最終話 「そしてまた日は昇る」




ざざんっ!
目の前に立ちはだかる巨大な化物。しかし男達はそれに臆することなく前へ歩み出る!
―人間の真の強さとは何でござろうか?一体さん、今のおぬしならその答えがワカるでござろう―
シンエモンの最後の言葉を胸に刻み、最後の戦いへ挑む超戦士。あぁわかるともシンエモン!人間の本当の強さ!

ジャッ!と斬岩剣を抜いた一体さんがそれを頭上に高く掲げて声を張り上げた

一体さん   「この一撃で全て終わらせる・・・この幸運と勇気の剣で!
         
みんなの力を俺にわけてくれ!」

(※ キミもモニターに向かって手をかざせ!一体さんに力を送るんだ!)

「ああ!行くぞ一体」 のび犬 「俺達のパワー!」 
メガドラ 「一体さんに託す!」  だま 「頼むッスよー!」 
北城トオル 「必ず勝てますよ」  ダラちゃん 「俺達と・・・」 
イグラちゃん 「一体さんならば!」   
男爵ぴーの 「さあ閻王殿」 忍者ハッタリ 「これで最後です」
レオンハルト 「バッチリ決めようぜ!」 あぶどぅる 「筆頭の弔い合戦だ!」
Sパー伊藤 「閻王!俺達の力も!」 ヒムラー 「受け取ってくれ!」

紅華会ザコ1「はっ!青幇にばかりイイカッコはさせないぜ!」
紅華会ザコ2「へへ・・・俺っちもカイロに家族がいるもんでよ!」
紅華会ザコ3「世界が終わるかどうかなんだ!俺達だってやってやるさ!」

超戦士の号令とともに小宇宙を臨界まで燃やす青幇グラップラー達。否、青幇だけではない!
なんと生き残っている紅華会グラップラー達も揃って協力しているではないか!この場に集う全ての人間の思いが一つになったのだ
そしてその思い・オーラは一体さんに吸い込まれ、全員の小宇宙を結集して戦闘力が爆発的に高まっていく!

オリパ   「他人の気を集めて一つにするだと!?そんなバカな事が!
       ハッ?まさかこれが師父リュウケソが今際に言っていた・・・
       
北斗神拳最終究極奥義 夢想転生!!
一体さん  「朋友(とも)の死が俺に夢想転生をまとわせた!」

オリパ   「吼えるな!たかだか数百人程度の力で・・・
ううッ!?
       な、なんだこの戦闘力は!ゴミどもが数百集まったとて
       こんな力を生み出すハズは・・・・・」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
異様に高まっていく一体さんの戦闘力に動揺を隠せないオリパ
その様子を見た一体さんはふっと笑いながら遥か遠くの空と地平線を指差した

一体さん  「たかだか数百だって?お前の目は節穴かオリパ
        よーく目をこらしてみな!あれが目に入らないか!」
オリパ   「なッ・・・・なんだアレはぁああああああ!!?」


(BGM:真ゲッターロボ地球最後の日「HEATS」)←大音量フルコーラスで
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
オリパの視線に飛び込んできたもの・・・・
それは空と地平を埋め尽くす大航空部隊と、見渡す限りの人の群れであった!!

通信1    「ドイツ陸軍重装機甲グラップラー師団・アイゼンリッター推参!」
通信2    「ヴァチカン聖堂騎士団・グラップクルセイダース!総員戦闘準備!」

通信3    「中華人民共和国最高位格闘衆・梁山泊!久しぶりだな閻王!」

通信4    「教皇の命により黄金聖闘士12名!サンクチュアリより馳せ参じた!」

通信5    「ロシアグラップラー最強部隊スナペツズ!閻王を援護する!」

通信6    「ハッハー!米国空軍トップガン全機出動だぜ!目標!巨大生物!」


溥儀     「来たか!どうやら間に合ったようだな」
オペレーター「通信まだ終わりません!あちこちから次々に援軍表明が!
        し、信じられない・・・このエジプトに・・・・
        
世界中のグラップラーが集結してます!!」

決戦の場に突如として現れた大軍団は一体さん達の援軍であった
溥儀が出陣の前に各国首脳に出動を要請していたのである。始めは紅華会を恐れ、重い腰を上げようとしなかった各国
しかし今、ここエジプトの大地に彼等は集った
ラストエンペラーから全世界に向けて送られていた戦いの映像がグラップラー達の心を打ったのである

オリパ    「バッ・・・バカな・・・どうしてこんな・・・!」
一体さん  「オリパ・・・確かに人間1人1人は脆弱な存在だ。だがな!
        それがなんだ!
弱ければ助け合えばいいんだ!
        
それが人の力だ!人の本当の強さだ!
        
人はどこまでだって強くなれる!」

一体さん  「それを見失い人外の力を求めたお前は
        
人として限りなく弱い!」

ゴカァッ!!!
強く握り締めたシンエモンの剣から一条の閃光が伸びる。数万人のグラップラーの力を束ねたまばゆい光
「天を衝く」とはまさにこの事であろう。光の柱は遥か成層圏をも抜けて屹立し、邪悪な化物に狙いを定める

一体さん  「オリパ!見えるかこの光・・・感じるかこの力!
        このエジプトに集った数万人のグラップラー達!
        そして常に俺と供にあった
異世界の朋友の力を!!」
オリパ    「異世界の朋友だとォ?何をわからぬことを!」
一体さん  「わかるまい!人を捨て化生の力に走った貴様には!
        この俺の
カラダを通して出る力が!」
オリパ    「カラダを通して出る力ァ・・・?
        そんなものが!この究極生命体オリパを倒せるものか!」

シンエモン 一体さんはその力を表現できる力を持っているでござる
     そう・・・・
北斗神拳をな!

オリパ    「なっ・・・ヒゲ仮面の声!?」
一体さん  「シンエモンは生きている!この俺の心の中に!
        オリパ・・・いや紅華会首領ミスターX!!
        
北斗神拳伝承者の名のもとに!
        
貴様を断罪する!」

溥儀  「閻王!」  のび犬 「一体さん!」 
メガドラ 「一体さん!」  だま 「一体さん!」 
北城トオル 「一体さん!」  ダラちゃん 「一体さん!」 
イグラちゃん 「一体さん!」  「一体!」 
男爵ぴーの 「閻王殿!」 忍者ハッタリ 「閻王殿!」
レオンハルト 「閻王殿!」 あぶどぅる 「閻王殿!」
Sパー伊藤 「閻王!」 ヒムラー 「閻王!」



世界中から集ったグラップラー達と。供に長い旅を戦ってきた仲間達。異世界の朋友
そして朋友シンエモンの意思を胸に秘め、食らえオリパよ!
これが人の力!これが人の正義だ!

一体さん   「消えてなくなれ!
       
この世界からァ―――ッッ!!」


ズバァアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアア!!!

振り下ろされた正義の剣は、正面から邪悪の化身を真っ二つに切り裂いた
両断された断面は血を噴出すことなく空中に溶けていく。光の粒子に分解されているのだ
おぞましい断末魔をあげて苦痛に悶える化物。この攻撃の前には自慢の再生能力も役に立たない

オリパ    GIYHAAAAAAAAAA!!
        
傷が再生しない!俺の!俺の不死身の体が!
        
光の粒になって消えていくゥゥゥゥゥ〜〜!!!
        こんな・・・こんなハズではァ・・・俺のォ人生・・・・」

一体さん  「オリパ・・・己を見失った哀しき破壊者よ・・・・
        
せめて最後に唄ってやるぜ」

一体さん  「南無阿弥陀仏!」

オリパ    「GYHOOOOOOOO!!!」

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
一体さんの攻撃により光になって溶け出した巨体は瞬く間に砂漠の夜空に消えていく
断末魔と同時に一際強い風が吹いて、燻っていた光屑を空に巻き上げた
かつて紅華会首領オリパであった存在は完全にこの地球上から消滅したのだ。まさに塵さえも残さず、である
神々しい光を放っていた幸運と勇気の剣がその輝きをひそめ、一体さんはゆっくりとコレを鞘に納めた
チィ・・・ン

のび犬   「やった・・・・のか?あの化物を仕留めたのか?」
メガドラ   「ああ。一体さんの勝ちだ!」
だま     「き、奇跡の逆転勝利ってやつっスね!」

北城トオル 「ハハ・・・私も今日から神の存在を信じますよ」

一体さん  「奇跡なんかじゃないさ・・・
        
神も関係ない
        
俺達全員の力だ!!」

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!
ついに巨悪は討たれた。救世主の手によって。夜の砂漠にグラップラー達の歓喜の声が響き渡る
今日初めて顔を会わせた男達が強く抱き合い、握手を交わし、ハイタッチで勝利の喜びを分かち合う
そのとき、東の空にパァッと紅い光が差した
砂漠の夜明け―――なんと美しい
日の光に赤々と照らし出される砂漠の景色にその場にいた全ての人間が心を奪われた
世界滅亡の脅威は去った―
今日も人々は昨日と変らぬ生活を営み、出会い、別れ、愛し、命を育むだろう
そしてまた 明日の朝日が昇る―――

溥儀    「長い戦いだったな・・・・閻王。ご苦労だった」
一体さん  「オリパにはみんなが貸していたのさ。ずっと前からな」
メガドラ   「戻ってこないものが・・・多すぎるな」

のび犬   「ああ。俺達が失ったものはこの地球に匹敵するほど大きい」



















シンエモンさん・・・・終わったよ



溥儀    「見えるかシンエモンよ・・・お前が命を賭して守った世界ぞ
       美しいのぉ・・・・本当に・・・・美しいのぉ・・・」

一瞬。シンエモンの声が聞こえたような気がして後ろを振り向いた溥儀
だがそこには平和を取り戻した美しい世界が広がっているだけであった



― 1年後 ―



作業員   「オーライオーライ!はいそのまま降ろしてー」
だま     「よーし皆おつかれ。それ積み終わったら昼飯の休憩にしよう」

― エジプト ― ギザの3大ピラミッド修復作業現場
紅華会戦争の最終決戦で激しく損壊した世界遺産を再生するため、日夜忙しい作業に追われている
陣頭指揮を執っているのは小さいながらもよく働く白い猫と、2mは超えようかという巨漢の双子
数100人の作業員達は全て元・紅華会グラップラー達であった

ダラちゃん 「ふぅ・・・工事も6割方ってとこか。予定よりいいペースだな」
イグラちゃん「ハーイチャーンバブー!
        (皆よくやってくれてる。それにしても早いものだ・・・
        あの戦いからもう一年経つのか・・・)

だま     「あぁそうだね・・・・作業はツライけど毎日が充実してる
        街の人々の笑顔を見ると俺達が守った世界を誇らしく感じるよ」


だま・ダラちゃん・イグラちゃん
紅華会戦争終結後、青幇エジプト支部の統括者となり復興に貢献する
またトップという立場でありながら緊急事態には自ら現場に急行し、その戦闘力でいかような事件も鎮圧した
エジプトは世界各国の青幇支部においてNo1の治安率であった







― ウズベキスタン ―
部屋に入ってきた男は一見して普通の人間とは違うところがあった
肩は異様に盛り上がり、手の指は3本ずつしかない。異形―バケモノである
しかしその恐ろしい風貌とは裏腹に瞳はキラキラと純真無垢そのもの。彼は部屋の奥にいた人物にペコリと頭を下げた

Sパー伊藤  「次郎、キミの就職先が決まったよ。西区の採石場で寮暮らしになる
         現場の方々にはキミの身体のことは伝えてある。心配しなくていい」

次郎      「あ、あ、アリガト園長、副園長。オデみたいな人間にこんなにも・・・
         オデ、この御恩は一生忘れない。ふ、二人には本当に感謝して、ます」

のび犬     「そんなに畏まらなくていい次郎。我々は全員が兄弟みたいなものだ
         1人でも多くの兄弟達が社会に復帰できる事が何よりも嬉しいのだよ」


のび犬
紅華会戦争終結後、Sパー伊藤とともに私財を投げうってバイオグラップラーの保護施設を設立
一般常識の再教育、就職先の斡旋など彼等の社会復帰のために尽力する
また彼等はのび犬・Sパー伊藤の一声ですぐに集結し、自警団としてウズベキスタンの治安に貢献した   
     







メガドラ    「失礼、タシロさんですね?やっと会えた
         私、ご主人の友人でして貴女を探しておりました。これを」
女性      「! これは主人のサングラス・・・・あの人は・・・・」
メガドラ    「申し上げにくいのですが・・・ご主人は紅華会戦争で亡くなりました
         彼は青幇の戦士として平和のために戦い・・・それは立派な最後で」

― エジプト ―  カイロ郊外の小さな民家
玄関で話込んでいるのは中年の女性と驚くほど巨躯の男。庭先では少女が走り回って遊んでいる
少女を眺める男の目が優しく笑う

メガドラ    「利発そうなお嬢さんですな。話に聞いていた通りだ
         生前に言っておられましたよ・・・妻と娘が俺の何よりの自慢だと」
タシロ婦人  「主人がそんなことを・・・・・ありがとうございましたメガドラさん
         道を踏み外したあの人を正してくれたのはあなたなのですね?」

メガドラ    「・・・ッ!奥さん。貴女はご主人のことを知って・・・・?」

美しい未亡人はその問いには答えずただ深々と頭を下げた。男もそれ以上は聞かず、黙ってその場をあとにした


メガドラ
紅華会戦争終結後、ただ1人ひっそりと姿を消す
人に聞いた話では死んだ家族の菩提を弔いつつ、世界中放浪の旅に出たらしい
それからしばらく風の噂で背中に傷だらけの刺青を背負った大男の話が頻繁に聞かれるようになった
その男は弱き人々の願いに無償で応え、その豪腕一本で悪しき者をくじいたという







― 日本国 ― 将軍家足利霊園
虫の声が涼しげな夏の霊園にそぐわぬ屈強な男達がゾロゾロとやってきた
墓参りの用意をしてシンエモンの墓を訪れた
溥儀と、禁衛隊の面々だ
墓前に添えられていた百合の花にふと目を留めて動きが止まる

北城トオル 「もう筆頭殿の墓に花が・・・これは」
溥儀     「先に閻王が来ていたようだな。まったくあやつめ・・・
        近くに来ているなら挨拶にくらい寄ればいいものを」


足利溥儀
紅華会戦争終結後、発足された世界グラップラー連盟の初代理事に推され就任する
各国の所有するグラップラー集団同士の連携、合同演習など
紅華会戦争のような世界規模の有事に備えてあらゆる新法、条約を制定した

男爵ぴーの 「上様はまだ閻王殿を禁衛隊のメンバーに据えたいので?」
溥儀     「ふ・・・まさかな。閻王の拳は弱き者みんなを守る拳だ
        朕が個人で占有して良いものではない。のう?シンエモンよ」

言いながら墓を磨き、供え物と線香をあげる溥儀。全員で静かに目を閉じ墓前に手を合わせる

ハッタリ   「それにしても忙しない方ですな閻王殿も・・・・
        今はいったい何処で何をしているのやら」
溥儀     「ふふ・・・あやつのやる事といったら一つしかるまいて
        今日もこの蒼天の空のもと・・・その蛮勇をふるっておるのだろう」

眩しそうに空を見上げる6人。空はどこまでも蒼く、大きく広く、人々の営みを優しく包む
この平和がいつまでも続けばいい、と
溥儀は強く思った













※(BGM 北斗の拳2 「SILENT SURVIVOR」


声の出演

一体さん    神谷明
シンエモン   野田圭一
溥儀      千葉繁

のび犬     石田彰
メガドラ    玄田哲章
だま      山口勝平
北城トオル   山崎潤

男爵ぴーの   キートン山田
忍者ハッタリ  緑川光
レオンハルト  大塚明夫
あぶどぅる   石野竜三    

光輪     野沢那智
ダラちゃん   銀河万丈
イグラちゃん  銀河万丈(二役)


ミスター]   内海賢二
Dr国枝     京本政樹

Sパー伊藤    エスパー伊藤
とりにてぃ   トリニティ
トモゾウ    青野武
ヒムラー剣心  速水奨

純一      矢尾一樹
(ブラックソードゼロ)

サザゑさん   郷里大輔
ルェイ     塩沢兼人(故人)
タシロ     田代まさし(特別出演)

(順不同)








脚本          はんぺら

キャラクターデザイン  はんぺら

効果・演出       はんぺら


監督          はんぺら



企画・製作    野望のからくり屋敷



















一体さんと一緒に旅をしてきた全ての朋友達へ



例えどんなにつらい壁にぶち当たって打ちのめされようとも



あきらめるな くじけるな



何度でも立ち上がれ



振り返ればそこにはきっと



手を差し伸べてくれる仲間達がいるはずだから







キミは1人じゃない








2003/10/25  野望のからくり屋敷 はんぺら


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