262話

最強=最高

大人げないお父ちゃんのリベンジに付き合ってボコボコにされてしまったJr。最後のKOパンチであえなく失神です
すぐさまゾロゾロと部屋になだれ込んでくる強面の黒服達。どうやらマホメド父のSPみたい。すげえ身分だなー
「私の部屋に運んでくれたまえ」

一泊100万円くらいしそうなスーパーVIP室で意識を取り戻すJr。どこを見てるかワカらない虚ろな視線が宙を泳ぐ
ガウン姿のまま窓から景色を眺めていたお父ちゃんが、後ろをむいたまま話しかけます
「イヤになったか?この短期間に4連敗。そうなっても無理はない」
「・・・・・知ってたんだやっぱり」

「この国の裏の格闘技界を牛耳ってる男が私の大ファンでね
裏世界では代表的な3人がオマエを徹底的に痛めつけたとの連絡をくれた
ジャック・ハンマ  ドッポ・オロチ  ゴーキ・シブカワ・・・・
いずれも大変な3名と聞いている」

その言葉はある程度予測していたJr。お父ちゃんは息子の負った怪我の経緯など、当然の如く周知していたのだ
「ふふ・・・驚いたな。そこまで知っておきながら僕にファイトを挑む」
「負けるワケにはいかなかったからね
5年間狙い続けた男が虫の息。更には両手両足が壊滅状態ときている
そりゃあ見逃すハズないじゃないか」

出たー!すげえいい顔!
まったく大人げないオッサンです。しかしそんな父の表情を見た息子は、怒るどころか「まいったな」といった感じで微笑む
「きっと・・・・僕がファイトを受けたときも」

「父さんは後姿のままそんな顔をしたんだろうな」
大当たり。看破されて動揺する親父がなんか可愛いぞ。面白い父子だ




「もう・・・やめたらどうだ」
少し間をおいて。おどけた表情から一変して真面目に語りだすマホメド父。その第一声は「武から身を引けい」
それを受けてすぐさま反論するでもなく、とりあえず黙って話を聞くJr。お父ちゃんは切々と続けます
「おまえはよくやった。私が目指した全局面的ボクシングを更に進化させた
感謝している・・・・・しかし。誰が一番強いのかを決める世界・・・
そんな世界から我が子を解放したい。それもまた偽らざる親心だ」

才能あふれる息子は自分の夢をカタチにしてくれた。それは格闘家として大変嬉しくあり、感謝している
だがそれと同時に。ひとつ間違えば最悪の事態も免れない危険な世界、そこへ愛息を置くことがやはり怖い
そんな葛藤の末に導き出した「もうやめたらどうだ」
それは「格闘家」としてではなく、「父親」としてのマホメド・アライの意見であった

「・・・より若くて・・・よりスピーディーでよりパワフル
しかし。より強くはなかった」

父からの引退勧告を受け、今度は息子が自分の考えを伝える。その瞳には一切の迷いの色はなかった
「”強いのはどっち”
そんなシンプルなテーマでありながら 内容たるや果てしなくディープだ
150歳になろうというカイオー・カクも ドッポ・オロチも ゴーキ・シブカワも
誰もこのゲームを降りようとしない
例え実の子が相手でも手段を選ばず勝つ。それほどこのゲームは魅惑的なんだ
たしかに すでに4連敗・・・・・


でも僕はやめない。もうやめられない」
父さん。僕はこの「戦い」というゲームにどっぷりとハマってしまったんだ。今更やめるなんてできるハズないよ
それが息子の答え。まっすぐに見つめ返す瞳の輝きに、お父ちゃんは反論する言葉を持ち得ません
と、その時。部屋のドアがガチャリと開いて一人の人物が

「ほっほっほ・・・・のぉミスター。よき闘士じゃないか」
「紹介しよう。さっき言ったよね・・・私のファン」

おお。久しぶりの登場
徳川の光ちゃんです。刃牙が中国に行く前に出たのが最後だったかな
「最強とはすなわち最高。命にすら値する
地球上最も偉大なノーベル最強賞・・・・

ヤルかッ 範馬刃牙とッッ」
光ちゃんのプロデュースで突如実現した刃牙VSJr!おー地下闘技場でやるのか!
これはちょっとだけ燃える展開になってきたかなぁ・・・って、なんでここで
オヤジのこの顔なんだよ!!
よっぽど気に入ったんだな板垣先生。オヤジのイイ顔で締めて次号に続く!


263話

誠意

「地上最強のガキ 範馬刃牙
おぬしに・・・・あの怪物と戦う勇気があるかのォ」

突如として実現の兆しをみせた、地下闘技場プロデュースによる刃牙との試合。勇気もなにもJr自身が熱望していた勝負です
しかしそれはそれ元気な時の話。今はどうでしょう。なにせ現状のJrは四肢が使い物にならない
ダルマボクサー
先週の戯言では「流石にケガが完治してから試合だろうか」と予想してみましたがどうも違うぞこりゃ

「Mr徳川・・・残念だが息子にそんな勇気はない
おそらく適当な理由をつけて断るだろう。無理のない、批判のしようのない巧妙な理由でね
ケガをしているから  熱があるから  時期がくれば
戦いを避ける理由は無限に用意できる」

この期に及んで辛辣に息子を卑下し、挑発するオヤジ。「息子はチキン野郎なので刃牙君とは闘うワケがないよ」という
「お父さん・・・それはちょっとだけ違う」
そんなオヤジの物言いに怒るでもなく、実に無表情のまま反論するJr。はたしてその心中は如何に
「ほう・・・どこが違うというのかな」
「僕は適当な理由で誤魔化したりはしない。せめて・・・・
こうして足を運んでくださった徳川サンに誠意は尽くしたい」

「せめて光ちゃんに誠意を尽くしたい」 Jrはハッキリとそう言って、両膝を床につけた

「この国での最上級の誠意とは
この姿勢だということは知っています」
更に両手をついて光ちゃんに相対し深く頭を下げるJr。そう、この体勢はまさしくアレ

ジャパニーズ『土下座』

「適当な理由でごまかしたりしない」Jrは、わざわざ足を運んでくれた爺さんに対し心より謝罪してこの話を断ろうというのだ
なにせ相手は世界No1を決める闘技場の現チャンピオン。あの「地上最強の生物」の息子
両手両足がまともに動かせない
ポンコツボクサーがどうにかできる敵ではありません。やはり致し方ない決断か

「徳川サン。あなたはこんな僕に期待してくれました・・・・その・・・期待に・・・・・

















全力で応えますッッ!!!」

いや別に驚かないよ板垣センセ。ここまでの流れだとこうなるしかないしな

しかしながら。断ると思い込んでいた光ちゃんとオヤジはポカンと口をあけてビックリ仰天
この深手を負った状態であの範馬刃牙と戦うというのか。それはまさに万に一つの勝機もない愚行ではないのか
っていうか
やっぱケガ完治まで待ってもらえないのかよ。意味ワカんねえよ地下闘技場

「それが・・・父の教えです」

このオヤジがいつそんな立派な話をしたというのか
オヤジの教えと言えば
「勝ちたいなら相手が万全でない時を狙え」だけのような気がしますが
とりあえず
板垣先生的には感動させたい場面のようなので無粋なツッコミはやめておこう


「マホメド・アライJrさん・・・・あなたは戦士じゃ。どうか頭をお上げなさい」
Jrの覚悟と心意気に感銘した光ちゃん。自分を床に膝をついて同じ目線に立つと、真正面から彼の瞳を覗き込む
見つめ返す眼光に一切の迷いなし。歴戦の戦士達を見つめ続けてきた老人は、たしかにその魂を感じ取った
「ウム・・・キミの勇気と誠意 しかと受け取った。決まりじゃのミスター」

「たしかに・・・私の予想とはちょっとだけ違っていたな。ちょっとだけど」
ふざけた口調でそうは言ったオヤジだったが。逞しく成長した息子に、その表情は実に嬉しそうであった






翌日。光ちゃんのもとに「チャンピオンが試合を承諾しました」との報告が。実のところコレに一番驚いたのは光ちゃんです
なんせチャレンジャーは両手足がまともに動かないポンコツボクサー。刃牙の性格からいって難色を示すと思っていたのですが・・・
「受けたのか。一言の反論もなく?」
「はい。チャンピオンであるなら当然のことと」
「・・・・・・・・・
ふーん」
自分の予想とはまったく違った刃牙の返答。何か腑に落ちないものを感じながら、光ちゃんはただそう頷くだけだった






「あの・・・やっぱり無理じゃないでしょうか。ミスター」
ラスト。どこぞのジムでサンドバッグをポコポコ殴っているのはマホメドJr。まだ手足のギプスは取れず、動きはぎこちありません
ポスン、ポスン、と情けない音を立てる度に、拳を襲う激痛に眉を歪めるJr。とても痛々しくて見てられません
傍らで付き添う
デイブ(いつぞやスパーリングでJrに軽くKOされた男。モデルはどう見てもシウバ)も鎮痛な面持ちです
『どういう世界なんだ!?ミスターをこんな目に逢わせる世界って・・・』

ケガ人を狙って勝負を挑む世界。お前は知らなくていいぞデイブ。綺麗な世界でチャンピオンになれ
それにしても
ラストのコマのJrの表情が最高すぎるぜ。次号へ続く!


264話

人体

『いったい・・・何時間ああして・・・・』
ポスン、ポスン、ポスンと。小学生男子でもまだマトモな音を立てるであろう、Jrのへろへろサンドバッグ叩きは続く
滝のように流れ落ちる汗は足元に大きな水溜りを作り、いったい彼がどれだけこの練習を続けているかを物語っています
「いつから・・・ああしているのかね?」
「誰だてめェ。ここは部外者立ち入り禁止だぜ。サングラス外せッ!」
いつのまに入ったのか。気付かぬうちにデイブの隣にいた、サングラスと帽子姿のオッサンの問いかけ
コノヤロウどこの世間知らずだ!と、突然の部外者登場に腹を立てたデイブがつっかかりますが・・・・・

言わずもがなオヤジです。途端に萎縮して可愛くなっちゃうデイブ萌え
「いいのかな?ここにいても」
「アンタは全てのファイターにとって神だ。むしろ俺がここにいていいのか聞きたいくらいだよ」
「ははは。くつろいでいてくれたまえ絶対王者よ」
まさに”神様”の貫禄マホメド・アライ。プライド絶対王者ヴァンダレイ・シウバも子供扱いです
つーか確かシウバって日本に滞在してるときは板垣先生の漫画読んでるハズ。この自分を見てどう思ってるんだろーなー




「闇雲に・・・無目的に・・・光明もなく。ただそうしてバッグを打つ気分はどうかね?」
一心不乱にサンドバッグを叩き続ける息子に背後から声をかける父。ゆっくりと振り向いた息子の表情は晴れやかだ
「一切の戦略が立たずとも・・・まずは叩け」
「ははは。私が君に言った言葉だったな
・・・半日以上もそうしているらしいな。科学的ではない」

満身創痍のJrにとってはもともと当たって砕けろな勝負。今はただ、幼い頃父に教えられた言葉を愚直に実践して己と向き合うだけ
すなわち「グダグダ考える暇があるならまず叩け」である。 それにしてもこのヘッポコパンチを半日以上か。頑張るなぁJr

ポスン、ポスン、ポスン・・・・・・・・

「だがそれでいい。例え近代医学的にどうあろうとも
負傷した部分に負荷を与え、肉体に対応させてしまう
いくつもの実証例もある・・・人体にはそれほどの力があるのだ」
まさしくそれは人体の神秘。故障した箇所をただ安静にしているのではなく、逆に酷使することで強引に対応させてしまう
随分乱暴な言い方に聞こえますがたしかにそういった実例は数多く存在するものであり、今のJrに必要なものであろう

ポスン、ポスン、ポスン・・・・・・・・








「バキ・ハンマがお前の挑戦を受諾したぞ」

”パスンッ!”

「相手はお前の挑戦を受けた」 いよいよもって試合が現実のものとなったことを息子に報告する父
瞬間動きを止めるJr。父は更に言葉を続ける。それはチャンピオンが提示した試合を受けるための条件
「ただし条件はベストコンディション」

”ドスッ!”

サンドバッグがギシリと揺れた。さっきまでヘナチョコパンチ何百発浴びてもビクともしなかったサンドバッグが
気のせいか?と、己が目を疑うデイブ。しかしそれは気のせいではなかった。更に大きな音を立ててサンドバッグが揺れる!

”バスンッ!”

「最高の状態で試合場に立て。ならば相手をしてやる
これがバキ・ハンマの言葉だ」

『音が・・・・・』

驚愕のデイブ。父から聞いた刃牙の言葉により、Jrの身体の中で何かが変わったのだ
今ここにいる男は、さっきまでの死にかけボクサーではない!


打ち出す拳は速く重く

踏み込む足捌きは鋭く軽やか


魂を乗せたかのような一撃一撃をバッグに打ち込む度に。その衝撃によって両手足のギプスが壊れていくではないか!
その姿、さながら筋肉で服を引き裂くケンシロウ!

俺の名を言ってみろ!

俺は神の子!マホメド・アライJrだ―ッ!!!

Jrすげええええええー!!!
漫画のような(イヤ漫画だけどさ)ハチャメチャな超回復発動!
もはやスピード・パワー、どれをとってもベストコンディションのそれと大差ありません。なんじゃこりゃー!
トンでもない奇跡を目の当たりにし、
アホみたいに呆けるデイブに向かって親父が締めの一言

「スゴいね 人体」



うーむイイ締めじゃないか板垣先生。今週は久しぶりに読み応えのある良いバキだったぞ
次号!巻頭カラーで鬼の子VS神の子が激突!期待せよ!

それにしてもバキすごい普通の対応ね
「やるならベストコンディションでってごく当たり前のこと言ってるのに
独歩とオヤジの卑怯者ふたりの後だけに
なんか新鮮に感じるぞ。これが板垣マジックか


265話

挑戦者


最上階で

扉を開けたエレベーターを抜け廊下へ出る

VIPルームに繋がる通路には屈強なボディガード2名


「NO。ここから先は立ち入り禁止だ」


”ビスッ!!”
瞬間。ボディガードの目に奇妙なものが飛び込んだ
デコピン
あらかじめ決めてあったかのような正確さで顎を射抜いたそれ 僅かそれしきの攻撃で男の意識は脳の外へ

そして二人目。行なったことは頭を掴み・・・・・・
揺らす。たったそれだけである
しかしその無造作な行為によって 彼の脳は内壁に繰り返し叩きつけられ
まるでボクサーが強烈なショットを見舞われたのと同じ様相を呈し またしても意識は脳の外へと

そんな感じでカメラはずんずん進み、やがて廊下の突き当たり、スペシャルロイヤルスイートのVIP室へ
扉入口ではまたもや二人の屈強なボディガードが立ちふさがりますが・・・・・・・・
「通るぜ」

まぁ。こんなヤツこの世にこの人しかいませんけど。範馬勇次郎氏です
要するにマホメドオヤジに勇次郎が会いにきただけなんですが。ここまでで既に9ページ消費
今更こんな演出しなくてもこの人が世界最強なのは読者全員わかってるから。マジで頼むよ板垣先生


彼らはプロである。一瞬で見抜いた
男の放つ、尋常ならざる戦力を示すオーラ
その戦力差は刃物や銃器程度の武器でカバーできるような生易しいものではなく
例え兵器を用いたとしても はたして埋まるものか
想像もつかぬ戦力差!!

勇次郎のオーラに恐れ慄くボディガード二人、次いで武器の画、戦車の画、そして航空母艦の画まで出てきて
これだけで更に3ページ消費。俗に「板垣カット」と呼ばれる問答無用の大ゴマ割り
なんだかなぁ。巻頭カラーなのにもっと他に描くことないのか、といい加減読者がゲンナリしてきたところでようやくオヤジ登場です
「助けにきたよ。顔色が悪いようだが」

「Mrアライ。あなたを置き去りにして駆け出すところでした」
ニコニコ笑顔で現れたマホメド氏の様子に、勇次郎が知人であることを察したボディガード。ホッと胸を撫で下ろすと苦笑い
ボディガードが顔面蒼白でとばしたジョークに大笑いしながらも、オヤジは更に一言返すのでした
「はっはっは。彼からは到底逃げ切れまいがね」





「すごいな:・・・驚異的な若々しさだ
30年前に初めて出逢った あのときの印象のままだよ」
そんなワケで部屋に通された勇次郎。久しぶりの再会に軽く談笑中・・・・って
今週の話さぁ、
この場面からスタートでいいじゃん。
頭の15ページ分が無駄もイイとこだ

「チャンピオン・・・バキ・ハンマ。彼はいったいどのような戦士なんだい?

その問いはおそらく。「地下闘技場のチャンピオン」を指した言葉ではなく
「キミの息子はどんな子供なんだい」という、父親としての問い
自分の息子、マホメドJrのことは勇次郎もよく知っている
だが彼の息子、刃牙のことを自分はよく知らない。やはり同じ格闘親子として、聞いてみたくなるのは当然のことであろう

「まがりなりにも俺の血を引いてるんだ
身体機能 精神力 経験値

どれをとっても近代オリンピックのそれを遥かに凌駕する  おそらくは・・・・

”地上最強”の1人には数えられる」

「だから希望んだのだ」

おーなんだこれは。やはり勇次郎も人の親ということか。珍しく息子をベタ褒め
天下一武道会・子供の部決勝戦で、トランクスが悟天をくだして優勝したときのベジータを思い出します
『はっはっは!俺の息子のほうが優秀だったようだなおい!』

要するに今回の話は勇次郎が刃牙を自慢しただけっつー。そんなトコね
煽りは「残り数日」とのことで。こりゃ来週と再来週も何か入る予感・・・試合開始は3週後くらいと見る


266話

テキトー

「・・・・治ったの?・・・・ケガ・・・・」

出た。復活の半死人
例によって梢江に逢いに来たJr。相変わらずアプローチはマメな男です。ていうか今日はいつものファミレスじゃねえのかよ
「ベストではないけれど 治ったも同じ・・・・
君のおかげだ・・・・そして君の彼の」
「・・・・てきとうなこと言うよねいつも。私のおかげなハズないじゃん」

奇跡の復活を遂げたJrを見てもあんまり驚いてない梢江がなんかアレだ。お前こないだのJrのケガ思い出せ
ま。彼女は中国で
砂糖水飲んだだけで骨と皮の状態から復活した男を見てるんで。感覚が麻痺してるんでしょう
「僕がテキトー・・・・?君こそテキトーなことを言ってる」
真摯な感謝の気持ちを伝えたのに、それを無碍な反応で切って捨てられたJr。真面目な顔になって梢江に反論します
「わたしのどこがテキトーなのよ」
「僕の言葉を受け止めようとしない。いい加減な事しか言わないプレイボーイと決めてかかっている
目的が定まっているときに出る力・・・それがいったいどれほどのものか
例えば。人は時に数m先のトイレに行くことさえ面倒だと思う。しかし・・・・・・
バケーションの為になら何万キロも離れた海外へ旅行する。
スゴイ差じゃないか

君を想い、バキ・ハンマを想うなら。身体は回復へ辿り着く」
ハイハイもうわかりましたってば板垣先生。スゴイね。人体

「・・・・戦うの?」
「憎いからね。彼が」

自信とパワーに漲るJrに圧倒されつつ、おずおずと問いただす梢江。Jrの答えは至極明快だった
「バキ・ハンマは君を手に入れ、地上最強の称号も手に入れている・・・・
二つとも僕が欲しいものだ
その2つを手にするためには 
彼は避けて通れぬ障害だ」
「・・・強いよ。スゴく」
「知ってます。どちらも簡単ではない。君も・・・最強も」






「闘ったことのないおぬしに聞くのもアレじゃが・・・・
アライJr VS バキ 賭けるならどっちじゃ?」
Jrと梢江がそんな問答をしていた頃。徳川御殿にて光ちゃんと向かい合う男・・・・おっと久しぶりの登場猪狩さん
いきなりの難しい質問に腕組みしながら宙を見つめる猪狩。その視線の先に見るのものは、30年前のあの試合か
「私は彼の父親としか闘ってませんが。1976年のあの時・・・彼の拳法は既に骨格が出来つつあった
『組みつきさえすればどうとでもなる』そう信じていた私が結局45分間なにも出来なかった」
イメージですな」
「イメージ?」
「間合いに入るや否や―どんなタックルを試みようが
たちどころに撃ち落される
あれはボクシングではなかった。まさに
”全局面的拳闘”
あれから30年ですか・・・さぞかし大変なものに成長しているでしょうなァ」

「で?」

猪狩さんの結果予想はマホメド・アライJrの勝利
30年前、既にその片鱗を身をもって感じていた男。完成された『全局面的拳闘』の前には刃牙さえ及ばないという推察です
まぁ、やられ道一直線のこの人の言葉は
あんまアテにならないんで聞き飛ばしてもいいんですが

ちょうどその頃、遠く離れた別の場所で





彼と同じ予想をしていた男が二人

おー。渋川先生&独歩ちゃんもJr勝利予想
自分達があれだけボコボコにしておいて「きっとアイツが勝つ」ってのもナンな話ですが。そこらへん聞かせてもらいましょう
「ナルホドのォ・・・・おぬしはそう見るか。してその根拠は?」
「言わずもがな。我々のせいです

おそらくは試合の当日・・・まさに試合のさ中にッッ」

アライJrが完成するッ
怪我したJrに強引にリターンマッチして勝利はしているものの、彼に秘められた底知れぬ才はその身で知っている達人2人
歴戦の目はその才能を刃牙よりも上と感じ取ったのか。屈辱の敗北を経て、戦士として精神的にも成長したJr
刃牙との戦いでその真なる力が覚醒するだろうという推察です。ほーなるほど
でもコイツら今の刃牙が梢江とのセックス&死にかけ砂糖水で
超絶パワーアップしてるって知らなねえしな
郭春成を2秒でKOしたあの迸るような強さを見ても同じ台詞が吐けるでしょうか。そのへんは疑問です





「・・・・ッ!」

「君の目の前で・・・・
バキ・ハンマを・・・・倒す」
梢江を力強く抱きしめ、打倒刃牙を宣言するJr。主要キャラによる勝敗予想まで出てなかなか面白くなってきましたが
次号休載の罠。気になる続きは再来週まで待て!


267話

大変な勇気

「お迎えに上がりました」
「アリガトウ」
ごっついロールスロイスの送迎が到着。恭しく頭を下げる運転手に挨拶して乗り込む若い黒人男性。マホメド・アライJrです
軽快に走るロールスの目的地は
東京ドーム・ビッグエッグ。そう、今日はJrVSバキ決戦当日なのである
道中、後部座席のJrにむかって激励の賛辞を送る運転手。しかしそれは賛辞と言うよりも・・・・?
「大変な勇気ですな。あのチャンピオンと禁じ手なしの試合をするなんて
大変な勇気です」

「・・・・チャンピオンはそんなに強いのかい?」
「父親の勇次郎氏という例外を除けば。おそらく世界最強でしょうな
大変な勇気です。男として尊敬申し上げます」

それは賛辞というよりもむしろ同情に近いものであったか。運転手に悪気はないのだろうが、思わずゴクリと生唾を飲み込むJr
『ヤルんだ・・・今夜本当に』
下馬評なんてわかりきっていた事。とうに覚悟は決めていたJrだったが、運転手の言葉は彼を再び緊張させるのに十分なものだった




「ではご案内させていただきます。こちらへ」
関係者しか知らない秘密の通路を抜け、三つ葉葵の家紋が入った専用エレベーターを降りる
そこは東京ドーム地下6階。選ばれた戦士達だけが集う、戦いの聖地である
一歩一歩、また一歩。闘技場に近づくにつれ、Jrの緊張感は高まっていく

武器を手にすること以外は全てが許される

反則がない

レフェリーがいない

KOすらもない

究極の 完全決着

ここへきてついに恐怖と重圧感が噴出したのか。Jrの歯はカチカチと鳴り、その足は歩みを止めて震える
「いかがされましたミスター?」
「イヤなんでも・・・行きましょう」

怖気づいたことを案内人に気取られぬよう、精一杯の平静を装うJr。そんなJrの様子を見て優しげな目で笑う老紳士
幾多の戦士達を見つめてきた彼にとっては、いくら隠そうとしてもJrの狼狽など丸わかりであった
「今夜も大勢入ってますよ。あなた様の勇気を見るためです」




「1時間後にお迎えに上がります。それでは」
選手控え室に到着。ここで案内人の老紳士は一旦さがり、Jrは押しつぶされそうな重圧の中一人ぼっちに
ここまできて今更ビビっていても仕方が無い。恐れを払拭するかのようにシャドーボクシングを始めるJr

何をしている?こうしていれば勝てるのか?

俺は――――勝てるのか?

そんな事いくら考えようとも答えが出るハズもない。今はただ迷いと恐怖を吹っ切るために拳を振り続けるだけだ

やがて1時間が過ぎ、控え室に老紳士が戻ってきた。いよいよ始まるのだ。泣いても笑ってももう後には引けない
黙して通路を進む。前方から聞こえる歓声は次第に大きくなってくる。照明の光が目に眩しい
この廊下を戻るとき・・・・・

俺は・・・・・・・

歩いて・・・・・・・







歩いて帰れるのか!?

会場中を包み込む圧倒的な”熱!”
そのパワーにただ呆然と立ち尽くすJr。理解できる。この観客達は全て自分の「勇気」を観に来たのだと
すなわち、チャンピオン・刃牙の強さを観に
募る神の子の不安!次号、ついに刃牙登場!


268話

来るッッッ
あの暗闇の向こうから―――
彼等より強い男が出てくるッ

割れんばかりの大歓声によって地響きのように地下闘技場が揺れる。仁王立ちのまま白虎の入場口を見入るJr
渋川剛気 愚地独歩 そしてジャック・ハンマー
彼に辛酸を舐めさせた3人の男達。彼等よりも更に強い男が今、まさにこの入口から現れるのだ

俺を倒すためにッッ!

と。Jrが決戦の覚悟に身を引き締めた瞬間。突然闘場に轟音!
ちゅどーん!
大量に巻き上がった砂煙によって途端に真っ白になるJrの視界。まるで闘場の中央に何かが叩きつけられたような・・・?
もくもくと立ち込めていた砂煙が次第に晴れていきます。さて一体何が・・・・・・・って
何故か勇次郎だ!

「やぁ!湯気で気付かなかった」とか言い出しそうで非常に笑えるシーンですが
突然何しに出て来たんでしょうこの人は




「私に用か」
「ようやく地に足がついたようだな」
恐怖の破壊神を前にしても、微塵もたじろぐことなく相対するJr。その態度を一目見るなり満足気に笑う勇次郎
「ごく・・・近い将来。あいつは俺に牙を剥く
そして18歳の小僧ながら それに相応しい力を持ち始めている
お前が今から闘う相手はそんな漢だ」

何が言いたい勇次郎。大観衆の面前で息子自慢か。直後、その背後から声!

「どけよ」

「ここは俺の場だぜ」

ドワァアアアアアアアアアッッッ
一斉に湧き上がる会場のボルテージ!
そこのけ親父!ここは俺の一人舞台!
チャンピオン範馬刃牙様のお通りだッ!


不敵に登場した息子。しかしそれに対して以前のような制裁を加えるでもなく、鬼は嬉しそうに笑った
これから全身全霊をかけて闘う若者2人に、両腕を高く上げて壮行の言葉を送る
「死ぬまでやれ。そして上がって来い!」
「勝ったほうが俺に近づける」と。地上最強の生物は試合開始の挨拶を済ませて闘場から引き上げた
そのまま大太鼓の前までズカズカ歩いていく勇次郎。どうやら自ら開始の合図を叩くみたいです
当然親父様はバチなんか使いません。
素手で一発です
「はじめいっ!!」
ドンッ!!!!!

たまらず太鼓破裂。すげ

神の子VS鬼の子ゴング!
ついに始まった血統対決。この戦いを経て、勇次郎の高さまで駆け上がるのは果たしてどちらか
次号へ続く!


269話

チャンピオン

来た―――まっすぐ 射程距離・・・・!
勇次郎の手によって鳴らされた試合開始の太鼓。チャンピオン刃牙は構えもせずに悠然と歩を進める
間合いに到達した瞬間、神速の右ストレートが唸りをあげた。先制攻撃を仕掛けたのはマホメド・アライJr!
死闘の口火を切る初弾の行方は!?

外したッ!入られたッ!迅ッ・・・・来る!

Jrの右にタイミングを合わせて懐へ潜り込んだ刃牙。速い!二人の身長差・リーチ差が一瞬で詰まる!
カウンターのハンマーフック!ぱかーん!

ハウメニーいい感じヒットしました。Jrの首のねじれ具合がステキです

喰った!

右      強打     重い





チャンピオン・・・・・・・













強いなァ

ドサッ








ワアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアア!

一瞬の静寂の後、爆発したかのように会場に轟く大歓声。Jrいきなりダウンしました
試合開始約3秒ほどでしょうか。郭春成級の瞬殺タイムです

春成はこれでKOだったワケですが。流石にこのシリーズを引っ張ってきた責任か
僅かの間完全に意識が途切れていたものの、この大歓声によってすぐさま意識を取り戻すJr。慌てて顔を上げると・・・・
そこには自分の呆け面を覗き込むチャンピオンの余裕顔

「どうだい まだヤレるか」うへえ
貫禄のチャンピオン!Jrが弱いっていうか刃牙が強すぎるんですが
とりあえず独歩と渋川先生の予言もあることだし
次号のJrの反撃(あるのか?)がどんなモンか見てみましょう



余談ですが「なんとか起き上がれたぶん、春成よりはJrのほうが少し強い」なんて思っちゃいけません
Jrは折り返しのハイキックもらってないから
明らかに春成に見舞ったコンビネーションよか刃牙が手を抜いてます。ルール無用なのに倒れたJrにも追撃してないしな
言うたら
刃牙が本気だったらコレでもうJrの負けです。なんだかなぁ


270話

命のやりとり

「まだやるかい」
数秒間の暗闇から目覚めると、そこには至近距離で自分を見つめる刃牙の顔
驚きと恐怖でまるで雷に打たれたように飛び起きるJr。バックステップで大きく距離をとってようやく深呼吸
「ミスったな!今のノックダウン・・・キミのワンチャンスだった!」
ゲェーッ!?空手界のリーサルウェポンと同じ台詞を!なんかもうダメ臭プンプンです
まぁ内容はどうあれ克己は結果試合には勝てたワケですが。Jrはなぁ・・・・
「おかげで目が覚めた。覚悟が出来た
命のやり取り・・・君の友人達が教えてくれた
ゴーキ・シブカワが  オロチ・ドッポが  ジャック・ハンマが」
一生忘れぬであろう深い敗北を刻んだ3人の男達。そして同時にJrは彼等から学んだのだ
”戦う”こと。その本当の意味を



闘争とは― 勝負とは―

真剣リアルファイトとは――

研ぎ澄まされていくJrの神経。それはまさしく抜き身の真剣のようで・・・・
おお、どうやら完全にスイッチが切り替わったようですJr。これはまともな勝負を期待できるかも
「殺られずに殺る
父が体現した競技レベルでの
”打たせずに打つ”
それを更に高みへスライドさせた
”殺られずに殺る”

例え瀕死に追い込まれていたとしても!
必ず・・・






殺ッ・・・・・・・!!」

げえ

シコルスキった
ヘビーウェイトのJrの身体がたやすく地面から浮く、見るも強烈な金的蹴り
あまりにも凄絶な一撃に観客の大歓声は一切なし。むしろ水を打ったようにシーンと静まり返る場内
たまらずその場にぶっ倒れるJr。この痛みたるや男性ならば想像に難くありません
金玉を両手で押さえた情けない格好で仰向けでアウアウ言ってます

春成並みの速さでのされて
克己のように身の程知らずで
シコちゃんのように玉を潰されて
サムワンと同じ格好で悶絶する

”キング・オブ・やられ”
やられの王!マホメドJr!





「さァ・・・瀕死だぜ」

殺れるもんなら殺ってみろ。無慈悲なるチャンピオンの足の裏がささやく
ドギャッッ!!!
刃牙の全体重を乗せきったド迫力のストンピングがJrの顔面に落とされた
もはや観客は身じろぎする者もいない。あまりに凄惨な一撃に、二人から一瞬たりとも目が離せない
指一本動かずに横たわるJrの瞼を指で開き、その瞳孔を確認する刃牙。よーし!

まだ死んでねえかコノヤロウ!
既に戦闘力を削がれたJrに対し、トドメを刺すまで油断することなく攻めきるチャンピオン刃牙!
”殺られずに殺る!”
Jrなどに言われるまでもなく
戦いの真理を誰よりも理解していたのは他ならぬ刃牙であった。
次号へ続く!


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