それゆけマークスリーたん
作・PM6:40さん



黒く塗られた誤字の海に突如大量に現れた亜里沙様
他の誤字を埋め尽くされまいと対応に出るMk3

―今日は…オーディエンスが多いデスネ

しかしMk3は気づいていない
亜里沙様の視線の先に、自身が映っていないことを
戦いはまだ始まってもいない

それゆけマークスリーたん:第36話「見ている地平線(前編)」


一切の抵抗も無く撃たれ沈む亜里沙様
あまりの呆気なさを不審に思うMk3

だが、時すでに遅し
後方で何かが音を立てた

それゆけマークスリーたん:第37話「見ている地平線(後編)-1」


ー誤字の海には扉が存在する
ー誤字を管理し、無闇に外界に出るのを防ぐためである

Mk3が音のした方に向くと、いつの間に現れたのか、三体の巨人の姿
その内の一体が、扉を開け放っているのが見えた

暗い海に注ぐ外からの光
沈んだはずの亜里沙様は何事もなかったかのように佇み
間違いなくその光をご覧になっていた


口へと一斉に進み出す亜里沙様

巨人も放ってはおけないが
今はまず亜里沙様を止めねばならぬと
Mk3はバズーカを構え

ー瞬間、赤き閃光が目の前を走り
バズーカは音もなく切断されていた

それゆけマークスリーたん:第38話「逆襲!トリプル・丸 -1」



やられた?と思ったのも束の間、灰の巨人がMk3に掴みかかる

ーレッドもグレーも、たったナウまでずっと後ろにいたのに?

間髪入れず上方へ投げ出された先には、蒼の巨人が既に待ちかまえ
その爪先は、Mk3の視界を埋めつくさんばかりに振り下ろされる

それゆけマークスリーたん:第38話「逆襲!トリプル・丸 -2」



気にもされず、見もされず Mk3は海に墜ちる

なにが悪かったのか
なにを為すべきだったのか
そんな思いも次第に薄れていき
やがて目の前が真っ暗になった

それゆけマークスリーたん:第39話「今にも干上がりそうな海の中で-1」


Mk3がふと目を覚ますと、何故か布団に寝かせられていた
そのすぐ横で、誰かがタブレットをいじっている
その誰かをMk3は知っていた

―ごブサタしてます、先代

「おはよっス、セガ」

先代と呼ばれたのは、かつての誤字の海の管理者
今は亡き者であるはずのエルガイムMk2であった

それゆけマークスリーたん:第39話「今にも干上がりそうな海の中で-2」



「控えめに言って、ダメダメっスね」
Mk3を労うでもなく、Mk2は毒を放つ
辛らつな言葉にぐうの音も出ず項垂れるMk3

「自分の跡継ぎとしては、色々不足しているっス」
「そんなセガに、自分からひとつ」

そう言うとMk2は
タブレットから何かを、外へと放り出した

それゆけマークスリーたん:第39話「今にも干上がりそうな海の中で-3」


ーザレゴト?

「そう、戯言」

誤字の海が「海」ならば、戯言は「川」、それも「主流」である
文字の奔流の中で誤字は生まれ、海へと流れゆく
そうして着いた先で、誤字は管理され、海に沈む

「けれども、沈む事を拒む誤字も稀によくあるっス」

それは何故かとMk3が尋ねる

「それはセガ、自分で確かめるっス」

だからこそ戯言への入り口を出したのだ、とMK2は言った

それゆけマークスリーたん:第39話「今にも干上がりそうな海の中で-4」


 ―つまり、キュートな子には旅させろ、ってことデスネ?

「自分でキュートだなんて言う余裕があるならさっさと行くっス」

入り口から戯言へと飲まれていくMk3

「...さて、と」

Mk3が居なくなり、一人残ったMk2はおもむろに自身のリボンを解いた

それゆけマークスリーたん:第39話「今にも干上がりそうな海の中で-5」



名は体を表す

戯言に入ったMk3が見たのは
幾年月も増し続け留まるところを知らぬ文字
なにもかもが生まれ、過ぎていく世界であった

ーこれが...ザレゴト?

文字の光景を目の当たりにしたMk3は、ある違和感を覚えた
たしかに量こそ膨大ではあるが、何かが足りない気がする、と

しかし、ここで立ち止まっているわけにも行かない
Mk3はとりあえず奥へ進んでみることにした

それゆけマークスリーたん:第40話「誤 ROUND ON-1」


喜び、怒り、悲しみ、楽しみ、現在、過去
奥へと進んでいく中で、Mk3はさまざまな物を目にした
屋敷の要である「マスター」の歴史、Mk3にはそれが新鮮だった

―リメンバーしてみれば、誤字をKOしてばかりで...

もっぱら誤字に気を取られていてばかりで
こうしてまともに戯言に触れるのは初めてだ
Mk3は、一文一文進んでいく

―oh?

ふと、足元の文に誤字が小さく載っているのを見つけた
すぐ傍に大文字があるなど、下手すれば読み飛ばされてしまいそうな
それは「ご覧の亜里沙様」とあった

それゆけマークスリーたん:第40話「誤 ROUND ON-2」


その時、多くの閃光が誤字に向かって走った
誤字は瞬く間に光に包まれ、姿すら見えない

「この光が、言ってしまえば今回の元凶っス」

呆気に取られているMk3の後ろで、いつの間にか居たMk2が話す

「それでいて、屋敷になくてはならないもの」

「“朋友”の光っス」

Mk3はその言葉に聞き覚えは無かったが、知っている気がした
そして、先ほどまでの戯言に足りなかったものがこれだったことを理解した

「マスターがエンジンなら、朋友は燃料」

―どちらかがロストしたら屋敷は成り立たない?

「理解したっスか じゃあ、燃料が他になにを動かすのか」

「今からそれがわかるっス」

それゆけマークスリーたん:第40話「誤 ROUND ON-3」


「“ご覧の亜里沙様だよ!”から生まれた、亜里沙様っス」

光が収縮し、現れたのは「亜里沙様」と呼ばれるものだった

ー誤字の海に居たのも…?

それにしては姿形が似て非なるものだ、とMk3は疑問に思った
それを見越したかのように、Mk2は説明を続ける

「朋友の光で生まれる故、朋友の数だけそれは生まれるっス」
「それもまた、どこかの朋友から生まれた亜里沙様」
「しかも生まれたてっスから、まだ小さいし粗いっス」

朋友の数だけそれが生まれる
誤字の海での、あの物量はそういう訳だった
しかし、ここでまた疑問が生じる

ーでも、誤字の海に居たのは全員同じキャラでした

「…数だけ生まれる、とは言っても限度があるっス」
「皆が皆思い思いに生み出す それは、原点が忘れ去られる可能性を高めるっス」

「原点を失ったものは、やがて暴走します」

それゆけマークスリーたん:第40話「誤 ROUND ON-4」


生まれ落ちる亜里沙様を受け止めるMK3
文字体であった身も、朋友の光により元の姿に戻っていた

ー先代、ワタシ...どうにかしたいデス
ー“誤字”をKOするだけでなく、向き合ってみたい

「それを聞きたかった」

誤字の一角に触れたMK3の言葉に、Mk2は応える

「とにかく丸腰じゃ心許ないっス」
「セガのバズーカ、直しておきました」

バズーカを受け取ったMk3は、切断されていた部分が青く光っていることに気づいた

「私のリボンで結んでおいたっス」

リボン?とMk3は、Mk2がリボンで髪を結んでいるかを確認する
そこには確かにリボンがあった

「あ、リボンはいっぱいあるッスよ」

そう言うとMk2はどこから出したのか大量のリボンを見せつける

「それはさておき」

「教えましょう 誤字の、亜里沙様の暴走を止める方法を...」

それゆけマークスリーたん:第40話「誤 ROUND ON-5」



Mk3を退けてから、いくらか経った誤字の海

ひたすらに進み続けた亜里沙様の、もう目と鼻の先に出口の光はあった
光、ただそれのみを求む亜里沙様の群勢を、3体の僕たちは静かに見守っている

ふと、僕の1体「華狼丸」は、後方にて青い炎が広がるのを見た
出口の光に勝るとも劣らないその煌めきは
先刻、障害を沈めた位置から上っているように見えた

それゆけマークスリーたん:第41話「EYE HAVE WE-1」


日々に追われしマスターの 誤りなんなり丸管理
先代の名に恥じぬよう 一人ひたすら歩んだものの
立ちはだかった障害に 力及ばず闇の底
されど独りでないと知り 再び歩む活を得る

―さっきのワタシと一味違う、ホントのワタシが今デビュー!
―からくり屋敷の誤字担当、セガMk3ただいま参上!

それゆけマークスリーたん:第41話「EYE HAVE WE-2」


Mk3を見るや否や、排除せんと迫る巨人
沈めて無駄なら直接斬るまでと、華狼丸が突きを放つ

しかし刃は届かない
どこからか垂れた、青い細布が巨人の身を縛り付けた

それゆけマークスリーたん:第41話「EYE HAVE WE-3」


「リボンならたくさんあるっスから」

突如現れた細布、リボンに巻かれ三巨人は身動きを封じられた
リボンの主、Mk2はそれほどでもないという風な態度でMk3に歩み寄る

「...もうちょっと遅くても良かったっスね」

―いや、アウトぎりぎりデシタよ

Mk2のちょっとした毒をMk3は軽く往なす

「さて、こいつらは自分がどうにかするとして」
「セガ、本命をどうするかは...」

―わかってます


時は少し遡り


「教えましょう 誤字の、亜里沙様の暴走を止める方法を...」

それゆけマークスリーたん:第41話「EYE HAVE WE-4」


「暴走を止める...正確には暴走ではなくさせる」
「暴走ではなく解放、亜里沙様らにはそれが必要」

「つまり」

「『誤字でもなんでも面白ければ良し』っス」

何を慌てる訳があるか、元はといえば誤字なのだ
誤字が無くならないのなら開き直って遊べばいい
短所を長所に活かさんとするその言葉に、Mk3は手を叩いて納得した

それゆけマークスリーたん:第41話「EYE HAVE WE-5」


―狙いは...!

Mk3は背負ったバズーカを構え、前方へと向ける
前方、亜里沙様の群は依然としてたった一つの出口に進み続けている

誤字が、亜里沙様が何を求めているのかをMk3はまだ知らない
しかし知らずとも、自分が何をすべきかは解っている

バズーカを誤字のK.O.の為ではなく、他の何かに使う
Mk3の「誤爆」が炸裂しようとしていた

それゆけマークスリーたん:第41話「EYE HAVE WE-6」



−KO!

掛け声とともに放たれた弾は一直線に
唯一の出口へと飛んでいく...ように見えた
だが狙いは出口ではなかった

この場において最有力の手であろう
『亜里沙様の流出を防ぐため出口を塞ぐ』
ということを、Mk3は行おうとしない

弾は亜里沙様の上を掠め、出口の上を「誤爆」した

それゆけマークスリーたん:第42話「開け誤爆-1」


煙が晴れ光が差す
誤爆された箇所から、新たな出口が姿を見せた

一つの出口を目指していた亜里沙様は
狼狽しているかのように、二つの出口をご覧になり歩みを止める

そして、出口ではない別の光が、後方より
自身に向けられているように放たれていることに気がつき
ただ一点のみ見ていた視線が、わずかに後ろへ逸らされる

−初めまして、オーディエンス

Mk3の構えたバズーカが、今にも轟かんと震えていた

それゆけマークスリーたん:第42話「開け誤爆-2」



誤誤誤誤誤誤誤誤誤
爆爆爆爆爆爆爆爆爆

それゆけマークスリーたん:第42話「開け誤爆-3」


誤爆に次ぐ誤爆で、誤字の海は穴だらけとなった
管理とは程遠い、決して褒められた行為ではない誤爆

だがそれがいい

無数の穴から溢れる外の光に
無数の亜里沙様は視線を泳がせる

無限の可能性が、亜里沙様にあった

それゆけマークスリーたん:第42話「開け誤爆-4」


「見る」に形はなかった
ある日、誤りから「それ」は生まれた
それは「亜里沙様」として、様々な視点で御覧になった
Mk3が対峙し触れた亜里沙様は、その内の一つの視点に過ぎなかった

しかしそれも先ほどまでの話
出口という出口が開かれ、亜里沙様達の視点が散らばる
それは無限の可能性、無限の解釈の自覚

一つだった視点は二つにも四つにも分けられ
「見る」ことへの、「亜里沙様」への個々の解釈が与えられていった

それゆけマークスリーたん:第42話「開け誤爆-5」


己が生まれた世界、それぞれが見た解釈へと進む亜里沙様
出口から差す光に当てられながら、Mk2とMk3は彼女らを見送っていた

「屋敷が穴だらけになりましたけど、ここは大目に見るっスよ」

そんなMk2の小言も聞こえてたかどうか、Mk3はただ見送り続ける
それは見送るというより、亜里沙様を見続けていたという方が正しいか

そんなMk3の胸元で「戯言」で出会った亜里沙様が顔を覗かせた

それゆけマークスリーたん:第43話「見上げて御覧の亜里沙様-1」


胸から飛び出た亜里沙様は、本来の姿へと戻る
この亜里沙様こそ、数多存在する亜里沙様の
元ネタとも言うべき亜里沙様であった

「ネタをネタとして扱うには、元ネタを知るべきであるっス」

Mk2は続ける

個の解釈は増え続けていく、そんな止まらない流れの中、もし元ネタが埋もれてしまえば
ネタは別の何かへと変わってしまい、収拾がつけられなくなる
それを防ぐための管理人、それが自分達なのだと

「しかと見据えるっスMk3」

Mk3は言われるまでもなく、亜里沙様と視線を交わしている

「彼女こそ『御覧の亜里沙様』...」

Mk3は初めて、亜里沙様を見た気がした
初めて見られたような気がした

それゆけマークスリーたん:第43話「見上げて御覧の亜里沙様-2」


かつての安定と静けさを取り戻した誤字の海
一つ残った出口は、Mk3「だけ」が利用できる通路であった

「じゃあ私は、在るべき場所に還るっス」
一緒にこの子も、と亜里沙様を一瞥しMk2は言う
誤字の海の管理の任を全うしたMk2は、ここにはもう必要ではなかった

―...ちょっとだけロンリーな気分デス

Mk2の後任に就いてから今まで、一人でやってきた管理の務め
それが今日の騒動によって、誰かと共に在ることを覚えてしまったことで
また一人で務めることが、Mk3にはちょっとだけ悲しかった

「弱音は無しっスよ」

そんな思いを読んでか否か、Mk2はピシャリと言い放つ
しかしそれは突き離しの言葉ではなく

「そもそも、弱音を吐く事が間違ってるっス」

「セガの事を御覧の亜里沙様のように、常に誰かが共に在る」

それゆけマークスリーたん:第43話「見上げて御覧の亜里沙様-3」


「『セガMk3』というのも、元はと言えば『エルガイムMk2』が在ったからこそのネタ」

「ネタ元である事を自覚し、その派生を見守るのも大切なことっス」

「だから私は、同じく大きなネタ元である亜里沙様
と共に…」




「ま、小難しいことは抜きで言わせてもらうと」


「可愛い『妹』は守ってあげたくなるものっスから」

それゆけマークスリーたん:第43話「見上げて御覧の亜里沙様-4」


―SEE YOU AGAIN ARISA SAMA

―SEE YOU KARAKURI MY SISTER


それゆけマークスリーたん:第43話「見上げて御覧の亜里沙様-5」


「マスターマスター、また誤字ってますよココ」

「はわわ...!って、お前がやたらとカタカナに変換するからじゃぞ!」

「ノンノンノンノンノン、ワタシのバズーカはノットギルティ、つまりマスターの怠慢でーす」


「ぐぬぬ、あいつみたいなこと言いおってからに...!」

「ンッンー♪パワーアップしたワタシをナメないでください、これまで以上にバンバンバズーカが唸リマース」

「やっぱりお前のせいじゃないか!」

それゆけマークスリーたん:第43話「見上げて御覧の亜里沙様-6」


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