58話

刃牙の自由

「出られるのか あるいは出られないのか
知りたかったのはそれだけなんだ」
「ナルホドね・・・晴れてアンチェインに成りおおせた・・・と」
所長達を人質にまんまと脱出に成功しておきながら、再び刑務所へ戻ると言う刃牙
目的はあくまで自分に課した「アンチェインに成れるか否か」のテスト。それさえ確かめれば外に用はないのだ

「祝福してくれるかい?」
「ふふ・・・立場上そうもいかんのでな
再び刃牙の両手には手錠が嵌められ、巨大な正門が轟音を立てて開いていく・・・と、そこで少年を待ち構えていた人物あり

オリバさんのお出迎え!ドドドドドて
脱走した刃牙を追うつもりだったのか、グラサンかけてバイクにまたがってます。すごく・・・アメリカンです
バイクはハーレーだったらもっと格好良かったのに





「脱走は諦めたのか?」
「いや脱走ではなく―外出・・・?」
「いずれにしろだッ!」

刃牙のへらず口を一喝するオリバさん。その珍しい剣幕に所長以下職員達が縮み上がります
『怒っている・・・あの取り乱した事のないオリバが・・・!』
初対面の時からから今まで、刃牙に対しては割と「寛容な叔父さん」的フレンドリーさで接してきてくれたオリバさんですが
今回の刃牙の行動に関してはどうも彼の癇に障ったらしく、周囲が見てすぐにワカるほどに怒りのオーラを噴出しています

「ミスターオリバ・・・・
俺の自由がオモシロクないのかい」

「俺と並んだつもりか。ぼうや」

『私以外の自由は許さん!』
そういえばこの人、死刑囚を捕まえに日本に来たときこんな事言ってましたっけ
どうやら自分の「アンチェイン」という称号にそれなりの自負と執着を持っているようです。怒ってるのはそのせいか
そんなオリバさんに対し、よせばいいのに更に挑発の言葉を浴びせる刃牙。
身の程知らずです
「武器を使わず堂々と外へ。用が終れば帰る
俺とあんた―いったいどこが違うのかなァ」
「俺と並んだつもりか?」と凄んだオリバさんに「どこか違うのか?」という、まったく悪びれない返答
ついに「優しい叔父さん」も腹に据えかねました

「マイケル。手錠を外してやれ
外出から戻らなかった時のみ教えるつもりだったが

日本には”お灸を据える”という言葉がある」
ジャケットを脱ぎ捨てて身構えるオリバさん。なんつー特急展開。ここで刃牙VSオリバさんなのか!
あ、ちなみに「マイケル」は所長の名前ね。アイアンマイケルはこの場に居ませんので混乱しないように





「いいよ外さなくて」
”ビキィンッ!”
刃牙の手錠を外そうと鍵を取り出した看守を制し、鋼鉄製の鎖をいとも簡単に引きちぎってみせる刃牙
こんな手錠など、刃牙がその気になればいつでも壊せたのだ
眼前には自分に「お仕置き」するべく怒気を放出するる規格外の超人。刃牙いよいよ念願の対決にこぎつけました
あとは全力を出し切ってこの強敵を打倒するだけ・・・・・あれ?

「『2日前のゲバルとの喧嘩で多少ダメージは残っちゃいるが。相手は子供だ問題ない』
・・・・・・・って」

「嘗めてんのはてめェなんだよォッッ!」
えー!?刃牙逆ギレ。挑戦者の立場のクセに態度デカすぎます
「今日は見逃してやる。飯食って出直してこいッ!」
あまつさえ今日は見逃してやるという暴言まで!身の程知らずぶりここに極まれり
ついにオリバさんに喧嘩をふっかけた刃牙!決戦の日取りは?
次号へ続く!


59話

追う者、追われる者

『ミスターアンチェインに対してなんてことをッッ』
「飯食って出直してこい!」天下のオリバさんに対する、あまりにも命知らずな刃牙のタンカ
ゴクリと息を呑み所長以下看守達。顔面蒼白になって、そーっとオリバさんの顔色を伺います・・・・って

5分前までは人間だった
どうも読者の想像を遥かに超えてオリバさんの勘に触ったご様子
瞳孔を見開き、顔中に血管を浮き立たせたその顔は正直ちょっとしたホラーです
「うォ・・・!」
「ヒィッ!」

我先にとその場から飛び退く所長達。さもありなん
爆弾の導火線に火がついたようなモンです。逃げないワケにいきません
哀れ龍の逆鱗に触れた刃牙はズタボロの雑巾と化してしまうのか?・・・と、思いきや

「ナルホド・・・君の言う通りだ。私はまだ朝食を済ませていなかった
これは迂闊と言うべきだろう。貴重なアドバイスだったよ・・・ハハハハ!」
怒りの形相を一瞬でぬぐい去ったオリバさんが、一転ニコニコ顔で刃牙の挑発を笑い飛ばしたではありませんか
さっきの怒りの表情は刃牙をビビらせるための演技だったのか?いやいや当然そんなハズはなく





「大人ってのは大変だな。”元祖”Mrアンチェインとしては
新参者のアンチェインに挑発されていちいち反応していたのでは沽券に関わる
ここはひとつこみ上げる怒りを殺して貫禄を示さねばならない・・・ってか
当たらずとも遠からずってトコだろう?」

せっかくオリバさんが優しい顔を見せてくれたというのに、安堵するどころか更に挑発的態度を取り続ける刃牙
そう、「演技」は怒りでなく笑顔のほう。オリバさんの本心は腹わた煮えくり返っているハズなのである

「おいおいどうしたんだバキくん!私はただ朝食を取り忘れたと言っているだけなんだよ
元祖とか新参とか・・・ヘンだぞ今日のバキくん♪」

そのハズなのに終始ニコニコ笑顔を絶やさず、ユーモアたっぷりに刃牙の接するオリバさん
江戸川筆頭代理みたいです。ごっついのう〜
「いいよもう。自分が自由か不自由かなんて俺にとっちゃど〜でもいいことだ
自分こそが世界一の自由人だと勘違いしてるオッサンに教えたかっただけ」

フレンドリーに肩に置かれたオリバさんの手をピシっと跳ね除け、刃牙の挑発は止まるところをしりません
「やろうと思えば刑務所くらい俺も出られる。ただ・・・
俺は今たいした不自由を感じちゃいないんでね。外出する必要もない
さ、戻ろうや所長。バカバカしい・・・
世界一自由でなければ自由を感じられないなんて

なんて不自由な男だい」

「私以外の自由は許さんッ!」あの台詞にも見て取れる、オリバさんの本質を看破した刃牙の一言
この世の誰よりも自由であるハズの
”アンチェイン”ビスケット・オリバ
しかしその実は間逆。世界に轟くビッグネームゆえ、彼はその名に見合う自分を確立する義務と必要があった
すなわち「世界一自由な自分」を誇示していないと、彼は自分のアイデンテティを失ってしまうのである
「カワイソ・・・」
所内に戻る刃牙が、すれ違いざまに
ボソッと放ったトドメの一撃。これは効くな
オリバさんは何も応えない。ただ黙って俯くだけだ





「あ・・・あのミスター・・・これ・・・車庫に入れておきますね」
刃牙が建物の中に消えてもなお、魂の抜け殻みたいになってその場に立ち尽くすMrアンチェイン。マジで可哀想
ひとりの看守がおずおずと話しかけ、彼のバイクを車庫に入れてあげようとします
「ん・・・・あぁ。いや私がやろう」
「あ ハ、ハイ」
ようやく我に返ったように顔を上げ、「あぁ車庫にね」とのろのろバイクのハンドルに手をかけるオリバさん・・・って
”バオッ!!!!”

まるで野球ボールか何かみたいに片手でバイクぶん投げました
見事車庫にストライクし、木っ端微塵にぶっ壊れるバイク
目ん玉を見開いてビビりまくる看守に、まるで無表情のまま言い放つオリバさんがマジでちょっと怖いぞ
「とっ替えようと思ってたンだ。新車にしといてくれ」
Mrアンチェインマジ切れ!
刃牙、もう泣いて謝っても許してもらえそうにありません。果たして気になる決戦の日取りは?次号へ続く!


60話

今週は刃牙が1コマも登場しないのにサブタイがコレです。ホント意味わかんねぇな・・・
追う者

先週ラスト、初登場時以来見せたことのないほどの怒りっぷりを読者に見せつけたオリバさん
たかが17そこらの小僧に己が心底を論破されたMrアンチェインの心境は?2人の激突の日取りはいつになるのか?
全国の読者が心待ちにしていた今週号の内容は
刃牙は一切出ず、オリバさんの怒りにも全く触れられてない
1話まるまる、ただひたすらオリバさん&マリアがほんわかとする話でした。なんてことだ

ご機嫌斜めのマリアとジャンケンをするオリバさん
グーだかパーだかチョキだかよくワカらない
曖昧な手を出し続け
マリアが何を出しても「また私の負けだ」とマリアに花を持たせます

勝つも負けるも 言った者勝ち
世界一曖昧なゲーム

まぁそんな曖昧な手を出せばな

オリバさんの優しさとジョークのセンス、マリアを包み込むような無限の愛が感じられる良いシーンです
やがて満足して眠ったマリアを見届けると、自分もいそいそと服を脱いでベッドに横になるオリバさん
すると寝ていたと思っていたマリアがポツリと呟いたではありませんか

「ダーリン・・・・今夜は・・・・

わたし一度も勝てなかったけど今度は1つも譲らない」
自分の負けのつもりで曖昧な手を出し続けたオリバさんに対し、最愛の恋人は「ずっと貴方の勝ちだったわよ」と一言
刃牙に引っ掻かれてささくれ立っていたオリバさんの心を、マリアの愛がみるみる癒してゆく
まさに「勝つも負けるも言った者勝ち」

世界で一番優しいゲーム
”愛”ゆえに曖昧。答を出すことだけが全てではないッ
次号へ続く!




煽り文のセンスもいいし、この話だけ単体で見れば2人の愛情を読者に伝えるいい話だったとは思うんだけど・・・
先週の直後にもってこられると肩透かしもいいトコだよ!
構成力があまりにも・・・と言うか何と言うか。読者のフラストレーションは溜まる一方です
怒り頂点のオリバさんと即!対・決!の流れに入ったほうが自然なのにな。このエピソードの挿入はタイミング的に不自然
こういうモロ時間稼ぎ回をやられると、今更ながら板垣先生が毎週毎週ギリギリでその話を考えてるってのがワカるな・・・


61話

規律

アリゾナ州刑務所、通称ブラックペンタゴン。全米の犯罪エリートが集まる世界一の最凶刑務所
所内のいたるところには
『NO WARNING(警告なしで撃つ)の注意書きが
そういえばゲバルと相撲したあの大男は、一切の釈明もできず理不尽に射殺されてましたっけ
懲罰房
幸いにも撃たれる前に捕らえられた、ある意味では「幸運者」が入る部屋・・・ではありますが―

「せ、先生ィ・・・お願いだ・・・肩が・・・腕がちぎれそうなんだッ!
頼むッ!指錠だけでも外してくれェッ!
頼むよッ!逃げられやしねえッって!先生ェッ!」

「うぅ・・・水を・・・水を一杯だけ・・・!」

「い、いつまで続くんだ・・・?もう二度としませんッッ!」
既に刃牙が入所してすぐに入れられているので、懲罰の内容は読者の知るところです
両腕を窮屈な形で背中回しに固定されて指錠をかけられ、房内の温度を高く設定されて水分も与えず延々と放置
刃牙のような関節の柔らかい人間ならばそうでもないんでしょうが、普通の人間には前者が凄まじい苦痛です
シャバでは人に頭など下げたことないであろう悪党どもが、情けなく看守にへつらって許しを請う。まさに生き地獄

そんな他の受刑者達の悲鳴が響く中、既に懲罰房体験二度目となる刃牙はすっかり慣れたもの
蒸し風呂のような部屋で額に汗を浮かべつつ、すやすやと寝息を立てていました・・・・が
「元気そうじゃねェか」

オリバさんの訪問です
先々週の怒りっぷりを見るに、刃牙に対する精神状態は相当アレになってるハズですがどうなんでしょうか
先週のマリアに癒されて少しはクールダウンしてるかな?





「バキよ・・・現実とは厳しいものだな
いかに私の不自由を笑い、自分の快適を叫ぼうが
この現実
私はこれから食事をする。贅を尽くした10万キロカロリー。コックも大変だろうな」

懲罰中の刃牙にいきなり自慢話を始めました。やはり怒りはおさまっていないようです
「上等な食前酒に最高級ワイン。デザートにはコニャックを注いだマスクメロン
極上のシェリー酒、葉巻・・・食事が終れば散歩もいいな。キングサイズのベッドで昼寝もいい」

そう言いながら刃牙に近づき、おもむろにズボンのチャックに手をかけるオリバさん。ゲェーまさか?

ボチョボチョボチョ・・・・

俺の好きなオリバさんは死んだ
まさかの放尿。シコちゃん&猪狩状態です。もうダメぽ
オリバさんが読者から好かれていた要素は、単なる強さではなく人間的な愛嬌というか魅力だったワケですが
この行動によってそれが粉々に瓦解してしまいました
刃牙を見下ろすその瞳は恐ろしく冷たく、読者の愛した普段のオリバさんの愛くるしさが微塵も感じられません

刃牙も刃牙で避ければいいのに何故か薄笑いを浮かべてされるがまま
スカトロ好きの変態かお前は





「噛み締めることだ。私のキミの境遇の差・・・
アリゾナ刑務所・・・
ここは私の国なのだッ」

チンチンをしまいながら刃牙に吐き捨てるオリバさん。これで彼の気は少しは晴れたのでしょうか
なんかもうなぁ・・・こんな情けない報復をするキャラじゃなかったのに・・・
そんな強引な小者化著しいオリバさんに対し、小便にまみれた刃牙は勝ち誇った表情でこう応えます
「オリバよ・・・誓ってもいい。ごくごく近い将来
アンタは俺に平伏する
どうか戦ってくれとッ 俺の挑戦を受けてくれとッ」

そしてトチ狂ったように高笑い。小便で壊れちゃった!
「ハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハ!」


すごく・・・血の繋がりを感じます

「オリバさんのほうから戦ってくれと頼む」とはいかなることか。刃牙には何か策があるのでしょうか
もしや
マリアを籠絡するとかじゃあるまいな。だったら刃牙主人公として黒すぎる
それにしてもこの展開だと
先週の話は完ッ璧に要らなかったワケで
先々週のオリバさん怒り心頭の状態から今週の話に繋ぐのが普通だよな・・・本当になんの意味もない時間稼ぎだったか
刃牙VSオリバさんいよいよ激突必死!次号へ続く!


62話

弱者

「〜ッ・・・・あ〜あ笑った・・・楽しませてくれるぜアンタ。なァ」
拘束され身動きの取れない中、小便を浴びせられながら尚も挑発を続ける刃牙。なかなか命知らずです
オリバさんがマジギレして本気パンチとか打ってくるという想定はないんでしょうか。今の状態だと回避できねえぞ
「考えてもみなよ。ここで一番偉いアンタがよォ
身動き一つ取れねェような俺に小便まで喰らわしてよォ
今の2人にはそれほどの差があるんだ。なのにどうよ・・・?
アンタときたらちっとも笑ってねェ」
核心を突く刃牙の指摘に表情が凍りつくオリバさん
そう。これほど圧倒的な境遇的優位にありながら、オリバさんは刃牙を前にして僅かな笑みさえ浮かべられない
その理由はただひとつ。いかに表面上冷静に装おうが、彼の本能的な部分が認めていたからに他ならない
『世界一自由でなけりゃ自由を感じられないなんて
なんて不自由な男だい』

この生意気な少年が発したあの言葉に対する―
言い知れぬ敗北感を

「ハハハハハハハハハハ!

笑わねェのかいミスターアンチェインッ
”笑えねェ”のかいミスターアンチェイン

ハハハハハハハハハハ!」
またもや狂ったように笑い出す刃牙。主人公のクセに本当に人のカンに触るイヤな笑い顔だな
ここまでコケにされても一言も言い返す言葉がなく、ただただ目をまん丸に見開いて押し黙るしかできないオリバさん
あらゆる分野で刃牙のそれを遥かに上回る才能を持つオリバさんですが、残念な事に口喧嘩は不得手だったようです






数十分後。すごすごと自室に戻ったオリバさん
既にテーブルには贅を尽くした10万キロカロリーのフルコースが用意されていました。うひょーうまそー

「ミスターご覧を。掘り出し物でございます。××年ロマネ・コンティ・マグナム
最高の当たり年でございまして・・・この一本が高級車一台分並の値で取引されるという
イヤハヤなんとも。ハハハハ・・・」

給仕の一人が恭しく持ってきたワインボトルは、一本の値段が高級車並みという極上モノのロマネ・コンティ
刃牙の悪口のせいで著しく気分を害していたオリバさんでしたが、ほほうそれはそれは、と早速テイスティングを

「見事な色だ・・・まるで鳩の血のような・・・上質なルビーを思わせる」
「はい」
ワインはまず目で楽しむ。
流石は本物を知る男、いきなり口をつけるような野暮はしません
その真紅の輝きを十二分に愛でた後、次はグラスに鼻を近づけ、香りを堪能します
「フム・・・これはスゴいな」
「はい」
「まずは花・・・ラベンダー。
イメージでは何種類もの赤い花
それも一本や二本ではない、一面の花畑だ。そこへ微かになめし皮・・・
さらに日本の梅干しに似たものが混じり、タダ事ではない旨味成分を予感させている」

なんかオリバさんかっけーぞ。これまで渋川先生やマリアの前で見せてきたひょうきんさ、茶目っ気さがなりを潜め、
内側からにじみ出るような知性というか気品を感じまくり。ものすごいインテリ中年に見えます
そして静かに試飲。モニュモニュと口の中で舌を転がし、その繊細な味わいを心ゆくまで堪能します

「ハハ・・・さすがだな」
「で、ございましょう?」

「純粋無垢なピノノワールだ。見事な果実の味わい
樽の熟成香 豊かな土壌からくる土の香り ハーブ 若干のタバコのニュアンス・・・
たった一口の液体だというのに・・・
まるで100人編成のオーケストラ
莫大な数の味が複雑に絡み合っているにもかかわらず
そのどれもが誇示しすぎることなく―そのどれもが緻密なまま
完璧なバランスだ」

田崎真也も舌を巻く寸評です。ソムリエで食っていけるよオリバさん
ミスターアンチェインの大絶賛に終始笑顔の給仕。やっぱ相手がこれだけの食通だと、給仕もやり甲斐あるだろうな

だがしかし次の瞬間。オリバさんの表情が歪み、給仕が思いもよらなかった言葉が発せられた





「しかしだ。この葡萄を醗酵させただけの液体のどこに―
10$で売られる手頃なワインの10000倍もの価値がある?
ウマさはせいぜいが19倍。喜びもせいぜいが22倍だ」
確かに最高級ワインの名に恥じない味わい。だがしかし実際冷静に考えて高級車1台分の価値があるのかと
至極まっとうな感想です。金銭感覚の麻痺した金持ちどもに聞かせてやりたい言葉だ
おもむろに給仕の手からワインボトルを取り上げると、ラムネの蓋を開けるように瓶の口を上から叩きつけるオリバさん
”バシャッ!!!”
オリバさんのパワーとスピードでそんなことをしたものですから、ワインボトルは空気圧によって粉々に粉砕

上等な料理にワインをブチまけるかの如き(ry
しかしワインでよかった。これがハチミツだったら勇次郎に頭皮を剥がされるところですよ!(違
「所長を呼べ」
腹の底から搾り出すような低い声でそう告げるオリバさん。もはや刃牙へ対する怒りは己が内に留めておけないようです




「スマンなバキ・・・氷を用意したいところなんだが・・・」
一方その頃、懲罰房の刃牙は爺さんにコップ一杯の水を飲ませてもらっていました

「うンめェ〜〜〜〜」
最高級ワインに満足せぬ者と、たった一杯の水に感嘆する者
いよいよ刃牙との直接対決?それともまだ何か時間稼ぎの話を挟んでくるか?対極の両者の対比で次号へ続く!


63話

平伏す

「試合をしたいのだね。ミスター」
「ほう・・・何故わたしが試合をしたがると?」
オリバさんの部屋に呼ばれた所長。どうやらやっと試合段取りの運びとなったようです。待たせやがったのう
何故自分が試合を望んでいるとわかった?というオリバさんの問いに、冷や汗を拭き取りながら答える所長
「先日バキが実行した正面きっての散歩。あの反響が凄まじい」
「言ってみろ」
「・・・君やゲバルの外出と、刃牙の外出は意味合いが違う
君らの外出は立場の強さによるものだが・・・刃牙のそれは―」

「坊やの強さのほうが
より純粋と。俺もやって見せようか?正面からの外出」
「イヤイヤイヤ囚人達の話だ!わたしが言っているのではない
君がその気になりゃ海兵隊だって止められるものじゃない!」

そんなにバキが凄いかコノヤロー。と、不機嫌さを露にするオリバさんに所長は冷や汗たらたら。カワイソ
葉巻を一際大きく吸い込み、怒りを押さえ込んだオリバさん。所長に試合に関する提案を持ちかけます

「大統領はたしか・・・大の格闘技ファンらしいじゃないか。招待状を出してやれ
マスコミにも発表するのだ。アリゾナ刑務所が世界へ向けて発信する一大格闘イベント
”伝説のアメリカ最強の男が 地上最強の少年を迎え撃つ”」
「おおっ。ほうほうナルホド」
「ケーブルTVに権利を売りアメリカ中に映像を流すんだ
受刑者にチマチマ道路なんか掘らせるより、よほど経済効果があるぜ」
「スバラシイ!いやなるほどスバラシイ!」

なんやてー。なんとオリバさんVS刃牙の試合は全米中継になるとの事
刃牙ってアメリカじゃ有名な
大統領誘拐犯だろうに。大統領招待して格闘技なんかやっていいのかよ





「うらやましい・・・」
「私が?」
数時間後。マリアの部屋を訪れたオリバさんは、最愛の恋人に己が弱い心中を吐露する
それはマリアこそが、彼の知る限りもっとも心の強い人間であったからに他ならない
「かつては街の誰もが振り返る美しさを持っていた君は―
病に侵され 
おびただしい薬物の投与により
今の姿になった・・・

女性にとって最大の生きがいであるハズの美しい容姿を失った」
元は痩せててスーパー美人だったというマリア
今の肉ダルマのような姿は、幾度となく繰り返された薬物投与による副作用だそうな。まぁタダの肥満じゃあないわな
それにしても「美しい容姿を失った」ってオリバさんなかなかストレート。前は「どこからどう見ても美しい」とか言ってたクセに・・・

「なのにどうだ。君はまるで揺るぎない
かつての傲慢さをそのままに。かつての奔放さをそのままに。かつての威厳をそのままに

何一つ変えようとせずに堂々と生きている」

醜くなった自分を卑下するでもなく。塞ぎこむでもなく。美しかった頃の自由な生き方をまったく変えようとしないマリア
最愛の恋人のその気高さは、17歳の小僧の言葉に揺らぐ今のオリバさんにとってとてつもなく眩しく映るのだった
「図々しいだけよ。・・・おいで」
「・・・おそらく君は・・・世界中から見放されても気高いままで―」

優しくオリバさんを手招きするマリア。しかし自分に自信が持てない今の彼んには、彼女と目を合わせることもはばかられる
「いいからおいで」
「今の私に・・・そんな資格が・・・」
「レディに3度も言わせるつもりかい?」

言われるがままにベッドへ乗っかり、マリアの胸に顔をうずめるオリバさん

その頭は小刻みに震えていた
あまりにも弱く、小さく、そして醜い自分の心に。アメリカ最強の男が声を殺して泣いていた
マリアはそんな彼に優しくささやく

「ダーリン・・・わたしだってギリギリさ・・・・」

自分とて貴方が思うほど強くはないのだと。人は誰しも弱いものなのだと
その瞬間、ミスターアンチェインは小さな子供のように声を上げて泣きじゃくるのだった
うーん。マリア懐深いな
名の通り聖母の様な優しさというかなんというか。「流石はミスターアンチェインの恋人」って感じの度量の広さです
刃牙&梢江のガキカップルとは愛情の深さが違うつーかなんつーか。互いの危うい部分を助け合ってるよねこの2人は






「君の望みをかなえよう

2週間後だ。お前の名は全米に知れ渡る」
かくして刃牙との試合を決意したオリバさん。ようやく決戦の日取りが決まりました。2週間後だそうです
刃牙もやっと念願がかなって一安心できたところでしょうか?・・・・って

「ワカっちゃいねェなミスターチェイン」

いい加減黙れよガキ
この期に及んで尚も噛み付く刃牙。もう読者もウンザリです
天下のオリバさんを「アン・チェイン(縛られぬ者)」ではなく、あえて「チェイン(縛られし者)」と呼ぶこの生意気さ
果たしてこの挑発の真意は?次号へ続く!


64話

こーゆー意味

「2週間後に全米中継で試合すんぜ。どうだいスゲーだろ喜べ」と、刃牙に吉報を届けにやって来たオリバさん
素直に喜んで礼を言えばばいいものを、この期に及んで「ワカっちゃいねーなチェインなど」と更に噛み付く刃牙
はたしてその言葉の意味するところは?
「チェイン(繋がれし者)か。わたしは」
「やろうとしてるのは所詮喧嘩だぜ。2週間後もクソもねえ」
「どういう意味だ」
溢れ出る怒りを内に抑えつつ、オリバさんが問う。刃牙はゆっくり立ち上がると
足を高く上げ、オリバさんのぶ厚い胸板へと押しつけた

「こーゆー意味。俺かアンタ、どちらか1人でも動いちまえば否も応もない
その場でおっ始まるってことだ」
「始めるというのかッ?この場でッ」

「純粋じゃねェんだよアンタは

俺とアンタ2人だけの喧嘩・・・誰に見てもらう必要があるんだい?」

オリバさんのお膳立てをバカバカしいと一蹴する刃牙。自分達の喧嘩を誰に見せる必要があるのかと
こうして2人が揃っている今、自分が仕掛けてしまえば否応なしに「勝負」は始まってしまうのだと

なるほどここだけ聞くとなかなか男らしいというか、的を射ているように聞こえる刃牙の言い分ですが・・・
そんなコト言うなら
前々回仕掛けてろよお前

このへんの矛盾がある為、やはり読者には小僧が支離滅裂なナンクセをつけてるようにしか見えません
うーん・・・板垣先生ホントに一週先の展開もその時その時で考えてるとしか思えんな。刃牙の言動イタすぎる





「ワカってるのか。お前は今両指を繋がれてるんだぞ
そんな状態でわたしと戦うつもりか」

理屈の矛盾も勿論ながら、それ以上に読者をガックリさせるのはやはり指錠という強力なハンデ
読者は本気の2人のガチンコ勝負が見たいんであって、こういうの変なカタチでの勝負は望んでません
あれだ。オリバVSゲバル戦で、「ルーザールーズ勝負」になった時と同じ感覚のガックリさです
って

いきなり不意打ち気味のハイ炸裂!
一瞬視界がブレ、咄嗟に片膝・片手をついてしまうオリバさん。さすがに予期しない状態での一撃はちょっと効いたみたい
「喧嘩を売っているのは俺・・・それにアンタほど不自由じゃない」
宣戦布告の先制攻撃「喧嘩を売ってるのは俺だ」という自己責任発言も飛び出し、刃牙はマジでやる気のようです
もう読者は萎え萎え

「そんなふうに見えるのか。わたしが」
「ああ。気の毒なほど不自由だね」
「そうじゃない
両手を使用せずに勝てる相手に見えるのかと聞いている」

ゴッ!バキッ!ザキッ!
頓狂極まりない刃牙の行動を諌めるオリバさんでしたが、そんな気遣いを小馬鹿にするように刃牙の連続キックがヒット
無様に壁に叩きつけられたミスターアンチェインを見下ろし、調子こいた顔の刃牙。ものすごい腹立つなこのガキ
「おわかりかいミスター。自分の見てくれを気にしてるときじゃねェ」
ここにきてようやく堪忍袋の緒が切れたオリバさん。おもむろに蝶ネクタイを引きちぎり、第一ボタンを外します


「すまなかった。追いついたよ」






”ぼっがぁーん!!!!!”

オリバさんのスーパーパワーいきなり炸裂
突っ込んできた刃牙を、挨拶代わりの掌打一発で隣の房まで吹き飛ばしました
「スカッとした!ざまあみろ刃牙!」おそらく全国の読者のほとんどが俺と同じ感想を抱いたんじゃないでしょうか

「わたしが間違っていたよ。今まさに試合開始だ」
刃牙の無謀な申し出を受け入れるカタチで、いよいよオリバさんVS刃牙直接対決開始
指錠のせいで刃牙の戦闘力は大きく削がれているワケですが、是非ともオリバさんにはそんなの微塵も気にとめずブッ潰してほしいところ
これほど読者に感情移入されない主人公ってどうなのよ刃牙
支離滅裂な行動を繰り返す主人公、両腕の使えない状態で無敵の超人を相手にどう闘う?次号へ続く!


65、66話

刃牙の挑発に応えるカタチで、ついに本気を出したオリバさん
必殺の
タキシード脱皮再びで完全臨戦態勢です

これを受けて刃牙も肩の関節を外して腕を抜くと、
脇をキツく締めて動脈の血流を止め、指を細らせて錠を抜く

というなんだか見た目セコい技で戦闘力100%に復帰
いよいよ今週から晴れて両者本気モードでの勝負に突入します





「今はブッ壊れた壁を隔てちゃいるが」
「あぁ。2人は間合いだ」
”ドッ!!!”
二つの房を隔てる壁にぽっかりと空いた大穴。まずは挨拶代わりとばかりに、そこ目掛けて渾身のパンチを放つ刃牙
手ごたえは十二分。しかし壁の向こうの相手は微塵のダメージも感じさせず、刃牙の左腕をムンズと捕まえる
「重い・・・うん、これはいい。かなりいいぞバキ
この限られた条件下でこれほど体重を乗せたボディブロー・・・これは期待できる
どうだバキ。こっちへ来いよ」

凄まじいパワーで向こう側から引っ張られ、無様に壁に張り付けになる刃牙
ギリギリと手首を締め上げる力はまるで万力。どんなに腕を引っ張ろうともビクともしない
そんなワニに噛まれて河に引きずり込まれそうになってる状態の刃牙を呆然と見つめるのは
リッチ・コックス33歳アメリカ人・懲役18年
あの花山VSスペックの語り部となった片平巡査(34)の演出と同じく、
ここから先はコックスの後日談というカタチで、2人の壮絶な戦いが語られます





メリ込んだんだな壁に。いやバキがさ。そしたら・・・
引っこ抜いちまったんだよ。力で
壁?なくなっちまったよ
部屋がひとつになっちまったんだ

オリバさんのスーパーパワーで力任せに引っ張られ、房を隔てる壁を完全に瓦解させる刃牙の身体
目の前で何が起きているのか理解できず、呆気に取られるコックスにオリバさんが声をかけます
「そこをどくんだコックス」

どいたさそりゃァ
さながら怪獣の庭に放り出されたも同然のコックス。なかなか面白い語り口調だ

身体をバール代わりにコンクリの壁を瓦解させた刃牙。流石にクラクラして両手足を地面についてますが
本気モードのオリバさんは回復の時間を与えてやるほど優しくはありません。そのまま手足を掴んでリフトアップ!
このまま硬い床に思いっきり地面に叩きつけられるのかと思いきや、
なんとオリバさん、刃牙の身体を
ぶわっさぶわっさ上下に振り回します。なんだこれ
こう・・・ワカるかな。こう・・・バサッ!バサッ!って
タオルみたいにさ。それを人でやるんだよ
何回ぐらいやったかなぁ・・・その後?
放ってたよ。ボスにとってはタオルだもの

洗濯物のバスタオルのごとくバサバサ上下された挙句、ポーンと放り投げられる刃牙の身体
それをラグビーボールのようにダッシュしながらキャッチし、
そのまま壁に突っ込むオリバさん
その後?知らねェなァ








なんでか・・・って?

隣行っちまったもの
っていうかずっと向こうに

ドカンドカンと刃牙の身体を使って壁をブチ抜き、房から房へ大移動するオリバさん
連なる懲罰房を細長い1つの部屋にしてしまいました。すげえー
迸るスーパーパワーに翻弄される刃牙!この超人を相手に果たして勝機はあるのか?次号へ続く!


67話

刑務官は語る

さながら重戦車の如く、独房の壁を4枚を軽々ブチ破ってみせたオリバさんのスーパーパワー
先週のコックスの最後の言葉「隣の房に行っちまったから後は知らん」の通り、ここからの語り部役は彼が引き継ぎます

エドワードバカラ29歳・懲役8年いい顔してます
各場面各場面でその戦いを目撃した男達によるリレー形式とは。なんという無駄に贅沢(?)な演出だろう

『繋がれざる者アン・チェイン
ってニックネームだけどさァ・・・俺ァてっきりさァ
権力とかさァ・・・規則とかさァ・・・法律とかさァ
そーゆーのに縛られないって意味だと思ってたワケさ
だってそう思うじゃんフツー。
でも違ったんだよ

見たまんま 誰でもワカる単純なことさ

「閉じ込められる部屋がない」
つーことなんだよ

オリバさんの戦いぶりを目の当たりにしたバカラが、その本質をダイレクトに理解した「アンチェイン」の由来
それは支配権力等に対する言葉ではなく、まさに言葉通りの意味
「繋がれざる者」であった

だってさァ 独房の壁4コ破ってさァ、鋼鉄のドアブチ破ってさァ
ないよ。そんなヤツ閉じ込めるとこなんか

むかーし、独歩ちゃんが土管の中からこれを破壊して脱出するデモンストレーションをやってのけましたが
オリバさんのそれはレベルが違います。
この人単身で廃ビル解体とか出来そう
たしかにこんな重機人間、閉じ込められる部屋なんてねえわな。実はユンボルじゃなかろうかこの人
バカラの目前でオリバさんのパンチを食らった刃牙は、ブロックするも身体ごと吹き飛ばされて鋼鉄のドアを破壊
そのまま鉄柵を乗り越えて吹き抜けを落下し、3階の高さから床に激しく激突します。おーおー死ぬぞこれ






「そこからは私が話そう」
ボブ・マッカーシー27歳・刑務官

第3走者にバトンが渡りました。なんかもうこれだけでウケるな
そう・・・彼は起き上がるのを待っていたよ
意外にもその視線は静かで、とても闘争の最中のそれではなく・・・

階段を使うことなく、自らも3階から飛び降りて刃牙が起き上がるのを待ち構えるオリバさん
ただパワーだけではない、しなやかさと俊敏さを併せ持つスーパー筋肉。まさに超人です

その時だった。起き上がりざま、バキがサイドキックを走らせたんだ
3階からコンクリートの床に落下して反撃するバキもバキだけど・・・
難なく掴まれちまった。素早いんだよ、あんな体しててさ
あぁ、蹴ってたよバキは。残った足で必死に

ミスターはまるで聖火ランナーのように、落ち着き払った態度で私達に指示したんだ
「離れていろ」・・・と

3階から落下しておきながら、起き上がりにいきなり反撃に転じる刃牙も大概超人ではありますが
しかしながら前述の通り、オリバさんはただ鈍いだけのパワーバカではない。この蹴りを難なくキャッチング
周りの刑務官達を下がらせると、足首を掴んだ刃牙の身体を
思いっきり振りかぶりました





わたしはねェ・・・

自分の耳を疑ったよ





”メキョオッッ!!!!”
初めてだもの
あんな音聞いたの
それは「範馬刃牙」という肉の鎚コンクリートを強打する音であった





バキ・ハンマというスタンプが刻印したそれは―
後に測定された結果、最深部は30cmにも達していた

頭蓋をしたたかに床に打ちつけ、ボロ雑巾のように転がる刃牙の身体。コンクリが30cmも凹むておいおい・・・
こんなん脳挫傷云々の前に頭蓋が粉々に砕け散りますから!
脳漿飛び散りますから!見るも無惨なスプラッタですから!

これはコンクリの壁にめり込む威力でもボールが破裂しないタイガーショットの理論か
恐るべし範馬の肉体
しかしその時はまだ―
我々は”その変化”には気付いていなかった

でもって次号、”範馬の血”が覚醒するようです。覚醒バキVS本気オリバさんでようやく勝負らしくなるか?その戦闘力に注目せよ!



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