210話

一人一殺

龍書文との凄絶なるアンチェイン対決を制した我等のオリバさん。拍手喝采の闘場をあとにして控室に続く通路へ
そこで彼を待っていたのは満面の笑みで迎え出てくれた仲間達であった。日米連合、まずは幸先のいい一勝目だ

オリバさんの嬉しそうな表情ったらもう
いやはや純真無垢と言うか何と言うか・・・やっぱり最高ですねこの人
「顔面への頭突きで決着。おめェのほうがよっぽどスマートじゃねェぜ」
と、祝福のグーパンチをオリバさんの顔に見舞う勇次郎。食らったオリバさんも楽しそうに笑ってます




そんな和気藹々の日米連合とは対照的に中国軍側控室。ベッドに横たわる龍を囲んで渋い顔の4人
っていうか
龍生きてるんでしょうかコレ?顔面陥没骨折だよ

「全勝の誓いが・・・はや1敗。どうやらわしの勘違いだったかの・・・
とんでもない連中を敵に回してるのかもしれん」

ここにきてようやく日米連合の実力を認めた郭爺様。そう、相手は一筋縄ではいかない連中ばかりなのだ
「・・・・・だとするならば老師。いかがなさるおつもりですか」
そんな烈先生の問に対する爺様の答え。それはあまりにもフザけたものだった

「残り4人4試合。わしが全部やる」
「・・・・老師ッ」
さすがに温厚な烈先生もキレかかります。無理もありません。「自分達がまるで信用されていない」という事もモチロンですが、
何よりもこの期に及んで尚、こんな無茶苦茶なルール変更を平然と言ってのけるその唯我独尊な態度に怒ったのでしょう
そんな烈先生を諫めて間に入ったのが郭春成だ
「父ちゃん。我が子からオモチャを取り上げちゃイカンなぁ・・・
一人一殺
残り4勝。4人全員ブッ殺しちまえばカッコもつくでしょ」

いきなりの
殺害宣言。うーむさすがは”狂獣”の異名を持つ男・・・なんとも物騒な物言いです
これを受けて、黙って成り行きを聞いていた範が「フフン」と鼻で笑いました。そしてワザと聞こえる程度の小声で漏らす
「大きく出たな」

ボッ!
パシィツ!

閃光の速さで飛んだ春成の裏拳。それをガッシと受け止める範の手の平。両者の間にバチバチと火花が散ります
「ついでに殺されてェのか?」
「フン。相手が違うぜ」
一触即発!しかしそのときだった!なんと両者の頭上から郭爺様の声が降ってきたではないか!

まるでなんかの妖怪の如く春成の腕の上に乗る郭爺様。中国拳法で言う「軽身巧」というヤツですね
しかし流石は”海皇”の軽身巧。これほどのレベルのものは見たことが無い。烈先生も範も冷や汗浮かべてビビってます
「よろしい。一人一殺・・・やってみせい春成」
「アリガトよ父ちゃん」





さあカメラは闘場に戻ります。団体戦次鋒戦!範馬刃牙VS郭春成
オオオオオオオオオオオオオオオ
既に闘場中央で仁王立ちの春成。現れんとする対戦相手の事は、さっき烈先生から聞いたばかりです

「東京後楽園ドーム地下闘技場で行われた格闘トーナメントは知っていよう?」
「オウよ。聞いたことはある・・・・が、それで?」
「君がこれから戦う相手。
彼が優勝者だ」

範馬刃牙入場!そのたたずまいを視界に納めた瞬間、春成の形相が一変する
共に偉大な父を持つ者同士の共有感!
偉大・・・どちらのお父さんも人格的に問題ある人ですけどね
ゴワアアアアアアアアアアアン!!
勢いよく銅鑼が打ち鳴らされ、同時に春成が飢えた獣の如く飛び出した!どうなる2世対決!?
そして
来週は休載だコンチクショー!再来週へ続く!


211話

ベストコンディション

試合開始の銅鑼の音とともに猛然とダッシュする「狂獣」郭春成。軌道は一直線!狙うは敵の正面!中心!
鋼のような筋肉のしなやかなる躍動。まさに旋風を巻き起こすかの如き勢いで、その左拳が唸りを上げた!!
ズアッ!!!
しかし刃牙これを軽いステップで回避!

カウンターの右フックを完璧なタイミングで合わせる!

その一撃は春成の顎の先端を正確に捕え、脳を頭骨内壁に激突させた。典型的な脳震盪症状
いわゆる
”肉体に残るダメージはないが意識を断ち切るパンチ”
この次点で既に春成の意識は吹っ飛んでいたが、刃牙のコンビネーションはまさに電光石火
返す刀の左アッパー!下顎にモロクリーンヒット!!

白目剥きました
おいおいウソだろ?まさかこれで終わりじゃ・・・終わりなわけが・・・・そんなハズが・・・・・・

ガクン、と崩れ落ちる上半身。その体勢を利用した最後の一撃!
左上段廻し蹴り!スーパービューティフルヒット!!

華麗なる刃牙の3段コンビネーション。それら全弾キレイにもらった春成は一言の呻きもあげず
その場に

前のめりにぶっ倒れた

その間 実に2秒!!!

なんだと?よくワカらなかったぞ

もっかいVTRを見てみよう











あ ワン

ツウ

スリャ!3段!

ぎゃーたしかに

春成2秒で終わったよ!レオパルドン並だ!!
目の前で展開されたあまりの光景に、観客達は静まり返って声も出ない
ただただ目前の状況を見守るだけである

「勝負ありッッッ!!!」

勝利の拍手はない。勝ち名乗りを受けても尚、観客達は茫然自失
当の刃牙も「つまらない試合だった」とでもいうような表情を見せつつ、実に淡々と通路へ引っ込んでいく
通路で少年を待ち構えていたのは実父・範馬勇次郎。「地上最強の生物」の異名を取る父が、すっと左手を上げる

これが もうじき18歳を迎えようとする少年
範馬 刃牙

ベストコンディションの
姿である

パァン!
ニヤリと笑ってハイタッチを交わす父子!カッケーシーンだわこりゃ
そしてこのナイスな引きで
来週休みかよ!もうすっかり隔週状態で次号へ続く



考察
【刃牙の強さ】

・・・・・さて、というわけで。今週の検証ですが
春成は弱くないですよ?多分
言わずもがなですが「刃牙が強すぎる」んですな。それはもう反則的なほどに
そもそも刃牙は地下トーナメント時から梢江とのセックスを経て、無茶なパワーアップをしています
あの時点で既に
柳龍光シコルスキー二人同時に相手して余裕であしらってました
それから毒に侵されて
半死人状態になったものの、裏返った途端に李海王瞬殺
あんなヒョロヒョロの骨の皮だけみたいな状態でも海王瞬殺ですよ
そして料理と
10リットルの砂糖水で肉体も完全復活。以前にましてパワーアップ!
言うたら今の刃牙は間違いなく
「作品中、勇次郎の次に強いヤツ」かと
おそらくオリバさんと闘っても、郭爺様と闘っても勝つでしょう。それくらいが今の刃牙と実力と思われ
春成は読者に刃牙の強さを見せつけるため
スケープゴートになったというか・・・
とにかく
不運なヤツだったということだ。合掌


212話

焦燥

ガーレンをも越えた史上最強の噛ませ犬郭春成。2秒で彼を葬った刃牙を日米連合の仲間達が暖かく迎える
「親父より強ェェ」
「ヒュウ〜♪」
「素晴らしいなキミは!本当に素晴らしい!君なら日本の若者を導けるッ!」
がっしと両手を掴んで離さないのは寂さん。その喜び120%のボディランゲージに刃牙もちょっと引いてます
「いや・・・あの・・・え?」

「どうかなバキくん。組まないかわたしと!」
誰彼かまわず勧誘しまくる人だったようですこの人。それにしてもスゴイ嬉しそうな顔するなぁ

一方その頃、中国側の控室で意識を取り戻した噛ませ犬。目の前には眉をひそめたお父ちゃん郭海王
「お前さァ・・・・ほんとにワシの血引いとる?」うわキツイなー

返す言葉もなく視線を落とす噛ませ犬。可哀想に
「・・・・・負けたのか」
「イヤ〜良き拳士じゃなあの子は」

オモチャに興味を失った子供のように。老人は息子に一瞥くれて背中を向けた。その目が春成に注がれることは以後ないであろう
「武から身を引けい」
空前の完敗を喫した息子にかけられたのはねぎらいの言葉ではなかった。この老人には強さだけがこの世の価値基準なのだ





舞台袖通路。闘場に向かう寂さんに付き従うのはたった今自分の試合を終えたばかりの刃牙だ
「なぁバキさん。ただ強くなるだけではつまらんぞ。キミのその強さ・・・他人のために使ってみんか?」
「スゴイな寂さんは。あの男と拳を交えようというこんなときでさえ
日本を―若者を導くことを考えている。・・・・・・
だから強い」
「ほぅ、わかるのかね。キミの年齢でそういうことが」
「ボクも・・・自分以外の人のために・・・・って強くなれました」

そう応えて微笑を浮かべる刃牙。寂さんは静かに眼鏡を外すとそれを刃牙に手渡した
「敗けません。時代が私の勝利を必要としているから」

寂海王、微塵の気後れもなし!静かなる心で戦いに挑む!

時同じくして舞台袖反対側。全身から凄まじいオーラを発するガン黒男が郭爺様にハッパかけられてます
「説明するまでもなく。お前が敗れたとき我が中国の敗北が決定する
それが中国武術史4000年になにをもたらすのか・・・知らぬお前ではあるまい」
「老師。わたしは自分の未熟を恥じます
そんな局面に立ってしまった自分に 幸運を感じているのだから」

Mr蛮勇、烈海王!猛る気勢抑えることもままならず!

今ここに両雄並び立つ!
崖っぷちの中国軍にはもはや1敗も許されない。果たしてこの戦いの行方や如何に?
両名待ったなし!試合開始の銅鑼が今打ち鳴らされたァ!!
ゴワァアアアアアアアアアアアアアアン!!

『開始めいッッ!!!』

日本の未来のために勝たねばならぬ男!祖国の4000の歴史のために負けられぬ男!次号激突!


213話

組もう

日米連合側のリーチで迎えた中堅戦。Mrスカウトマン寂海王VSMr蛮勇烈海王!いよいよ団体戦天王山です
全身からオーラ放出しまくりで身構える烈先生に対し、なんと寂さんは自然体でつかつか歩き間合いを詰めるではないか
「烈さん。なにはともあれまずは握手を」
すっと差し出された右手にセコンドの刃牙は半ば呆れ顔。なにぜこの試合は中国側にとって死活の真剣勝負
この握手に罠があるなしを別に考えても、ここでにこやかに手を握り返す中国側であるハズがありません・・・・
と、思いきや。刃牙ビックリ。インド人もビックリ
「バカな・・・」
意外にも烈先生は素直に構えを解き、ガッチリと右手を握り返したではありませんか。スポーツマンシップガン黒!
「白林寺・・・・と言うより”中国の”烈海王と呼ばれるあなたの武名はかねがね・・・・」
”バオッ!”
あっとぉ!台詞の途中で寂さん右手を握ったまま身体を反転!不意打ちの裏拳だ!
刃牙の考え通り。この戦いは遊びではない。例え卑怯であっても、隙あらば貪欲に勝利を狙うのが真剣勝負と言うもの!

だがしかしッ!寂さんの卑怯アタックは初弾ヒットを奪うことはなかった!
一瞬のうちに逆間接を極められた寂さんの右手!烈先生スゲエ!
すばやく背後に回り、軽い衝靠を当てる烈先生。ぽーんと勢いよく吹っ飛ばされる不意打ちオヤジ
一撃必殺の攻撃を叩き込めた決定的チャンスだったのに、この余裕。カッコイイぜ烈先生!!!

「汚ねェぞ寂ッッ!!」
「卑怯者!恥を知れッ!」
「引っ込め日本人ッッ!」

いきなり不意打ちを仕掛けた寂さんに会場はブーイングの嵐。当の本人はといえば、呆けた顔で烈先生を見上げてます
「素晴らしい・・・イヤまったく素晴らしい・・・・!」




さあ出るよ!




間違いなく出るよ!







「烈さん・・・・組もう。わたしとッッ」

 

出たー!!!!!
俺はMrスカウトマン寂海王!誰かれかまわず勧誘するぜ!
会場はもう全員スタンディングで寂さんバッシングです。「みんなよけろ!このにほんじんだけはゆるせない!」

「必要なんだ。キミのような人材が」
再度差し出される寂さんの右手。流石に今回は烈先生もブチ切れて・・・・・・ってゲゲェーッ!?
なんと烈先生、またもや右手を握り返したァ!いい人だぁー!
「信じていた。必ず握ってくれると」
度量広すぎ烈先生。その寛大なるシェークハンドににっこりと笑顔で応える寂さん・・・と!

四方投げぇー!!!
またもやだまし討ち!もうタダの卑怯なオッサンだ寂さん!
寛大なる烈先生はこのまま卑怯オヤジのだまし討ちに散ってしまうのかー!?

あちょおあー!!!!
余裕で踏みとどまった烈先生、そのまま力で寂さんを投げ返す!なんかもうその実力差は歴然だー!!!
卑怯寂さん敗北決定ぽ。で次号へ続く!


いやー烈先生強い。そういえば昔どっかに
「今の私なら烈海王に勝てる!」
とぬかした頭の悪いロンゲがいましたが。彼は今の烈先生見たらどう思うんでしょうかねぇ


214話

信じていた

二度に渡る不意打ち!卑怯オヤジの四方投げに散るかと思われたガングロおさげだったが、ドッコイ!
その驚異の腹筋と足腰はさながら大地に根をはった巨木!ふんぬと踏ん張って、そのまま力で卑怯オヤジを投げ返した
一気に湧き上がる場内。そらそうでしょう
「見事なり烈海王ッ!卑怯なり日本人ッッ!
なんという卑怯さッ!
握手という友好の儀式を不意打ちの道具に使うッ
許されざる行為ですッッ!
この稀代の卑劣漢をどう迎える烈海王!どう闘う烈海王ッ!」

稀代の卑劣漢呼ばわりされてしまった寂さん。まー二度も仕掛ければ無理もありません
会場中が寂バッシング一色の中、果たしてここからどのような戦いを展開して・・・・
ゲェーッ!?
性懲りも無く右手を差し出したー!!!
もう観客は「この日本人今すぐ殺せよ!」ムードが大爆発。容赦ない罵声が飛びまくります

「握れるかね」

「握る勇気があるかね」
卑怯のクセになんか偉そうです。ならばその挑発乗らぬワケにはいくまい!

がっし

「あ〜っと握った!握ってしまっぞ烈海王!
不意打ちなど何するものぞ!やれるものならやってみろ!」

と。3度目の握手を事も無げに握り返す烈先生。さあまたも卑怯オヤジは不意打ちを仕掛けるのかー?
って
あたたたたたたたた!!!

仕掛けたのは烈先生だった!
怒れるガングロおさげ、怒涛のマシンガンパンチ!
卑怯オヤジの身体がみるみる宙に浮いていく!あれだ、「龍虎の拳」の暫烈拳ヒットしたみたいね
口からドボドボ血ぃ吹いて前かがみになる卑怯オヤジ。だがその口元に不敵な笑み!

「し・・・信じていた・・・・」

「必ず握ってくれると」
起死回生の逆手一本背負い!
卑怯オヤジの反撃開始で次号へ続く!


215話

起きたまえ

烈先生の必殺百裂パンチを浴びながらも、起死回生の逆手一本背負いを決めた寂さん
間髪入れずグラウンドに持ち込むと、電光石火の
腕ひしぎ逆十字!

まさに”肉を斬らせて骨を断つ”
躊躇ない寂さんの腕ひしぎは、
烈先生の右腕を一発でヘシ折った
しかし寂さんそのままグラウンドで勝負を決めようとはせず、腕を解いてゆっくりと立ち上がったではないか
そして。いまだ仰向けに倒れたままの烈先生に一言呟く
「さァ、起きたまえ。起きて闘いたまえ」





一瞬の沈黙のあと






ついに会場の感情は大・爆・発!

「フザけるなァッッこのインチキ野郎ォがッッ!」

「ブッ殺せッッ!」 「生かして帰すなッッ!」
「叩き殺せッ!
血祭りにしろォッッ!」

卑怯日本人許すまじ!次々に塀を飛び越えて武舞台の中に入ってくる観客達
観客とは言ってもただの一般人ではない彼等。なんたってここは擂台祭。観客は全員が全員中国武術の手練です
屈強な男達十数人が殺気をみなぎらせて寂さんを完全包囲!
卑怯オヤジ大ピンチ!ここでタコ殴りにされてしまうのか!?
だが。この混乱を制したのは腕を折られた当人、烈先生の一喝であった

「出てゆきなさいッッ!!
ここはキミ達が入る場所ではないッッ!」

臓腑を鷲掴みにするかの如き、凄まじい怒声。目を血走らせていた男達が一斉に青ざめていく
「ここは武を修めた―拳士のみが立つ場だ・・・
出てゆかぬ者は遠慮なく私が叩き伏せるぞッ!」
ありゃー・・・烈先生のために怒り心頭で乱入したのに。頭ごなしに怒られてこの人達なんか可哀想ね
ションボリとうなだれてしまった男達。『ちょっと強く言い過ぎたか・・・』優しくフォローも忘れない烈先生
「私のことなら心配無用右腕が使えぬ・・・
ちょうどいいハンデだ
。 さァ、席に戻りなさい」
烈先生の頼もしい言葉で騒ぎはようやく沈静。しかしながら。この言葉は強がりでも何でもなかった
再び二人きりになって相対する両選手。寂さんは穏やかに笑いながら頭を下げたではないか

「その通りだ。キミと私とでは片腕のハンデくらいでちょうどフェア
こうすることが最初からの狙いだった・・・・
度重なる無礼をここに詫びたい」
「かまわん。知りながらやっていたことだ」
本人同士が認め合う実力差!
なんと烈先生の右腕が使えないこの状態でほぼ互角だと言う
更には烈先生はそれを承知の上で、
あえて腕を折らせたのだと
おもむろに靴を脱いで裸足になる烈先生。ダラリの下がった右腕もまるで不安要素に見えない。ここからが本当の勝負だ

「始めよう」

「心から誓える」

「君を日本へ連れて帰る」

目の前のリスペクタブル・ガイ(尊敬すべき男)に最大の賛辞を送る寂さん
次号、いよいよ両者本気の激突!


216話

スバラシイッ

「心から誓えるよ。君を日本に連れて帰る・・・そして私と一緒に
迷える者達を導く!

なんかあやしい宗教みたいな台詞ですが。ともかく寂さん本気です。この勝負だけは絶対に負けられない!
先に仕掛けたのは烈先生。ぶらりと垂れ下がったままの右腕を意にも介せず、猛烈な踏み込みから嵐のような連脚を見舞う
バババババババババッ!!!
速く、そして重い蹴りの連打。靴を脱ぎ捨てた烈先生は、さながらグローブを外したボクサーのようなもの!
片脚を相手に両腕でのブロックを余儀なくされる寂さん。しかしここからがハンパじゃない
”魔拳”烈海王!

なんと脚の指で寂さんの手を掴んだッッ!
そのまま脚で投げ!
およそ想像を絶する下半身の強靭さ!観戦していた刃牙も思わず口をアングリだ

受身も取れずに背中から地面に叩きつけられる寂さん。更に追い討ちの蹴りを見舞われるがそれはなんとか回避します
オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
まさに闘神にでも例えるべきか。驚くべき烈先生の戦闘力に会場はボルテージMAX。さあ卑怯日本人をやっつけろ!

で。ぶん投げられた当の本人はといえば、背中に冷たいモノを感じながらもお決まりフレーズ炸裂
『すっ・・・スバラシイッッ!!』
もう病気だろこの人。死んで地獄に行っても閻魔大王相手に「私と組もう!」とか言ってそうだ
さあ両者再び距離があいたところで仕切り直し。今度は寂さんが仕掛けて出るッ!



素晴らしいッ


なんと感動的で


豊潤な技の持ち主なんだ!



片手が使えない烈先生に対し両拳でのラッシュ!繰り出された烈先生のハイキックをかがんで回避すると・・・・
ガシィ!
軸足の足首を思い切り掴む!
三陰光(すねの内側、足首から10cmほどにある急所)圧痛!
たまらず態勢を崩す烈先生。そこへタイミングドンピシャの寂さんハイキックがクリーンヒット!



欲しいッ!なんとしても欲しいッ!

この天才を 日本へッッ!!



場内悲鳴!膝の折れかかった烈先生に、一気に決着をつけようと寂さんが飛び掛った!
でもまた脚キター!!!!
”ワシッ”と。自慢のヒゲを鷲掴みにされて・・・・

そのままブン!
高速でブレた顔がなんともマヌケで笑えます

絶対に負けられん!!!
顎ヒゲをむしり取られました
右腕が使えなくとも実力差は明白!しかしMrスカウト寂海王の心はこんなコトじゃ折れはしない!
背水の陣のオッサン、玉砕覚悟の決死の反撃に出るか!? コイツは次号も見逃せないぜ!


217話

たかが拳法

まさに驚嘆すべきは烈先生の足技。なんと足の指でヒゲを掴んでの投げ!
派手に地面に叩きつけられた寂さん、自慢の顎ヒゲが情けないカタチにむしり取られてしまいました。笑えるなー
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
客席はもう全員総立ちで烈先生フィーバー。「ざまー見やがれこの卑怯日本人がァ!」てなもんです
「ごらんください!この寂の表情!自慢のヒゲももう残り僅かです!」
皮肉めいたジョークたっぷりのアナウンスに場内も大爆笑。おっと、ここで寂さんが烈先生にまた何か話しかけてますよ?
「あーっと話しかけている!この男はいつもそうです!実力で敵わぬとみるや手練手管!
言葉あるいは偽りの動作を用いて
今ここに立っているのです!」

なんかもうボロクソ言われてます。まぁ2回も不意打ちすれば仕方ないけどさ・・・陳戦の勝ちまで卑怯で勝ったような言い方だ




「負傷した肘を治したいのだが
私の武術は傷つけることを目的としない・・・故に君の肘は折れていない。外れてはいるがな」

今更何言ってんだオッサン!
んなこと言うくらいなら最初からフェアに戦え!と突っ込みたいところですが。まーそこは漫画の演出ってことで目をつぶりましょう
「なんてヤツだ!」
「だまされるなァッ烈ッ!!」

再び猛烈なブーイング!サッカー日本VS中国なんてモンじゃありませんよこりゃ。もう寂さんいつ殺されてもおかしくありません
「出たぞ口八丁手八丁!卑劣なその手を打ち払え烈海王!
それは罠だァ―――ッッ!!ああッ!?」

なんと三度!三度寂さんの言葉を信じて歩み寄る烈先生!スゲエぜこのガングロおさげ!
優しく微笑みながら烈先生の右腕に手をかける寂さん。はたして本当に治すのか?それとも・・・・
「気付いたことがある。片腕が使えない相手では意味が無い・・・普及の目的が私の悲願―
完全なる自己防衛ならば
たかが一拳法家の技ごとき防ぎきれずなんの技術か」


”バオッ!!

「あーッやっぱりィィィッ!!!
だから言わんこっちゃない!卑怯者ォー!」

アナウンサー悲鳴!やっぱりこの人は不意打ちなのかー!?寂さんが腕を掴むと同時に烈先生の身体が宙を舞った!
だが次の瞬間!烈先生の身体は360度回転すると、両足でふわっと地面に着地。呆けた顔の烈先生に寂さんが声をかける
「まだ痛むかね・・・?」

ぐっぱぐっぱ。 おお治った!外れた右肘はもうすっかり元通り!
三度目の正直と言いましょうか。あまりにも意外な結果に観客席もポカーンとした表情です
「さァ 仕切りなおしだ」
「・・・礼は言わぬ。それに”たかが一拳法家”という言葉が気になっている」
「いかに烈海王と言えども。たかが拳法」
プライドが傷つけられたのか、「たかが拳法」という言葉に噛み付いた烈先生。それをにべもなく跳ね除ける寂さん
次の瞬間、
天内悠のごときノーモーションジャンプで空を飛ぶ烈先生の姿ッ!!

全身―――――

全霊にて!

『怯え〜〜〜』

ぎゃーなんだこれは。すげえイイ表情で「こえー」って。今までと全然キャラクターちゃうよ!
突然の
好感度アップだ寂さん!
こえー


叩き潰すッッ!!

そんな憎めない人になった寂さんを容赦なく襲う猛攻撃の雨あられ!寂さん肉のカーテン!
完全なる自己防衛が空拳道の真髄!果たして寂さんは烈海王の猛攻を防ぎきることが出来るのか?
次号へ続くッ!!


218話

護身

あざやかに倒してのける

余裕綽々で屠り去る

そんなふうにやれるものなら―――

俺だってそうしたかったさ




やれるものならね

さあ可哀想なコトになってます寂さん。見るも無惨なボッコボコです
機関銃のように放たれる連撃は全身を穿ち、顔面を射抜く伸びた前蹴りはさながら槍のごとき破壊力
壁際まで吹き飛ばされた寂さんに獣のように追いすがり、更なる追撃を加える烈先生。なんだかもう寂さん薄っぺらい紙みたいだ

相手は天才・烈海王

いわゆる中国四千年 拳技の集大成!

かなわぬ・・・・・かなわぬなら!

起死回生のアッパーカットも完全に見切られ、余裕の片手ディフェンス
返しの左を見舞おうとするも、その前に烈先生の掌底が強烈にカウンターヒット!もう戦闘力の次元が違います
「試合になって・・・ない」
今さっきまで
「このクソ日本人ブッ潰せ!」と騒いでいた観客達も、あまりのワンサイド展開に同情的な表情さえ浮かべます

護る!

自己を護りきる

護身とは――倒されぬこと!




”倒されぬことが護身だ”




圧倒的劣勢に立たされた寂さんでしたが、ここで信じられないアクションに出ます。それはなんと・・・・
「な・・・・なんだァ!?」
「おいおい・・・試合放棄か!?」
ざわ・・・・ざわざわ・・・・・
場内騒然。それも当然のこと
頭を抱えて背中を向け、座り込んでしまいました。なにコレ降参?
「な・・・・!」
当然烈先生も降参の意思表示と受け止めたらしく、ここで一旦攻撃の手を止めます。ところがドッコイ寂海王
攻撃を止めてくれた烈先生に対してトンでもない言葉を吐きます

「オヤ・・・・?攻撃がこねェな」

「試合放棄かな?」

このオッサン、人を怒らせる天才
呆然とする烈先生の表情がたまりません。この瞬間の胸中たるや、一体どれほどのものか
そして
トドメがこれですよ

「やったァァアアアアアアアア!
勝ったぞォッッ!!」

ボケーッと突っ立ってる烈先生がイイ味出しすぎ
助けて。面白すぎるよ寂さん
田中さんとサムワン亡き後、このシリーズのギャグ担当を一手に引き受けてるなー

ついに堪忍袋の緒が切れた烈先生。「俺は絶対このヒゲを殺すぞ!」つーよーなものスゴイ形相で襲い掛かりました
だがまだ若い。
その憤りこそ寂さんの狙っていた隙!

反撃のヘッドバットクリーンヒットォ!
まだまだ死なない寂海王!二転三転する戦いはまだ続く!!次号を待て!


219話

開眼!!!

”ぼぐしゃー!”
烈先生の虚を突いて放たれた反撃のヘッドバット。寂さんのハゲ後頭部が勢いよく烈先生の鼻っ面にめり込みます。うわイタソー
完全に動きが止まった烈先生に対し、少し余裕が出た寂さんが生意気にあのセリフを吐く
「烈さん、強いだけではくだらん。つまらんぞ」
うーん流石ですMrスカウト。不意打ちでしかまともな攻撃当てられないクセに、説教と説得だけは一人前だよ
さあ、このセリフを受けてガングロおさげの反応は・・・・・?

10秒前までは人間だった
ガーン。物凄い形相で睨みつける烈先生!なんかもう今にも寂さん噛み殺しそう
恐怖で引いてる寂さんの表情が最高すぎます。なんでこんなに面白いんだこのオッサンは!

交渉は決裂!ブチ切れた烈先生が宙高く舞いあがり、ビビってまともに動けない寂さんは再び亀になる!
真上から寂さんの後頭部に膝を落とす烈先生!そのまま流れるように着地すると、無防備な背中に嵐のような連撃を叩き込む!
ズドッ!バキッドガッ!
ドガガガガガガガガガガガ!!!

なすがままに殴られる寂さん。観客も勝負あったという表情ですが・・・あれれ。なんか結構耐えてますよ?


なるほど 見た目はどうあれ

これは良き構え

背中の耐久力は正面の約7倍

ダメージは蓄積されるが

正面ならばとうに倒されていた

護身開眼!!!


まぁ待てみんな。冷静に考えろ
無防備な背中晒すのはどう考えても良くないだろう

まがりなりにも脊髄は人体の最大の急所だしな・・・つーかあの花山さんだって背中にマッハパンチくらったら気絶したし
そもそも耐久力云々とかいう次元の打撃じゃねえだろ烈先生級だと。まともに殴られたら背骨くらい簡単に折れると思うんだ
そんな
ツッコミどころ満載の護身の構えですが、肉のカーテンのごとく烈先生の猛攻を防ぎきります

と、マシンガンのような烈先生の攻撃がピタリと止む。「防ぎきった?」と一瞬安堵の表情がこぼれる寂さん
だがしかし、次の瞬間背中に感じるただならぬ殺気
「許せ」


ぐりりっ

指拳で脊髄を圧痛。よほど痛覚の集中してるツボなのか、寂さんの痛がり方が尋常じゃありません
バラエティ番組でよくある、電流の流れる椅子をくらったように。反射的に立ち上がってしまう寂さん
ハッと我に返り、立ち上がってしまった自分に気付きますが
もう遅い

眼前に烈さん!口元には勝利の笑み!

「ヤバッ」

絶対絶命のこの期に及んで尚、反応が面白すぎる寂さん

「ヤバッ」って

それが寂さん最期のセリフになりました

すっ飛んでくる鉄拳。暗転する景色
そのまま真っ暗になって
次号へ続く!寂さんお疲れさま。楽しい笑いをありがとう


220話

勝利者

静まり返る場内。顔面に突き刺さる烈先生渾身の左拳。その威力は寂さんの意識も一撃で粉砕した・・・・ハズであった
しかし闘う人間の本能か。いや、何としてでも烈先生を日本に連れて帰りたいという執念の現われか。意識が遠のく間際
寂さんの両腕は しっかりと烈先生の左腕を握って離さなかった

「勝負ありッッッ!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
待ち望んでいた中国側の1勝は天才・烈海王によってもたらされた!場内は割れんばかりの大歓声!
だが。嵐のような拍手喝采の中、勝利者である烈先生だけは浮かない顔で寂さんの両腕を見つめていた

「全力で突き・・・全力で蹴った・・・・靴を脱ぎ足指を使い
あまつさえ格下に使用すべきではない急所までも・・・
中国武術史4000年 天才と呼ばれる者の全力を受けきった

そしてなお 両の腕に執念を宿したまま・・・
何が勝利なものか!」

ガバッ!と。意識のない寂さんの身体を肩に担ぎ、抱きかかえる烈先生
全力を出し切って闘い、尚その精神を押し通した相手に対するリスペクト。今、烈先生は寂海王という男を認めたのです

烈士 寂海王

君は護りぬいた

君こそが勝利者だ!

烈先生に担がれ花道を去る寂さんに中国の観客達からも惜しみない拍手が送られる。その最期の姿勢が彼等の心を打ったのだ
会場中が烈&寂コールで唸りをあげる、まさにこれ以上ない感動的な退場シーンです





「この英雄に早急に手当てを」
舞台袖で待機していた刃牙に声をかける烈先生。いきなり
英雄やて。随分と高く評価しちゃってまぁ・・・・
刃牙もまた二人の戦いを見て感じるものがあったのか、何やら聖人のような慈愛に満ちた表情で言葉を紡ぐ
「ズルくて・・・卑劣で・・・この上なく美しくて・・・・」
と。両腕を差し出して寂さんの身体を預かろうとした
その瞬間!

なにィ――――ッッ!?
元気よく烈先生に抱きつく寂さん!意識を失ってたのはフリだったのかー!?
差し出した両手の行き場がない刃牙がもう。
後姿が猛烈にマヌケで最高です

「なァ烈くんッ!頼む!ワシと一緒に日本へ渡ってくれ!なッ!なッ!」
もうダメだ。日本中のバキ読者がこのシーンおかしくって耐えられなかったハズ。板垣先生神だ

さっきまでの自分の感動は何だったのか。あまりのどんでん返しに憮然として後ろを向く烈先生
なんて奴ッッ!!

「あきらめんからなァッッ!!」

「一瞬でも尊敬した自分がバカだった」という、烈先生の何とも言えないステキ表情

元気いっぱいに大声で烈先生獲得を謳う、懲りないオッサン寂海王

「もうつきあってらんねェや」といった感じにそそくさと通路に引き上げる刃牙

三者三様のリアクションが面白すぎる最後のシーン
今週の旨味がこの1コマにギュッと凝縮されてます。すげーよ今週の板垣先生!天才じみてるよ!

というワケで、最後の最後まで読者を愉しませてくれた寂さんに乾杯。今人気投票やったらブッちぎりで1位確定だよなこの人
いよいよ次号は副将戦!世代を超えて激突する
神の子VS鬼の子!こいつはますます目が離せないぜ!!






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