230話

海皇の拳

「あの人は絶対にハッタリは言わん人だ!」
驚きの
「今のパンチ当たってたらお前死んでたよ」発言。あんなスローパンチにいったい何があるというのか
ざわめく場内を悠然と歩く郭爺様。ニヤリと笑いながらその場を動かず迎え撃つ構えの勇次郎。両者再び拳撃の間合いです
「ファッファッファ・・・・とは言ってみたものの。所詮はジジイのパンチ力・・・・たかが知れとる
受けてみぃ」

放たれた左拳は先程と同じ、異様なほどのスローモーションパンチ。こんなの当たってもダメージなんか皆無じゃ・・・
あれぇ!?

勇次郎が引いたッッ!っていうか誰だコイツは!
ほんの僅かではありますが。敵の攻撃に対して冷や汗流してますよ!こんなのオーガじゃねえー
あまりにも予想外の展開に刃牙も烈先生も口をアングリだ

「オヤ・・・?この老いぼれのパンチを避けよったか」
人を食ったうすら笑いを浮かべつつ間合いを詰める爺様。一歩寄られるたびに勇次郎が一歩さがる。明らかに「逃げ」!
当然のごとく客席も混乱。なにせこの日本人の強さは会場中の知るところです。何故これほどの男がこんなスローパンチを恐れるのか
「バカヤロウ・・・なにビビってんだよ親父」
あっという間に壁際まで追い詰められた父の姿に、刃牙もツバを吐きながらイライラしてます
「地上最強の生物とまで讃えられているほどの人とは思えぬ臆病さ・・・
強き人よ・・・何を恐れる?
なにをそんなに・・・・・・」









しゅるぅう〜












”ドン!!!!”

なにィッッ!?
爺様のスローモーパンチがッ!スローモーパンチがッ!!
まるで巨大重機の如く

コンクリートの壁を破壊した!

「ファファ・・・・バレちゃった♪」
「この・・・・タヌキが・・・・ッ!
だろうと思ったぜ」
あまりにも想像を超越した光景。酔っ払いのパンチ以下のスピードで放たれた一撃は重工機並の衝撃エネルギー!
そして本能的に危険度を察知していた勇次郎。もしこれが刃牙だったら
一発食らって即死です

「消力だッッ!己の体重をも消し去るほどの脱力を生み出す消力―
その究極のリラックスから繰り出される打拳
守りの消力転じて・・・・・

攻めの消力!!!」
次々と明かされていく海皇の実力!驚愕すべき中国拳法の深淵!
4000年の「武」は地上最強の「暴」をも凌駕するのか?
次号へ続く!


231話

脱力

守りの消力転じて攻めの消力!

てつもないスローモーションで放たれた郭爺様のパンチ。その正体は「消力」の理屈を攻撃に転じた凄まじいものだった
額に冷たい汗を流しながらゴクリと唾を飲み込む刃牙&烈先生。いつもの如くちょっと説明してもらいましょう

「消力とはつまるところリラックス・・・武術・格闘技に限らず近代スポーツで
瞬発力を要求されるとき必ず指摘される筋肉の弛緩
投球 打撃 投擲 ヒッティング―
いずれも強調されるのは
インパクトその瞬間までのリラックス」
「インパクトまでは脱力しているほどよいとされている。優れたアスリートほど筋肉が柔らかいのはそのためだ
高名な指圧師がモハメド・アリを指圧したところ、マリリン・モンローの筋肉と同じ柔らかさだったと述懐している」
「弛緩と緊張の振り幅が打力の要。ならばあり得る
あのバカげた打撃力も納得できる!」

あっさり納得してしまいました刃牙。いや理論自体は俺も理解できますが。あの破壊力は漫画だろ(漫画だけど)
インパクトまでの弛緩が大事てのは解る。でもパンチが破壊力を生む為には「対象物に激突するまでのスピード」が大きなベクトル
あんなスローパンチがコンクリートを壁を圧砕するってことは、消力で生み出す係数ってのは一体どれほどのモノなのかと(略)

そんなこんなで攻勢に出た郭爺様。勇次郎もいつまでも逃げてんのはカッコ悪いのでガードしてみますが・・・・
ガッ!!!
爺様の消力パンチ初ヒット!肘と膝の両受けでブロックした勇次郎の体が軽々と宙に浮かされ、数mも後方に吹き飛ばされる!
爺様のやせ細った身体はおそらく体重50kgもないはず。100kgを超える勇次郎との体重差をまるで感じさせない超打撃だ
ざわめく場内。無敵の父が追い込まれる姿に焦燥する刃牙。そして爺様が笑いながら前に出― 
息もつかせぬ連攻!
『つ・・・強いッ!これほど強い男がいたのかッッッ』
”地上最強の生物”オーガがまるで手も足も出ずに防戦一方。刃牙にとってはまるで信じられない夢を見せられているかのよう

「強き人よ・・・嬉しかろう。一歩間違えば出逢わなかったかも知れぬ好敵手
なんの因果かそれが今こうして出逢ってしまった
ワシとて同じじゃよ。長生きはしてみるものじゃ」

ニコニコと微笑む爺様に、勇次郎もまた笑顔で応える。もっともこちらの笑いは侮蔑の笑いであったが
「クックックック・・・・長生きしすぎだぜクソジジイ
もうろくが過ぎて気付かなきゃならねェとこまで気付かねェ
えれェことが起こってるぜ?ジジイ」
「えらいコト?」勇次郎謎の不敵発言に水を打ったように静まり返る場内。いったい何が起こっていると言うのか?
直後。”それ”を確かめるべく、爺様が車椅子の車輪をブン投げた

車輪は勇次郎の顔面にクリーンヒット!
勇次郎ほどの男がこれしきの投擲攻撃を避けられないとは一体どうした事か?
否ッッ!
これは・・・・

ふわりと。まるで宙に舞ったビニール袋に小石を投げたかの如く
一回転して着地した勇次郎の顔面にはスリ傷ひとつついていない。そう、これは・・・・

「れ・・・烈さん。これって・・・・」
「・・・・・・・あり得ない・・・・範馬勇次郎がッッ
消力を使ってる!!!」

驚愕!戦いの最中に敵の奥義を我が物としてしまった勇次郎!次号!地上最強の生物の反撃開始!



って言うじゃな〜い♪(ジャラーン)



でも・・・・・板垣センセ・・・・・・・







ソレまったくもって読者の予想通り展開ですからァー!!
残念ッ!!!

「予想は裏切り!期待は裏切らない」斬りッッ!
(波多陽区)


232話

流儀

「見ただけで真似たと言うのか!?極意消力を・・・ッッ!!」
「真似たのか・・・あるいは最初から持っていたのか・・・」
どよめく会場。驚愕の烈先生&バキ。 目には目を!歯には歯を!消力には消力!
およそ想像を絶する勇次郎の天才性に、敵である郭爺様も手放しでこれを賞賛します
「ホッホッホッホ・・・真似られたか強き人よ
日本に地上最強の男がいる・・・20年ほど前から聞き及んではいたが。なるほど・・・
噂に恥じぬ天才ぶり。さぞや戦う相手に不自由したじゃろう
人生楽しからずや。こういう出逢いもある
ワシの消力とおぬしの消力・・・どっちがホンモノの・・・」
「心配するなジジイ」

ならば消力対決じゃ!と言おうとした郭爺様。しかし勇次郎の次の台詞はそれを拒否するものだった
「消力はもう2度と使わねェ
自慢気に技を披露するキサマをちょっとからかっただけの事。もともと俺の流儀じゃねェ」

「ほう。若造が流儀ときたか」
勇次郎が消力を使ってみせたのは勝つ為ではなく、郭爺様に対するあてつけ。あくまでも勝負は自分の流儀を貫くと言う
右腕をスッと振り上げると、その鋼のような上腕二頭筋に力を込める勇次郎

ギギギギギギギ・・・・・って
はだしのゲンの歯を食いしばる時の声じゃありませんよ
ものっそい力コブです。そのあまりのド迫力に会場中の視線が勇次郎の右腕に注目!

そして気合とともに真下に突き下ろす
鋼鉄のハンマー!!!

”ビッシャアアアアアア!!!”
ズズゥウ・・・・・・・・ン!!!

地震。それも震度7以上直下型の
そうとしか形容できない凄まじい揺れが会場を襲う。そんなバカな級の破壊力

尊敬とも畏れともつかぬ刃牙の表情。この父だけは世の常識が通じないことを、今更ながらに痛感する

クレーター状に陥没するコンクリートの床!!
それこそ何tという重さの鉄球でも落下させたかのように。勇次郎の鉄拳はたやすくその破壊をやってのけた!

「闘争とは力の解放
力みなくして開放のカタルシスはありえねェ」

”力!剛!パワー!”
圧倒的な膂力を100%解き放っての攻撃!そのカタルシス!
それが地上最強の生物・範馬勇次郎の流儀!

「百年はなかったぞ・・・これほどの緊張は」
ゴクリと生唾を飲み込む爺様。ここにきて初めて額に浮かぶ冷たい汗!
強者二人!互いに突っぱねる格闘ポリシー!次号激突!


233話

弱者

”力みこそがカタルシス!”不遜!範馬勇次郎!郭海皇を全否定!
中国拳法の奥義中の奥義である消力。それをあっさり使ってみせた上で、「こんなモノは俺の流儀じゃない」と言い捨てます
「脱力だの消力だの・・・・・そんなモノはお前達で共有していればいい」
「お前達・・・とは?」

「俺を除く総て!
弱者同士で工夫したらいい。極意だの・・・奥義だの秘伝だの
ウエイトだのスタミナだの・・・・と。それらの創意工夫は・・・・

闘争という物質にある不純物だ!
・・・そしてこういう会話もな」

言い切らぬうちに前に出る勇次郎!重さ数tの鋼鉄のハンマーに匹敵するであろう、その左拳を思い切り振りかざす!低い体勢で間合い!
サブマリンからロケット発射!身の毛もよだつようなド迫力アッパー!
ビッッシャアアアアアア!!
鉄拳は爺様の顎にヒット!まるで蹴られたゴム鞠のような勢いで上空にぶっ飛ぶ老体!観客席からは悲鳴の嵐
消力でダメージを消している爺様にとってさしたるダメージはないのだが。それでも中国サポーターにとっては直視できない映像である
ふわり、と空中で1回転して華麗に着地する爺様。
そこへ追撃の大砲!ファイアー!!

顔面ッ!時速200kmくらいで吹き飛ばされるヨボヨボの肉体!
さながら武台上の光景は公開老人殺戮ショー。あまりにもケタ外れの打撃に、観客席からは最悪の想定も漏れ出した
「か・・・海皇が・・・・ッッ!」

青ざめる中国サポーター達。無理もありません。いかに消力とてこの威力を完全に消しきれるものなのか?
しかし!一気にたたみかけようとした勇次郎に
爺様反撃キック!ガードしたものの、数mほど後方に飛ばされる勇次郎
流石です郭海皇。今の立て続けの2撃を浴びてもなおダメージは皆無。おそるべきは消力の効果!
「フン・・・・力みが足りねえか」
勇次郎も勇次郎で、ダメージがない事にショックなぞ微塵も感じていません。「ならもっと力めばいいだけだ」という単純なスタンス!
突っかける勇次郎!迎え撃つ爺様!




来なさい・・・・・




勇次郎右フック!



技術こそが!




爺様、顔面でこれを受けて消力!ギュルン!と大回転!




闘争の構成物質そのもの!
そのまま回転カウンター!勇次郎の顔面にクリーンヒット!

その手ごたえにニヤリと笑みを浮かべる爺様。ストン、と勝ち誇って着地
その他一切―――




















その他一切が―――――

不   純      
まだ勇次郎の攻撃は終わっていなかった!
油断した爺様の顔面を捉えた右の一発!ブッ飛ばされた体は闘場の壁に激しく激突!
消力してるか失敗してるかは知りませんが、壁に激突したダメージ自体は間違いなくあるハズ。
心の声も小さくなってるし
拮抗していた両者の力関係が少しずつ動き出してきたか。最強決定戦の決着は近い。次号へ続く!


234話

ハンデ

「壁を利用しているッッ!消力が使えないッッ!」
唾を撒き散らしながら解説する烈先生。やはり強烈に壁に叩きつけられた一撃は消力を失敗させていました。爺様危うし
って間髪入れずに
追撃の蹴り!内蔵も吹き飛ぶようなもん凄い威力!

まだ終わらない!コイツも持ってけ!顔面ぱーんち!
140過ぎのミイラの顔面に深く突き刺さる鋼の拳!死ぬ死ぬ板垣先生!普通に死ぬから!!

飛び散る鮮血。空中で猛回転する爺様のヨボヨボボディ
「これがッ!範馬勇次郎だッ!」
強すぎる父ちゃん。それを見て息子興奮。やったねパパ!明日はホームランだ
「バカに嬉しそうじゃないか。打ちのめされているのは100歳を超える老人だというのに」
そんな刃牙の物言いが気に障ったのか、烈先生がたしなめるような言葉を。しかし刃牙はそれを受けて鼻で笑います
「老人・・・?バカ言ってるぜ・・・相手はキャリア140年の超武術家だぜッッ!」

一気にたたみかけようとした勇次郎。しかし次の瞬間、完全グロッキーに見えた爺様の両拳が飛んだ
「ヒィィィアアアアッッ!!!」
ドガガガガガガガガガッッ!
海皇は死なずッッ!勇次郎の打撃に合わせたカウンターの連撃がヒット!!そのままジャンプして・・・・・
テキサスコンドルキック!

オーガ渾身の打撃を3発も立て続けに受けてもなおこの反撃力。やはり強い・・・っていうかぶっちゃけ人間じゃねえ気がする
ふわりと華麗に着地すると、帽子も取れて露になったツルッぱげを光らせて叫ぶ。すごい形相です
「調子こいてんじゃねェ小僧ォッ!」

146歳ミイラの咆哮!独歩ちゃんと闘ったときの渋川先生を彷彿とさせます
と!気を吐いた爺様でしたが、次の瞬間その表情が凍りつきます。まるで何かバケモノでも見てしまったような・・・

そう

”バケモノ












「ジジイ・・・・
ちょうしこかせてもらうぜ!!」

「終わらせる気だ・・・ッ」

ついにその姿を現した”地上最強の生物”オーガの象徴。発達した筋肉が作り出す鬼の貌!
これはやはり爺様死亡で完全決着か?震えて待て次号!


235話

ついにその持てる力の全てをさらけ出した範馬勇次郎。異常発達した背筋が造り出すは・・・・そう
鬼の顔!
これこそが地上最強の生物”オーガ”の由来である

「違う・・・筋肉の形状が明らかに我々とは違う・・・ッッ」
烈先生は初めて目にする勇次郎の背中。その筋肉のつきかたを見るや、出てきた感想がコレです
「ナルホドのぉ・・・打突の要と言われている背なの筋肉・・・その筋肉の構成が明らかに通常と異なる
言うなれば生まれながらの・・・天然戦闘形態・・・・と言ったところか」
爺様の言葉に静まり返る場内。そう、人間の背筋はどれほど鍛えようとも勇次郎のように鬼の顔は作りません。そもそも形状が違うからです
勇次郎は生まれつき常人とは筋肉のつきかたが異なる、特異体質だったのだ。まさに闘うために生まれてきたような男である

「己以外は全て弱者と断じる思い上がり・・・捨て置けぬと思いはしたが・・・・
おぬしが正しい。百獣の王ライオンは他の動物達をライバルとは思わぬ
全ては餌。おぬしとその他全人類の構図はそれに当てはまる」
爺様も認めざるを得ない目の前の男の特別性。この男は我々と同じ生物ではない・・・・もっと別の何かだ。しかし。されど!
我は中国拳法4000年の象徴・郭海皇!
退かぬ!媚びぬ!省みぬ!




始めよう・・・・・




獅子対・・・・・・





餌!!!

ドォン!!!!!
しかし無情なるかな。乾坤一擲で繰り出した爺様の蹴りは勇次郎を捉えることなく
カウンターで突き刺さった右拳はその老体を弾丸のように壁までフッ飛ばした
日向のタイガーショットのようにコンクリートの壁にめり込んだ爺様の身体
まるで漫画の破壊力である(漫画だけどさ) もはや観客席からは声も上がらない。勝負は決したか

生ま・・・れ・・・落ちて・・・百と・・・・数十・・・・余年・・・・
五万日・・・・
武を・・・・継続け・・・た・・・・

普通に考えて即死でおかしくないんですが。爺様は両の足で地を踏みしめ、決して倒れようとはしない
海皇としての意地・・・いや 146年の人生をただ武術にのみ捧げてきた一武術家として意地か
「ひィ・・・・イアアアアアアアアッッ!!」
咆哮一発。野生の獣のように勇次郎へと突っかける爺様。まだ身体が動くってだけでもスゴいのに、目にもとまらぬ連打を打ち込みます

誰より・・・・も・・・永くッ!

誰・・・より・・・・濃くッ!!

打って、打って、打ちまくりながら。心の中で何度も繰り返す郭爺様
自分はこの地球上の誰よりも永く武術を続けてきた!誰よりもだ!




そう・・・・・

こいつよりも!!!
爺様絶望!
渾身の連打を直立不動で笑って受ける勇次郎!あまりにも隔たりがあった両者の差!ついに次号決着か!?注目!


236話

中国拳法

爺様の猛攻を直立不動の笑顔で受けきった勇次郎。140年の魂を注ぎ込んだ武術家は、この絶望的な事実をどう受け止めるのか
って
なにコレぇー?!!!!ちょいーん って!

おじいちゃん電池切れちゃった!
え?なに?死んだの?146歳でついに大往生しちゃったの?

と思ったらドッコイ

初号機再起動しました!』
(伊吹マヤ)

「オエアアアアアアアアッッ!!!」
ダメだ!なんていうかもう介護施設に入れなきゃ!老人性痴呆症の典型的な症状ですよ!
夜叉猿のような恐ろしげな形相で再び鉄拳の雨あられを見舞う爺様。やはり再び無抵抗でこれを受ける勇次郎
”ドガガガガガガガガガッ!!!”
型もなにもない。ただただ白髪を振り乱し、本能のまま両手をぶん回して打ち込む打撃。その異様な姿に会場中が静まり返ります
「もはや・・・拳法に見えぬほどのオリジナル」
「これが・・拳法?」
「郭海皇がやっているのだ 
中国拳法以外の何ものでもないッ!」

烈先生の屁理屈が相当ナンです。じゃあ爺様がボクシングやったらそれも中国拳法になるのかと問いたい
打って。打って。打って。我が拳よ砕けろとばかりに、ひたすら打ちまくる爺様。まったく反撃しない勇次郎
これは一体いかなる闘いであろうか。いや、闘いと呼べるものなのか?そしてようやく勇次郎が両手をポケットから抜く

「ジジイ・・・もう十分だろう」

ぐぐぐぐ〜っと、両腕をゆっくりと頭の上まで上げる勇次郎。同時に観客達からざわざわと小声が聞こえ始める
「オイあれ・・・・」
「あぁ、背中が・・・・」

出た

鬼が哭いているッッ!!!
打撃用に特化した筋肉がパワーMAXに達した証!!今の勇次郎なら生身でガンダムを倒せます
次のページでいきなり鼓膜パーン!おじいちゃん耳血ドバー!独歩ちゃん殺害コースと同じだ!

そしてッ!独歩ちゃんの心臓を一撃で停止させたあの渾身パンチッッ!!
顔面に食らえジジイいいいいいい!!!
見開きページで爺様の顔面に迫る勇次郎の鉄拳。板垣先生!こんなの入ったら首から上がなくなるよ!
しかし。全国の読者がおっかなびっくりで次のページを開いて見るとアレェ!?

勇次郎、どんぐり眼でビックリ!(可愛い表情見せるなー)
思わずその殺人パンチを寸止めしてしまいます

「バッ・・・バカかてめェェッ!!」
”地上最強の生物”範馬勇次郎ほどの男がこれだけ取り乱す。いったい爺様は何をしたというのか?
二人の闘い、ついに決着か!震えて待てッ!次号!


237話

鬼哭

「バカかてめえェッッ!!」
鬼の顔MAXパワーの必殺パンチ。そのまま顔面にブチ込めば勝利確定の攻撃を、突如寸止めしたその理由とは?
郭爺様は一体なにをしでかして
ああっ!?やはり全国読者の予想通り!!

「ふざけんなアァッッッ!!!」
おじいちゃん真っ白に燃え尽きたァー!!!
うーん案外普通の結果だったな・・・誰も予想しないような板垣展開もあり得るかと思ったが

あまりにもあまりな出来事に会場は誰一人として身じろぎさえしません。重苦しい静寂だけが場を支配します
駆けつけた医師がすぐさま瞳孔を確認。脈を計って聴診器をあて・・・・・そして。 診 断 の 結 果 は

「老衰です・・・」

なんという幕切れだろうか

郭海皇は日本の強者・範馬勇次郎との戦いで命を落とした

だがそれは勇次郎の攻撃で受けた肉体的ダメージによるものではなく

146歳の天寿をまっとうした大往生

武と暴。技と力

地上最強の男を決するハズだった二人の闘いは

郭海皇の死亡という形でその答えを永遠に閉ざされたのである







歯を食いしばり、両足を踏ん張って拳をわななかせる勇次郎
中国拳法の象徴・郭海皇は、間違いなく人生の中で最強の好敵手だった

人生最大のご馳走。今まさにそれを食らおうとした瞬間
そのご馳走は賞味期限が切れてしまったのだ
なにせ闘いを食料に生きてるような男です。その無念たるや如何ほどのものか

「な・・・・なにもこんなときに・・・・」
「・・・・・・・・」
刃牙にとっても、父のこんなに悔しそうな姿を見るのは初めてのこと。どうにもやりきれません
烈先生もまた、瞳を閉じて強く口を結ぶ。偉大なる中国拳法の象徴を亡くした喪失感も多分にはあるでしょうが、
やはりそれ以上にいち格闘家として、この地上最強決定戦の明確な勝ち負けを見届けられなかった無念さが見て取れます

やがてゆっくりと天を仰ぎ、ふっと気を弛緩させた勇次郎は舞台袖に引き上げます
通路では駆けつけた仲間達が待っていました。各々が神妙な表情。いったい勇次郎にどんな言葉をかけたらよいのか
「フン・・・・くたばっちめェやんの」

これは・・・・・
勝利なのか?

なんという寂しそうな顔をするんだ勇次郎!
江珠を殺したときさえこんな表情は見せなかったぞ。その言葉を聞いた5人の顔もまた、同じように雲がかかるのでした









そして

偉大なる国手・郭海皇を失った中国サイドの選手控室
さぞや関係者各位は哀しみの底に・・・・・・・・・・・あ・・・・・?
あれェ?何コレ?爺様の心電図に反応が・・・・・

って!

ゲェーあっさり生き返ったー!?と言うより、これは多分・・・・そう
”死んでいなかったッ”
爺様はおそらく自らの技法で仮死状態になっていたのだ!
「武術の勝ち」
って何が勝ちなんだよ!「倒されなかったから勝ちだ」とでも?誰が見たってアンタの負けだよ!
ぐわー板垣先生メチャクチャだ・・・・・なんだよこの言い様のないイライラ感は・・・
加藤に恐怖し、敗北を認めたドリアンがのうのうと独歩ちゃんを襲ったときくらい腹立つ!理屈が通ってないよ!
板垣先生は一体どう説明つけてくれるのか!?次号注目ッ!


238話

「「「「わ―――――ッッ!!!」」」」

みんな顔が梅図かずお風
医師が「老衰」と診断した146歳の爺さんが突如として生き返ったのです。そら驚くなってほうが無理でしょうが・・・みんなイイ表情してます
特に範。なんだその逃げ腰は。まったくコイツは何をやらせても笑いを誘うな

「い・・・生きて・・・・おられたのですか・・・?」
「ハハハ・・・・スゴイじゃろ」
「イヤそうじゃなくて」

おお、絶妙のかぶせ方をしやがる。みょーにツッコミ上手いぞ烈先生
「たしかに心臓は停止し瞳孔は開き・・・臨床学的には間違いなくワシの死亡は確認されたと聞いておる
その結果何が起こったか・・・?
拳を止めたのじゃ。打たれていたら絶命は免れぬであろう拳を・・・・おわかりか?
武が勝利したのじゃ」

4人ともに「えー?」て顔してますけど。そこんトコどうなんですか爺様・・・って

突然キレた。もう完全にボケ老人
でもすぐに冷静に戻って淡々と話を続けるあたり流石です。とりあえず「自分は負けてねえ」と若者4人を説き伏せないと引き下がれない

「死に勝る護身なし
およそこの世に存在する勝負事。ゲーム・スポーツから殺し合いまで
相手が死すれば勝負なし。故に負けもなし」

「ずっる〜〜〜」

「その通り。武とは技とはズルきもの
昆虫や小動物は勝てぬと判断するなり擬態を用いて死を演ずる
それをズルいとなじることも良し。しかし結果、
彼らは生き残る

皆よ。ワシはあの怪物と闘った・・・
そして今なお立っておる」













屁理屈言うなジジイ




「生き残ったから武の勝ちだ」っつーなら




俺だって勇次郎に勝てるぜ
誰だって勇次郎に勝てるぜ。この理屈は「郭海皇だから勝てた」って事じゃねえ




試合始まった瞬間に地面に頭こすりつけて謝罪して





それで逃がしてもらう




それで「よし生き残った!武の勝ちだな!」って言い張るぞ







ジジイの屁理屈はそういう事
俺はぜってー納得しねえ。そもそも「勝てない」から死の擬態で「やりすごしてる」ワケだし
勝ちじゃねえよ。負けだよ。言ってることが支離滅裂と言うか無茶苦茶と言うか本末転倒だよ。島本先生風に言うなら
「こじつけでもつじつまがあえばそれにこしたことはない!」
程度の強引な言い訳だよ。ガッカリきたよ。「郭海皇が生き返った」の報を聞いた勇次郎も納得してるし

とにかく。今回ジジイがのたまった屁理屈を適用すると
相手を殺すか自分が死なない限り「勝ち負け」は決まらないつーことです
そんなこんなで次号へ続く。結局擂台祭編どう締めるつもりなのかねぇ・・・・「海皇」の称号はどうなるワケ?
グダグダだ


239話

最強の称号


そもそもは―――――

最強の称号『海皇』を手にするための大会だった

それが中国チームVS他国チームの団体戦に変化し

遂にはその決着さえあいまいなまま 大会は幕を閉じた




しかし




帰路につく観客達の足取りはあくまで軽く




その表情は―――あくまで満足気であった




中国武術100年に1度の祭典「大擂台祭」は、明確なる”勝者”不在のままにその幕を閉じた
しかし観客達に不満感など一切ない。はるばる海を越えてやってきた、今まで見たこともない凄まじき強さの男
そしてその恐るべき男と戦って「敗北」することのなかった”中国拳法の象徴”郭海皇の武を目に焼き付けることができたからである

かくして 『 擂台祭 つわものどもが夢の跡 』

真夜中、誰一人として居なくなった試合会場に静かにたたずむ我等がスーパーオヤジ・範馬勇次郎
粉砕された壁が、床に染みついたおびただしい血が。今日、この場で行われた超絶のバトルが夢でなかったことを証明している

背後に感じた気配に振り向く勇次郎。そこに立っていた人物はまさしく・・・・

「くそジジィ」
郭海皇。「死ぬことによって敗北を免れる」という奇想天外な理論で武術の勝ちを謳った、”中国拳法の象徴”
ここで勇次郎が
ブチ切れてジジイ殺すってのも面白い展開だとは思うんですが
先週ラストで「流石は海皇ということだ」と、爺様の謳う”武”を認めているだけに落ち着いた対応です
「ホッホ・・・よき擂台祭じゃった。ともに意識し・・・ともに尽くしあった
のう。範馬海皇」

そしてジジイはジジイで勇次郎の圧倒的強さを認めていた。それゆえに「範馬海皇」と

「この郭海皇が認めているのだ。堂々と名乗り上げたらよい・・・誰にも文句は言わせん
もっとも・・・この世におぬしに文句をつける者など最初からおらんか。ファッファッファ」
「中国全土の。武術に命を賭した者達の中からたった一人のみが名乗ることを許される称号
例えあんたを倒しても 俺が名乗ることなど誰も納得すまいよ」
「ま、倒しちゃおらんがの」

そう言ってニタッと笑う郭爺様。それを受けて勇次郎もふっと笑う

「闘いこそはSEX以上のコミュニケーション」

勇次郎が常にそう言ってはばからないように。全力を尽くして闘った二人のあいだに、余計は言葉は必要なかった
「ヘッ くそジジイ。気持ちだけもらっておくぜ」

最後にそう言い残して、くるりと背中を向ける勇次郎。ゆっくりと去っていく後姿に爺様が声をかける
「オーガよ。100年経ったらまた闘ろうや」

怪物二人。100年後の再戦を期して暫しの別れ
悠然と去る後姿に惚れ惚れと見入る郭爺様





ワシも・・・・





呼ばれてみたいのォ・・・・・・





地上最強の生物・・・・・

齢146を数え、ありとあらゆる名声と権力を得てなお強く抱いた感情。それはまさしく「最強への憧れ」
「海皇」など最強の称号ではない
そう、「地上最強の生物」その呼び名こそが・・・・
かくして最強の男二人の激突は、互いの胸に大きな実りを残して一時の幕を引いた。強者よいつまでも強者たれ





そしてラストシーン。やって来た時と同じく、中国武術省が手配したヘリコプターで日本への帰路につくバキ
パパと爺さんの戦いを目撃したことによって、何か強烈にインスパイアされた様子です


勝てるとか 勝てないとか


そういう次元のハナシじゃない


やれる理由も やれぬ理由も


無限に用意できる






だからやる・・・・・・

時期が来た!!!
ええええええええ!?マジかよ何言っちゃってんのこのボウヤ!!
そりゃ漫画の長さからいったら
そろそろ終わらせなきゃならない時期だけど
実力的には全然時期じゃねェよ!
塾長と邪鬼が浜辺で決闘した時くらい差あるよ!あーでもどうなんでしょうコレ。板垣先生マジで最終回を想定しての展開でしょうか
これで刃牙が勇次郎を倒せば作品として文句なく終わることが出来ますが。また負けたらもうどんな展開になっても薄ら寒いだけだな
全国読者騒然の新章へ続く。次号注目!


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