250話

一分

「立ち入った質問をお許しください。私達は・・・貴方の復活を期待していいのでしょうか」
今週の冒頭はマホメド・アライ邸から。もう読者にもすっかりお馴染みになったスポーツ記者との対談です
アライを「今世紀最高のスポーツマン」と讃え心酔するこの記者にとって、例えそれが解り切った答であっても聞かずにはいられなかった
『再びこの人のファイトを観たい』だがそれは所詮かなわぬ夢物語なのか?

「永きキャリアで浴び続けた何万ダースものパンチは 当然のこととはいえ・・・貴方の肉体を深刻に蝕んだ
専門家の多くは・・・貴方がかつての健康を取り戻すことはもはや絶望的とサジを投げます
でも期待せずにはいられない!貴方は人類の財産・・・・チャ・・・チャンプ?!」
するとなんと。マホメド・アライは記者の思いに応えるかのようにソファから立ち上がり、震える手でファイティングポーズを取ったではないか
しかしあまりにも痛々しいファイティングポーズ。パンチドランカー症状によって全身が小刻みに痙攣するその姿に、かつての華麗はありません
自分がうかつな発言をしてしまったばかりに偉大なるチャンプにつらい真似をさせてしまった。記者は恐縮して立ち上がり、すぐに頭を下げた
「サンキューチャンプ・・・もう充分です。私の間違いでした。貴方はもう十分に健康・・・」
”ボッ!”
と、そのときだった!突然の風圧を感じ、パラパラと落ちてきてきた自分の頭髪を見て動きが止まる記者。なんだこれは?
それがアライのパンチによるものであると理解した次の瞬間、稲妻のような速度で繰り出されるコンビネーションブロー!

コツン。と顎先にアッパーを押し当てたところで、アライは肩で息をしながらその拳を収めた。額には玉のような汗が浮かんでとても苦しそう
それにしてもこれは夢か幻か?目の前で起こった奇跡に対して、記者はただ呆然と立ち尽くすだけである
「いったい・・・誰が信じるだろう・・・60歳を超え、病に侵されたチャンプに・・・
まだ全盛の動きが出来るなんて・・・・ッ!」

「ハァハァ・・・一分・・・・一分だけなら。私は今でも世界チャンピオンだ
そしてキミは勘違いしているようだが・・・ボクシングは私を壊しちゃいない」
その言葉は記者の予期せぬものであった。60歳を超えて尚全盛のファイトを再現できる偉大なるチャンプ。そして
彼を壊したものはボクシングではないと言う

「Jrが・・・・

息子が私をブッ壊した」
と、いったところで。カメラはその息子パートに戻ります





イッタイ・・・ドウイウ男ナノダッッ

薄暗い地下で激突する鬼の子VS神の子。Jrの繰り出すパンチは面白いようにクリーンヒットし、ジャックの攻撃はカスリもしない
しかし圧倒的優位のその最中、すでにJrはこのジャック・範馬という男の恐ろしさを肌で感じ始めていた
倒れない!常軌を逸したタフネス!
幾度となく会心の手応えのパンチはあった。しかし目の前のこの大男は、多少なりともダメージが蓄積した様子をまるで見せない
繰り出す攻撃には先に闘った独歩ちゃんのように洗練された技巧はないが、それを補って余りある
純然たるパワー!
さながら丸太ん棒を猛スピードで振り回しているかのようなド迫力。もし被弾すればその破壊力は独歩の正拳の比ではないだろう

そしてJrのパンチが何百発とヒットする中、ジャックのまぐれヒット一発目がようやくお目見え
強烈な前蹴りィ!!!

ゴムまりにようにすっ飛んで壁に叩きつけられるJr。吐しゃ物と血を派手に撒き散らしてエライ苦しみようです
コンナ化物ヨリ・・・・ッッ
バキ・ハンマハ強イノカ!!!

ここまでのダメージを一発でひっくり返す理不尽な破壊力!
恐るべきはその身体能力!恐怖のパワフルモンスター・ジャックを倒す術は果たしてJrの手の内にあるのか?
次週へ続く!


251話

ナント・・・

【怪獣人間】 【闘う原子力発電所】 ジャックを一言で表現するのならばこんな言葉が相応しい
ようやく初ヒットしたジャックの攻撃。しかしそれはここまで何百発とパンチを当てたJrとのダメージ差を、たった一発でひっくり返してしまう代物だった
どうだコノヤロウ、とでも言うように折れた歯を吐き出すジャック。でも全然痛そうな顔なんてしてません。「ん?なんか蚊に刺されたか?」みたいな顔
ナント巨大キク・・・・・
ナントク・・・・・
ナント
強靭デ・・・・・

ここにきて相手の常軌を逸した身体能力を改めて認識したJr。顔が青ざめ、ドッと冷たい汗を噴出し始める。そう、
ビビってます
こっから俺の反撃ショータイムだ!とばかりに前につっかけるジャック。その威圧感に呑まれたのか、前蹴りのダメージが残っているのか
ナント敏捷イ・・・・・
さっきまでのように脚が動かないJrは軽くバックステップを踏みつつ、迎撃のコンビネーションブローを的確に叩き込みます
だがしかし倒れないジャック。テンプルにいいの一発もらって一瞬体勢が崩れかけますが、ズギャッと踏ん張って更に加速!
ナント粘り強ク・・・・・

Jr捕まった!
『ああヤベエ!』って恐怖の表情が実に素晴らしい。万力のような締め付けの両腕に抱え上げられ、超スピードで反転する景色




ナント強イ!!!

思いっきり地面に叩きつけられたァーッ!
ジャ
ックの身長、膂力、それに加えて地面はコンクリート。死にます
激突の瞬間に手をついたおかげで一撃KOはなかったようですが・・・・あぁ、こりゃ試合ならレフェリーストップだ。脳震盪起こしてる
震えながら顔を上げるも、頭がクラクラして目の焦点が合ってないJr。トドメを刺そうとにじり寄ってくるジャックが分身して見えてます

シカモコノ男ハ
ソレホドノ潜在能力ヲ持チナガラ・・・・

”ガコッ!!!”

倒れたJrに容赦なく追撃の顔面パンチ入れました。こんなんなってます
徹底的デ・・・・・

執拗デ・・・・・
更にお兄ちゃんハンマー炸裂!Jr完全に目ぇイッてる!目ぇイッてる!
ここらへんでやめないと死ぬと思うんですが。最後に
全体重を乗せて顔面を踏みつけるジャック

じゃーん完成しました。闘う芸術家・ジャック範馬作【のしJr】
出来上がった作品をしげしげと眺める巨匠。はたして満足のいく出来栄えでしょうか?

”ピク・・・” と
ほんの僅か。ホントーにほんの1mmほど動いた唇を確認し、「うむっ」と頷く巨匠
















ええい!まだ完成してない!

ソシテ完全主義者・・・・・

ジャック超すげえ。Jrマジ生命危機なほどボコボコにされて次号に続く!


252話

イツダッテ

まさに恐るべきは範馬の血。怪獣人間ジャックの怒涛の攻撃の前に、ついに血の海に沈んだ神の子・マホメドJr
もう唇1mmとて動かなくなったのを確認すると、ジャックは己が勝利を確信。Jrに背中を見せて服を着始めました
と!袖に腕を通したところで背後を気配を感じ取ったお兄ちゃん。もしやと思って振り返ってみれば・・・・

立てぇ!立つんだジョー!!!

なんとあの状態から立ち上がりました
完全に足にきてるので壁にもたれかかりながらですが。それでも立ち上がっただけで賞賛に値します
もはや戦闘力など残っているとは思えませんが、その瞳の輝きは失っていません。”神の子”としての意地・・・
「ダメージを受ケルト・・・立チアガッチマウンダ・・・・・」
否。
”ボクサー”としての意地かマホメド・アライJr。満身創痍ながらも戦う姿勢を崩そうとしません
いい度胸だ!トドメ刺したらー!と、着かけていた服を脱ぎ捨て、まるでダンプカーのように突進するジャック
その突進に合わせ、Jrは最後の力を振り絞った渾身の右カウンターを放つ!!!
ピシィッ!
顎先を打ち抜くピンポイント!相討ちでジャックのローキックをもらったが手応えあり。ジャックの膝がガクンと落ちる
でも倒れねえ――!グバッと踏ん張ってお兄ちゃんストレート!Jrかわせず被弾!



とにかくダウンとれるダメージを与えられません。これが先に戦った渋川先生&独歩ちゃんとジャックとの強さの違い
最高のカウンターパンチでダウンを取れない以上、Jrには
ジャックを倒す術がないという事である

イツダッテ―――
立チアガリ――――

お兄ちゃんアッパー!!!
シコちゃんのどたまを公衆電話の天井に突き刺した恐るべきアレ
なんかJrの目のイキ具合が
範海王にダブッて見えます

ソシテ・・・・・闘ウ・・・・・!!

数mも浮き上がって天井に激突するJr。落下してきたところを追撃のボディブロー!
この腕力で腹なんか思いっきり殴られた内臓破裂で即死するような気がしますが。壁に叩きつけられたJrはしかし倒れない!
倒れないどころか・・・・・・なんとこれは・・・・・・・!
イツダッテ・・・・・・

両手でカモンカモン!
なんとこの状況での挑発ポーズ!殺されっぞお前

イツダッテ・・・・・

憤怒の表情のお兄ちゃんが前に出る。気勢を張って挑発の舌を出すJrだが・・・・もうその足は動かない!

Stand and Fight
立って                         闘う!

花山さんのパンチ食らったスペックのように顔面に深くめり込む鉄拳!
このまま終わってしまうのか”神の子”!?それとも・・・・・?
次週休載で再来週号に続く!




ま、立ち上がった時点でJrが勝つ方向で確定だわな。負けるんだったらここで立ち上がらす必要はないワケだし
つーかジャックが勝っても話が続かないからなぁ・・・ここは次号出るであろう
”神をブッ壊したパンチ”に期待しよう


253話

来・・・イ・・・ヨ・・・

”ドガッ!!!”
地下駐車場を揺るがす轟音とともに叩きつけられた破壊神のハンマー。顔面に拳を深くめりこませた姿はまるで
克己に下段正拳突きをブチ込まれた時のドイルのようです
「グボ・・・」と、ゆっくり拳を引き抜くと・・・・むーざんむーざん。こんなん出てきました。うひー

舌を噛み切ってしまったのか、ブラブラで千切れる寸前です。もう見るだけで痛いよ
ずるりと崩れ落ちたJrを見下ろし、ようやく勝利を確信したお兄ちゃん。背中を向けて服を着始めますが・・・・

「ゴニョゴニョ・・・・」
!?

背後からボソボソと聞こえた謎の宇宙語
振り向いたジャックが見たもの、それは千切れかけの舌を必死に動かして言葉を紡ごうとするJrの姿だった

「ゴニョ・・・・(来)ゴニョ・・・・(イ)ゴニョ(ヨ)・・・・
ゴニョ
(チャ・・・ンス・・・)ゴニョ(ダ・・・・ゼ・・・)

プルプルと震える右手で手招きしながら。その痛々しい舌を見せてニタリと笑ってみせるJr
なんという負けん気。「トドメを刺されるまで俺は負けないぜ」とでもいうつもりでしょうか。郭海皇みたいなやっちゃなー
しかしお兄ちゃんのほうは勝者の余裕か。この挑発に激昂するでもなく、実に冷ややかな視線を投げて去ってしまいました

次第に遠のいていく男の背中を視界に納めながら。気力だけで持ち上がっていたJrの右手がついにパタリと落ちる
クッ・・・・・ソ・・・・・
逃ゲラレチャ・・・ショウガネェ・・・

イカス負け惜しみを吐いて意識を失うJr
【鬼の子VS神の子】!鬼の勝利で完全決着!
「予想は裏切り!」には間違いないですけど。マホメド父と記者のあの冒頭シーンは何だったんだよ板垣先生ー!
範海王のアレもそうだったけど、この人自分が用意してた展開でもネットで大きく予想されてしまうと変に意地になって
無理矢理覆してんじゃなかろうかという気がする
そうじゃないってんならあの冒頭の会話が何のために必要だったのか説明してくれよ!意味不明すぎるよ先生!
兎にも角にも、これでこの作品における
『範馬の血最強』というブランドが完璧に確立されたワケで・・・





「ど・・・どうしたんですかその顔・・・?」
「イヤ・・・チョットネ」

Jrの敗戦から5日後。ファミレスで梢江とコーヒーを飲んでいる男の姿が・・・・おっと、マホメドJr本人であります
あの勝負を本気で
「俺は負けてない」って思ってるならマジで郭爺様級に手に負えないアレ野郎なんですが
あれは自分の完敗としっかりと認識しているらしく、その表情は自信に満ち満ちていた以前の彼のものではありません
「キミカラ・・・元気ヲモライタクテ・・・」
おいおい、随分しおらしいじゃないか!一体どんだけ凹んでんねん
むぅ・・・考えてみれば何せあれほどの天才。おそらくは昨日の敗戦が生涯で初の黒星だったのではないでしょうか
刃牙と戦う前の前座のつもりでジャックに挑んだのに、その相手に完膚なきまでに叩き潰された現実。そりゃ落ち込みます

「・・・・喋りづらそうですね」
「ハハ・・・・」

「手術ヲシマシタ・・・聞キ取リニクカッタラゴメンナサイ」
あー痛い痛い。見るだけで痛い。コーヒー飲んで「OH!」と苦しむ姿がまた痛い

「会いたいと言われればこうして会うことくらいはできるけど・・・
わたしからそれ以上のことは・・・何も期待できない」

落ち込んでいるJrを優しく気遣いながらも、しかしやはり「わたしは刃牙くんの女だから」と一線を引く梢江
その返事にちょっと寂しそうな表情を見せたあと、一気にコーヒーを飲み干すJr。なんか切ないなお前
「十分ダ・・・・会ッテクレルダケデ・・・・」
と、カップを置いた瞬間。その肩にポンと手を触れる人物。ゲゲェーッこの人はー!

「お嬢ちゃん。この兄ちゃんちょっと借りていいかな」

なんと渋川先生だー!!!
何しに来たんでしょうか。まさか今更手負いのJr相手にリベンジマッチに来たってワケもあるまい
これはもしや
Jrに何かを伝授しにきたって可能性あり?むむむコイツは読めん
続きが気になる次号に続く!


254話

決闘

「すまんなお嬢ちゃん。ちょっと借りますぞ。さ・・・兄ちゃん」
「ウッカリシテイタ・・・ゴメンナサイ梢江サン。Mr渋川トノ大事な約束を忘レテイタ」

ファミレスの二人の前に突如として現れた渋川先生。Jrに「来い」と促すと、Jrもそれに口裏を合わせ店を出て行きました
さていったい何しに来たんでしょうか達人。手負いのJr相手にリベンジに来たってんじゃあ武道家としてちょっとカッコ悪いですが・・




店を出てから歩くこと十数分。都会の喧騒が届かない静かな並木道に入ると、ようやく渋川先生が切り出します
「ここらは都会にしては緑も多くてな・・・空き地も結構あって遊ぶにゃもってこいだ」
ニコリと笑いながら上着を脱ぎ始める渋川先生。ゲゲェーッ
やっぱリベンジかよ!
せめてJrの傷が完全に癒えてから来きてください達人。相手が弱ったところを狙ってるみたいでなんだかアレですよ
「理解ラナイ・・・我々は決着がツイテイル」
なにせ先の戦いでは左のリードジャブ一発で勝利を奪っているJr。今更この小さな老人と戦う理由は彼にありません
しかし・・・・・・

「ん〜・・・決闘ってワケじゃねぇし・・・負けもアリかと思ったんだが。やっぱダメだわ
ゲームだろうが遊びだろうが負けは負け。負けっぱなしはど〜も性に合わんでなぁ・・・」
「ゲーム・・・・?アレは決闘デハナカッタノカ・・・・?」
老人の言葉に憮然とした表情を見せるJr。まぁこの反応は無理もありません
一回負けた相手が
「いやーアレは本気じゃなかったんだ。もう一回やらないか」などと。そりゃ勝者としては普通腹立ちますよ
笑顔を絶やさぬままメガネを外し、雪駄をポイポイと脱ぎ捨てる渋川先生。その途端に場の空気がガラリと変わった
「ハハハ・・・アンタ決闘をやりたかったのかい。わかりました」

「やりましょか 決闘」
飄々とした老人はもういない。そこに居たのは真剣勝負の酸いも甘い知り尽くした歴戦の武術家!
渋川流柔術・渋川剛気
「遊び」の負けで若造に舐められたとあっちゃあ達人の意地が許さねえ。今こそ見せてやろう戦いの年季
い ざ 推 し て 参 る









決闘ジャナカッタダト!?
アノ緊張感溢レル戦イガ・・・・・









老齢に達シナガラ・・・・・
ナントイウ負ケ惜シミッッ

怒りの拳を固く握り締めるJr。いいだろう爺さん、そこまで言うのならば今度こそ明確なカタチで敗北を与えてやる!
今度は寸止めなんてしねえぞ!食らえッッ!
あの夜、達人を夢の世界に誘ったものと寸分違わぬ・・・否ッッ!

確実にあの時以上の左!
当たれば渋川先生の細い首なんぞ、すぐにグルンッってカクンッて一撃KO必至です
もっとも”当たれば”の話ですが

Jrのパンチに合わせ深く身をかがめ、そのまま肩口から下半身めがけて当て身
体勢を崩して地面に手をついたJrに衝撃走る!左手を握る老人の、無慈悲なる視線!
「兄ちゃんや・・・・・・」

「痛ェぞ・・・」

指取りッッ!!!
間髪入れず巻き込み投げぇッッ!!

”ペキッ”って!左手オシャカにされたー!
なんだこのやられっぷりは。ボクサーが利き拳潰されちゃったらこれでもう「勝負有り」ですよ
こっからは多分いいようにやられるだけで逆転はなさそう。
Jr可哀想な次号へ続く!



えー。なんでしょうかこの展開
先週で
『Jr辻斬り編』が終わって、今週から『Jrボコボコ編』にでも突入したんでしょうか
でも独歩ちゃん戦は
「オウ。殺し合いだ」って言って戦ってるからリベンジ戦はないかなぁ・・・・うーむ
とりあえず
範海王が出てきたら板垣先生神(絶対ねえ)
最終的には
白林寺のカルノフにもリベンジされて、泣きながらアメリカに帰るJrで締めだ


255話

大変

”ぺキッ!”
左手の人差し指に走る激痛に顔を歪める。その乾いた音が、自分の指の折れた音だと気付いた瞬間
”ドガガッ!!”
木の幹に額から思いっきりぶつかって、勢いよく地面に崩れ落ちるJr。こすった額の皮がズル剥けてすげー痛そうね
すぐさま顔を上げ、恐る恐る視線を落としたのは自分の黄金の左手・・・・・ああなんということでしょう
人差し指が
あり得ない方向にひん曲がってます。完璧に骨折です
ボクサーの命である拳。その握りを成す要である人差し指がプランプランて。憤怒の形相を浮かべるJr
「よくもやりやがったなこのジジイーッ!」って次の瞬間、後頭部にすっ飛んでくる
渋川先生の蹴り!
”ガッ!”

「決闘してんだぜ兄ちゃん。ボヤッとしてんじゃねェよバカヤロウ」

ガラ悪ッ!まるでヤクザのご隠居!
怒り心頭に達したJr。さながら牙を剥いた獣のように振り返ると、骨折した左手で閃光のフックを放つ!
「決闘の覚悟ならできている!舐めるな!」
と言ったところでしょうか。しかし決死の指プラパンチが届く前に

スカァァアアアアン!
真下からJrの顎を貫く渋川先生の掌底!そのままガッキと顔面を掴むと、思いっきり後頭部から地面に叩きつけました
幾度となく劇中で見た、達人お得意の攻めであります。今までこれを喰らってきた相手は例外なく・・・・・
視界ドロドロ!いい感じに三半規管がやられて、今やJrは四次元世界の住人
「兄ちゃんや・・・大変なことになったぜ」
目の前のグニャグニャ渋川先生がそう言って笑った瞬間。ゾクリと走った戦慄に一気に意識が覚醒する
掴まれたのは
折れた左人差し指!決闘なんだから弱った所を攻めるのは当然ですが。エゲツねえなー
くんっ、と軽く手首を返されてしまうともうダメぽ。ピーンとつま先立ちになって一歩も動けなくなるJr

※掲示板で朋友がーらんども述べていましたが、素人が合気道の達人に掌握されてしまったらそれでもう「勝負あり」です
ここからJrが何をしようとしても、渋川先生はほんの微動作だけですべての動きを封じてしまえるのだ

「え〜〜・・・・・っと」
キョロキョロと周囲を見回す渋川先生。なにせここは林の中、そこら中に
具合イイ武器がいっぱい立ってます
「ほいっ」くりん
”べキッ!!”

「ほいっ」ぐりん
”ズゴッ!!”
渋川先生が軽く手首を返す度に。まるで人間斧のように木に向かって激突しまくるJr
あっちの木で
ズゴン!こっちの木にドカン!達人の無慈悲な攻めはいつまで経っても止まりません
そして十数分後・・・・・・

神の子マホメドJr、こんなんなりました

ボロボロ。なんか煙とか出てるし
アレな話で恐縮ですが、地面に滴り落ちるJrの血がどうしても
ズボンからビチビチこぼれた下痢糞みたいに見えてすごいヤだ

「フゥ・・・いい汗かいたわい。どーするよ兄ちゃん、もうチョイやるかい?」

あのダンプカーのようなジャック猛攻を受けても、なお挑発ポーズを取り続けた負けず嫌いの青年
しかし今、小さな老人の降伏勧告に対して「まだまだやれるぜコノヤロウ!」という返事は聞かれません
つまり
もう意識飛んでる。勝負あり!

「ははは・・・」
渋川先生が長い拘束からようやく指を解放してやると、糸の切れた人形のようにゴロリと地面に転がるJr

「また逢おか。兄ちゃん」

お兄ちゃんに続き、お爺ちゃんにも完全敗北!

なんなんでしょうか。もはや「ドコに向かってるんだ板垣」という読者の穿った見方ががウリになってしまった感のあるバキ
これで本当に「Jrボコボコ編」に入ったと言うのならば、是非とも独歩ちゃんにもやられてほしいところですが・・・・
ぶっちゃけ今の板垣センセは
「読者予想とは違うモノを」つーベクトル”だけ”でストーリー作ってるし
正直これだけ意味不明な展開が続くと、次号予想を完璧にできる読者は
ある意味電波だと思う
そんなこんなで展開予測不可能の次号へ続く!


256話

こっちの世界

「・・・・・うわァ・・・」
「ゴメンナサイ・・・モウ少シオシャレシタカッタノダケド・・・」
散々木に叩きつけられボッコボコになった顔、手には包帯グルグル巻き。その痛々しい姿に梢江が思わず漏らします
冒頭シーンはあのファミレスで3度向き合うJrと梢江から。このケガ具合を見るに、渋川先生に完敗を喫した次の日でしょうか
「渋川さんと・・・喧嘩したのね・・・」
「ケンカデハナイ」

ふっと小さな笑みを浮かべ、これを否定するJr。「君には関係ないことさ」って事ですが。すると数秒間の沈黙の後・・・・・




「バカヤロウ」

「・・・・・エ?」

「死ぬまでやればいい」
ゲゲェーッ!?これはまずい。 「え?」と聞き返したJrの顔に死相が見える!

梢江様、バーサク発動寸前

花山さんや烈先生に叩き込んだ、あの禁断の梢江ラッシュが再び火を噴くというのか。死ぬから!Jr死ぬから!
梢江様の発するオーガ級の殺意の波動にあてられ、その場を一歩も動けないJr。その姿はまさに蛇に睨まれたカエルです
「強いのは俺!イイヤ俺のほうが強い!
イイヤ俺!イイヤ俺!・・・って
”強いんだ星人”」

なんだそれは。こりん星みたいなものか

強い瞳で真正面からそう言い放った梢江。やがて沈痛な面持ちて溜息をつくと、ゆっくりとコーヒーを口に運ぶ
「・・・・傷ツイテイタンダネ・・・・僕ノタメニ」
梢江の気持ちを察したJrはバツが悪そうに視線を落とし、心配かけた事を謝ろうとします・・・・・・・・
が!
うげー窓の外!窓の外にいいい!志村うしろー!!!!











予想は裏切らず!

期待は裏切る!

寒すぎますJrボコボコ編。やはり来てしまいました。達人の次は独歩ちゃん
こうなるともう
マジで範海王が出てきても驚かないっていうか
むしろ
範が出てくるのが正しい流れのような気さえしてくるぞ
そんなこんなでJrは梢江に謝って店の外へ。3度目のボコられに行ってきます





「オッ、おあつらえの空き地だ。人が通るのは5分に1〜2回ってとこか
3分以内に終わらせりゃいいワケだ」

よさげな空き地を見つけ、嬉しそうに上着と帽子を脱ぎ始める独歩ちゃん。それを非常に冷めた目で見つめるJr
「アナタハ数日前・・・僕ニ殺シアイヲ挑ンダ。ソシテ敗レテイル
アレハ決着デハナカッタノカ」

そう。まったくもってその通り。Jrは今度こそ戦う理由がありません
渋川先生の場合はまぁ、ねえ。「あれはゲームで本気じゃなかった」と言われればね。百歩譲って挑戦を受けなきゃならんけど
なにせ独歩ちゃんは両者合意のもと、
「決闘」で敗れています。こうなると渋川先生みたいなナンクセはつけられません
いったいどんな強引な理由づけで対戦を申し込むつもりなんでしょうか?

「オウよ。あの勝負はもちろんボウヤの勝ちさ。だけどどうでェ・・・・
現実にこうして俺らはボウヤとやりたがっちまってる。ならばどうする?
目の前に立っちまった以上―
叩きのめすのが”こっちの世界”だろ?」

えー。要訳するとこうか

『ああ。たしかに俺は本気で闘って負けたさ。その上でリベンジに来たんだけど
それが何か問題でも?ガタガタ言わずに早く闘ろうぜ』




まぁ・・・負けを認めてるのは男らしいし、それで再戦を望むってのは別に悪いことではないよ。でもコレはどうなのよ?
「シカシ―私ハ今ベストデハナイ
そう言って左手を見せるJr。今、Jrは左手人差し指を骨折中。つまり左のパンチが使えません
再戦を希望するならば日を改めるのが筋ってもんなのですが・・・・・独歩ちゃんの大暴言炸裂

「おめェさんまさか・・・怪我人を相手に卑怯だなんて言うんじゃねェだろな」

なに言ってんのこの眼帯ハゲ
卑怯だよ。
家に帰って夏恵さん(生きてんの?)のおっぱいでも飲んで寝てろバカ
全国の独歩ちゃんファン号泣。恥ずかしくないんでしょうか「武神」が。チャンピオンを持つ手が震えてきます

「人間生きてりゃケガもするし、病気もするだろうよ
ベストコンディションなんて望むべくもねェ・・・
それが”こっちの世界”だぜ」
この言い分は理解できる。たしかに間違ったことは言っていない。戦いの中に身をおく人間ならば尚の事と言える
でもな。この場合はケースが違うんだよ

独歩はJrに完敗したのが悔しくてリベンジに来たわけで。つまりこれは雪辱戦なワケで
片手が使えない相手をブチのめして「俺の勝ちだ!」って言うのは独歩の勝手だけど
それで雪辱晴らせるの?バカじゃないかお前




これはアレだ
板垣センセはもう
自分でも何書いてんだかワカんなくなってる。テンパってる
「読者の予想とは違うモノを」というベクトル”だけ”に走り続けた結果が
この八方塞り。五里霧中
なんとか方向修正しようと足掻いてはみるんだろうけど、やっぱり「読者の予想とは〜」に走ってダメの繰り返し
『板垣ぐだぐだスパイラル』
※(はんぺら命名)




ガックリと落ち込む全国のファンを尻目に、Jrの左人差し指のギプスにセコい蹴りを入れる独歩
神心会空手はもう終わりだ

「ボウヤとは二度とやりたくねェ。俺らにそう言わせてみせな」
武神VS神の子再び!まったく盛り上がらない次号に続く!


257話

愚地の拳

「いいかい。”二度とゴメンだ”と言わせるんだ」
問答無用の押しかけ勝負を挑んだ独歩ちゃん。挑戦する立場のクセに偉そうな物言いがムカつきます
こんな理不尽な勝負「ヤリタクナイ。サヨウナラ」と言ってトンズラしてしまえばいいのに、お人好しにもこれに付き合うJr。いい奴だ
「OK、受ケヨウ。今・・・ボックスヲ造ル」

おお・・・ボンボンと思っていたがなかなかどうして根性入ってるぜJr!
花山さんのごとく、折れた指を無理矢理曲げて拳を固めました。左のパンチも使うつもりです
「拳という箱。ボックスをぶつけ合い競い合う・・・ゆえに”ボクシング”」
おっと格闘技トリビア出た。なるほど「ボクシング」って命名はそこからきてるのかぁ。へーへーへーへー(95へぇ)




「3度目ハナイ。君ヲココデナックアウトスル
ソノ後俺ハ・・・
君ノ顔ヲ何度モ踏ミツケル。力イッパイ
許シヲ乞ウ君ヲ・・・
俺ハ決シテ許サナイ」
おっとJrこれは凄い形相。初登場以来、温厚で紳士的な態度を崩さなかった彼が初めて見せる怒りの反応です
まぁ、
今の独歩ってスペックとかドリアン級にアレだもんな。そら腹も立つよ
流石に今回ばかりは紳士的に決着などとは毛頭思ってません。この眼帯ハゲに「もう二度とゴメンだ」と言わせるためにも・・・・

「泣イテモ 拝ンデモ 祈ッテモ。決シテ君ヲ許サナイ
踏ミ続ケル!」

再起不能まで叩きのめす!

ファイティングポーズを固め、スタンスタンと軽いステップを踏み始めるJr。眼帯ハゲ迎撃体勢OKです
「終わったかい?ハナシ。なら行かせてもらうぜ」
「あー何か言ってた?全然聞いてなかったわ」とでもいうようなトボケた返答。マジでめっさ腹立つわこのオヤジ
真正面から無造作に間合いを詰めて来る独歩。手負いのJrを舐めてかかっているのか、まるで隙だらけです
上等だ!この一発でオネンネしろハゲ!

閃光の右ストレート!派手に吹き飛ぶ独歩の首・・・・って
否ッ!!!
右拳を襲う電撃のような痛み。会心の右ストレートはハゲオヤジの顔面を捉えてはいなかった!

絶妙の額ブロック!
隙だらけに見えた前進は顔面へのパンチを打たせるための誘導だったのか。まんまと独歩の術中に陥ちるJr
その類まれなるパンチ力ゆえに。硬いモノを思いっきりブン殴ってしまえば
拳へのダメージ大

砕けた骨が手の甲突き破ってます。あべし
なんと左人差し指の骨折に続き、右拳までも潰されてしまったJr。可哀想に・・・
こりゃもうダメぽ

「知らねェのかボウヤ。ベアナックル時代には基本的な防御だったんだぜ」
してやったり顔で勝ち誇る独歩。Jrは激痛に眉をしかめながらも、今度は自分から前に出る!
「アララ・・・もう息上がっちゃって。いいのかいボックス造らなくて」
Jr大きく踏み込んで左ストレート!
しかし右拳を潰した独歩にとっては当然「次の攻撃は左しかない」とわかりきってるワケで。飛んで火に入る夏の虫とはこの事
”ガキィッ!!”
難なくこれをスウェーすると、
Jrのお株を奪う華麗なカウンター!
うわあしかもエゲツねえー!狙い打ったのは今潰れたばかりの右拳!もうグッチャグチャです

「決して許してあげない」
武神勝利宣言。それにしても卑下た笑い顔だ。なんか本当にスペックと同類に見えてきたぞ
Jrが可哀想な次号へ続く。これで板垣の天邪鬼が発動してJrが勝ったら痛快なんだが。まぁ無いわな


258話

自由

「許してあげない」
痛々しく潰されたJrの右拳。狙い済ましたカウンターで更に痛めつける独歩。武神の無慈悲なる連携はまだ止まない
追撃の左廻し蹴りが狙い打ったのは
やはり右拳。苦痛に半身をよじったJrの、左拳に手刀!
徹底してます眼帯ハゲ。攻撃はすべて怪我をした拳を狙い撃ち。微塵の容赦もありません
たまらずバックステップで大きく距離をとったJr。見てください。この表情です

「なんて面してやがる。喧嘩で相手の弱点を攻めるのは当然じゃねえか」
ちくしょーホントにムカつく顔してやがんなこの眼帯ハゲ。んなこたワカってんだよ!でもモノスゲー痛えんだよ!
骨砕けて皮膚突き破ってんだから!ものすげえ痛えんだよ!

上着を脱いだJr。これを引き裂きバンテージ代わりに拳に巻きつけました。テーピング兼・簡易グローブです
「カマンッッ!」
「カマンじゃねェだろ・・・ったく。グラブできるまで待たせやがってよォ」

それくらい待てよハゲ。それさえも待てないってんなら不意打ちでもしたらよかったじゃねえか
「ま・・・いずれにしろ。これで少しはカタチになるか」
再び無造作に間合いを詰める独歩。牽制のジャブ数発を華麗に回避するとジャンプ一番でJrへ飛び掛る!
『飛び蹴りがくる!』と顔面のガードを固めるJr










残念!
これは眼帯ハゲ見事なフェイント。飛び上がってガードを上に持っていきつつ、狙いは着地の瞬間
右足の甲に突き刺さる独歩の足刀!
革靴が破れ、中からは鮮血噴出す素足が丸見え。両目をギュっと閉じて顔をしかめるJr。その威力のほどが知れます
「オウ。怒った怒った」
人をおちょくったニヤケ顔に、怒り心頭に達したJrが右フックを見舞う!
”ゴシャッ!!”
これを
独歩肘ブロック!痛い痛い!右拳を襲う激痛!
しかし男!クソ根性見せるJr!歯を食いしばって返しの左フック!!

顔面クリーンヒット!したけど・・・・ああー

「へッ・・・無理してやがる」
ああ無念。砕けた左拳にはもはや
独歩をKOできる威力は残されていなかった

下段正拳突き!左膝の皿を真正面から粉砕!
右拳粉砕骨折。左拳粉砕骨折。右足甲裂傷。左膝皿骨骨折
四肢完全破壊。まさに文字通り手も足も出ないダルマ状態に追い込まれてしまったJr。勝負アリです



「さァ坊や。これで武器は全部なくなっちまったワケだな
俺らはもう帰るがよ。
続ける続けねェは坊やの自由だ」

脱ぎ捨てていた上着を拾い上げながらそそくさと帰り支度を始める独歩。くるりとJrに背を向けて更に言葉を続ける
「勝手に後ろから襲い掛かるもよし。負けたと思うなら放っておくもよし
決めるのは坊やだ」
なんという屈辱。ジャックの猛攻を受けても屈しなかったJrに、こんな敗北勧告受け入れられるハズありません
でも・・・

どんなに頑張っても。もうその両手両足が動かない!

泣いてるぅううううう!(号泣)
Jr可哀想すぎる。屈辱の敗戦を味わった格闘技エリート。その心中たるやどれほどのものか

ここから山本英男の「イチ」みたいに泣きの拳が炸裂したらめっさ燃えなんだが。マジやってくれねえかな板垣
でも次週予告の煽り文句に「屈辱の敗戦」って書いてるからこれでもう
敗北確定か。くそう・・・無念だ
ドン底のJrに果たして再起はあるのか?次号へ続く!


259話

ファイト

出た。半死人
例によって冒頭はいつものファミレス。通産3度目となるボコられたJrが梢江とお茶をするシーンから始まります
「あなた・・・会うたびに怪我が増えて」
「ハハハ・・・ソウ。会ウタビに怪我ガ増エテル。コレはドウイウ事ダロウ?
僕ラは何度モ会ッテイルトイウコトサ」

怪我はしても口は減らないJr。己が苦境さえ口説き文句のネタにしてしまうアライ流ナンパ術侮れません
「そうね。友達だから会うことは多いわね」
フンそう簡単にお前のナンパ話術には乗っからないぜ、といった感じの梢江の反応。かまわず更に言葉を続けるJr

「二人の関係は重要デハナイ。少シズツデハアルケレド・・・
僕ラは互イヲ理解シハジメテイル。例エバ君はレモンティーガ好キ。僕はコーヒー
シカモ二人にはルールマデデキツツアル。キミの席は出入リ側。ボクは奥側・・・」

「愚地館長とはどうなったの」
絶好調だった舌の回転を一発で止める、梢江の残酷な問い。視線を落としながらJrは低いトーンで勝負の経緯を語り始めました




「・・・・ひどい負け方」
あまりにも痛々しい勝負の内容に、眉を歪めてJrを気遣う梢江。この反応を受けたJrの返答は・・・
「僕は負ケテナイ」
「あんなのはフェアな勝負ではない。ベストの状態なら自分が勝ってる」その自尊心がどうしても先日の「負け」を認めない
だがしかし
キャップを深くかぶり直し梢江と目を合わせようとしないその態度こそ、心のどこかで「敗北」を認めている証拠でもあった

「カッコわる」




その夜。滞在先のホテルでボケーっとベッドに寝そべりすっかり意気消沈中のJr
『なんだか男っぽくない』
それが梢江が見る今のJrの姿だった。「チクショー俺はいったいどうすればいいんだ」とモヤモヤが払拭できないJr
その時。部屋にやってきたホテルマンが予期せぬ来客を告げる
「お休み中誠に恐れ入ります。孔雀の間にてぜひマホメド・アライJr様を・・・と」
「僕に来客?イッタイ誰ガ?」
「それが・・・名前は伏せろと。ささ、どうぞ先方様は
一人でお待ちです」
地下2階の「孔雀の間」はパーティー用ホールである。そんな広い部屋を貸しきってたった一人とはどういうことか
何が何やらワカらないままホールの扉を開けるJr。なんとそこに立っていた人物とは・・・





「と・・・父さん・・・!」

なんとビックリお父ちゃん
”ボクシングの神様”こと
マホメド・アライその人であります
リングシューズ履いて白いガウン。拳にはバンテージ。
なんか猛烈にイヤな予感が

「父さん・・・どうしてここに?」
「ファイト」
「ファイトって・・・・
父さんが?誰と?」

「お前とだよJr。ノーグラブ素手だ」
マホメドJrボコボコ編、最後の相手はお父ちゃん!
なんせ「一分だけなら今でも世界チャンピオン」のオヤジです。四肢骨折中のJrに勝ち目はあるのか?

次のファミレスデートでは棺桶になって梢江と会わないように頑張れJr!次号へ続く!


260話

チキン

「ま・・・待ってくれ父さん!バカげている!
久しぶりに父と子が再会したってのに・・・・ファイトって!?」

突然日本にやってきただけでも驚きなのに、「今から素手で殴り合おう」などとぬかす父。狼狽したJrがテンパって反論しますが・・・
「父と子だからこそやるのだ。5年前私は不覚を取った・・・誰あろう実の息子の手によって
生涯初の10カウントを聞かされている。まだ10代だった未熟なお前にな」

「無茶を言ってる!あの時でも既に父さんは50歳を超えていたじゃないか」
「人が殴りあうという行為に年齢は関係ない。私が怠けていただけのことだ」
「それは・・・・・・・
今は怠けていない、という事だね?」

なんでしょうかこの負けず嫌いは。実の息子に負かされたのが悔しくて再戦にきた、というのです
Jrの負けず嫌いは
モロ親父から受け継いだ気性だった模様。しかもベストコンディション作ってきてますよ



「ほんとうに久しぶりだった・・・倉庫の奥で埃をかぶっていた重さ2キロのワークブーツ
まずは歩くことから始めねばならなかった。走り出すまで3ヶ月・・・ワンシーズンかかっている
サンドバッグ パンチングボール ロープスキッピング・・・・
歴戦のパートナー達とスパーリングを行ったのは・・・既に1年半もの時が経っていたよ
ほんとうに永かった」

人生初の10カウント負けを喫した相手に再戦するため。例えそれが実の息子であったとしても
いまや60歳を過ぎた偉大なるチャンプは、永い月日をかけて現役時さながらのコンディションを作ってきた
父の意思の強さを知ったJrはその崇高なる精神に胸を打たれるが、だがしかし申し訳なさそうに視線を落として答える
「スパーリングまでやっているのか・・・・でも・・・ゴメン父さん・・・・
残念なことに僕は今・・・
見ての通りのコンディションなんだ」

両拳粉砕骨折。左膝靭帯断裂。右足甲部裂傷
そう。当然ながら今のJrは松葉杖なしには歩くことさえままならぬ半死人。本気の殴り合いなど出来るハズもありません
しかし息子のごくごく当たり前の反応を前にした父の言葉は・・・・・・
「たしかに残念だ。我が息子がこんな臆病者チキンだったとはな
とうに60歳を越え、医者からは数々の病を宣告されている老人に怖気づいている
Jr。マーシャルアーツとはなんだ」

何時でも 何処でも
誰とでも―――――

それが日本で言うところの”ブジュツ”お前が志すマーシャルアーツではなかったのか
それをぬけぬけとコンディションなどと・・・
恥を知れッッ!」

”いついかなる時も臨戦”父の厳しい言葉は、独歩のそれとまったく同じものであった
怪我を理由に戦闘を回避するお前は武術を語る資格のないチキン野郎だ、と息子を強くなじるマホメド・アライ
つーか独歩戦のレビューでも書いたけどさ・・・この考え方自体は理屈が通ってるし、間違ってるとは言わないよ
でもさァ板垣先生。このケースにおいて

半死人同然の息子を打ち倒して
それで父の自尊心は取り戻せるの?

つまり親父の理屈は戦闘を回避しようとするJrをなじるのには通用しても、怪我をした相手に戦闘を強要する自分には通用しないヘボ理屈
なんでJrが完治するまで待てないのか説明がつかん。
「今どうしても再戦しなきゃならない」って理由がわるワケでもねえし
独歩にも言えたことだけど
論点のすり替えに過ぎない詭弁。本当のチキンは相手の怪我を狙ってる独歩や父
あの再戦で独歩は
「勝利」はしたけど、「独歩のほうがJrより強い」って思ってるバキ読者はまずいないだろ?
どんなもっともらしいセリフで誤魔化したって、結局「ベストコンディションでは勝てないので怪我を負ったところを狙った」事実は揺るがないのだ





「部屋へ戻りなさい。私はチキンとファイトするためにこの5年間を費やしたワケではない」
興味を失った目で冷たく言い放つと、息子にクルリと背を向けるマホメド。そのまま帰ろうと歩き出したその時
「待ってください!やりますッッ!!」

大声で父を呼び止めるJr。やはりその負けず嫌いの気性は争えません
『そうか・・・流石はわたしの息子だ。きっとそう言うと思っていたよ』
きっとマホメド・アライも、父親として息子の奮起にさぞかし喜んでいることでしょ・・・・え?アレ?














なんだこの顔はァ―――ッ!?
父親として喜ぶっていうより卑怯者として喜んでる。「しめしめ。バカがかかったぞ」ってな表情です

な?わかったろ。所詮こういう奴等なんだよ。独歩も心中ではこんな顔してたに違いねぇ
振り向いた顔は凛々しい父上に戻ってるトコがもう。なおのこと腹黒くて最高です

「チキンなんて言わせない」
「ふ・・・男らしい言葉じゃないか。お前らしくもない」
「シャラァップ!!!」

父の挑発にのって激昂するJr。松葉杖を投げ捨て走り出し、痛みを堪えてつっかける!

呼ばせないッ!
呼ばせないッ!!
誰にも臆病者
チキンなんて―――
絶対に呼ばせないッッ!!!

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公マイケルのごとく、「チキン」という言葉に異常反応を示したJr
実の父親に対し、
怒りのギプスパンチを見舞う!って
カウンターの掌底ー!!!!

グダグダ展開もこれだけやってくれればある意味尊敬できるぜ板垣先生!
もう何がどうなっても別に驚かない次号へ続くッ!


261話

雄弁

一流シェフが作る極上のスープは―
ほんの一口吸っただけでも
大釜いっぱいに満載された材料をイメージしてしまうほど雄弁だという

初弾、父の掌底をカウンターでモロに喰らったJr。数mも吹き飛ばされた彼の感想は、驚愕よりも感動であった
なんと雄弁な一撃!
老いぼれたハズの父親のこの5年余りが―――どれほど過酷なものだったのか

流した汗がどれほどの量だったのかを物語り―――なお更に補って余りある一撃であった

「スゴイ。本当にスゴイよ父さん・・・今のパンチでよくわかった」
「まだ完全ではないがな。15Rを戦うには程遠い」

ニカッと笑いながら、腹のぜい肉をつまんでみせるマホメド父。ですが・・・・
「だが今のお前を教育するならこれで十分だ。ファイッ!」
見せた笑顔はほんの一瞬。再び真剣な表情に戻ると今度は自ら前に出る父!さあいくぞ息子よ受けてみろ!
一分間だけ世界チャンピオンコンビネーション!

ボババッ!
目にも留まらぬの左ジャブ3連発から神速の右ストレート!
しかし重症の怪我人とて天才・マホメドJr。なんとかジャブを回避すると右ストレートにあわせて必殺のカウンターを放つ!
”ベチィッ!!”
って更にそのカウンターに合わせ
父の左フック炸裂!これが60過ぎたオッサンか。流石は一分間だけの世界チャンプ
またもや手は拳ではなく掌。鼓膜を撃ち抜かれて一瞬動きの硬直するJrに
父、右の大砲発射!これもやはり掌打!
鼻血を噴出して床にひっくり帰る息子。そんな息子を感情の無い目で見下し、ターミネーターのようにズンズン歩を詰める父。こえー
左膝の痛みに歯を食いしばりながら必死で起き上がったJr。半ばヤケクソになってパンチをブン回しますが父の身体にはカスリもしません

蝶のように舞い 蜂のように刺す
 フロート    ライク    ア    バタフライ                   スティング    ライク    ア    ビー      
        


これが本家本元!世界を魅了したマホメドボクシング!両手両足がまともに動かせないJrにはもはやどうすることも出来ません
そしてついに掌打ではなく、
硬く握り締めた拳で息子の顔面を撃ち抜く父。勝負ありッ!!

速いハズ・・・・・・ッッ

強いハズ・・・・・・ッッ

全てにおいて僕のほうが上回っているハズッッ

なす術なく崩れ落ちたJr。受け入れがたい現実を否定しようと、何度も頭の中で繰り返しますがその足はもう立ち上がりません
いやでもお前。両手足まともに動かないんだから当然といえば当然の結果だぞ。落ち込みすぎだ
先週も書いたけど。独歩戦にしろ、このパパ戦にしろ
「Jrよりこの二人のほうが強い」ってイメージは読者に与えてないよ板垣先生
Jrのケガ酷すぎるのがなぁ。この状態で「Jrの心が折れる」方向に持っていこうとすること自体無理がある
だって仮に俺がJrだったら「負けた」なんて微塵も思わんぞ。つーかそれ以前にまともなコンディションじゃなけりゃ果し合い受けねえ

「若すぎる・・・遅すぎる・・・・
そしてなんと弱い・・・」

ケガ人相手に勝っておいてこの物言いはなんだ。親父にも辟易だ
お前そこまで言うくらいだったら
ベストコンディションの息子と闘れよバカ
はんぺらはJr完全擁護派なので板垣先生がもうキチガイにしか思えません

父の言葉が傷心の息子を深くえぐる!どうにもこうにも納得できないグダグダ展開で次号に続く!


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