第十一話「北斗神拳とミスターX」




凄まじい大爆発とともに獄長サザゑさんは散った
粉塵の中から現れた一体さんを人々が取り囲む

囚人1    「俺達に再び生と光がよみがえった!」
囚人2    「絶望の淵から救われたんだ!」

ワアアアアアアアアアアアアアア
一体さんを称える拍手と賛辞、生を確かめ合う男達の抱擁はいつまでも止む事がなかった
ダラちゃんとイグラちゃん達も、愛猫だまを抱き締め涙を流して喜んでいる

だま     「にゃにゃにゃーにゃにゃーにゃにゃ!
        (兄貴!あの人の・・・あの人のおかげなんだね!)」

ダラちゃん 「うむそうだ!そしてこのカサンドラに捕らわれている藩という男
        この二つの巨星が交わることを獄長は極端に怖れていた」

イグラちゃん「
ハーイチャーンバブー!
        (いったいこの時代に何が起ころうとしているのか
        俺達はこの目で確かめてみたい!)」

一体さん  「さあダラちゃん、イグラちゃん・・・潘の牢まで案内してくれ」 









???   「フン・・・鬼達の哭き声が歓喜の声に変わったか」
???   「だがまたすぐに絶望の泣き声に変わる」

ぬうッこれは?!なんという事であろうか!
平和を取り戻したかに見えたカサンドラに迫る新たな魔の手
つかの間の安らぎでさえヤツ等は許してくれないと言うのか?
数名の男達が歓喜に沸く人々の前に姿を現した!

バ――――――ン!

囚人1   「こ 紅華会親衛隊ッ!!
囚人2   「そんな・・・もう既に次の手が打たれていたのか
       サザゑ獄長を倒したところで、新しく手勢が送り込まれる・・・
       結局・・・ワシらには自由はあり得んのか・・・・」

親衛隊1  「ククク貴様が閻王か!救世主きどりも大概にせい!
        今ならばミスターX様も許してくださるぞ!」

親衛隊2  「今すぐ降伏するのだ!貴様ごときに勝ち目はない!」

一体さん  「フン・・・ぬかせクソ供が。 来るなら来な
        増援部隊なんざ湧いた端から叩き潰してやるぜ」


一体さんが数名の親衛隊と睨み合っている頃・・・・
タタタタタタタタタタタタ!
迷路のようなカサンドラ内部を疾走するダラちゃん&イグラちゃん
親衛隊の姿を確認した直後、すぐに機転を利かして行動に移っていたのでした

ダラちゃん 「せめて俺達の手で潘という男の牢を!
        俺達にはそれくらいしかしてやれぬ!!」

イグラちゃん「ハーイチャーンバブー!
        (急ごう!
の獄舎への通路は迷路だ!
        塞がれたら二度と獄舎には辿りつくことは出来ぬ!」

しかしそこはそれ、お約束
二人の行く手を阻むように現れた別働隊の親衛隊員二人!
一本通路で対峙する2対2の男達!

ダラちゃん 「どけ!俺達はなんとしても牢を開けねばならぬのだ!」
親衛隊3  「我々は断じてと閻王を会わせるなと命じられている
        ミスターX様の命令だぞ!!」

イグラちゃん「
ハーイチャーンバブー!
        (そんなことはわかっている!
        わかっているが何かが俺達をつき動かしている!)」
親衛隊4  「バカめ!カサンドラ衛士ダラちゃんイグラちゃんとあろう者が
        
・・・・ならばこうするしかないな!」

”カチッ”


ズ・・・・ゴゴオオオオオオオン!!
男が壁のスイッチに触れた瞬間!
石の天井が轟音とともに滑り落ちてきた!
この通路を完全に塞いでしまうトラップである

親衛隊4  「ふあっはは!この通路さえ塞いでしまえば
        誰もの獄舎に辿りつくことはできん!」

ダラちゃん 「くッ!!! 続けイグラッ!!」

イグラちゃん「
ハ―――――――イ!!



ドスウウウウウウウウウウウウン

ダラちゃん「うおおおおおおおおおッ!!!」
イグラちゃん




ギギギギギグゴゴゴゴゴ・・・・・ミシミシッ

ダラちゃん「ぬうあああああ〜〜〜ッッ!!」
イグラちゃん

藩の獄舎への通路を塞ぐべく降ろされた石天井
なんとそれを生身で受け止めたダラ&イグラちゃん!なんという男達か
軋み、悲鳴をあげる肉体。だが彼等は精神力だけで数十トンはあるであろう石天井を持ち上げる!

親衛隊1  「バ バケモノ供めが!」
親衛隊2  「ヒヒ・・・だがどうする?その格好では抵抗はままならぬ」

ニタニタと醜悪な笑いを浮かべて棘棍棒を取り出す親衛隊
両腕両足が使えず無防備なダラ&イグラちゃんに殴りかかる!
ドカァッ!ズバァ
殴られた箇所が無残に引き裂かれ鮮血がほとばしる!一瞬膝がガクリと沈みこむダラちゃん
イグラちゃんも胸に押し当てられた棘棍棒をグリグリとねじこまれ、激痛に苦悶する

親衛隊1  「あはは!痛いだろ!え〜あははは!」
親衛隊2  「ひゃははあ!さあ離せ!離せぇ〜ッ!」

ドボォッ!ドスッ!グシャバキィッ
幾度も幾度も殴られ、突かれる二人。しかし腕は天井をしっかりと支えたまま離さない
ただひたすらに刃を食いしばり、通路を守りつづける!

ダラちゃん 「塞いではならぬ!この通路はあの男の希望!
        そして恐怖に支配されている者達への明日の希望!」

イグラちゃん「
ハーイチャーンバブー!
        (ああ!あの男に賭けた以上、俺達もこれくらいの血は流さねばならん!)





この命懸けで通路を守る巨人を仕留めるには棍棒では力不足と判断したか、
親衛隊が長槍を取り出して構える。これで一突きされればいかな二人でも絶命は免れない!

ダラちゃん 「フ・・・ハナから覚悟は決まっている・・・さあ突け!突いてみろ!」
親衛隊1  「いい度胸だ!あの世で後悔するなよ!」
親衛隊2  「死ねええ――――い!」

今まさに槍が二人の胸板を貫こうとした、その瞬間だった!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!
轟音とともに巨大石天井が粉々に砕け散った!これはいったい!?

一体さん  「紅華会のイヌどもが・・・よくも俺の朋友をいたぶってくれたな
        死ぬ覚悟はできてるだろうな?」

間に合った一体さん達ッ!石天井は一体さんの鉄拳一発で粉砕されたのだった
まさしく”あっと言う間”に倒される親衛隊。怒れる一体さんの前に彼等はゴミクズも同然だ




一体さん  「無事か?ダラちゃんイグラちゃん
        ・・・すまぬ・・・俺のためにここまで・・・」
ダラちゃん 「閻王・・・・・俺達のことを朋友と!?」

一体さん  「フッ一度拳を交わした者同士
        
友となるに時間はいらぬさ。そうだろ?





ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
薄暗い獄舎の中、静かに瞳を閉じて座禅を組む男―――
青幇の盟主にして一体さんの朋友  光琳その人である
獄舎に近付くバタバタとした足音。一体さん達がきた?否!
ダラちゃんイグラちゃんをいたぶった連中とは別働で動いていた親衛隊だ
の喉元にサーベルを突きつけ大声で叫ぶ

親衛隊3  「お前がだな!立て!カサンドラを出るんだ!」
      「・・・遅かったようだな・・・一体はもうきている」
親衛隊4  「な・・・何ィ!?」

”ピシィッ!”
途端に獄舎の壁に亀裂が!何者かが壁をブチ抜こうとしているのだ
「閻王と
潘を再会させるわけにはいかない」
切羽詰った親衛隊は最後の手段に打って出る

親衛隊3  「うっくく!もはやここでを殺すしかないわ!」
親衛隊4  「ミスターX様の命令は絶対!誰も逆らうことはできぬ!
        
死ねいッ!!!

ブオオオオオン!
潘に向かって繰り出された凄まじい斬撃
仮にも紅華会親衛隊の太刀筋。その鋭さたるや達人の域である

――――が!
ピタッ! ピシィッ!
なんと指先だけで二刀のサーベルをいともたやすく受け止める
同時に轟音を立てて破壊される壁!

ドカァッ!ガラガラガラ・・・・・

親衛隊3  「ぐくッ!し・・・しまったぁあ!!」
親衛隊4  「間に合わなかったか!ぐぬう!
        なんて力だビクともせん!これが半年間幽閉されていた男か!」

一体さん  ・・・

      「一体か・・・久しぶりだな」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ついに潘との再会を果たした一体さん
潘が
掴んでいた刀身からパッと指を離す。勢い余ってバランスを崩す親衛隊

親衛隊3  「ぐくっ い、今だ!今度こそ潘を殺すのだ!!」
親衛隊4  「動くなよ閻王〜!貴様と潘は会うことなく終るのだ!」

一体さん  「・・・やってみるがいい。お前達にも潘という男がわかる」

親衛隊3  「殺らねば俺達が殺されるんだ!キエ――――イッ!!

渾身の力をこめてサーベルを振り下ろす二人。――――だが!
シュバァアアッ!
が「す・・・」と掌を広げてゆっくり腕を上げる
直後、親衛隊の背後の壁に亀裂が走った!
その拳のスピード故、衝撃波は背中を突き抜けて壁に到達する

      「北斗有情拳!せめて痛みを知らず安らかに逝くがいい」
親衛隊3  「な 何だ!?別にちっとも・・・・うああ!
        あ 足が!勝手に曲がっていくぅ〜!!」

親衛隊4  「なんだお前!そんなになるまで気付かなかったのか!
        痛みはないのかよ!って、ぎゃあ!俺の腕もぉ〜!?」

不自然な方向に折れ曲がっていく親衛隊の身体。バキボキと骨を砕けるイヤな音が響きわたる
しかし奇妙なことに二人に苦悶の表情は見られない。むしろ恍惚としている

一体さん  「秘孔牽正への北斗神拳 有情破顔拳
        潘の拳にかかった者は死ぬ間際天国を感じる」
シンエモン 「北斗神拳!? ではあの潘という御仁は!?」
一体さん  「あぁ、俺と同門・・・・・・
兄弟子だった男だ

ボバァン!ビシャビシャァッ!
血の詰まった風船のように爆発四散した親衛隊
あらためて北斗神拳の威力を目の当たりにするシンエモンであった
ゆっくりと立ちあがり一体さんと向き合う潘

のび犬   「潘親分!ご無事でなによりです!」
メガドラ   「まさか生きて再びお会いできるなんて・・・ううっ・・・」

一体さん  「
・・・痩せたな 潘
潘      「フ・・・・・だがまだ生きている

シンエモン 『すごい・・・これが潘光琳という男 そして北斗神拳・・・・
        紅華会が二人の再会を恐れていた理由がわかったでござる』




3年ぶりの再会を喜び合う潘と一体さん。半年ぶりの抱擁に涙を流すのび犬、メガドラ
ほどなくして”鬼の哭く街”カサンドラの発祥について淡々と話し始める潘

潘      「あの男・・・ミスターXはおのれの力をより強大にするため
        あらゆる拳法家、武道家を集め、その極意を奪おうとした―――」


ある拳法の伝承者は妻と子供を人質に極意書を奪われ、しかも別々の牢に投獄された
閉じ込められた家族は互いの生死を確認するため毎日夫の名を、妻の名、子供の名を叫び続けた
そしてある日 夫の呼ぶ声に妻が応えなくなった――――――
男は妻と子の死を知り、自分も絶望に打ちひしがれて死んでいった・・・・・


潘      「そんなことを何百人と繰り返してきたのだ
        やがてその叫び声が鬼の哭く街カサンドラの伝説を生むことになった
        ミスターXの前に人はなく、ミスターXの後にも人はない
        ”人間はおのれ一人!”それが紅華会主首領ミスターXの狂気の野望」

一体さん  「そしてミスターXの正体はオリパ!

メガドラ   「なッ・・・!」
のび犬   「なんだって!?」

驚愕の叫び声をあげるメガドラ&のび犬
オリパとは誰?知っている人物?事情を知らないシンエモンが尋ねてみる

のび犬   「い いや・・俺も会ったことはないが潘親分から話は聞いている・・・
        親分と一体さんの兄弟子にあたる人物・・・
        つまり
北斗神拳伝承者候補だった男・・・!」

シンエモン 「バカな・・・紅華会首領が一体さんの兄弟子だと言うのか・・・!」

潘      「・・・・知っていたか一体・・・
        たくましくなったな 随分と多くの血を流してきたのだろう」

一体さん  「俺にはまだ鬼の哭き声が・・・聞こえる・・・」
潘      「その哭き声を止めることの出来る人間はこの世に唯1人

        ・・・・お前だ」


TO BE CONTINUED・・・


次回予告!

ついに潘を救出した一体さん一行
蜂起する
青幇達!いよいよ紅華会への逆襲が始まる
目指すはエジプトカイロ!史上最大の決戦が静かに幕を開ける

次回!一体さん第12話!
「エジプト浸入」

ファイナルフュージョン承認!


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