28話

徒手

カンッ!カンッ!!カンッ!!!
うだるような炎天下。荒野に道路を通す為の基礎工事に従事するアリゾナ刑務所の囚人達
その中には3日間の反省房生活を終えた範馬刃牙の姿もあった―

「よし。休憩ッ!」

「聞きましたよマイケルさん。来月出所るって」

出ました第3部に入ってからお笑いキャラと化した男。フェイント野郎アイアン・マイケル
清々しい労働の汗にキラキラと輝き、笑顔超爽やか
台詞がなくともビジュアルだけで十分に笑わせてくれる存在感。まったくすごい逸材だぜ

「え?狙ってる・・・って?」
「タイトルさ。統一へヴィ級タイトル

出所三ヵ月後・・・既に第一試合は決まってるんだ」

刃牙と一緒にランチを取りながら嬉しそうに話すマイケル。出所後すぐにリングに戻り、再び世界を狙うつもりだという
『俺はこの刑務所のランキングとは無関係なんだ』
再会したあの時、マイケルの言った言葉。それはただ単にゲバルやオリバさんを恐れていただけではなかったという事か
「たしかに。今のあなたは刑務所の喧嘩ランキングなんかに関わっていられない」
「そのタイトルにも興味がないワケじゃないんだが・・・
ブルックリンには俺のチームが待っていてくれているんでな」

「迷うまでもない
世界があなたを待っているんだもの」

罪状が謎のままなのが気になりますが
かつての栄光から刑務所送還という挫折を味わい、しかし今再びその栄光を取り戻さんとするマイケル
刃牙はそんなマイケルを激励し、彼の統一王座を強く応援するのでした





しかし青空の下でそんな爽やかドラマが展開していたその頃。アリゾナ刑務所に溢れ出す闇の部分
所長が机の上に置いた小切手を見て驚嘆の声を上げる補佐官。なんと額面には200万$という凄い数字が
「所長これは・・・」
「我がアリゾナ刑務所への寄付金だそうだ
IBA・・・国際ボクシング協会会長ボブ・マーフィ氏本人から昨日直接手渡された
彼らは望んでいない。
ベルトが再び犯罪者の手に渡ることを
196X年・・・へヴィ級の興行収支は惨憺たるものだったらしい。それは何故か?
元・犯罪者であるソニー・リストンが王者に君臨していたからに他ならない
どうやら彼等プロモーターはその悪夢を再現したくないらしい」
ボクシング協会の会長がアリゾナ刑務所に200万$出して「犯罪者のチャンピオンは出したくない」と。つまり・・・
「具体的には?」
「そうだな・・・再びボクシングが出来なくなればいい」
こっ、このド外道どもがァ〜!
薄汚い裏取引きによって、出所寸前のマイケルを再起不能にしようという悪の画策。生かしちゃおけません
所長の冷酷なる命令に対し、しかし補佐官は極めてクールにそれが困難であることを伝える
「あのアイアン・マイケルをですか?誰がその役目を?
彼は元世界チャンプですよ。並の喧嘩自慢程度では相手になりません
勝ち目のある人間―オリバやゲバルも我々の相談に乗ることはあり得ないでしょう」

「話は解りましたがそれを遂げられる人材がいません」と。いやアホだろお前
なんかテキトーなペナルティ課して、刃牙にかけた指錠かけてボコれ(鬼)

他にも方法なんていくらでも考えつきそうなモンですが。ここで所長が補佐官に「適任役」の名前を告げます
「マウスを呼べ」

「気は確かですか所長・・・だって彼等は・・・」
一体どこのネズミだ。この補佐官のビビリ様は尋常じゃありません

「唇リップトゥースタング彼等3人なら我々の気持ちを汲み取ってくれる
アイアン・マイケルが相手だろうと確実に勝てる。しかも・・・
彼等は最初からこちら側の人間だからな」
「わっ・・・私は責任を持てませんよ・・・」
マウスじゃなくてマウス
3人一組で「マウス」という呼称を持っていることから推察すれば、何か特別なチームか何かでしょうか?





「何かありましたか所長」
「いいのかな。3人揃っちゃって」
「ワカっていて呼んだのなら―」

「いずれにしろ緊急事態だ」
というワケで召集された「マウス」の3名。その正体は背格好瓜二つの3つ子看守です
僅かに感じる恐怖心からか。やや緊張の面持ちで彼らに命令を伝える外道所長
「君らが3人揃うと・・・化学反応を起こす
しかし今。その化学反応が必要になった」

「やるなら今夜すぐがいいですね」
台詞をピタリとハモらせる不気味な3つ子。所長の言う「化学反応」とは果たしていかなるものなのか?
狙われたマイケルの運命は?その拳が再び光を浴びることはなくなってしまうのか?
続きは気になるけど
ゲバルとはいつ闘るんですか板垣先生!
こんなザコっぽい連中さっさと倒してサクサク進んで欲しい次号へ続く!


29話

戦争

目深にかぶっていた帽子を脱ぐマウスの3人。見た目的には20代前半くらいでしょうか
切れ長の目と赤い唇が特徴的なオカマっぽい顔。平たく言うと
板垣漫画によく見る顔
「か、勘弁してくれ。その声を聞くと頭が混乱してしまう」
3人揃って補佐官に向かって挨拶するマウスでしたが、当の補佐官はそのピタリとハモった喋りに面くらい気味
「ならば1人ずつ喋りましょうか。その方がもっと混乱すると思いますが」
「わたしは「お」と「そ」」
「ボクが「元」と「う」」
「オレは「気」と「で」」
「これだと解読するのに時間がかかりすぎる・・・だから」

「おで」
ゲェー!?なんだこの面白い特技は。そう、3人はハモって喋っていたわけではなかった
1人1文字ずつ。滑らかにひとつの文章を喋っていたのだ




「1人1文字ずつ順番に・・・まるで1人の人間のようにスムーズに喋る連携
初めて聞く人間にとっては確かにその異質さに混乱するが。見事ではある
異質なモノ同士の連携による偉大な成果・・・
火と蒸気とシリンダーによる
蒸気機関
馬と鞭と騎手による
乗馬
そして太陽と水と大気による
地球
いずれも偉大な連携。偉大な成果だ・・・しかしこの世で最もスムーズかつ偉大な連携
連携の中の連携、キング・オブ・コンビネーション
それが唇と歯と
舌だ」
唐突に「三位一体の連携」について熱く語り始める所長。彼によると口の動きこそがその最たる物だという
ここから所長の口の動き薀蓄が垂れ流されるのでじっくり聞いてみましょう
「例えば魚を一切れ口に入れてみたまえ」

触れるなり唇は物をたぐり寄せ、絶妙のタイミングで閉じてしまう
食物はもう外に逃げられない
魚は歯によって切断され、柔らかな舌によって奥に運ばれ奥歯にすり潰される
そこで生き残った肉片も舌は容赦なく探り出し奥歯へと送り返す
一個の肉片がクリーム状になるまで作業は続き・・・・
更にこの複雑な動きの中で舌は小骨までも敏感に知覚し、唇へと引き戻す

そして驚くべき事に これらのスリリングな作業を経ていながら
舌も唇も歯によって一切の傷を負うことはない

なるほど。こうして文章にされて言われてみると、確かに口の一連の動きってのは複雑極まりないシロモノ
食うだけに限らず、言葉を喋るときの発音も唇・歯・舌の連携によって成り立っていることを考えると尚更です
でも唇も歯も舌も人間の部位の一つだからして。
「異質な物同士の連携」って前フリはちょっとズレてるよな
「誰が呼ぶともなく口(マウス)。そう呼ばれているのだ彼等は」





カツーンカツーン。所長に命令された「仕事」を遂行するため、夜の廊下を揃って歩くマウスの3人
道すがら、先導する補佐官が複雑な表情で3人に問いかけます
「キミ達のタダ事ではない連携とやらは理解したつもりだ。しかし・・・
そのコンビネーションがこと戦闘という局面でどう発揮されると言うのか?
相手はあの”鉄人”マイケルだぞ」

おっと意外。補佐官の話しぶりから察するに、マウスの3人は別段格闘技の達人というワケではないようです
以心伝心のとてつもないコンビネーションを持ってはいても、素人が元・世界チャンプ相手に勝てるのか?
「多く一般人が犯しがちな誤解。過大なる格闘技幻想と言えますな」

そんな補佐官の心配を一蹴する唇の返答。格闘技など恐れるに足らずという余裕の態度です
「あのアイアン・マイケルに対して過大評価だと?今は罪に服してるとは言え
彼は歴史に残る偉大なへヴィ級チャンピオンだぞ
キミ達のほうこそ彼の実力を過小評価しているんじゃあないのか?」

補佐官はボクシングファンなんでしょうか。やけにマイケルに肩入れしてムキになってます
日本の暴走族の兄ちゃんと互角だったと知ったらさぞかしガッカリすることでしょう
「元より口で説明するものでもありませんな
本人を実験台に闘ってみせれば済むことです」





「こんな所へ呼び出して・・・穏やかではないな」
ラストシーン。深夜、刑務所の中庭に呼び出されたマイケルと、それに対峙するマウスの3人
その口ぶりから、これから自分の身に何が起こるかはおよそ察しているようですが
素人の看守3人ぽっちに負けるなどとは微塵も思っていないマイケルはこの余裕の表情
補佐官も神妙な表情です。コイツが今回のMVPだな

「歯・・・いくつだ?」
「2.5・・・多くて3.0から3.2ってところか・・・」
値踏みするようにマイケルを観察し、2.5という謎の数値をはじき出す歯
格闘技を否定するマウス!彼等の見せる「化学反応」とは何なのか?謎の数値は?
哀れマイケルはリングへの復帰の道を閉ざされてしまうのか?
次号へ続く!


30話

チームワーク

「2.5・・・多くても3.0から3.2ってところだろう」
「流石はアイアン・マイケル。3.2とは・・・」
「高い身体能力を持っているが骨格による筋量に限界がある。4.0に届くことはあり得ない

一般成人男子の3.2倍・・・
それがこの男の戦力だ」
歯の弾き出した3.2という数値。それは一般成人男子を1.0と見た場合のマイケルの戦力値だと言う
世界チャンプにしては随分と少ない数値。この言葉を聞いた補佐官は思わず眉をしかめて反論します
「バカな。どこをどう見てアイアン・マイケルが一般人の3.2倍だと?
例え10人掛かりだって勝てるものかッ!」
「格闘技に精通しているようだが・・・見た目は素人だな」
その思いはマイケル本人も同じか。3人の刺客を眼前にしても自分の勝利を疑わない余裕の表情
しかしマウスの3人はまったく臆することなく、自分達の説を解説するかのように言葉を続けます




「我々は素人ではないぞ。各人がボクシングも空手も柔道も一通り経験している
もっともライセンスもブラックベルトも持ってはいないがね。何故ならば・・・
それ以上は必要ないからだ。例え元へヴィ級チャンプが相手でもね」
「巷には”武勇伝”と呼ばれるものが存在する
「暴漢3人をアッという間に倒してのけた」 「不良5人を次々にKOした・・・」
そのどれもが輝かしくも勇ましい戦果ばかり
では彼らはどれほど強いのか?5倍・・・6倍・・・10倍?
答えはNOだ」
「一般人の1.5倍から2.0倍。世界チャンプクラスであってもせいぜい2.5倍
しかし現実に素人3人程度集まっても、チャンピオン相手には勝ち目がない
2.5の戦力に対して3人掛かりで倒せない。それは何故か?
カンタンなこと・・・・・

3人で戦うことに慣れてないからです
サッカーやラグビーのような・・・チームワークが出来ていない」
喋りながらいつの間にかマイケルの周りを取り囲んだマウス。「慣れた」戦いを見せてくれると言うのか

”ビチィッ!”
バキッ!!
マイケルの背後で指をスナップさせる歯。その音に反応して振り向いたマイケルに、まずは舌が先制パンチ!
「やれやれ・・・固いものだね。人間の顔というのは」
ぷらぷらと痛そうに手首を振ってみせる舌。その舐めた態度にマイケルは怒り心頭で戦闘モードON
ファイティングポーズをとって舌につっかろうとしますが、その足を絶妙なタイミングで背後からひっかける唇
ぐらりと態勢を崩したところへ
舌の目潰しがクリーンヒット。思わず悲鳴を上げるマイケル
そこからはもうボコボコです

絶えず”死角から””絶対に回避できないタイミング”で来る攻撃
これぞ多対1の鉄則というか。理屈で考えられる最も無駄・リスクのない、理想的な戦い方です
たしかに理論上は、このように戦えればどんな戦力差のある相手も数の有利で封じ込めることができるハズなのです
それが実際の戦闘でこう上手くいかないのは、唇が言ったように「多対1の戦いに慣れていないから」に他ありません
彼等のような以心伝心のコンビネーションを持つ人間が1人の人間の取り囲んだ時のみ、「理想のボコボコ」が実現するのだ

あの勇次郎が「同時に4人を倒せれば世界中の人間にも勝てる」という凄い理屈を持っていますが
本当の多対1とは、このように死角から死角から攻撃され
同時に4人相手は出来ないモノなのです





「〜〜〜〜〜ッッ!!!」
このまま3人を同時に相手していては敗北必至。マイケルは標的を唇1人に絞り込んで攻撃に出ますが・・・
唇ガン逃げ!!

1対1になれば消滅してしまうアドバンテージ。ならそんな展開は回避すればいいだけの事。完全合理的です
なにをどうしても自分のボクシングで戦えないマイケルは苛立ちと怒りで絶叫
「こッ・・・こんな戦いがあるかァッ!!!」
「あるさ」
”ガコッ!!!”
そんなマイケルの後頭部に容赦なく叩き込まれる飛び蹴り。両手をついて地面に突っ伏すと、再び3人に囲まれてしまう
あとはまたボコボコ再開

『権威が・・・ッ崩壊れてゆく・・・ッッ』
素人3人組を相手に手も足も出ない元・へヴィ級チャンプ。信じがたい現実を目に、ボクシング好きの補佐官も愕然です
鉄人・アイアンマイケル絶体絶命!その運命や如何に!?
次号へ続く!


31話

1+1+1=?

『偉大なチャンプだったマイケルの顔面を脚で蹴るなんて
世界中を熱狂させた歴史的ボクサーの顔面を蹴る
この3人にそんな資格があるのか!?』

マウスの三位一体攻撃に成す術なくやられるマイケル。このまま元・世界チャンプが素人の前に屈してしまうのか?
否。このままなんの魅せ場も用意されずに負けたのでは
第3部最高の面白野郎の名が廃ります
猛ダッシュで走りぬけ、3人の包囲から抜け出るマイケル。無論ただ逃げたのではありません

『それだッッッ』
そうこれだ。多対1の戦いにおいては背後からの攻撃を防ぐことが肝要。壁を背に!
立場も忘れて思わず応援してしまうボクシング贔屓の補佐官。さてここからマイケルの反撃なるか?

おおー格好良いマイケルキタ━━(゜∀゜)━━!
見せてやるぜ素人ども!世界を熱狂させたボクシングを!

乱れた呼吸を整え、お得意のピーカブースタイルで高速ウィービング。流石にその姿はバッチリ決まってます
『やってやれチャンプッッ!!』
ボクシングファンの補佐官はもう完全にマイケルの応援。大逆転のマウスの敗北を確信しますが・・・
「なるほど・・・バカではないようだな。偉大なボクサーに敬意を表して―我々も





まるで動じないマウス。それどころか気合を入れなおしたチャンプ相手にボクシングで戦うと宣言する
「君のメインコーチだった名匠サム・マダト。彼が生み出した偉大なファイティングスタイル
ピーカブー
( い な い い な い バ ア )

グラブに噛み痕が残るほどアゴをカバーし徹底的に急所を守る
更にはウィービング、ダッキング、ボビング、サークリングなどの
上半身を目まぐるしく動かすことで防御を完全とするスタイル
そんなボクシングを本能のレベルまで擦り込まれている超一流を相手に―

げげェー!?
前口上が終わるなりイキナリ叩き込まれるパンチ。唇のパンチはかわしたものの、舌と歯のそれをまともに食ってしまうマイケル
間髪入れずに2発目、3発目とクリーンヒットをもらうと、見事に脳を揺らされて膝から崩れ落ちてしまいます。ドシャアッ!
『こ・・・これは?』
「如何かな?同時ワン・ツー・スリー
いかに素早く動こうが、ひとつの動作でかわせるパンチはあくまで一発
同時に3つのパンチを出せば2つは必ず当たる。そして
3流のパンチでもクリーンヒットさえすれば世界チャンプも倒せる」
うーん理屈的には完璧だけど。もしもマイケルが捨て身で誰か1人を倒しに行ってたら、結果はどうなってたかワカらないな
なんせ
750ccブチ込まれるのと同じパンチだし。コイツらじゃ千春みたいには立てめえ
せっかく背後の憂いを取り除いたというのに、攻撃に出ず防御に神経を割いてしまったのがマイケルの敗因でしょうか

意識は朦朧、両手を地面について四つん這いになったマイケルに唇がガッチリと羽交い絞め。いよいよトドメに入ります
「さて・・・ボクシングはもう終わりだ」
「やッ・・・やめろォッッ!!」





”ゴッガッバキッ!!”

補佐官の必死の懇願も虚しくボコボコ再開。踏ん張っていた両膝もついに押し潰されてしまう
面白鉄人マイケル、僅かな魅せ場もなく素人相手に敗れる!
うーん個人的には戦闘でも面白いことやってもらいたかったんですが。それだけが残念だ。次号へ続く!


32話

滅多

仮に―女子供によって大の男を倒す術があるとするなら
まずは
金的 次いで目突きの2つが挙げられよう
しかしもう一つ 技とは言えない必殺の方法が存在する
踵である
体重30kgあまりの小学生でも―
大の男を
踏みつけ一発で悶絶させることが可能だ

3ページにわたる踵攻撃の有効性についての解説で幕を開けた今週の冒頭
かくして冷酷無比なマウス達の踵ストンピングによってマイケルは完全KO。ぐったりと失神してしまいます
「意外に脆かったな」
「イヤ。手こずったと言うべきだろう・・・いずれにしろ」
「優れたチームファイトの前には個人の闘争技術など無力であるという事実
それを証明する絶好の実験結果と言えるだろう」




本当にこれが真実なのか。素人の完璧なる連携攻撃の前になす術なく敗れ去った元・世界チャンプ
うつ伏せに倒れていたマイケルの身体を仰向けにすると、唇が懐から小さなナイフを取り出します
「さて仕上げだ。拳を握る腱を切断しておこうか
スマナイなチャンプ・・・簡単だ手術だ。すぐに終わる」

かつて世界を歓喜させた黄金の右腕、その命を奪わんと突きつけられるナイフ
ボクシングファンの補佐官がやりきれない思いで思わず目を背けた、
その時!
カラカラカラカラシュコンッッ!!
謎の異音とともに猛スピードで”何か”がすっ飛んできて、刑務所の壁に勢いよく突き刺さったではありませんか
さながら流星の如く、夜の闇を切り裂いてマウスの凶行を中断させた”何か”の正体は・・・・・?

うわあああーなんだこれは
かっ、風車の弥七が!
えらい事です。海と時空を超えて風車の弥七がバキ世界にやってきました
突如として撃ちこまれた風車を呆然と眺めるマウス。すると闇の向こうから更に”何か”の気配が!弥七か?

ごろ・・・・ごろごろ・・・・・・
ゲェーッ!?もうワケわかりません。人です。人が転がってきました
お膝抱っこ式の綺麗な前転でごろごろと現場に突入する謎の人物。起き上がったその顔は・・・
弥七なのかッ!?







「オ〜キモチわる」

”ミスター2”J・ゲバル!
前転に目を回して酔っ払いコントの志村けんみたいになってます
「持ち主がこんだけ目ェ回してンのによォ。回らねェンだよこいつが」
「ゲ・・・ゲバル・・・!」
自作らしい風車を指差して不満そうな顔をするゲバル。明らかにビビるマウス
『優れたチームファイトの前では個人の技量など無力』
先ほどそう言ったばかりの彼等ですが、2代目アンチェインと呼ばれる男にそれは当てはまらないのか
「オ〜。滅多に見れねェいい月夜だ・・・・
滅多に見れねェマウス揃い踏み。寝ちゃいられねェ」

弥七じゃなかったのは至極残念ですが(しつこい)
マウスVSゲバル激突必至!
果たして2代目アンチェインはマウスのチームファイトをどのようにして破るのか?次号は注目だ


33話

戦士

「三人揃うと化学反応が起きるという一卵性の三つ子ならではのコンビネーション
・・・すげェんだろうなきっと
歴戦の悪党ども・・・最強を認められた強者どもが君達に煮え湯を飲まされている
実に興味深い」
ペラペラとよく喋るゲバルに対し、マウスの3人は完全無言。緊張の面持ちでにじりにじりと距離を詰めてくる
夜空には美しい三日月。ゲバルはマウスを視界に入れようともせず、月を見上げながら更に喋り続けます
「懐かしいなァ・・・海賊やってた時分・・・出航はいつもこんな夜だった
バカ明るい月夜・・・」
惚れ惚れと月に見入るゲバル。思わずマウスの3人も振り向いて夜空を見上げます・・・・・が!

瞬間。ゲバルが鳴らした指の音に慌てて視線を戻すマウス。やれやれといった表情を浮かべてゲバルが言う
「素人だな。今キミらがお月見をしている隙・・・
確実に1人は俺に仕留められていたぞ
連携こそが頼みである君らが1人欠ける・・・戦力は10分の1以下だ
それじゃつまらんから仕留めずにおいた。気をつけたまえ」
「・・・・・・・・ッッ!」
『飲まれてる・・・百戦錬磨のマウスが若いゲバルに・・・ッ!』
「お前ら今死んでたぜ?」と余裕の忠告。3人揃って死人のような顔面蒼白になるマウス。まるで役者が違います





しかしながらそんな余裕を見せてる間に3人に取り囲まれてしまったゲバル。途端に自信満々の顔を見せるマウス
それもそのハズ、このトライアングルフォーメーションは元・ボクシングへヴィ級チャンプも完封した無敵の陣形
いかな
”二代目アンチェイン”とてこのカタチに持ち込めば恐れるに足らず!
「よほど自信があるんだな。このフォーメーションになるや顔に余裕が漲っている」
「もう遅い。我々にこの陣形を取らせた以上・・・もう君にチャンスは無い」
”ビチィッ!”
マイケルの時の同様、背後で指をスナップする唇。その音に反応したゲバルが後ろを向いた瞬間!
その隙を逃さず歯のパンチが・・・って
わ―――――ッ!

歯のパンチより先にゲバルの先制攻撃がヒット!
なんと前田慶次ばりの小便ビーム
ビタビタビタビタビタビタ・・・・・・・!
「わわッ!」
「オワッと!」
よほど我慢していたのか、
相当な量の尿を撒き散らすゲバル。ぐるぐると歩き回りながら尿の円を描く
必死の形相で小便を避ける唇と舌が小学生みたいでなんか妙な愛嬌を感じるな
しかし可哀想かな、先制攻撃をくらった歯だけは
全身小便びたしに
「バカかテメエッッ!」

激昂する歯。怒りのあまり原型をとどめないほどに顔が崩れすぎです

誰だお前は!





怒りまくる歯と対照的に、恍惚の表情で放尿を終えたゲバル。いきなり意外なムーブメントに出ます
なんと自ら描いた小便の輪の中に
仰向けに倒れこんだではないか
なにこれ地功拳?たしかに寝てしまえば背後からの攻撃は防ぐことができますが・・・・
「・・・・・・・・・ッ!?」
「いいのかな?二人はキレイなままなのに1人は汚物まみれ
かけがえのない3人の関係を引き裂く悪魔ッ

そんな男が目の前にダウンしてるんだぜ
思い知らせてやれッ」

寝っ転がって「さあチャンスだぜ攻撃して来い」と挑発するゲバル。まさに円だけに彼の土俵か
既にマウスも大男と同じ術中。完全にゲバルのフィールドに引き込まれて
自由を奪われているッ!
次回も弄られまくるマウスが目に見える引きで続く!すごいぞゲバル


34話

海の賊

『思い知らせてやれッッ』
大の字に寝転んでマウスを挑発するゲバル。果たしてどんなトリッキーな技が飛び出すのか?
やはり壁を背にすることによって生じる攻撃角度の減少と、攻撃手段の特定化による・・・・・って
えええ―――!!!?

喰らってるううううううう(ガビーン)
意外や意外。憤怒の表情でゲバルの顔面に落とされるストンピング攻撃。避けられないのか、避けようとしないのか
ゲバルはそれを顔面で受け止めるがままです
やがて嵐のような踏みつけリンチがようやく途切れると、そこにはさながらボロ雑巾のように転がるゲバルの姿が

「フン・・・口ほどでもないじゃないか・・・
これが二代目アンチェインとまで言わしめた男の実力か」

そんなゲバルの姿に満足しつつ、乱れた呼吸を整えるマウス。やや拍子抜けした感じで勝ち誇ります・・・・が!
次の瞬間、3人が揃って凍りつく。目の前のボロ雑巾が何事もなかったかのように起き上がったからだ
口からの出血と鼻血で顔面は血まみれ。とてもノーダメージに見えませんが、当のゲバルはまったくの無表情
「風・・・・い〜い風だ・・・・」
「か・・・風・・・だと?」
虚ろな目で耳に両手をあてるゲバル。同時に、壁に突き刺さっていた風車がカラカラと音を立てて回り始めます
『風を・・・呼んだ?』
そう、まるでゲバルが風を呼んだかのように





むっくりと立ち上がったゲバルは風車の前までのろのろ歩くと、更にプウッ!と息をひと吹き
風車の回転が更に勢いを増すと、それに呼応するかのように風も強さを増していきます。ミステリアスな迫力だ
風の強さを確かめるようにおもむろに服を脱ぐゲバル。
やばい。スゲエ強そうです

ただならぬ威圧感に後ずさりするマウス。ここから更に彼等をビビらせるゲバルのパフォーマンスが炸裂します

うおー
血化粧キター!
インディアンの闘いの化粧、と言うよりはランボーのペインティングのような
さっきまでの「ひょうきんな兄ちゃん」の雰囲気がなりを潜め、ついに「戦士」J・ゲバルがその本当の姿を現す!
「満ち潮だ」
ミキミキと音を立てて引き締まっていくハガネのような筋肉。バンダナを取り去ってマウスをひと睨み!





「船出の刻」

顔こええー!まるで鬼!
狂気に満ちた眼光を爛々と光らせるゲバル。ビッケは海の子バイキング!
さぁヤロウども帆を張れ!錨を上げろ!ゲバル様の出航だ!
次号!本気のゲバルにマウス粉々!コイツはマーベラスにときめくぜ


35話

今までの飄々とした兄ちゃんから一転、鬼気迫る「戦士」の顔へと変貌を遂げたゲバル
その異様な威圧感に一旦は飲まれるマウスでしたが、リーダー格である唇が二人にハッパをかけます
「たしかに見事なシナリオだ。ここまではな。だが考えても見ろ
意表を突く登場。風車のオモチャ。放尿。風。泥のメイク
この中にひとつでも実力と呼べるものがあるか?
全て演出にすぎんッ!
取り戻せ!いつもの自分をッッ!」

ゲバルの変身を「ハッタリの演出だ」と一蹴する唇。その言葉に歯と舌も冷静さを取り戻します
唇が両手を組んだ足場でポーンと高くジャンプし、ゲバルの頭上の壁にへばりつく歯。戦うつもりです

「このフォーメーションはさっきのとは比較にならぬほど厄介なものだ
膀胱が空になった今―
この四面体をどう乗り切る?」

頭上を押さえる事により、包囲陣形は「三角形トライアングルから「四面体テトラに変化
唇が自信満々に曰く、三角形よりも四面体のほうが比較にならないほど強いらしいですが
見た目
上のヤツがすごい攻撃しかけづらそうであんまり凄そうには見えません
あと台詞的に
膀胱にまだ残弾が残ってたら破られるみたいなニュアンスに聞こえるのが笑える
小便つえー




「随分高く上がれたじゃないか。大丈夫かな。1人で降りられるかァ?」
しかしながら、そんな恐ろしい包囲を受けたゲバルの反応は呑気そのもの
頭上の歯を
ぼへーっと見上げて話しかけ、地上の二人に無防備な背中を晒してしまいます
その隙に吸い込まれるように襲いかかる二人。くたばれこのハッタリ野郎ォ―ッッ!!

瞬間。補佐官と歯はたしかに見た
”二代目アンチェイン”の力をッ!

目にも留まらぬ速度で振り向いたゲバル。その様はまさに人間竜巻か
スーパークリーンヒットした渾身のアッパーは舌の歯を全て吹き飛ばし、目ン玉から派手に血を噴き出させて
そのままセルジオ・シルバ!

ブンブンブン出た。ジャック兄ちゃんに殴られたシルバがせいぜいその場での高速回転だったのに対し、
ゲバルのそれは、
5mくらい上空まで軽々吹き飛ばしました

伊藤潤二の漫画に出てくるようなホラー顔で歯の眼前を通り過ぎていく舌
さながら
時速120キロのダンプカーに刎ね飛ばされたかのごとく
地獄の空中遊泳を楽しんだ舌はボロ切れのように地面に落下し、そして動かなくなった





相手は―人間ではない!

的を射た唇の感想。なんか「カハァ〜ッ」って白い息吐いてる様はまさに化物という他ありません
ビビりまくった唇は小便を垂れ流し、ひっかぶったゲバルの小便とほどよくブレンドして逃げていきました

1人残された歯も、やが両腕が力尽きてズリズリと地面へ。顔面蒼白になって死を覚悟しますが・・・
「こいつ。1人で降りれたじゃないか」
あくまで三位一体の連携があってこそのマウス。一人を欠いた以上、もはや勝負有りです
読者の想像の遥か斜め上を行ったゲバルの戦闘力!
なんでしょうかこのトンでもパンチ。オリバさんや花山さんでもこんなパンチ打てないだろっつーか、無茶すぎ
強さの程も読者に浸透したところで、
いい加減刃牙と戦ってほしい次号へ続く!


36話

オリバとゲバル

『強い・・・強すぎるッ!あのマイケルを一蹴したマウスを相手に
たった一撃・・・・!』
ハチャメチャパンチでマウスを一撃粉砕したゲバル。流石アメリカ認定「世界3強」は伊達じゃありません
泥のメイクを拭き落として再びバンダナを締め直すと、ぶっ飛ばされた舌の顔を覗き込んで「ワァ〜オ」と眉を顰める
顔面の穴という穴から盛大に血を噴出し、瞳孔は大きく見開かれたまま
どう見ても生きてるようには見えません
「あ〜サミュエル副所長。どうやらここで何かトラブルがあったようだ・・・
あとはヨロシクね♪わたしは寝る」
今まで役職がわからなかったので「補佐官」と言い続けてきましたが。副所長だったのかよボクシング好き親父
後始末を面倒がって押し付けるあたり、
舌は死んだと見ていいのか。あのパンチじゃなぁ

「あの・・・・」
と、その時。部屋に戻って寝ようとしたゲバルに遠慮がちに声をかける人物あり。無論、ゲバルに助けられたこの人です
「オ〜ッ マイケルくんじゃないか」

「ワスレテタンカイ」
何故か関西弁でツッコミを入れるマイケル
流石です
『第3部最強のお笑いキャラ』の異名は伊達じゃありません




「あんなビッグパンチ・・・お目にかかったことねェ」
「OH〜・・・なんという栄誉だ。史上最強のボクサーからそんな言葉を」

ゲバルのおどけ顔と、後頭部に汗一滴かいたマイケルが笑えます。いいコマだ
戦い終わってすっかりオモロイ兄ちゃんに戻ったゲバル。この飄々とした顔と戦闘時とのギャップがまた彼の魅力か

「アンタが来てくれなければ・・・俺のボクサー生命は確実に終わっていた」
絶体絶命のピンチを救ってくれた恩人に感謝するマイケル。ゲバルはそんなマイケルの肩をポンと叩いて爽やかに一言
「なにを言ってる。俺達はルームメイトじゃないか♪」

「ワスレテタジャン」
2発目のツッコミ炸裂。なんだこの漫才コンビ





「セカン・・・アンタと同室だったことを神に感謝している
もちろんアンタにはそれ以上に。
アリガトウボス・・・」
サミュエル副所長の計らいか、特に看守に問われる事もなく房へ戻ってきた二人。改めてマイケルが頭を下げます
「退屈だった眠れぬ夜に極上のレクリエーションをサプライズ
礼を言うのはむしろ俺のほうだ。ブラザー」
自分を「ボス」と呼んで頭を下げたマイケルに対し、笑顔で「兄弟」と応えるゲバルがステキすぎる。カリスマだなぁ

二人が寝床に向かったその時、部屋の中央で両手をついてじっと座す人影有り。誰かと思ったら刃牙ですよ
「ミスターゲバル。あなたがオリバに勝とうが負けようがどちらでもいい
明後日の試合の後、どうか俺と・・・・!」
「「恋人になってくれ」ってのはナシだぜ」
「ハァ?」
ゲバルとの対戦を望む刃牙。その真剣な申し出をいつもの調子でおどけて答えるゲバルでしたが、すぐに言葉を続けます
「でも俺と闘いたいのならいつでも。たとえ風がなくとも・・・
例えば・・・今この場でも・・・」

ざわ・・・と刃牙の髪が揺らぐ。今ここで刃牙VSゲバル勃発か?部屋の空気が一変した、まさにその時だった

「ここか?」

房の外から聞こえてきたのは野太い声。3人が一斉に鋼鉄の扉を振り返ります
覗き窓から房の様子をキョロキョロと伺う謎の人物の目。おっと、このラブリーなクリクリおめめは・・・
「ゲバル・・・いる?

オ!い〜た〜♪」

ゲバルを発見した目が歓喜に歪む。途端、謎異音が部屋に響き渡ります
”メキュッ!”
メキュメキュメキュ・・・メキィ!
鋼鉄製のドアがドアノブを中心に歪んでいく。その様はまるで重機か何かで凄まじい圧力をかけられているかのよう
「ノオオッ!ミスターやめてください!鍵はある!ミスターやめて!」
うろたえる看守の叫びが虚しく響く。やがてグシャグシャに変形したドアが壁から外れ、現れた人物は・・・・
言わずもがな。
ビスケット・オリバ!

「グドゥイブニン。ミスタゲバァル」
「ア〜ッ!ドアをこんなにしちゃって。ドアなしの刑務所なんて・・・!」
「カーテンでも引いとけ・・・・
ゲバルだな?い〜い面構えだ」
連携が上手いだけの素人3人組とか出てきて亀ペースだった刑務所編。「早く刃牙闘えよ」という読者に促されたのか
いきなり3者集結という急展開。ホント極端だな板垣先生
刃牙VSゲバル?ゲバルVSオリバ?それとも3人入り乱れての乱戦か?次号必読!


37話

共通点と相違点

「いい貌だ。虚勢を張らず、威嚇もしない・・・かと言って思いあがってもいない
今持っている度量実力をそのまま貌に出るに任せる
やれそうでやれるものじゃない。若くして国一つを立ち上げるだけはある・・・
ただ・・・惜しい」
ついに初対面ゲバルとオリバさん。ゲバルの顔をしげしげと眺めたオリバさんは、その顔つきを大絶賛
しかしその後に「惜しい」と付け加えます

「一流の人格。一流の頭脳。一流のリーダーシップという神からのギフトがありながら
ゲバル・・・君には大きな欠点がある。そしてこの俺もな」
「その通りだ」
オリバさんの挑発的言葉を、微笑を浮かべて肯定するゲバル。このスーパーマンの一体何が欠点だと言うのか

「俺達はいい歳をして喧嘩に負けたくない
幼年から少年となり、青年を経てやがて大人へ― その成長過程の中、
どこかへ置き去られるハズの「喧嘩に勝ちたい」という
決定的未熟」
「大人になり―キャンディを欲しくなくなった。ヨーヨーで遊ばなくなった」
「鬼ごっこをしなくなり―ベーゴマをやめた。メンコも集めなくなった」

「それでもなお」

「喧嘩だけが残った」
互いに超一流の肉体と頭脳を持ち合わせるスーパーマン2人。その困った困った共通点
それは
異常な負けず嫌い。「絶対に喧嘩で負けたくない」という子供のような性分だった




「そんな共通点を持つ二人だが。決定的な差がひとつ」
「ほう・・・どのように
君が勝ると?」
ここまで「俺達は似ている」と踏まえた上で、しかし両者には決定的な差があると言うオリバさん
ゲバルがその”差”を問うと、ここからは戦うことの意味、強さの在り方について話が展開していきます

「誰が為に戦う」
「戦いは誰かの為でなくてはいけないのかな?」
「君はどう思うゲバル」
「戦う為に”何か”あるいは”誰か”が必要―それはむしろ
弱味だというのが持論だ
君はどう思う?ミスターオリバ・・・誰が為に戦う」

「強さは誰の為に」「何の為に戦うか」オリバさんの問いに対して、「そんなモノは要らない」と答えたゲバル
ならばオリバさんは誰の為に戦っているというのか?
「そりゃあモチロン・・・・・
カワイイ彼女の為さ♪」











一同ぽかーん

「カッワイイんだこれがッッッ」
悦った表情で「俺の彼女カワイイ」とぬかすオリバさん。呆けていたゲバルの瞳から見る見る興味の色が落ちていきます
「何が出るかと思えば・・・女かよ
惚れた女の前で「ボクちゃん強いでしょ」ってか?」

類稀なる強者同士。オリバさんにシンパシーを感じていたゲバルにとって、この俗な答は失望に値するものだったようです
でもコレって多分あれですよね。
北斗の拳のアイン
「カワイイ彼女」おそらくまだ小さい娘さんじゃないでしょうか。以前オリバさんが言っていた「愛」は子を想う親の愛情と見た

「そんな俗物は今ここで叩き潰す!」とばかりに拳を握り締め、オリバさんへ間合いを詰めようとしたゲバル。だがその時!

一触即発の両者の間に割って入ったのは、影の薄い主人公・範馬刃牙!
「お二人がともに・・・最高の好敵手として、強敵としてここに出逢ったことを
心から祝福・・・・って

テメエら俺を嘗めてンのかよッッッ」
二人に嘗められてるというよりは読者に嘗められてると思うぞ主人公
強者同士のやりとりにまるで存在を無視され、範馬の血を滾らせる刃牙。さてどうなる?次号へ続く!


38話

蚊帳の外

「黙って聞いてりゃよう 俺を嘗めてんのかッ!」
規格外の強者を前にして、しかしその二人に完全に無視された刃牙は怒り爆発。胸倉掴んで怒鳴ります
「誰が為に戦うだの 戦う為に何が必要だの 何もいらねェだの―
イチャイチャとノロケてんじゃねェッッ!」

ってえええええええええええー
タンカを切り終えると同時に二人から無言の張り手を喰らう刃牙。かわす事もできずモロ顔面に食らうと
そのまま
10mくらいすっ飛んで鉄柵に激突します

殺し合いをする猛獣同士ですらが
戦いの途中邪魔が入るなり協力し合い排除するという

バキがハネられたのはあまりにも必然だった

これだから読者にも嘗められるんだよ主人公!(号泣
威勢よく噛みついた直後の瞬殺劇。その様はさながら引き合う惑星同士に挟まれた宇宙船か(ヨクサル表現)




「ジェラシーか。この世に存在するあらゆる液体―その中で最も濃厚な水
範馬の血。その前では刺激が強すぎたようだ」
「少しイチャつきすぎ・・・だったかな」

「アンタと恋人ほどじゃあないさ」

ハネっかえり小僧を一瞬で排除し、会話の続きを始める二人。やはりゲバルは「女の為」に戦うオリバさんが気に入りません
オリバさんもオリバさんで、そんな様子のゲバルを更に挑発するかのようにポケットから1枚のハンカチを取り出します
「ハァ〜・・・なんて刺激的なんだ」
そのハンカチを鼻に押し付けてクンクンと嗅ぎ、うっとりとした表情を見せるオリバさん。実に変態的です
「フ・・・彼女のプレゼントかい?」
「いや違う。彼女が昔住んでいた街で買ったものさ」
「街で買った・・・って?彼女の持ち物ではないのか?」
「バカを言っちゃいけない。
そんなもの私には刺激が強すぎて!」
何なんでしょうかこれは。まったくもって意味不明なオリバさんの返答。ゲバルが首をかしげながらもう一度聞き返します

「?・・・恋人同士なんだろ?」
「無論そうさ。両想い。私たちは相思相愛だ」
「ワケがワカんねェな・・・」
「子供にゃ無理な話だ。彼女が住んでいた街にこのハンカチーフがあった・・・
それだけで私はここに彼女を感じ取ることができる
リバプールで買い物をする観光客がビートルズを感じ取るようにね
それほどまでに私は彼女のファンなのさ
それほどまでに
彼女は美しいッ」

変態的、というよりは人知を超えたノロケとでも言いましょうか。異様なまでに彼女LOVEなオリバさん
それにしてもこの物言いだと、「娘」のことを言ってるようには見えないな。やはり普通の大人の女なんだろうか?むむ・・・




「どうだいアンタも嗅いでみるかい?
この世で最も濃厚に香るハンカチーフだ」
ハンカチを差し出し、「お前も嗅いでみろ」などとぬかすオリバさん。こんなんゲバルの返答は決まってますよ!
”ペッ”

唾を吐きかけました
オリバさんの衝撃の表情が凄すぎる。彼がどれだけこのハンカチを大事にしているかが伺えます
そして
人目もはばからず号泣。うわあああオリバさーん!(俺も号泣)

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

刑務所を揺るがすような大声で泣きわめきながら、通路を走り去っていくオリバさん。マジ可哀想すぎる
普通の感覚で考えたらここで怒りにまかせて、ゲバルとの戦闘に突入してもよさそうなものですが
きっと今はそんな事より、
一刻も早くハンカチを洗いたいのでしょう
かくして怪物二人のファーストコンタクトは、これ以上ない完全決裂という形になりました

「この世で最も濃厚に香るもの・・・それはあのハンカチーフではない」
オリバさんの「愛」を全否定するゲバル、可哀想なオリバさん、そして雑魚化著しい主人公
果たしてここアリゾナ刑務所で、3者の思惑はどのように交錯していくのか?次号へ続く!


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