221話

舞踊

「すまぬ。わたしが不覚をとったばかりに・・・我がチーム全勝の夢がついえてしまった」
ここは日米連合軍選手控室。たった今試合を終えたばかりの寂さんが、チームメイト4人に対し頭を下げて謝罪
しかし刃牙、Jr、オリバさんの3人は満足そうな笑顔でこれを迎え入れ、あの勇次郎もそっぽを向きながら口は僅かに笑っています
「寂さんには悪いけど・・・正直驚いてます。あんなに食い下がるとは・・・・
烈海王に勝てる人間など―
地球上を捜し巡ったとしても何人見つかるか」

寂さんを気遣いつつ、さりげなく烈先生に勝った自分を自慢する刃牙
しかしこの刃牙の言葉と描写からして、板垣先生の脳内では烈先生は登場キャラクターの中でも相当上のランクに属するようです。燃え
「自分ノ土俵二相手ヲ引キ込ンデノ心理戦―ファンタスティックダッタゼ」
「あれしかなかった・・・」
「アレデ良カッタ」

皆が一様に寂さんの健闘を称えあう、いい雰囲気の日米軍控室。しかしコイツら急造とは思えぬほど本当に仲良いな




さて、まもなく副将戦を迎える中国側選手控室。試合を前にし、丹念に錬武を行うのは正体アレと名高い範海王だ
傍らにはその弟、薬硬拳・李海王。手に持っていたリンゴを兄に向かってポーンと放り投げた。コレに反応した範!
スパーン!!!

なんと足刀でリンゴを真っ二つに!その断面はまるで鋭利なナイフで切ったかのようです
落ちるリンゴをぱしっとキャッチした範。片方を弟に手渡しながら美味しそうにかぶりつきました。ぞぶっ
「マホメド・アライJr ・・・かつて兄さんが対戦した、いかなる拳技とも違う異質な相手
大きくて・・・・強い」

「けれど不完全」
Jrの実力を認め、兄の身を案じる李。それを鼻で笑う範。兄の実力には絶対の信頼を置いているのか、李もそれ以上の反論はなかった

ぞぶ・・・ ショムショム ショプ・・・・
それにしても
ものスゲエ美味そうにリンゴ食うなぁコイツら。俺も食いたくなったぞ
「所詮は格闘スポーツ。立ち会えばイヤでもわかる」

中国連合軍! 範海王!


時同じくして日米連合側選手控室。マホメドJrの華麗なるシャドーボクシングに見入る刃牙と寂さんの二人。思わず溜息が漏れるほど
「しっかしまァ・・・これが戦う動きだというのだから・・・まるで舞踊・・・舞踏」
選手呼び出しのアナウンスが入り、武台への花道をゆっくり歩いていくJr。さながらその後姿は防衛戦に向かうボクシングチャンプのよう

日米連合軍! マホメド・アライJr!





『開始めいッッッ!!!』
ゴワアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
盛大に鳴り響く銅鑼の音。先につっかけたのは神の拳・マホメドJrだ!さあ完成したアライ流拳法を見せてくれ!
閃光の右フック!いや・・・・これはフックと言うよりは・・・水平に薙ぎ払う手刀!?

瞬間、範もそれに気付くがもう遅い。油断。相手の流儀を「ボクシング」と最初から決めてかかっていたからだ
Jrの拳にはグローブなどはまっていないと言うのに

「おっ 踊りじゃないッッ」
刃牙&寂さん驚愕!範の顔面を深く切り裂く、恐るべきJrの一撃!
次号!更なるアライ流拳法の絶技が炸裂するか!?


222話

蹴る

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
場内騒然!Jr先制の一撃は真一文字に範の顔面を切り裂いた。しかし、おびただしい出血にも動じることなく範が言葉を紡ぐ
「一見たおやかに 一見優雅に見えようとも。中身は立派な拳技というワケだ・・・しかし
闘争という高密度な状況下で、手技のみに限定された技術体系はいかにも不自然・・・
例えば 蹴り技ッッ!!」

バッ!
繰り出した鋭い蹴り。Jrはこれをバックステップで難なく回避するが、範はニヤリと笑いながら言葉を続ける
「当たらぬまでも射程距離の差は明白。蹴り続ける限りはキミの手技は届かない。しかも」

言いつつ後ろ回し蹴り!!
これまた回避したJrだが、わずかにカスっただけの腹部が摩擦で煙を上げているではないか。なんと恐るべきキレ味!
「脚力と腕力との圧倒的な差は今さら説明の必要もない。ワカるかな
不完全なんだよ キミは」
蹴り技がない武術を「不完全」とナメてかかる範。その慢心が顔面の傷を作ったワケですが、反省とかしないんだろうなぁコイツ




「バキさん。彼の説を支持するかね?」
舞台袖で一緒に試合を観戦しているのは刃牙&寂さんだ。蹴りのないボクシングはやはり不完全な武術なのか?
しかし寂さんの問いに対する刃牙の答えは実に意外なものだった
「ボクシングには蹴り技がない。―そう考えていた時期が俺にもありました」
「ほう。では蹴り技があると」
「ええ。ボクシングには蹴り技が存在します」




ドバババババババババッ!!!
息もつかせぬ範の連脚!Jrはまさしく蝶のような華麗なフットワークでこれを避け続けますが、その回転力は天井知らず!
上段回し蹴りに見せかけたフェイント!
本命の水面蹴りがついにJrの足元にヒット!
持ち前のバランス感覚で持ちこたえるJr。転びこそしませんでしたが、腰を低く落として踏ん張った非常に不利な体勢!
範海王 勝機ッッ!
『この スポーツマンが・・・・・ッッ!!』

絶好のタイミングで振り下ろされる頭上からの一撃!体勢の悪いJrは絶体絶命のピンチ!
もはやこれは勝負あったか?場の誰もがそう思った瞬間!

グンッッ!!
Jrのカモシカのような脚が、まるで押さえつけられていたバネのように跳ねあがる!!!
マホメド・アライJr!まさに恐るべきはその強靭なる下半身!
グワキィッ!!!

カウンターのアッパー!クリーンヒットォ!!

そっかァ〜〜〜〜〜

強烈な一撃に意識が飛びそうになる範。瞬間に理解した「ボクシングの蹴り技」の正体

ボクシングって・・・・・・

返す刀の左フック!これまたスーパークリーンヒット!

大地を蹴る格闘技なんだ
膝から崩れ落ちる範!読者もシビれるマホメドJr圧倒的強さ!
なんだかなー。顔が似てるってせいもあるけどものすごく克己臭がするぜ範海王。なんだこの期待ハズレっぷりは



しかしアナウンサーの「勝負ありッッ!」と、鳴り響く銅鑼の音が出ない限り決着がつかないのがこの漫画!!
先鋒戦のオリバさんVS龍も最初はこのくらいのワンサイド展開だったし、範の正体が
アレならば当然ここから反撃だ
次号、範海王がその実力、そして正体を見せるか?必見!


223話

大地を・・・蹴る

ばっき――――ん!!
”ボクシングに蹴り技は存在する!”
マホメドJrの強靭でしなやかな下半身。そこから生み出される爆発的な瞬発力は、まさに”技”と呼ぶべきものであった
たった二発のパンチで膝から崩れ落ちる範。
殴られた首の回りっぷりが面白すぎます

場内騒然。このまま終わってしまうかと思われた範でしたが、まぁそこは海王。膝を震わせながらもなんとか立ち上がる
「待て・・・待ってくれ。ま・・・まだ・・・・・やれるッ!まだやれるッ!」
「・・・OK」
『もう・・・・ミスれないッッ』
格好つけて立ち上がってはみたものの。範のツラときたら顔面蒼白&油汗ダラダラで、とてもじゃありませんがもうダメぽ
試合再開の合図で再び睨み合う両者でしたがJrは突然何かに気付いたように目を伏せ、そのまま後ろを向いてしまいました
無防備な背中を晒したままスタスタと歩いていくJr。何をしている貴様!その態度に範の怒りが爆発します
「きさまッッ!!!」

勢いよく飛び出した、その瞬間

『あれ?床がなんで・・・・
起き上が・・・・る・・・・?』

うげえ――――ッッ!?
範再びダウン!今度はサップ戦でKOされた曙のごときブザマな前のめりダウン!
最初のダウンで喫したダメージは思いのほか深刻だった。既に彼は戦える状態ではなかったのだ

遠のいていく大歓声&悲鳴。薄れゆく意識の中、範が最後に頭の中で思ったことは・・・・





ワケわかんねェ・・・・・





























おめえアレの血脈じゃなかったのかよ!
なんだそのザマぁああああああ!!!

予想は裏切り!
期待は裏切らない!

全国の読者騒然。久々にバキ展開の真骨頂を見せられた感じがします。なんだよこれ
『勝負ありッッ!!』

アナウンサーが高らかにマホメドJrの勝利を宣言する。中国側VS日米連合の戦いは大将戦を待たずに決着してしまったのか?
否!まだ何か仕掛けを残しているようですよ?板垣先生ってば!
武台袖から神妙な顔つきで成り行きを見つめる男!範海王が弟、
薬硬拳・李海王だ!
次号、一体何が起きる!?必見ッ!!


224話

海皇

『今現在ッッ!全5試合中4試合を終了!
3対1ッッ!つまりッ
中国連合チームの勝ちはなくなったのです!!』

ドッギャアアア―――ン!!!
全国の読者大注目の今週のバキ。冒頭、いきなり大ゴマで宣言される中国連合チームの敗北決定
「来週どうにかなってくれ!」というはんぺらの一縷の望みを裏切った範は
1コマたりとも出てこず
前回ラストの引きで神妙な表情を見せていた李も兄と同じく1コマも出てきません
結局範海王は範馬一族とは一切関係のない真性のザコ。単なるフェイク野郎でした
先週の思わせぶりな李は一体なんだったんだ・・・板垣先生の意図的なフェイントかよ・・・ワケわかんね

ま、とりあえず
範ワッショイ!
範ワッショイ!
範ワッショイ!
これから先、範海王はありとあらゆるバキサイトで過去最高のヘッポコキャラとして祭られていくことでしょう。万歳




と、範を斬り始めたらいくら書いても書き足りぬのでここで話を本編に戻しましょう
アナウンサーの悲痛な宣言。水を打ったように静まり返る場内。そう、大将戦を待たずして決着はついてしまったのだ
たとえ残りの一勝を得たとしても中国側の敗北は既に確定
誇り高き中華民国サポーターの落胆振りは救い難く―

ガックリとうな垂れたまま動かない者、顔を覆って泣き出してしまう者。はたまた流れる鼻水を拭わずに嗚咽を漏らす者・・・
放っておいたらこのまま
集団自殺でもしてしまうんじゃなかろうか、というほどに落ち込んでしまうサポーター達
その時、武台中央に颯爽とあの男が現れた

ざわ・・・・ざわざわ・・・・・
”オーガ”こと範馬勇次郎 日米連合チームの総大将である
ざわめく場内をグルリと見回した後、そのよく通る声で喋り始める勇次郎。いったい何を始めるつもりなのか

「5対0・・・「全勝で終えてみせよう」それが郭海皇の言葉だ
―――約束は破られた
中国武術4000年の威信は―海王改め海皇の称号は―」

ざわめいていた場内が再び静まり返る。この憎き日本人の言葉に、わずかの反論も出来ないこの悔しさ
もともとトーナメントで不利な状況になったから、という理不尽な理由で始まった団体戦。その結果がこの惨めな敗北
いったい誰が反論など出来ようか。それこそ恥の上塗りというものである
だがしかし
・・・・・・
「それでもなお地に墜ちぬッッ!」

勇次郎の口を次いで出てきた言葉は実に意外なものであった。ポカーンと口を開けて驚く中国サポーター
「中国武術史4000年― 幾万、幾十万の武術家達が己の思い描く巧夫を完成を見ずに消えていった
ある者は病に敗れ ある者は怪我に泣き ある者は修行の苦痛に耐え切れず逃げていく
そして寿命・・・・・・・
今ここに。そのいずれの障害にも屈せず完全を成した奇跡が存在する!」
ババッ!と。両手を上げながら声高らかに続ける勇次郎。なんかもうノリノリです
すごいサービス精神というか。巧みな話術も相まって高田総帥に見えてきました。この人興行の才能あるよ絶対
「過去ッ 国手達人と呼ばれた誰もが到達できなかった頂へ
生れ落ちてから百と数十余年
片時も武を忘れず離れず 道を歩みきった漢が存在するッ!」

ぶるぶると震えて目に涙を浮かべる中国サポーター達。「ああ頼む、早くその続きを言ってくれ!」って心境でしょう
固唾を呑んで待たれるその言葉を。勇次郎は会場中の全員に聞こえるように呟いた

「お前達は誇っていい
郭海皇は中国拳法そのものだ」

ここで俺が倒れたなら―先に挙げた3勝など

なんの意味も持たぬッッッ!

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
郭海皇登場ッッ!
”中国拳法の体現”に大歓喜のサポーター達。どうやらジジイが難癖をつけるまでもなく、勇次郎の希望で決勝戦を行うようです
ゆっくりと車椅子から降り立った郭爺様。その車椅子を「邪魔じゃ」とでも言うように片手で放り投げます。そしてそれが合図!
『開始めいッッ!!』
地上最強の生物VS海皇!次号ついに激突ッッ!!

でもって中国拳法は本当に”地に墜ちる”ワケだな。合掌


225話

『開始めいッッ!!』
ふおんっ!と。爺様が挨拶代わりにぶん投げた車椅子。勇次郎はニヤリと笑いながら指一本で受け止める
クルクルクル・・・おお凄い。まるで大道芸のように車椅子を手の上で操ってみせると、丁寧にそれを地面に着地させました
いきなりの華麗なデモンストレーションに観客席から感嘆の声。だがしかし!
勇次郎の発した次の一言に、会場は更なる震撼!

「乗りな」

「ホッホッホ・・・謝謝。ン〜〜〜」

え〜〜〜〜〜〜??
観客の反応は全国のバキ読者の代弁か。なんなんだよこれは
ガラにもなく年寄りに優しげな勇次郎の態度とか、言われるがままに自分で放り投げた車椅子にまた座る爺さんとか
ツッコミどころは沢山あれど
それ以上に勇次郎のポーズがキモイ!腰をクネッて

老人介護センターのおっさん・範馬勇次郎!見ッ参ッ!!
って言うか、こ・・・・コレはまるで・・・・

『大五郎!』
『ちゃん!』

しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん♪ し〜と〜ぴっちゃん♪

子連れ狼のワンカットに見えなくもない

一体この日本人は何がしたいのか。郭海皇も。あまりにも想像を越えた展開に観客達は呆け顔です
そんな雰囲気の中、闘場をゆっくりと回りながら勇次郎が言葉静かに語りかけます
「郭海皇よ。お前はここに辿り着くために・・・何を捨て・・・何を手に入れた?
金銭・・・朋友・・・女・・・・酒・・・
安らかに過ごし暮らせたハズの膨大な時間・・・・
自ら足を踏み入れた 苦痛と難行の百数余年・・・・
何を手に入れ・・・何を失った・・・・?
答えてくれ」

あっとなんでしょうかコレは。あのバカ親父にしては珍しく、ちょっとセンチメンタルな質問じゃありませんか
強さだけを追い求めて生きてきた人生。考えやポリシーは違えど、やはり郭の爺様にはシンパシーを感じるモノがあったのでしょう
まだ自分の1/3ほども生きていないこの日本人の質問に。齢146歳、郭海皇はこれまた優しげな口調で言葉を返す

「日本の強き人よ・・・おぬしならワカるじゃろう・・・・
中国武術史4000年・・・私ほど力に憧れた者はおらぬ
力さえ手に入るのならば・・・強き人よ・・・
酒も女も朋友も・・・地位も名誉も・・・
親兄弟をも捨てることに迷いはない
むしろ日に日に己の内に蓄えられていく力に我を忘れるほど酔いしれたものじゃ
そんな私が 何を手放すとき最も苦痛を感じたか?」

おお・・・これは興味あるぞ。こんな強さマンセー野郎が最も苦痛を感じた代価とは一体何なのか?

「力・・・・・・・」

「身を焦がすほど欲した力。その力を捨て去った瞬間じゃよ」

郭海皇の背中が語る「捨て去った力」とは?次号へ続く!


226話

理合

100年前・・・私の身体は鋼に覆われていた

爺様の昔話が始まりました。若き日の郭は見ての通りの筋肉ダルマ。まるで小柄なオリバさんといった風体ね
それにしても「100年前・・・」って語り出し何気に凄え。なんかの伝承みたいだけど
自分の話だもんなぁ。流石146歳

考えうる限りの筋力鍛錬により
私の小さな骨格は高密度の筋肉を搭載するに至る
単純な腕力ならば おそらくはアジア1

拳の理合など嘘っぱちとせせら笑い それを証明し続けた―
そんなある日

本物に出逢った

齢60を越える老体

およそ腕力と呼ぶにはあまりにも儚い腕力

打たれ 蹴られ 叩きつけられた





理合に敗れたのだ

その日を境に 私は鍛錬器具の一切を捨てた

「パワーこそすべて」と。アニメスーパービックリマンのブラックゼウス(声・若本)のようだった若き日の郭
その自尊心を粉々に打ち砕いたモノ。それこそは1個人のパワーなどまるで問題にしない、精妙の拳理であった
ははあなるほど。この辺のくだりは「空手バカ一代」の中で大山倍達が陳老師に敗れるシーンリスペクトやね
ちなみにあの
「陳老師」は梶原一騎の作り上げたフィクションキャラであり、実在しない人物であります(76へぇ)


理合を手に入れる鍛錬

それは筋力鍛錬の速度に比べあまりにも永く

日々普通に戻ってゆく己の肉体に私は歯噛みした




永き時は過ぎ―

私の骨格から肉が減り続け 骨に皮膚が垂れ下がり

食事― 椀と箸に重量を感じた頃

私の手に理が握られていた

実に齢90を越えた頃。 永い永い日々、ただひたすらに鍛錬の中に己を置いた一人の男は
かつて手にしていた「パワー」という強さと引き換えに、「理合」という強さを手に入れたのだった
そんなところで爺様の昔話終了です
どうでもいいが、ブン回されて吹っ飛んでる大男が
サマーソルトキック出してるみたいでカッケーな





「なるほど・・・ならばこの闘いは・・・
剛に理合が挑む闘いというワケだ」

ぐぐぐーっと。爺様の話を聞き終え、ニタニタと笑いつつ片手で車椅子を持ち上げる勇次郎
「剛に理が挑む」と。つまり挑戦するのは俺ではなくお前のほうだよ。と言い放ったのだ

「その逆じゃよ 勇次郎」
当然黙っている爺様ではない。「逆だ。お前がワシに挑戦するのだ」と。まるで子供のように張り合う二人
次号!いよいよ両雄激突ッッ!!
って
次号休載だよコノヤロォォォォォォ!!!


227話

「逆じゃよ勇次郎。武が力に挑むのではない。力が武に挑むのじゃ
おまえがわしに挑むのじゃ」
パッ!軽やかに車椅子からジャンプする郭爺様。それと同時に粉々に砕け散る車椅子!おーすげえ
これは爺様の脚力で粉砕されたのか。あの天内悠が鉄筋コンクリートの床をブチ抜いたシーンを思い出します
空中で華麗に回転しつつ、音もなく着地する爺様。いよいよ両雄並び立ちました

『知っているのか郭海皇。格下として扱っているその男が誰で
いったいどれほどのものなのか
そんな両選手を食い入るように見つめるのは我らが主人公・範馬刃牙
そのバカげた強さを身をもって知っている刃牙、当然ながらオヤジ様が負けるなどというビジョンは微塵も見えていないよう
そんな刃牙の横にすっと並んで立ったガングロおさげ。こちらもまた郭爺様が負けるとは思っていないであろう烈先生です
「ここで観戦してもいいかな」
「喜んで」

いずれが勝者になるにせよ。これから眼前に展開するであろう戦いは、格闘技の永遠のテーマの一つと言えるだろう
すなわち



究極の力 対 究極の理




究極の剛 対 究極の技




究極の暴力 対 究極の武

パワーVSテクニック!果たして両者に優劣は存在するのか
その答えを白日の下に晒すために!今、地上最強の生物・範馬勇次郎がその左拳を大きく振りかぶった!

「はよこい」
ニンマリとそのしわくちゃの口を開き、その一撃を要望する爺様。勇次郎もまた笑ってこれに応える!
ズギャアッッ!!!
超ド迫力ッ!壮絶な踏み込みからの渾身の左ストレート!
鬼の貌こそ出してませんが、おそらくは独歩ちゃんの心臓を停止させたあのパンチに匹敵するであろう一撃です
眼前に迫る鉄拳を前に、爺様はどのような回避を・・・・・・
ああっ!?

顔面にまともに食らった!?
否ッッ!
それはまるで空中に舞い上がったティッシュペーパーかビニール袋の如く
大砲のようなストレートを浴びた身体はふわり、とその場で回転。そのまま完全に衝撃を吸収してしまったではないか!

『消力!!?』
シ   ャ   オ   リ   ー

魔拳・烈海王もまだまだその深淵を知らぬ中国拳法4000年の秘伝。その妙技のほんの一環といったところか
これにはさしもの勇次郎も驚愕。静止した左拳の上には
割られずに残ったサングラス!
あの凄まじいストレートの威力を、ほぼエネルギーゼロまで吸収してしまったという事である!恐るべし「消力」!

チッ、と不機嫌そうな顔になる勇次郎。目を細めて笑う爺様。両者の表情に見て取れるファーストアタックの攻防
まずは郭海皇がその”武”を見せつけた!”力”の反撃や如何に!
次号へ続くッッ!


228話

消力

割られずに残ったサングラスを忌々しげに睨んだ勇次郎。ひょいっとそれを放り上げると稲妻一閃!
ボバァッッッ!!!
爺様の顔面を捉えたのは目にも留まらぬ蹴り!なんたって勇次郎の蹴りです。当たれば普通即死ですが・・・
ふわり。やはり先の左ストレートと同じく空中回転。ビニール袋のように衝撃を吸収して地面に着地する爺様。完全にノーダメです
「か・・・かわした?」
「イヤ・・・当たっている。消力
シャオリー・・・それも凄いレベルだ」
「オヤジの打撃が・・・当たっていたというのかッッ」

信じたくないモノを見せられたような刃牙の表情。あのオヤジの打撃を受けてダメージを受けない人間がこの世に存在するとは!
「それが消力だ。洋の東西を問わず武術護身術の要諦は古来より
かの剣豪宮本武蔵の自画像にも表現される
脱力にある」

烈先生の消力解説。しかし引き合いに「宮本武蔵の自画像」って。中国人なのに博識すぎねえか

戦闘という命のやり取りの最中に

全ての筋力を総動員させるハズの緊急事態に

赤子の手を扱うように 手にあるタマゴを潰さぬように

そう抽象される「脱力」の開眼に

古今の術者は腐心を余儀なくされる

”緊急時にこそ脱力

この理論を完全に成しているのが、たった今爺様が見せた「消力」の極意である

「言うは易し だが行なうは難し
範馬氏の打撃を目の当たりにしてさえあの脱力ぶり・・・今の私が真似るには若すぎる」
「・・・・・オヤジは本気で蹴ったのかな」

これが海皇の実力か。父の攻撃が無力化された事実を認めたくない刃牙、「本気じゃなかったんだ」などと子供のような意見を述べてみますが・・・
烈先生がスッと指さした闘場の側壁を見て驚愕。壁面に
突き刺さっているのは勇次郎の蹴りでふっ飛ばされたサングラスです
「消しゴム程度の重さしかないサングラスがコンクリートの壁にめり込んでいる
本気で蹴ったと考えるのが妥当だろう」

額に冷たい汗をかく刃牙。地上最強の生物・範馬勇次郎のMAX蹴りを顔面に食らい、それでもダメージを負わない術の存在
これぞまさに中国武術4000年の神秘!深淵!この技の前にはどんな打撃も意味を成さないのか!?




星飛遊馬の投球フォームのごとく振り上げられた長い脚。勇次郎の第三撃目は斧のように振り下ろす踵落としだ!
グチャアッッ!

景気よく鼻っぱしらにメリ込む勇次郎の踵!

だがしかし。やはり爺様の身体はその場で回転。大地も割るであろう衝撃をほぼ100%吸収してしまう
「ホッホッホッホ。たいしたものじゃのう強き人よ
鼻血を出すなんて何十年ぶりかの」

さすがに実際鼻には当たってるので鼻血を出してはいますが。それでもこんなモンはダメージのうちに入りません
それを見た刃牙が唇を噛み締めながら震える言葉を紡ぐ

「オヤジの・・・・技が・・・・

範馬勇次郎が 通用しないのかッッッ」
ちょっとビビりすぎのような気もしますが。理論こそ違えど刃牙の回転カウンターだって似たようなもんだしな
とにもかくにもオヤジ様のベラボーな強さを痛感している刃牙にとって、「消力」は相当のインパクトだったようです




「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

あっとなんでしょう。自慢の打撃が通用しなくてアタマ壊れてしまったんでしょうか。突然狂ったように笑い出すオヤジ様
笑い顔がすごすぎます。破顔一笑とはよく言ったものだ
「イヤ〜・・・・しょせんはお遊びだぜ。中国拳法なんてものはよォ」

オーガ、突然の高笑いのあとに「中国拳法敗れたり」発言!
その根拠は何か?「消力」を破る術を見出したというのか?イヤ、だがまだ待て!
爺様は受けの技術のほんの一端を見せただけに過ぎず、攻撃の技術はまだ何も見せていない!
地上最強の生物の反撃なるか?それとも海皇の攻撃ターンか?
ちょっと予想が見えない展開で
次号へ続く!


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