間違い探し

蟹刑事




 いつもの通り、貴史は3人娘と打っていた。

 オーラス。
 貴史は2位。満貫ならツモでも逆転可能。
 貴史の手は順チャン三色。ドラが現在アタマになっているので、満貫は確定。
 だが、イーシャンテン。
 なかなか必要牌を引いてくることができない。
 このままでは流局になる。

 「危険だとは思いますが、ドラ」
 「……ポンだ」

 これでテンパイにはなる。
 しかし、待ちは悪い。
 テンパイ料が入れば、トップとの差が縮まる可能性は高い。
 上がれなくても優位であることは間違いない。
 次の局に期待するか。
 貴史はそう思い、牌をツモっては切る。


 そして数巡。
 「……コレが来たか」
 ドラだった。
 これで待ちを換える事はできない。
 ならば……
 「カン! 」
 4枚目のドラを晒した。


 「ロン! 槍槓・ピンフ! 」
 「当たりです! 槍槓・小三元・白・中! 」
 「ロン。槍槓のみ」
 「…………また、トリロンか。しかも槍槓なんて役で……」
 貴史は卓に倒れた。


 「兄さん、また1人負けですね」
 「まったく。お前達と打つといつもこうだ」
 「トリプルロンをいつもアリにするからでしょう」
 「理論上、そうそうトリロンはありえないんだ。それで振り込むようなら自分の打ち方が甘い。だから、自戒のためにもこれは譲れない」
 「兄さんがそれでいいのなら構いませんが」
 結宇は超必殺ガリガリくん(トロピカルバンチ味)をかじる。


 その夜。
 貴史の部屋。

 「……何故だ? あのトリロンは何故、納得がいかない!!?? 」

 貴史はパソコンに向かいながら考えている。
 さあ、諸君も貴史の悩みをスッキリさせてあげましょう。















 解決編


 「判ったぞ! 」
 貴史は立ち上がった。
 「結宇! 」

 「どうしたです、兄さん。もう寝ようと思っていたのですが」
 「お前、あの上がりはチョンボじゃないか! 」
 「あ、やっと気がつきましたか」

 槍槓というのは、誰かが槓をして晒した4枚目の牌で当たることだ。
 ということは、貴史は『誰かからポンした』訳である。
 つまり、それは『誰かが捨てた牌』であり、その誰かは『フリテン』である。
 貴史が鳴いたのは結宇から。
 結宇はダブロンのドサクサに紛れて上がりを宣言し、兄をドン底に追いやったのである。

 「あの場で気が付かなかった兄さんが悪いんです」
 そう言われてはどうしようもない。
 確かにその通りなのだから。

 貴史は決して弱くはない。
 ただ、周りが強すぎるのだ。
 更なる修練が必要である。
 貴史はそう決意をし、妹の部屋を出た。


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