強い男に反応するセンサーはない
武器を持たぬ限り。あらゆる機関への潜入が可能だ」
たしかに突き詰めれば理屈的には道理。生身で火器武装した人間よりも強い男がいるのに、それを防ぐ手段がないのだ
「鈍いアメリカさんもようやくそのことに気付いたんだろう。監視すべき3名を選出した
君の父、オーガことユージロー・ハンマ
アンチェインことビスケット・オリバ
そして ミスター2ことJ・ゲバル
驚くなかれ彼らは衛星偵察の対象になっている
本来軍事用のハズの衛星がこの3名の動向を絶えず監視しているのさ」
「・・・・ッはぁ〜・・・・」
あまりのスケールの大きさに思わずマヌケな溜息を吐く刃牙。なんと上記の3人はアメリカの軍事衛星の監視下にあるという
これでオフィシャルな観点でゲバルの強さを測る物差しが出来たっていうかいきなり3強の一角かよ
こうなるともう独歩とかガイアとか死刑囚とか空手界のリーサルウェポンは本当に過去のキャラだな
「地上数メートル以下という鮮明な画像で監視し続けている彼等―
その中の誰か1人でも時速4km以上で動いたとき、何が起きると思う?
半数以上の衛星が緊急作動を強いられる為、世界中のカーナビが70mもズレるそうだ」
「す・・・すげェ・・・」
「あぁ。兵器に守られた人間にとってはたまらぬ連中さ」
なんて傍迷惑な奴等だ
3人のうち誰かが少し走っただけで世界中のカーナビ座標が70mもズレてしまうという。たしかに「たまらぬ連中」です
カツン!
と、爺さんの話が盛り上がりに盛り上がったその時。楽しげな空気を一瞬で凍りつかせる足音が入室する
「なんの相談かな・・・?随分と長いハナシをしていたようだが」
鮮やかな手つきで警棒をクルクルと回しながら入ってきたのは強面の看守。冷酷な目で二人を睨みつけます
「い、いやコイツがちゃんと飯を食わねェんで チョット注意を・・・
ッ!!!」
咄嗟の作り笑いで状況を誤魔化した爺さんでしたが、非情な看守は問答無用で体罰を与えます。このド外道が
「私語は禁止・・・お忘れかね?
潰すか 削ぎ落とすか 叩き折るか・・・いずれにせよ厳罰だ」
目、鼻、前歯・・・と順番に警棒を押し当てて爺さんをビビらせる外道看守。当然黙って見ている刃牙じゃありません
スパン!と目にも留まらぬつま先キック!看守の帽子を吹き飛ばします
「厳罰はテメエだよ。ジィちゃんを痛めつけたところでよォ
アンタの髪の毛が生えるワケでもねェだろう」
両腕を後ろ手で拘束された状態ながら、堂々と看守に喧嘩を売る刃牙。驚きに目を剥く爺さん
始めはキョトンとした看守だったが、すぐに醜悪な嗜虐の笑みをたたえて警棒を再び回し始めた
「感謝するよ・・・私がこの仕事を続けてきたのは
心からこういうシチュエーションに出会いたかったからだ」
外道看守次号ボコボコ!
でもこの警棒の扱いにはちょっと目を見張るモノがあるので、両腕使えない刃牙は少しは手間取る展開も?
イヤやっぱどう考えても瞬殺以外ないか。こんなのに苦戦してたら世界ベスト3相手に戦えないつー話だわな
ハゲ看守のやられっぷりが楽しみな次号に続く!
27話
対峙
「間違わないでくれよ。仕掛けたのは君・・・僕は受けた方だ
君はその絶望的に不自由な体勢のまま僕を挑発した。「厳罰を与える」などと
しかも君は私の身体的欠点にも触れている」
「身体的欠点」て。想像以上にハゲを気にしていた看守萌え。ヅラかぶればいいのに
刃牙に対する凄まじい憎悪と、しかしそれと同時にこみ上げてくる笑いを堪えきれない看守
遠慮なく囚人を半殺しにできる名目が立ったからです。自慢の警棒捌きもテンションに応じてスピードアップ
「どーしたものだろう。遣いきれぬほどのこの憎悪・・・どーしたものだろうッ!」
”ベチィッ!!”
とか余裕かまして威圧しているうちに刃牙の先制キックがいきなり顔面ヒット
鉄製の扉にブチ当たって懲罰房から転がり出る看守。その後を追ってゆっくり刃牙が房から出てきます
「アンタらの顔潰すようで悪いんだけどさァ。こんなの俺にとっちゃ不自由でも何でもない
関節を外すくらい・・・こうやってホラ♪こうなっちまえばもう誰だって抜ける」
刃牙はこの体勢からいつでも抜けられたのだ。左肩の関節を外し、背中で拘束されていた両腕を同じ方向に揃える
あとは足を抜いて前に持ってくれば・・・と、「それはさせん!」とばかりに起き上がったハゲ看守が猛攻撃に出ます
「オワッと!」
鬼気迫るハゲ看守の警棒攻撃。手加減した足刀をスコン!とアゴに軽く当てる刃牙でしたが・・・これがマズかった
一瞬だけ意識がトンでしまったハゲ看守、そのまま柵を越えて吹き抜けに落下!
バッキャロー何やってんだこのハゲ!!
とばかりに刃牙超反応ダッシュ!いくら外道と言えど、こんな事で人間1人死なせるワケにはいきません
必死に差し出した刃牙の救いの手はギリギリセーフ。ハゲ看守の左手がなんとかそれを掴みます
痛い痛い痛い痛い痛い。見るだけで痛い
親指の指錠がついたまま両手を差し伸べた刃牙。ハゲ看守がそこを掴んだものですから、その体重はモロ親指に
金属製の指錠が激しく肉に食い込み、骨はミシミシと音を立ててきしむ。歯を食いしばってその痛みに耐える刃牙
「た・・・たす・・けて・・・」
絶体絶命の状況の中、自分の命を握るのは今までカスだゴミクズだと散々蔑んできた囚人
「助けて」と、震える声で口にしたハゲ看守の心中たるやいかほどのものか
「大丈夫。必ず助ける」
刃牙の頼もしい返答が熱い。うーんイカスぜ主人公
しかしその時、この緊迫した場面にやってきた第4の登場人物が刃牙に声をかけた
「なにもない。そいつからは何も返ってこない
アメリカ人だからな・・・」
ミスター2こと、J・ゲバル
必死で看守の命を助けようとしている刃牙に対し、「アメリカンなんか助けても何も見返りもねえよ」と非情のアドバイス
仮に看守がアメリカ人じゃなかったらゲバルも手を貸したんでしょうか。彼のアメリカ嫌いはどうやら相当根が深いようです
やがて握力が尽き、刃牙の手から滑り落ちるハゲ看守の手!しかし同時に、その瞬間は刃牙の手が自由になる瞬間である
”ガシィッ!”ぶおんっ!
ガッチリと両手でハゲ看守を掴んだ刃牙は、その並外れた背筋力と腕力で成人男子一本釣り!無事に彼を通路へ引き上げる
「俺はアンタと違う。アメリカ人だろうと誰だろうと助けるさ」 そう言わんかのように、無言でゲバルを正面から睨みつける刃牙
「フフ・・・人のいいことだ」
そんな刃牙の勇気ある行動を一笑に付し、その場を去るゲバル。残された3人は彼の背中を見つめるだけだ
「イヤァ・・・なんかだいぶ散らかしちゃって」
ゲバルが去った後。スープを撒き散らしたトレーやら、ハゲ看守の失禁跡やらで散々汚れてしまった通路
申し訳なさそうに頭を下げる刃牙に対し、ハゲ看守は意外な言葉を返すのだった
「イヤ・・・本日も異常なし
一部食物搬送用ワゴン転倒するも、私の個人的ミスによるもの・・・
それが今日の・・・私の日誌だ」
おおお。ハゲ看守がいいヤツに
「そいつからは何の見返りもない」そう言ったゲバルだったが。なんの刃牙は彼から強力な見返りを得た
厳しいプリズンの中で、ハゲ看守という味方を得た刃牙
で、ゲバルとはいつ闘るんですか板垣先生。サクサク進んで欲しい次号へ続く!