「麻雀の秘密」 〜貴史のトリビア〜
「さて、みんなは何故麻雀牌が136枚あるか知ってるか」
「兄さん、何を突然? 」
「そんなの簡単よ。34種類の牌が4枚ずつあるから136枚なのよ」
「いや、そうじゃなくって、34種類になった理由を、さ」
貴史は恭子、摩弥、結宇の3人を前に語りだした。
「考えてみるがいい。34種類というのはいかにも中途半端だ。
中国であれば、6×6=36種類とか、4×9=36種類にするのが普通だ。
4・6・8・9は中国でも陰陽を表すのに使われる数字だからな。
数牌が3×9種類、三元牌が3種類。しかし、風牌は4種類。
だから逆に言えば、『全部4種類ずつあった』と見るのが無難だ。
そう、三元牌は四元牌だった、ということだ。
例えば、だ。仮に「黒甲」とでもしておくか。
そうすると……
東=緑發=青(よく發のことを「アオ」という人がいるだろう? )=青竜
南=紅中=赤=朱雀
西=白板(ちなみに読みは……おっと、この話はここまでにしておこう)=白=白虎
北=黒甲=黒=玄武
となる。
どうだ、実に論理的だろう?
元々、麻雀は占いだったという話だから、その信憑性も高まるな」
「あの……お兄さん」
「なんだい? 摩弥ちゃん」
「その場合、万子・筒子・索子にはどういう意味があるんですか? 」
「うん、いい質問だ」
貴史は説明を続ける。
「色々説はある。ここでは『お金』を表すという説を挙げよう。
万子は『お札』だ。紙に漢数字が書かれているものだな。
筒子は『硬貨』だ。1枚ずつの硬貨だ。
索子は『硬貨を通す紐』だ。索という漢字の意味を考えれば、必然だ。
そして、玄武に相当するものがあるとすれば、『札束』か『財布』だろうな。
なお、さっきのものに加えるなら、
東=緑發=青=筒子=硬貨=青竜
南=紅中=赤=万子=お札=朱雀
西=白板=白=索子= 紐=白虎
北=黒甲=黒=??=札束=玄武
こんな感じだな」
「ついでに聞くんだけど、貴史さん」
「なんだい? 恭子ちゃん」
「なんで、実際の東西南北と卓での向きが逆なの? 」
「うん、いい質問だ」
「さっき、麻雀は占いから来た、と話をしたはずだ。
四つの聖獣はいわば、世界を表している。
だから、世界の命運をかけたものが、いわば麻雀になる。
それで、説として挙げられているのは、『卓の上に世界をひっくり返してのせている』というものだ。
他には『元々中国では東南西北という順位で方角を表していた』が『それを左回りに並べたら実際と逆になった』というのがある。
東は太陽が昇る、南は暖かい、西は日が沈む、北は寒い。こういう理由で順位が決まっているそうだが……まあ、眉唾ものだろう」
「ところで兄さん。どうしてその玄武とかの関係の牌が無くなったわけ? 」
「我が妹ながらいい質問だ」
「中国では、実は『四』というのは縁起が悪い数なんだ。『死』と同じ発音らしいからだ。
だから、『四』絡みの流局はいろいろある。『四風子連打』『四人立直』『四開槓』というようにな」
「だから、4種類にせずに3種類にした、ってこと? 」
「多分な」
結宇は眉にツバをつける。
「それで……兄さん」
「まだ、何かあるか? 」
「そんな話でいつまで誤魔化すつもり? 」
「あー、なんだ……」
貴史は空を仰いだ。
トリプルロンありにするんじゃなかった。
まさか3人とも四暗刻単騎だったとは……。