39話

譲れぬ想い

「ハァ〜?同棲ェ?」
「はい。Mrオリバは
この刑務所内で恋人と暮らしています」
オリバさんが泣きながら走っていった後、件の「恋人」について知っている事を語る爺さん。流石は長老ね
聞けばなんとオリバさん、あれだけ惚気てみせた恋人をこの刑務所に住まわせていると言うではありませんか
街で買ったハンカチで云々言ってたクセに。同棲なんて刺激強すぎだろ
「あの何不自由ないムショ暮らし・・・その上更に女付きかよ。どんな女なんだ?」
「それが誰も見たことがないのです。何年も前からその存在を語られてはいますが
しかしそれは
Mrオリバの口からだけで・・・」
「この世のものとは思えぬ美しさってのは?」
「それもMrオリバの口からのみ語られる言葉です」
「・・・・・・フッ。ガセだな」

誰ひとり見たことがないという謎の女性。さしずめ都市伝説ならぬ”刑務所伝説”とでも言ったところでしょうか
ゲバルはホラ話だと決めてかかっているようですが・・・果たして「アンチェインの恋人」は本当に実在するのか?





マリア・・・私は悩み続けている
この世には言葉が少なすぎる。余りにも少なすぎる
『愛する』という言葉以上の

愛する表現が存在しない
しかるにこの五体に漲る感覚の―
これを一体どんな言葉で表現したらいいのだ

その頃オリバさん。ゲバルに唾を吐きかけられたハンカチも洗い、タキシード姿でバシッと決めてました
薔薇の花束など持って、どうやらこれから噂の恋人の部屋に向かう模様。いるのか?いるのか恋人!?

愛するなどという生易しい表現ではとても―
今日もこの形容しがたい感情を胸にここへ来た

コンコン。赤絨毯の廊下の突き当たり、豪華なドアを軽くノックして中に入るオリバさん
バチン!と大げさにウインクして、これ以上ない最高の笑顔を部屋の人物へ向けます
「ごきげんうるわしゅうございますかハニー」
部屋には大きなベッド。果たしてそこにオリバさんの「恋人」はいるのか?いいところで場面転換!





「存在しない恋人をでっち上げることにより、刑務所での己の自由を見せたかったのだろう
”アンチェイン”のイメージをより確実なものとするために」

「正直なところワシらも半ば気付いておりましたが・・・
そんな噂を流しちまったら4000人全員が締め殺されかねませんで」

「フ・・・二度目の朝日が昇るときは奴もただの受刑者に成り下がる
恋人もチカラもない無能な囚人にな」
明後日。それはオリバさんとゲバルの試合の日です。戦い終えて勝つのは自分だと断言するゲバル
掃除ロッカーの中に隠し持っていた
謎の瓶を取り出すと、それをノッポのヒゲ囚人に手渡します
「ケント、これを預かれ。試合場で私に渡すのだ

決して開けるな
豪雨
突風高波が飛び出してくる・・・ッッ」

おっと何だこれは。どうやらゲバルの必勝の策のようですが、中に嵐が封入されているとでも?
それにしても柵にブチ当たって気絶した刃牙は全員無視かよ。
マジ空気扱いの主人公が哀れすぎます





ピシッコロコロ・・・

さあカメラ戻って・・・って!いきなりオリバさんの額を直撃する投げタバコ。だっ誰がこんなことを!
「どーしたンだいハニー
いつも通り君の指定する時間に現れたし・・・大好きな薔薇だってあんなに・・・」

なんてこと。なんとタバコを投げつけたのは噂のマリアのようです
何故彼女が怒っているのかわからず、困惑した表情で理由を聞いたオリバさんでしたが・・・・
ボスッ

「この・・・脳なしがッ」
枕と一緒に飛んできたのはド汚い叱咤
オリバさん「私と彼女は両想いさ」とか言ってましたがとてもそうは見えませんよ!?
つーか
とりあえず実在してましたマリアさん
刑務所伝説「アンチェインの恋人」は実在した!果たして彼女はどんな女性なのか?次号へ続く!


40話

前夜

「この・・・役立たずッ!このごくつぶしッ!
この大飯喰らいッ!この人でなしッ!このナルシストッ!
親不孝ッ!ロクデナシッ!女たらしッ!カスッ!バカ!」

実在した「アンチェインの恋人」マリア。一体何を怒っているのか、恋人であるオリバさんに怒涛の罵声を浴びせかけます
しかしどうやらこれは毎度の事なのか、オリバさんは特に困惑するでもなく、肩を竦めて彼女に一言
「・・・・もう・・・いいかな?」
”カシャアアン!”
言葉が尽きると、今度は物を投げつけてきたマリア。なんだこのキチガイ。オリバさんこんな女のどこがいいんでしょう
ウイスキーグラス、ウイスキーボトル、花瓶・・・次々と飛んできてはオリバさんの額に命中して気持ちよく砕け散ります
よっぽど思いっきり投げてるよ!もう少し加減して投げませんかマリアさん
しかしそんなキチガイ彼女に怒るでもなく、オリバさんは割れた花瓶が床に落下するよりも早く薔薇の花をキャッチ
花束を彼女に捧げて笑顔でこう言うのです
「どうか機嫌なおしておくれよォ・・・ハニィ・・・」




「バカァ・・・」
するとどうでしょう。突然泣き出したかと思うと、さっきまでとは一転して甘い声を出すマリア。精神病んでるのかこの人

「バカで幸せ者だ。君がそばに居てくれる・・・」
「ダーリン・・・」
まったくもって常人の理解を超えた愛情表現。途端にろべり始める二人でしたが、今度はオリバさんがしどろもどろ
上体を思いっきりのけぞり、両拳をわななかせて、まるで何かに必死に耐えてるみたいな格好を
「ちょッ!待った!待った!待ってくれ!
ダ・・・ダーリン・・・
ダーリンッ

刺激が強すぎる!私にはッ!」
どんな恋人同士やねん。彼女に「ダーリン」と呼ばれただけで、なんかもう大変なリアクションを見せるオリバさん
そんなオリバさんに更にトドメを刺すマリアの追撃の一言が炸裂
「スキよ・・・」
「ッ!!マリアッッ!!」
「好き」の一言に、弾かれたようにベッドへ飛び込むオリバさん。そのまま彼女の上に覆いかぶさります

「マリアッ!君は美しいッ!
試合場で見せてやるんだ 君の美しさをッ!
思い知らせるんだ 愛以上をッッ
マリアッッッ!!!」

そしてギシギシ揺れるベッド。ヤッってんのか?オリバさん刺激強すぎて死ぬんとちゃうか
どうやらオリバさん試合当日、囚人達にマリアを見せつけるつもりのようです。我々読者が姿を拝むのもその時でしょうか





「あの・・・昨夜から何度もそうして・・・何を聞いてらっしゃるんで?」
カメラはゲバル達の房へ移ります。オリバさんとマリアがベッドをギシギシさせてる頃
ゲバルはというと、前回出てきた瓶を耳に当ててぼーっとしてました。まるで海辺で貝殻でも聞くかのように
「雨と―風と―波と―雷と―
そんな事をおっしゃってましたが・・・へへ・・・中身が気になって気になって」

いい歳こいて好奇心旺盛な長老。試合当日まで謎のままと思われた瓶でしたが、意外にもゲバルが語りだしました

「勇気だ」

「勇・・・気・・・ですか?」

「そうだ。この中に入ってる」
回想一番に浮かんできたのは凄まじい暴風雨の中、切り立った岸壁に立って雨と風を瓶の中に溜め込む少年の姿
一体この映像は何を意味しているのでしょうか




記録的なハリケーンの翌朝だった
俺がアメリカへ旅立つ日―

「あそこで集めたのか」
「・・・・・・」
押し黙ったまま岸壁の岬を指差し、ゲバルにその瓶を手渡す少年
身体は痩せっぽちで視線は下向き。荒れ狂う風雨の中、あの断崖に立つなど出来るような子にはとても見えません

「君が・・・仲間に苛められているのを何度か見かけたことがある」
普段の少年は苛められっ子。そんな彼が自分の命を賭してまで、旅行く大統領にこれを渡したかったのである
それにどんな意味があるのかは、少年本人と渡されたゲバル以外には誰もわからないであろう
吹き荒れる嵐を封入した瓶を

「アリガトウ。島一番の勇者よ」

小さな勇者からゲバルへ手渡されるたしかな「勇気」。海賊ゲバル、アメリカの秘宝を求めて出航の瞬間だった
恋人とベッドギシギシいわしてるオリバさんと、少年から「勇気」をもらったゲバル・・・・・・
なんかもう
オリバさん=俗 ゲバル=高潔の図式が如実すぎ。なんだこの対比は
少年漫画的に勝利の要素を多く含んでるのはゲバルの方ですが・・・なにせ板垣先生の事なんで安易な予想などナンセンス
勝つのは「愛」か「勇気」か?決戦が待たれる次号へ続く!


41話

奇妙な風景であった
4000人余りを収容する刑務所でありながら
今日に限って監視が居ない
まるで今日だけは1人の受刑者も居ないかのように

ガラーンと静まり返り、人っ子一人いないアリゾナ刑務所屋内。受刑者全員脱走でもしてしまったのか?
否。4000人の受刑者達は全員中庭に大集合。そう、ついに皆が待ちに待ったこの日がやってきたのだ

一切の私語が厳禁なハズのこの空間で
受刑者が存分に語らう それが許されている
なぜなら―
今日は誰も脱走ないから

看守達が外回りで目を光らせていないのも、私語が容認されるのもある意味当然の事
それは今日この日、アリゾナ刑務所の受刑者達に「脱獄しよう」などと思う人間がいるハズがないから
この血湧き肉踊る大イベント!男なら観ずしてどうするかッ!

「来たァッ!セカンッ!!!」
「大統領ッッ!」
「ベストパイレーツッッ!!」

受刑者達の大歓声とともに、まず先に入場してきたのは挑戦者J・ゲバル
左手にはあの勇気の瓶。ケントに「試合場で俺に渡せ」って言ってたクセに持参してんじゃん




「さすがに興奮しますね所長」
「一つだけ断言できる。もし仮に今脱走者が出たとしても
俺はここを一歩も動かんッ!」
「・・・聞かなかったことにしておきます」

興奮しているのは看守や所長達も同じこと。場に介する全ての人間のテンションは否応なしのMAX状態へ
「来たァッ!オリバだッ・・・・え・・・!?」
そしてNo1、アンチェインことビスケットオリバが入場・・・・・・っておおおお

「キングサイズのベッドじゃねえか!」
「・・・恋人が乗ってるんだ!」
「超美人っていう恋人か?いたのかよホントにッ!」





なんとオリバさんベッドごと恋人を担いできました
刑務所伝説「アンチェインの恋人」披露!まさかのサプライズに観客達のボルテージは更に上がりまくります
「どんな女?見えたか顔ッ!?」
「見えねェよッッ!見せてくれェェッ!」
「この世の物とは思えぬ美貌」という噂の恋人。流布したのはオリバさん本人という事ですが・・・果たして?
”ブオンッ!!”
オリバさんの怪力爆発。キングサイズのベッドを3mほども空中に放り投げると、(恋人危ないやろが)
落ちてきたベッドをガッシと掴んで地面に降ろします。
さあ見るがいい受刑者達よ
これが『アンチェインの恋人』だッ!

なんでしょうかこの反応は。一瞬の沈黙の後、皆一様に脂汗たらり
余りにも想像を超えた美しさに驚いている・・・というリアクションにはちょっと見えません
「こ・・・ッこれが・・・・ッ 恋人!?」
いよいよ読者の目にもその姿を披露するマリア。ドキドキしながらページをめくれ!どんと来いやぁー!













うッ
うッうッうッ

うわッ うわッ
うわああああああああああああ
ああああああああああああああ
ああああああああああああああ

(メアリーの生首を見せられたブラフォードとタルカスのように)

そりゃあ美的感覚は人それぞれだとは思いますけど。あらゆる分野で超一流のセンスを持ってるオリバさんなのに
『デブ専』なんて言葉を超えてますよこのビジュアルは!
衝撃の美貌を白日の下に晒したマリア!周囲の反応や如何に?次号へ続く!


42話

刑務所

4000人に達する受刑者達―彼等全員が同じ思いに捕らわれた
後の人生で誰かにこのマリアの姿を伝える時、いったいどう伝えるべきなのか
ハッキリしていることがひとつだけある

「肥満」という程度の表現では到底伝わらない

ついに受刑者&読者の前にその衝撃の美貌を晒したオリバさんの恋人マリア
体重300kgは下らないであろう、超々肥満女性
あまりのインパクトの大きさに、受刑者達は口も半開きのまま呆然の彼女の姿に見入るしかありません





「なに見てンのさ」

4000人の奇異の視線を一斉に浴びせられるマリアでしたが、そこはそれ流石にオリバさんの恋人
別段恥ずかしがるでもなく、怒り出すでもなく、落ち着いた様子でタバコをすぱすぱ。女性ながら見事な胆力です
「見ているんじゃない。見とれているのさ君の美しさにね」
すかさず恋人にフォローを入れる紳士的なオリバさん。しかし逆にこの言葉がマリアの琴線に触れてしまった模様
タバコを顔面向けて投げつけ、更にそれを追撃するかのように唾を吐きかけるマリア
紳士的なオリバさんは恋人の攻撃を避けることなく、2発とも真正面から喰らって
ニコニコ笑顔です
「バカ言ってんじゃないよ!どこが美しいってんだい!」
「どこをどう見たって美しい。誰にも異論は挟ませない」
どうやらマリアは自分の容姿を客観的に「醜い」ものとして認識しているようです。なんだ常識的な人じゃないか
この性格で自分を「美しい」と勘違いしてる人だったらもう手がつけられないところでした。あぁ良かった良かった
「ここにいる4000人全員が君の美しさを認めてる。そうだよなみんな?」

受刑者達を睨みつけながら、この脅迫とも言える問いかけ。まさに「え〜?」
マリアよりもオリバさんのほうがよっぽどタチ悪いです

おもむろにカフスボタンを外し、大きく息を吸い込みながら両腕をめいっぱい上に上げると、そのまま思いっきり両腕を下へ!
”バリィッッ!!”
その勢いと筋肉の隆起でタキシードの背中が派手な音をたてて大きく裂けます
ケンシロウ服破りの背筋バージョンとでも言いましょうか。これだけでも受刑者達は大喜びですが・・・

なんと次の瞬間、パンツ一丁のオリバさんが上空に
あれェ?たった今タキシードの背中を破ったばっかりのハズなのにいつの間に服を脱いで・・・って
「タキシードがそのまま・・・ッッ!」

「まるでセミの抜け殻みたいにッッ!」
「スゲエッ!やっぱオリバだッ!誰も勝てねェッ!」
規格外の瞬発力が可能にする驚愕のデモンストレーション!なんと服を人型のまま残して脱ぎ捨てたオリバさん
観客達を一瞬で味方につけ、飛び交う声援の中を悠々とゲバルに歩み寄ります。No1の貫禄と言ったところでしょうか
「行ってくるよマリア。君の恋人がどんなに強い男かを見せるために」





「ステキな恋人じゃないか。負けられないな」
「すまんなゲバル。引き立て役を受けてくれたこと・・・感謝している」

マリアの容姿を引き合いに出して挑発などど小汚いマネはせず、世辞と笑顔でオリバさんに向き合うゲバル
「戦うためのモチベーションは人それぞれ。この私も・・・」
そう。例え100万人の人間が「マリアは醜い」と思っても、オリバさんにとっては世界一美しい自慢の恋人
それゆえにオリバさんは彼女のために強者であろうとする。戦うためのモチベーションは人それぞれなのです
言いながら、あの瓶の蓋に手をかけるゲバル。彼が彼として戦うためのモチベーション、それは―

蓋を開けた瞬間、中から溢れ出す豪雨と突風と荒波と雷
その暴風は衣服を吹き飛ばし、その豪雨がゲバルの肉体を激しく叩く。見るも凄まじい大嵐である

あのハリケーンの夜。あの華奢で気弱そうなイジメられっ子の少年が
たった一人でこの嵐に立ち向かったのだ
旅行く大統領に手向けをと、ただそれだけの為に自分の命を危険に晒したのだ
それは。まさにそれこそは―






「十分だ・・・・始めようか」

それこそはまさに「勇気」のプレゼントに他ならない
豪雨も、突風も、荒波も雷も。全てをその身の内に取り込んだゲバル。モチベーションはマキシマム!
次号!いよいよオリバVSゲバル激突!コイツはデンジャラスにときめくぜ


43話

小さな動作と大きな意思

ついに火蓋を切って落とされた超ド級決戦。どんな壮絶な戦いが展開されるのか、読者はハラハラドキドキです
と。ゲバルが頭に巻いてるバンダナをおもむろに取ったかと思うと、その端を掴んでオリバさんに向かって突き出した
「ミスターオリバ。このバンダナの端を掴んでもらいたいのだが」
「ルーザールーズか。懐かしいな・・・ガキの時分よくやったよ」

元々は16世紀ヨーロッパの貴族の間に生まれた決闘のルール
戦う双方が互いにハンカチの両端を指で摘み、
殴り合う

ルールは至って単純。離したら敗け
文字通り
ルーザー
(敗者)が名誉をルーズ(失う)する
ハンカチの端を指で摘むという、取るに足らぬ動作を
名誉を守るというかけがえのない強い意思で維持する
決闘のルールとしては理にかなっている

ややや・・・マジか。ここにきてルール無用の喧嘩ではなく、「ルーザールーズ」という決闘法での勝負を申し出るゲバル
貴族の決闘とか言われると、どうしても
神代剣のイメージがつきまとって何かギャグっぽく感じてしまうんですけど
読者としては規格外の二人のガチンコ対決が見たかっただけに、ルールで縛られてしまう対決は正直残念です





「さてJ・ゲバルよ。君の祖父は無隠流忍術のマスターで君はその祖父に鍛えられた」
「ストーカーが趣味かなアンチェイン」

なにィー!?ゲバルかっけー。日本人の爺さんから古武術を叩きこまれたとは言ってましたが
忍術とは予想外
しかしそう言われてみれば、たしかにゲバル軍団の黒い胴着や、個人単独での潜入能力・戦闘力などは「忍者」のそれです
無隠という流派名もかなりアレ。
母親はデュラルか。それとも磁光真空剣が必殺技の特撮忍者か
忍術はあくまで「忍」術であって、厳密に定義すれば「武」術とは別個に考えるべきだと思いますが。まぁ細かい事は気にしない
チェ・ゲバラ海賊忍者なんてキャラ立ちすぎですよ!すごいよゲバルさん!

「五本指から始まる倒立の訓練は遂には指一本にまで至ると言う
大層な指の強さだ・・・その力への自負がこのルールを選ばせたと見るが違うかな?」

どこまで博識なのか無隠流の修行内容にまで詳しいオリバさん。それによれば、ゲバルは指一本での倒立をラクラクこなすそうな
「お前が自信のあるルールでやりたいんだろう?」というオリバさんの挑発めいた台詞に、ゲバルは鼻で笑って答えます

「怖気づいたと言うならルールを変えてもいいが。ピンチ力
(指で物を摘む力)ならアンタも負けちゃいないだろう
エピソードは俺の島にも届いていた。コインの四つ折り、缶ビール搾り出し。線路用の大釘をヘシ曲げる・・・」
「オーケーオーケーもう十分だ。ストーカーが趣味かなミスター2」
そう、オリバさんもオリバさんでやはり超人的なピンチ力の持ち主。このルールで別段ゲバルが有利ということはなかったのです
「ハンデはないハズだ」
「気遣い無用ってワケだ」

ゲバルが突き出したバンダナの端をオリバさんがゆっくりと摘む。互いに「ルーザールーズ」での勝負を承諾したのだ





「始まっているのかな?坊や」
「ああ。始まっていますとも」
瞬間。1mほどあった二人の距離が一瞬で詰まった。懐に潜り込んだゲバルの先制弾がオリバさんを捉える!

微動だにせず、まともにアゴに喰らうオリバさんの表情がなんか妙に可愛くて笑えるぞ!
炸裂!ゲバルアッパー!

あの夜、マウス・歯の顔面を血の詰まったバルーンにした禁断のビッグパンチ
いくらオリバさんといえどもその場に踏ん張って耐えることかなわず、車に跳ねられたダミー人形のように派手にブッ飛ばされます
ピシィ――――――ッ

いやバンダナ裂けるだろ普通
ゲバルのパンチも凄いし、体重100kg以上の男が吹き飛ぶ衝撃を指力で押さえ込む二人も凄いんですが
その衝撃を受けきって
ビクともしないバンダナにはもっと驚きです

オリバさんの両脚が地面につくよりも早く。電光石火で見舞われるゲバルの追撃!これまたクリーンヒット!
ファーストアタックはゲバルで幕を開けた超雄二匹の大怪獣決戦。オリバさんの反撃や如何に!?次号へ続く!


44話

超雄と超雄

知ってるさ・・・
アメリカで一番喧嘩が強い男は こんなパンチじゃ倒れない
しかし 倒れなくてもいい

先制弾ヒットと同時に一気呵成に前に出るゲバル。常人相手ならば一撃決着になるであろうパンチを雨あられと叩き込む
だがしかし相手はあの「アンチェイン」ミスターオリバ。ゲバルもこのラッシュで勝負がつけられるなどとは思っていません

忘れてくれればいいッッ
あのちっぽけな布を そのきれ端をつまんでいたことを
ほんの一瞬 忘れてしまえば・・・ッ

正直自分でもオリバさんを相手にKO勝ちは難しい。ならばどうするか?KOできずとも、「勝負」という形式で勝てばいい
難攻不落の超肉体とて、一発いいのが入れば一瞬の油断が生まれるハズ。それを狙ってルーザールーズに持ち込んだのだ
なんか急に「策を弄す小物」になってしまった感のあるゲバル
海の勇気をもらって戦いに臨むトコまでは最高にカッコよかったのに・・・やっぱこの二人はルールなしで戦ってほしかったなぁ
と、一発いいのが入ってグラリと大きくよろめくオリバさん上体。そのまま後方にゆっくりと倒れこもうとしますが・・・
「う・・・うおッ!?」
倒れながらも、摘んだバンダナは離さないオリバさん。逆にその体重に引っ張られ、思わず両手で端を掴んでしまうゲバル
「見ろよオイ!オリバの巨体がバンダナ一枚で支えられて・・・ッしかもッ」

「ゲバルが両手でやっと保持してるのに対してあの持ち方ッ!」
「・・・・ッッ!」
ゲェーッ!?ゲバル優勢かと思いきや、早々に優劣明確になってしまったピンチ力
必勝を期して自ら申し込んだルールで、すぐさま自分が追い込まれてしまうカタチになってしまったゲバル
うへーマジかよ・・・やばいな。ますます小物化の悪寒が・・・





「オヤ・・・?持ち方を変えたのかい?しっかりと両手で鷲掴みなんて・・・
カッコわる。このルールを発案した貴族達もさぞ嘆いているだろうぜ」

想定外の展開に額に冷や汗を浮かべたゲバルに対し、余裕綽々の表情で上体を起こすオリバさん
皮肉たっぷりのマウス攻撃を浴びせると、観客達も驚く更なる挑発行為で畳み掛けます
「俺もアンタにならって持ち方を変えたいんだがいいかな?
どーもコイツはいけねェ・・・・だから・・・
こうだ」

「小指ィ!?」
なんと小指と親指でバンダナを摘んだオリバさん。この掴みでルーザールーズを続行しようと言うのか
その誰もがオリバさんの超パワーを知る観客達でが、流石にこのパフォーマンスには騒然。オリバさんは本気なのか?
「知っているか。古の貴族達は食事時、小指を立ててグラスを持ったという」
突然黒岩省吾のように謎の薀蓄を語り出すオリバさん。貴族の食事がどうしたって?

「何故か?当時は貴金属並みに貴重だったスパイスを節約するため
このようにつまむことがマナーだった

グラスで小指を濡らしてしまうと、図らずもスパイスを余計に取りすぎてしまう
つまりマナー違反を防ぐための習慣だったワケだ」

ふーんなるほど。オリバさんが黒岩都知事並みに博識なのはわかりましたが。それが今の状況にどんな関係があるのでしょう

「おわかりかなミスターゲバル。『慎ましさ』・・・君ならワカるハズだ
君に流れる日本人の血が日出國の美徳である慎ましさを求めるからだ
さァ・・・いつまでそんな下品な鷲掴みを続けるのかね?
慎ましさを・・・そう、誇りを取り戻すのだ!」

慎ましさは日本人の美徳。それを引き合いに出して「そんな両手の鷲掴みは下品だ」と言うオリバさん
要するに自分が小指で
バンダナを摘むという挑発行為により、
お前だけ両手持ちなんてズリーじゃん。俺みたいに片手に戻せよ

と講義しているワケです。なんだよもう。オリバさんもオリバさんで大概セコいな
なんか読者に対する株を著しく下げてしまった超雄二人でありますが。この言葉をヒゲを抜きながら聞いていたゲバルの返事は・・・






き、汚ねえーッ!!!!
「知るかよバーカ」とばかりによじったヒゲで目潰し!忍者らしいと言えば忍者らしくていいんですけど
客観的に見てただの卑怯モンです
目潰しなんて使うなら最初からルール無しでやれよ、と。ルーザールーズのルールで「飛び道具の目潰し」てどうなのさ
チクショウ海の勇気はいったいどこに・・・
ゲバルなんだかなぁな感じになってきたところで次号へ続く!


45話

燻り

不意を付いたヒゲ手裏剣がオリバさんの右目を急襲。所詮はヒゲなので、別に失明するとかそんなダメージはありません
目的はあくまで目潰しによって生まれる一瞬の隙!素早いタックルでオリバさんの腰にガッシリ組み付いたゲバル
強烈に大地を蹴り締め、渾身の力でその肉体をブン投げる!

なんじゃコリャあー!!
100kgは軽く超えてるハズのオリバさんを、頭上遥かに高い高ーい。この身体のどこにこんなハチャメチャなパワーが!
この漫画でこんな芸当ができるキャラが他にいるとしたら、せいぜい勇次郎とジャック兄ちゃんくらいでしょうか
そういえば大男との相撲でも、がっぷり四つに組まれた状態からまったくビクともしない腰の強さを見せていたゲバル
これは単純なパワーだけでなく、戦闘時における重心移動の見切りが可能にする離れ業かと思われます。無隠流すげー




人をブン投げることはしょっちゅうでしょうが、自分がブン投げられた経験はあまりないであろうオリバさん
思わずハンカチを離しそうになり咄嗟に5本の指で鷲掴み。華麗に着地は決めたもの、ゲバルの嘲笑を浴びることに
「オヤ・・・持ち方を変えたのかい?そんな鷲掴みなんかにして」
前回自分が言った台詞をそのまま返され、額に屈辱の汗をかくオリバさん。そんな彼を更なる追い討ちが襲います
「ハッ!かっこわるッ」

「だってさ・・・」

ぴしゃーん!なんてことだ
オリバさんいい表情しすぎ
「君の恋人が世界一強いところを見せてやる」と言って戦いに臨んだのに。彼女から出てきた言葉は「かっこわるッ」
なにせマリアの一言一句にいちいち刺激を感じるオリバさんですから、この言葉は相当堪えたに違いありません
「持ち方はこうじゃなかったっけ?ん?」
”ズバグゥッ!!”
いつのまにか親指と小指でハンカチをつまんでいたゲバル。皮肉たっぷりにそう言うと、呆然とするオリバさんにハイキック!
間髪入れず喉元に虎爪の一撃を食らわすと、更に電光石火でテンプルに強烈な肘打ちを叩き込む。全弾急所攻めです
ゴッ!ガッ!ベキィッ!
まさに嵐を体現したかのような連続攻撃にまったく反撃できず、両目を閉じてボタボタと鼻血を噴出すオリバさん
しかし今の彼にツライのは肉体の痛みなどではない。最愛の恋人・マリアに失望感を与えてしまったという心の痛みである
スマない・・・スマないマリアッッ
すっかり退屈させちまったね
でももう大丈夫だ わたしは・・・

男 ら し く 生 き る






「ゲバル・・・なぁ、ゲバルよ」
「・・・?」
ボコボコに殴られながら、静かにゲバルに話しかけるオリバさん。どうやら「アンチェイン」のスイッチが入ったようですよ
「君は・・・いつまでハンカチなんか”握って”るんだい?」
「握る?・・・・って・・・・この持ち方がか?」

「わたしの左手を見ろ」
ゲバルの持ち方はさっき皮肉を言った時のまま、親指と小指だけでつまんだ状態。およそ「握ってる」とは呼べませんが・・・
言われるがままオリバさんの左手に視線をやったゲバルは、そのとんでもない持ち方に我が目を疑います

もうつまんですらいない

もう 握らない・・・
左手の上にハンカチの端をそっと乗せているだけ!
煽り文の「これがルーザールーズ究極の持ち方だッ!」はまさに言い得て妙。これ以上の持ち方はありません
『相手の自由を奪う』のがゲバルの流儀だとするならば
それに縛られぬのが『アンチェイン』!
ビスケット・オリバいよいよ本領発揮!次号、その驚愕のスーパーパワーに刮目せよ!


46話

ジルベルトスタイル

シシリー島出身のホテル王 ジャン・ジルベルト
1947年パリのシャンゼリゼ通りに外国人で初の超大型高級ホテルを建てたことで
観光客の賞賛と地元住民の顰蹙を同時に買い新聞を騒がせた
この男のもうひとつの顔がマフィアの一員であることは世間の知るところであったが
1961年 上納金にまつわる裏切り行為が発覚。即刻組織内で処刑が決定した
1962年1月4日満月の夜
ブローニュの森にてマシンガンの銃口の取り囲む中処刑は行われた
処刑の方式は―
離したほうが即銃殺されるルーザールーズマッチ
しかも若く巨漢の対戦者にはしっかりとハンカチを握らせたのに対し
齢70を超えるジルベルトには
手の平に乗せるだけという酷いハンデつき
当然奇跡など起ころうハズもなく、勝負は一撃で決着
仲間達の一斉射撃によってジルベルトの人生は閉じ
たがそのルールだけは名を残した

ルーザールーズ
『ジルベルトスタイル』

ジルベルトスタイル発祥のエピソードで幕を開けた冒頭。オリバさんの挑発をゲバルも受けて立ち、
2人の戦いは手の平にハンカチを乗せた状態での殴り合いに移行。そのクレイジーぶりに囚人達も騒然です
「ホントに乗せたまま殴ってるぜッ!」
「どっちも譲らねェッ!!」
ゲバルが至近距離から見事な後ろ廻し蹴りを放てば、オリバさんは頭上から振り下ろすハンマーパンチで反撃
頭が地面に突き刺さる勢いで叩き伏せられるゲバルですがハンカチだけは落としません
常人ならば即死してもおかしくない一撃を受けてすぐに起き上がります。まさに両雄一歩も引かず!




しかし観戦する囚人・看守達のボルテージが上がりに上がる中、たった一人この試合を冷めた目で見つめる人物あり
我等の影薄主人公・刃牙くんです
「貴族だマフィアだと・・・能書きだけはたいそう景気がいいが
その実なにをやっているかと思えば
遊戯のようなハンカチゲーム
茶番だ。バカバカしい」
「お、おいバキ・・・」
ルーザールーズマッチを「遊戯だ、茶番だ」と言い切り、さも興味を失ったように前列から去っていく刃牙
俺もこの2人には変なルールなしのガチンコ勝負で白黒つけてほしかったので、刃牙の意見には同意なんですが
2人に無視された時の負け惜しみで言ってるようにしか聞こえないのが哀しいところ
それにしても刃牙は観戦をやめて何処に行くつもりなんでしょうか

「風が出てきたぞ!」
「見ろあの2人・・・・・ッ!」

「飛ばされないように協力し合ってるッ!?」
「やるかそこまで・・・ッ!」

勝負のほうは依然白熱。刃牙が「茶番」と斬り捨てた戦いで、しかし互いの意地と尊厳を賭けて戦う二人
強風が吹いてくるやハンカチが飛ばされないよう協力して勝負を続行する態度に、観客達はただただ感心するばかり
そんな観客達の賞賛を背中に浴びつつ、オリバさんは最愛のマリアにちらりと視線をやります
『見ているかマリアッ!これが男の勝・・・・・負!?』
「どうだい男らしい俺、格好いいだろう?」と。恋人の前でばっちりアピールできたオリバさん
きっとそこには惚れ直した視線で自分を見つめるマリアの姿が・・・・・・姿が・・・・・・すが・・・?






なにィ―――――ッッ!?

ぐーぐーすやすや。目を疑う光景!なんとそこには
マリアを肉布団にして気持ちよく眠る刃牙の姿。うーむ眠り心地はかなり良さそうだな

そしたら当然こんなんなってしまうオリバさん
読者を飽きさせないなこの人の百面相は

更に呆然自失となったオリバさんのせいでハンカチも風で飛ばされてしまいます

や、やりやがった・・・影薄主人公のクセ!
『最高のタイミングで横合いから思いっきり殴りつける』
ヘルシングの有名な台詞から抜粋ですが。まさにこれを地で実行した刃牙
場外からのチャチャ入れにより、テンションMAXに到達していたルーザールーズを強制終了させてしまいました
勝負はどうなる?当然ノーコンテスト?いやそれより何より
オリバさんの刃牙への反応は?
色々と目が離せないことになった次号に続く!


47話

破壊

「なにやっとんじぁアアアアッ!」

目の前で最愛の恋人と同衾されたオリバさん。白目を剥き、血管を浮き立たせて唾を吹き飛ばしながら怒鳴り散らします
まさに一触即発。命知らずの暴挙を敢行した刃牙は激昂したオリバさんに縊り殺されてもおかしくない状況ですが・・・
「・・・は?何やってるって・・・なに?何やってるはアンタでしょうが」
なんと当のマリアは、突然ベッドに乗っかり自分に抱きついてきた東洋の少年に別段嫌悪感は抱いていない様子
むしろその嫌悪の表情は、怒り狂うオリバさんに向けられたではありませんか

「大の男がハンカチ一枚巡って 握った 掴んだ 摘んだ 乗せた
より危ういほうが男らしい?バカバカしい・・・この子が眠ってしまうのも無理ないわよ
男勝負はシンプルな倒し合い

他に方法なんてあるの?」
ワザとオリバさんに見せつけるように、刃牙を抱き寄せて頬ずりするマリア。まったくもって言う通り
ルーザールーズ決戦が始まったときから読者が抱いていた不満を代弁してくれました。おかしいんだよこの2人の言動
「喧嘩だけは誰にも負けたくない大人」
って2人ともあんなに熱くバチバチ火花散らしてたクセに。
だったら喧嘩で白黒つけろよと
勝負直前になって変なルールマッチを申し出たゲバルが
支離滅裂。それで勝っても「喧嘩に勝った」事にはならねえ
勇者からもらった海の勇気が泣くよホント。だからハナっからガチンコでやりゃよかったのにそもそも(以下延々の続くので省略)





その通りだマリア・・・
私は間違っていた・・・・

”グチャアッッ!!”
「うわあスッゲエ音・・・ッ!」
「この試合初めてのMAXの一撃だぜ!」
最愛の恋人にルーザールーズのナンセンスさを指摘され絶望に打ちひしがれるオリバさん。呆然と立ち尽くすその顔面に、ゲバルの蹴りがめり込む
派手に鼻血を噴出しながら後方へ吹き飛ぶ頭。ゲバルは勝機とばかりにその耳にイヤーカップの一撃を叩き込む!鼓膜破りである
そう、これはあの相撲の大男を倒した
『髪の毛で三半規管破壊の術』の仕掛けッ!!
どこで間違えてしまったのか・・・
クリクリと髪の毛をよじり、例の必殺こよりを完成させたゲバル。よどみのない動きでこれをオリバさんの耳へ挿入します
器官へと絡みつく髪の毛。「あとは思い切り指を引っ張りさえすれば・・・ッ!」勝利を確信してその右手を引っ張ろうとしたゲバル
だがしかし。
その右手はその場から1mmたりとも動かすこと叶わなかった
オリバさんの左手にリストを捕らえられ、万力のような握力でガッチリとその場に固定されていたからである
もう一度自分に問い直したい
笑うオリバさん。呆然とするゲバル。この瞬間、もはや2人の勝負は決着していた






もう一度君に

見直されたいッッッ

その時いったい何が起きたのか。はたして被弾したゲバル本人は理解し得ただろうか?
だが観客達は見た。全てを破壊する超人の一撃を
どちらが真の”アンチェイン”かを

「PAN」
すげ。アリゾナ刑務所を上空から見下ろす構図で擬音だけが響くという、凄まじい演出
さながら子供にぶん投げられたカエルのように
十数mもブッ飛んで壁に激突するゲバル

「ウワアァッ壁だッ!壁まですっ飛んだッ!」
「一発で決着だァッ!」
5秒くらい壁にめり込んだ状態で留まった後、ずるりと落下して動かなくなるゲバル。これはいくらなんでも流石に決着でしょう
「やればやれるクセに。タヌキ親父め」
「ふふ。タヌキはアンタでしょうが」

タヌキ寝入りをしていた刃牙がムックリと起き上がり「やれやれ」といった感じに呟く。それを聞いたマリアも笑みを浮かべてこの一言
結局この2人はオリバさんの勝利を確信していたということか。ヌルい勝負してるオリバさんを見かねて、2人で焚きつけたんですな
ゲバルをもってしても縛ることの出来なかった「アンチェイン」の力。次号いよいよ刃牙が挑戦か?

でも考えてみると郭爺様もこれくらいの勢いで壁に激突したけど「調子こいてんじゃねえ!」とか言って反撃してきた前例があるな
オリバさん勝利に見せかけてゲバル再起動という、意表を突く展開も有り得るか?まぁ普通に考えれば十中八九決着だとは思うけどな


48話

暴風

全てを超越する「アンチェイン」の力。刃牙の間接介入により、ついにそのスーパーパワーを炸裂させたオリバさん
たった一発の掌底でゲバルを
タイガーショットのボールにしてしまいました
「マリアさん・・・柔らかくて暖かくて・・・スッゲェいい香りでした
しかも優しい」

「用は済んだんだろ。行きな」
穏やかな表情で無礼を詫びる刃牙。照れ隠しにそっけない返事を返すマリアプリティね
13歳で母と壮絶に死別している刃牙にとって、彼女の持つ豊満な母性はさぞかし安堵感を覚えるものだったのでしょう
でもその割にはマリアに頬ずりされた時
あからさまに冷や汗かいてたよな刃牙

「スゲエな。さすがはアメリカ最強」
マリアに一礼し、今度はオリバさんと向き合う。恋人と同衾したのですからブッ殺されても文句の言えないところ
しかしそれはオリバさんと戦いたい刃牙にとっては好都合か。そこまで考えてあの行動をとったのならなかなか冴えてるよな

「バキ・・・礼を言う」
「へ」
「キサマのせいで・・・あの気難し屋のマリアがなごんでいる」

ところが刃牙の思惑に反し、オリバさんは怒るどころか恋人をほぐしてくれた刃牙にお礼を一言
「あ・・・いえ・・・」
予想外のレスポンスに「次は俺とやろう」などとは言い出せなくなってしまう刃牙。「いえ」なんてマヌケな返事が笑えます





「アンチェイン!アンチェイン!」
「強ええッ!時代は変わっちゃいねェッ!」
「やっぱりオリバがキングだッ!」
ワアアアアアアアアアアアアアアア!!
「いい気なものだ。わたしの敗北を望んでいたくせに」
「そうは見えないけど」

目の覚めるような決着に観客達は割れんばかりのオリバさんコール。恐れ、憎まれていても、それ以上に彼等にとって「アンチェイン」は英雄なのだ
かくしてアリゾナ刑務所最大のイベントは王者の防衛でその幕を閉じ・・・・・るかと思われた。
その時
「ヤイサホー!!!」
アリゾナ刑務所全囚人の大歓声をたった一発で切り裂く、雷鳴の如き大声。声の方向を一斉に振り返る囚人達。発した主はもちろん・・・・











「月夜の晩にィィ♪錨を上げろォォ♪
嵐の夜にィィ♪帆を上げろォォ♪」

「星を標にィィ♪ヤイサホー!!
宝に向かえェェ♪ヤイサホー!!」

ゲェーッ!?初号機再起動キタァー!!!
想定内ではあったけどアレ喰らって起き上がるのかよ!あの超絶燃えだった演出はいったい・・・
なにやら楽しげな歌詞の海賊の歌を歌いながら、むっくりと起き上がるゲバル。砂を掴むとそれを顔面にぐぐーっと擦りつけます
出ました。マウスを瞬殺したあの夜と同じ

”戦いの化粧ッ!”
なるほど考えてみるとたしかに先週までのゲバルはノーメイク。この化粧が彼の「戦闘スイッチ」だとするならば
ここからがJ・ゲバル本当の本気、という事か

「慎み深くをハネ返し〜♪耐えて忍を退けろォ〜♪」
さながら「十戒」のモーゼのように。真っ二つに割れていく観客達の海を悠然と歩を進めるゲバル
その胸にはオリバさんから受けた掌底の痕がクッキリと。
まるで何かの紋章みたいね
「満ち足りることに屈するなァ♪」
ゲバルが身をかがめて大地を蹴る。猛スピードでオリバさんへと駆ける大海原の暴風!刃牙もその迫力に息を呑む!

『ここからだ・・・・・
ゲバルはここからだ!!!』

真正面からオリバさんの腹部に突き刺さる、槍のような前蹴り!白目剥いて攻撃するゲバルが怖いぞ!
ぶおん!と宙を舞うオリバさんの巨体。数mも吹き飛ばされて、受身も取れずに頭から落下します

「満ちたりないとなおも言えぇ〜♪

追撃がないようだが・・・怖気づいたのかな?ン?」
瞳に宿すは狂気の光か。瞳孔開いててメチャクチャ怖い表情してますゲバル
「ミスター2」J・ゲバル本気モードで反撃開始!次号へ続く!


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