たたたたたたたたたたたたたた・・・・・・・
可那は走っていた。狭い木の間を通り抜け、藪を突っ切り、その顔に擦り傷を作りながら全力で走っていた
後ろからは数人の男達がニタニタと醜悪な笑みを浮かべながら追ってくる

可那    「はぁ・・・・はぁ・・・・ダメ・・・・振り切れない・・・」

一瞬泣きそうになるも、ぐっとそれを呑み込んで再び走り出す。しかし無情
長い獣道を走って走ってたどり着いた先は小高い崖であった。右にも左にも行き場はない
崖といっても高さはさほどでもないので飛び降りても死にはしないだろうが・・・しかし怪我は免れない

悪党1   「へっへっへ。鬼ごっこはここまでだな嬢ちゃん」
悪党2   「さあ観念してこっちへきな!」

じり・・・とにじり寄る男達にあとずさる可那。その時、崖下の街道を歩いている男の姿が見えた
長身でガッシリした体格。背中には身の丈ほどの太刀を背負っている。瞬間、可那は男に向かって叫んでいた

可那    「そこの人!受け止めてー!!!」

男が上を見上げたのと可那が跳んだのは同時であった
どさっ!
可那を力強く受け止めた男はさも驚いた表情で目をパチクリ

男      「珍しいこともあるもんだ。空から女の子が降ってきた」

そう言ってへらっと笑った男。よく見れば透き通るような蒼い瞳と美しい金髪のナイスガイではないか
その男前ぶりに魅入った可那は思わずぽっと頬を染めた
しかし気分が弛緩したのも一瞬の事。背後から聞こえた声にすぐにまた戦慄が走る

悪党1   「おっとそこまでだ・・・おいそこのキサマ!
       その嬢ちゃんをこっちに渡してもらおうか」

彼女を追ってきた悪党達だ。持っていたロープを木から垂らして崖を降りてきたらしい
4人の荒くれ者がザザッと金髪の男を取り囲む。ぎゅっとしがみつく可那

男      「俺ってヤツぁよほどトラブルに巻き込まれる性分らしいな
        やれやれ・・・アンタ名前は?」
可那     「え?・・・・か、可那といいます」
男      「ん、いい名前だ。可那・・・ちょっと下がってな」

背負った太刀をズラリと抜き放つ金髪の男。しかしヘラヘラとにやけながら構えたその姿に迫力はまるで感じられない
男達も男に何の剣気も感じなかったらしく、「ナメるな若造!」とばかりに一斉に襲いかかった
だが次の刹那!

シュパァアアアアアアアン!!!
男の雰囲気が一変。ギラリと眼が光ったかと思うと目にも留まらぬ速さで剣を薙いだ。まさに烈風
ごぉっ!と風が通り過ぎた直後。男達の刀がすべて真っ二つにヘシ折られていた

悪党1    「うおっ・・・!な、なんだ今の・・・一体何が!」
悪党2    「コイツ・・・まさかグラップラーか!?」
男      「そのまさか。アンタらじゃ何人集まったって俺にゃ勝てねえよ」

その冷たい視線にゾッと血の気の引く悪党達。ほうほうの体で尻尾を巻いて逃げ出した
可那も無意識のうちに2、3歩あとずさる。さっきまでの雰囲気とは打って変わって肌で感じる威圧感である

悪党1    「テメエ覚えてろ!俺等の親分もグラップラーだ!
        すぐに親分連れて戻ってくるからな!逃げんじゃねえぞ!」
男      「やめときな。俺は凄まじく強えからソイツじゃかなわねえよ」

悪党どもが逃げ去ったあと刀をゆっくり納める金髪男。また雰囲気がガラリと変わる
へらっと笑いながら可那を振り向いたその表情にさっきの迫力はまるで見てとれなかった
とてててて・・・・彼に近づいてペコリと頭を下げる可那

可那     「ありがとうございました!お若いのに強いんですね。それであの、
        お願いがあるんですけど・・・私達の村に来てもらえませんか?
        さっきの連中、村にちょくちょく来る野盗なんですけど・・・
        村の用心棒をお願いできないでしょうか?
        もちろん報酬は村中からかき集めたお金を!」
男      「用心棒か。タハハハハハハ・・・・それ俺の天職よ
        行く先々でそれで食ってきたからなぁ。でも・・・金は要らないよ」

可那     「え?お金は要らないって・・・・?」





可那     『は!まさか私が欲しいとか言うんじゃ・・・
        でもこの人ならいいかも(ぽっ』

1人妄想に顔を赤らめた可那だったが金髪男はとびっきりの笑顔でこう答えた


シンエモン 「三食たらふく食わせてくれ。それで守ってやるよ
        おっと・・・まだ名前を言ってなかったな。シンエモン
        
シンエモンって呼んでくれ」

溥儀禁衛隊筆頭シンエモン。後に軍神と呼ばれた男の若き日の姿であった




一体さん外伝シリーズ其の一
シンエモン剣風帖





可那の父  「本当に報酬は要らないのですか?村にも蓄えがないワケでは・・・」
シンエモン  「はい!腹一杯食えれば!ただその・・・・俺、大飯食らいなんで」
可那の父  「はっはっは面白い御仁だ。大丈夫ですよ、今年は大変な豊作でね
        三食お腹一杯ご馳走して差し上げます。用心棒の件頼みますぞ」

旅先で助けた少女可那の案内で彼女の村を訪れたシンエモン
庄屋の娘であった可那は父に事のいきさつを告げ、ほどなく三食での用心棒の契約を取り付けた
行く先々で食いぶちを稼ぐために用心棒稼業。この時代、フリーのグラップラーにとってはごく当たり前の生活手段である




シンエモン 「可那、村の地理を見ておきたい。悪いが案内してくれるか?」
可那     「あ、はい。丁度これからみんなの所を回るつもりだったので」
シンエモン 「みんな?回る?」

翌日。シンエモンは可那に村の案内を頼んだ。野盗から村全体を守るというのだから最低限の地理は叩き込んでおきたい
彼女は利発だった。村の要害を案内しつつ、敵の侵入まで想定して事細やかに地理を解説してくれる
聞けば女だてらに村の自警団のリーダーを務めているとの事。才女才艶とはまさにこのことであろう

可那     「あの丘からこちらの畑までは見ての通りなんの遮蔽物もありません
        南側からの侵入に対してはすぐに気付くはずです
        気をつけないといけないのはやはり北側の雑木林ですね。それと・・・
        あっ、ちょっと待ってください。あの家に用事があるので」

ぱたぱたと小さな家に飛び込んだ可那は部屋を覗き込むと大きな声で叫んだ

可那     「周おばーちゃーん?きたよー!」
周婆さん  「おぉ可那様・・・いつもいつも申し訳ありませんですじゃ」
可那     「もう、気にしない気にしない。水汲みまだ終わってないわよね?」

水桶を持って裏手に回る可那。あとから家に入ってきたシンエモンが布団に横になっている老婆に声をかけた
初めてみる顔に驚いたのかゴホゴホと咳き込む老婆。しかしすぐに落ち着いて言葉を返す

周婆さん  「おやこれは初めてお目にかかる御仁じゃな。どちらさまで?」
シンエモン 「や、初めまして婆さん。村の用心棒に雇われたシンエモンってモンだ
        可那が水汲みに行ったみたいだけど・・・彼女って庄屋の娘だよな?」

周婆さん  「驚かれたようですな。可那様は正真正銘大旦那様のご息女ですじゃ
        しかし心優しい可那様はご自分の身分などまるで意に介せず、
        わしらのような年寄りの世話をあれこれと焼いてくださるのです」
シンエモン 「そりゃ・・・・大したもんだ。簡単にできることじゃないな」
周婆さん  「綺麗なべべで着飾ることもせずに、裾を上げた着物、腕まくり・・・
        白くて細い手を畑仕事で真っ黒にしてわしらを助けてくれるのですじゃ
        可那様はこの村のアイドル・・・いや女神様のような存在なのです」

そう言いながら目を潤ませ手を合わせる老婆。丁度そこへ水を汲んだ可那が戻ってきた
庄屋の娘という恵まれた生まれにありながら弱い老人達のために額に汗して働く少女
思わずぼーっと可那に見惚れるシンエモン。どんな煌びやかな着物で着飾った女も彼女の内面の美しさにはかなわないであろう

シンエモン 「なるほど女神・・・・ね。たしかにな」
可那     「はい?何か言いました?」
シンエモン 「イヤ俺も手伝うって言ったのさ。婆さん!薪割ってやるよ」
可那     「そんな!シンエモンさんがやることじゃ・・・」
シンエモン 「バ〜カ。男手があるときは遠慮なく頼れ。そのほうが可愛いぜ」

くるくるっと鉈を手に取ったシンエモンは目にも止まらぬ速さで薪を割り始める
グラップラーの運動能力は常人のそれとは比較にならない。あっというまに築かれていく薪の山

周婆さん  「ところで・・・シンエモンさんは可那様のコレですかな?」
ずきゅーん!と親指を立てながらトンでもないことを聞く周婆さん。なかなかファンキーな婆さんだ

可那     「バッ・・・な、何言ってんのよおばーちゃんってば!」
シンエモン 「いやあのっ、俺と可那は昨日会ったばかりで・・・」
周婆さん  「おやそれは・・・・このババの勘も鈍りましたかな
        今日の可那様はいつになく嬉しそうな表情をしておりましたからに」

耳まで真っ赤になって婆さんの言葉を否定する二人
シンエモンの薪を割るリズムが二人の鼓動にだんだん重なっていくような気がした





夕刻。周婆さんの家から帰るシンエモンと可那がいい感じになっていた頃、
済佳村の東側にそびえる小高い丘から数人の男達が遠眼鏡で二人を覗いていた

???   「ほぅ・・・あの金髪が昨日言ってたグラップラーか?
        なかなか腕は立ちそうだが俺の敵ではないな・・・だが・・・」
悪党A    「へいカシラ!あんな奴チョチョイっとやっつけてくだせえ!」

ごすっ!
大声で叫んだ男の顔面に裏拳がめり込んでいた。盛大に鼻血を噴出して前かがみになる可哀想な男
殴った男はさも汚そうに拳についた血をウェットティッシュで拭き取りつつこう言葉を続ける

クサカ    「俺が喋ってる途中だ!いつも言ってるだろうが
        人の話は最後まで聞けと!理解できてないのかなァ!?」
悪党A    「す、すいやせんカシラァ・・・」
クサカ    「フン・・・戦いとは情報収集と戦略がすべてよ
        しばらくヤツを遠巻きに観察しろ。仕掛けるのはそれからだ」

クサカ摩沙斗。野盗の頭目は思いのほか若く、意外にも細身の優男であった
だがニタリと口の両端を吊り上げた途端に端整なマスクが一変する。その笑顔は放送禁止寸前の醜悪さをかもし出していた




シンエモンが済佳村にやってきてから一週間が過ぎた
このあいだ野盗の襲撃は一度としてなく、用心棒としての彼はまるで用無しである
だがそこは「気は優しくて力持ち」を絵に描いたようなシンエモンのこと
なにせグラップラーは常人の数倍の身体能力を備えている。力仕事など牛馬並みにこなす
老人や子供達にも好かれるはその人柄はあっという間に村に馴染み、引っ張りだこの人気者になっていた

克      「おはよー可那様。あーまたシンエモン兄ちゃんと一緒でやんの」
烈      「バカだな克。二人はラブラブだからいつも一緒なんだよ。ね?」
菊花    「可那様うらやましいなー。あたしもカッコイイ彼氏ほしー」
可那    「あぅ・・・こらもう!アンタ達ってばどこでそんな言葉覚えてくるのよ」

村の子供達にからかわれるのも当然のこと。シンエモンと可那は四六時中一緒にいる
その仲睦まじさは今や村の名物と言ってもさしつかえないほどだ

菊花    「二人はいつ結婚するのー?」
可那    「けっ!・・・・けけけけけけ・・・・・
        あ・・・あたし達は別にそんな・・・ね?シンエモンさん」

シンエモン 「ははは。俺は可那のナイトだからいつも一緒にいるのさ」

克      「えー?でも父ちゃんも母ちゃんも二人はお似合いだって」
烈      「うちの爺ちゃんも言ってたー。多分もうすぐ祝言だって」
可那    「あぅ・・・・」

ぼー!と顔を真っ赤にして目をぐるぐる回す可那。笑いながらポンポンと肩を叩いてやるシンエモン
可那と違ってこっちは動揺を見せない。相変わらずへらへら笑って太陽のような男である

シンエモン 「ほらほら行こうぜ可那。今日は周婆さんの家回るんだろ?」




その夜。喉が渇いて目を覚ました可那は縁側でたたずむシンエモンに気付いて声をかけた
※(ちなみに現在シンエモンは可那の屋敷の離れにて居候中)

可那     「むにゃ・・・シンエモンさん・・・こんな時間にまだ起きて?」
シンエモン 「ああ敵の夜襲に備えてな。スマン、もしかして起こしたか?」
可那     「夜襲に備えてって・・・それじゃ毎晩ずっと?」
シンエモン 「ま、用心棒だからな。美味い飯も食わせてもらってるし」

たたたっと走り寄ってシンエモンに薄い毛布を羽織ってやる可那。その隣にちょこんと座る
シンエモンはふっと笑って可那を抱き寄せると、一枚の毛布に二人でくるまった

可那     「あの・・・聞いていいですか。シンエモンさんはどうして旅を?」
シンエモン 「んー?どうしてそんなことを?」
可那     「だって・・・シンエモンさんは野党をやっつけたどうするんですか
        そのままこの村に残ってくれるんですよね?」
シンエモン 「可那・・・・」
可那     「だって村のみんなもシンエモンさんのこと大好きだし!
        周おばーちゃんなんか特に孫息子みたいだって喜んで
        それにシンエモンさんならお父様もその・・・・
        
家の婿として相応しいって・・・ゴニョゴニョ

真っ赤になりながらもシンエモンの目をまっすぐに見つめて訴える可那
シンエモンはしばし目をつぶって何かを考えていたが、いつになく真剣な面持ちでゆっくり語り始めた

シンエモン 「可那・・・竜の騎士って知ってるかい?」
可那     「え?誰だって知ってますよ。有名なおとぎ話でしょ?
        人の姿に竜の戦闘力を宿す伝説の戦士・・・・・
        百年に1人この世に生まれ出でて悪を打ち倒すっていう」

シンエモン 「もし俺が・・・・その竜の騎士だって言ったら信じるか?
        俺は使命のため平和な村に長く留まることは許されない
        そう言ったら信じてくれるか?」




最初キョトンとして目をぱちぱちさせた可那だったが、やがて視線を落とすと今にも消え入りそうな声で呟いた

可那     「シンエモンさん・・・・・私のことが嫌いですか?」
シンエモン  「違う!聞いてくれ可那。俺は・・・・」
可那     「嘘をつくにしたってあんまりバカにしてます!
        私・・・私は・・・ゴメンなさい・・・部屋に戻ります」

目の端の涙をぬぐってその場を走り去る可那
追いかけようとしたシンエモンであったがその一歩を踏み出すことができなかった

シンエモン 「可那・・・・」






朝。ひどく優れない気分でシンエモンは目を覚ました
昨夜の可那の哀しそうな表情が目に焼きついて離れない。冷たい水で顔を洗い、ぶんぶんとかぶりを振った
そっと可那の部屋に足を運んでみる。しかし既に彼女はいなかった。もう村の手伝いに出たのであろう
自身もまだ彼女に会ってどんな顔をしたらいいのかワカらない。内心ホッとしつつ自嘲気味に笑うシンエモンであった

シンエモン 「竜の騎士か・・・はは・・・信じろってほうが無理だよな」




可那    「おはよう周おばーちゃん」

そのころ可那は周婆さんの家を訪れていた。流石に朝の挨拶もいつもの元気がない
普段からは考えられない可那の様子に周婆さんもオタオタと慌てふためく

周婆さん  「可那様、目の下が真っ赤ですぞ。もしや昨晩泣かれたので?」
可那    「あ・・・違うの!さっき目に砂が入ってね、それでちょっと」
周婆さん  「・・・シンエモンさんと喧嘩でもなされましたかな?」
可那    「やだ嘘!どうしてワカるの!?あ・・・」

涙の理由をズバリ言い当てられて激しく動転する可那。つーか誰が見たってバレバレなんだが
周婆さんは小さい子供をあやすような優しい口調で話を続ける

周婆さん  「ふぁっふぁっふぁ。そりゃ年の功というヤツですじゃ
        ワシも昔はモテモテでたくさんの男に言い寄られたものですで
        よいですかな可那様?若い男女にトラブルは必ずつきもの
        それを乗り越えてこその真の愛、真の絆でございます」
可那    「・・・・・」
周婆さん  「シンエモンさんは可那様ほどのお方が好きになった殿方
        一体何が原因で揉めたのかは存じませぬが・・・
        まずはシンエモンさんのことを信じてみては如何でしょうかな?」
可那    「信じる・・・シンエモンさんを・・・あっ・・・
       
ゴメンなさい周おばーちゃん!私帰るね!」

ハッと何かに気付いたように家を飛び出す可那。その後姿をニコニコと眺める周婆さんであった
ぱたぱたと手足を振ってあぜ道をひた走る。昨日のシンエモンの哀しそうな顔が鮮明に思い浮かぶ

可那    『あぁ・・・私ってばあんな一方的に怒って・・・もうバカ!
       シンエモンさんが理由もなしにあんな事言うはずないじゃない!
       竜の騎士は冗談としてもきっと何か他に理由が・・・』

だがしかし
そんな彼女の行く手を遮る人影。シンエモンが可那と離れる瞬間をずっと待っていた連中・・・

クサカ   「やあお嬢さん。今日は強い彼氏は一緒じゃないのかなァ?
       って言うか居ないからこうして堂々と現れたワケだが」
可那    「あなたは!」
クサカ   「ひっ捕らえろ。この女は人質として使える」

そう、クサカ摩沙斗率いる野盗達である
放送禁止スレスレの笑みを浮かべつつパチンと指を鳴らすクサカ。同時に数人の男が一斉に可那を羽交い絞めにした

可那    「離して!離しなさいってば!・・・ってきゃあ!
       ドコ触ってんのよエッチ!私に触っていい男の人は
       
シンエモンさんだけなんだから――ッ!」







シンエモン 「可那ッ!?」

稲妻に打たれたように跳ね起きるシンエモン。その耳は遠く離れた可那の叫びをハッキリと捉えていた
ゴオオオオオオオオオオ!!!
砂埃を巻き上げ、まるで神風の如き疾さであぜ道を駆け抜ける金髪の剣士
頭をよぎるのは自分の浅はかさに対する後悔の念と、愛くるしい表情で微笑む可那の顔

シンエモン 『甘かった!ほんの僅かでも傍を離れるべきじゃなかった
        頼む・・・・・
無事でいてくれ可那!』

ざざぁっ!とシンエモンがようやく現場に駆けつけた時、そこに可那の姿はなかった
面構えの悪いヒゲの男がニヤニヤしながらつっ立っている。おそらくはシンエモンへのメッセンジャーだろう

悪党1    「へっへっへ来たな色男。あの嬢ちゃんならここには居ねえぜ
        既にカシラが俺達のアジトに連れてっt
ごぼァ!!?

ドゴシャア!!
台詞の途中で突如凄まじい衝撃を受け、派手に血ヘドを吐く悪党
頭部を鷲掴みにされて思いっきり木の幹に顔面を叩きつけられたのだ。予測していなかっただけにひとたまりもない

シンエモン 「可那はどこだ!」
悪党1    「い・・今それを言おうとしてたんじゃないの・・・ガクッ」

ずるり、と倒れた悪党の首ねっこをガッシと掴んだシンエモン
その右手の甲が何やらまばゆい光を放ち始めていた

シンエモン 「・・・待ってろ可那。必ず助けてやる」


Bパートへ