ジョニーザダイナマイトの内部へ侵入した一体さん一行
元紅華会グラップラー・北城の案内により、首領室までの最短ルートを突き進む
艦内に配備されているグラップラー達はごく少数であったが流石に近衛兵。その戦闘力は外の連中とは桁違いであった
ドバシュ!ズシャドシュッ!どぱぁ!
先頭で奮迅するのはのび犬だ。返り血を浴びて紅く染まったその姿はまさに悪鬼羅刹のよう
どうも艦内に突入してから様子が変わったような・・・否。正確には近衛兵の中に異形の戦士達を見つけてからである

のび犬    『手から生えた刃!獣のように鋭く伸びた爪!高質化した皮膚!
         目が3つある奴!腕が6本ある奴!間違いないこいつ等は・・・』

北城トオル 「気をつけて!Dr国枝ラボのバイオグラップラー達です!
         改造手術により常人を超越した戦闘力を有しています!」

異形の兵士 「ググッ・・・・ギギッッ!」
シンエモン  「何だこやつ等?・・・苦しんでいるでござるか!?」
異形の兵士 「ロシテ・・・ク・・レ・・・コロシテクレェ!!」
メガドラ    「脳まで改造されてるのかッ!むごい事をしやがる・・・
         強制コントロールで己の意思と関係なく闘わせるとは!」

異形の兵士 「イタ・・・イ・・・アタマガイタイ・・・コロシテクレェ!
         イタイヨォ・・・・・ヒトヲコロスノモイタイヨォ!ギギィ!」
一体さん   「南無・・・・許せ!」

ゴシャァッ!
一体さんの鉄拳がバイオ兵士の顎を木っ端微塵に吹き飛ばす
その手には数珠が握り締められていた。彼等をこの苦痛から解放するには倒してやるしかないのだ
そんな中、のび犬の頭の中にある情景が浮かんできた。そうあれは子供の頃の・・・
出来れば忘れてしまいたい記憶 しかし忘れることはかなわない記憶








ドクン








ドクン


ドクンッ
















ドシュッ!!
バイオ兵士の爪ががのび犬の腕を貫いた。ドクドクと溢れ出る鮮血
しかしのび犬は静かな瞳で相手を見据えて静かにこう呟く

のび犬    「お前達は人間だ・・・・人間だ」
異形の戦士
 「ウ・・・・ウオオオオオオオオオオ!!!」
のび犬    
「うおおおおおおおああああ
         
ああああああああああ!!」

変身!エクシードのび犬!!
そしてそれと同時にのび犬の周囲の空間がプラズマ現象を起こす!これは一体!?
バチバチッ ババババババババ!!

メガドラ    「電気!?のび犬の身体から電気が発せられている!」
のび犬    「うおおおおおおおおおおおお
         
おおおおおおおおおッッ!!」



普通の人でも筋肉や神経はすごく弱いが電気をつくっている

もし!その筋肉細胞を乾電池をつなぐようにひとつひとつ直列状につなぎあわせたとしたら!

ごく弱い電気は何十万倍、何百万倍の細胞の数の電力となるはずだ!

電気ウナギがそうやって発電するようにのび犬の筋肉もそれができるのだ!

ましてやのび犬の筋肉細胞はひとつひとつものすごいパワーをもっている

高圧電流60000ボルト!!これがッ!
のび犬・ブレイク・ダーク・サンダーフェノメノンだッッ!!
ドッグオオオオオオオオオオン!!!
のび犬の周囲に密集していたバイオ兵士達が一瞬にして黒コゲになって絶命する!恐るべき威力!

のび犬    「紅華会!お前等の”におい”を止めてやる!」






第16話「人か化物か」






バチバチッ!パチン!
眩い閃光が収まり、バイオ兵士達の屍が累々と築かれた
のび犬の足元に倒れた男は、最後に微笑みながらこう呟くのだった

異形の兵士  「ギギギ・・・・アリ・・・・ガ・・・トウ
          コレデヤット・・・・シ・・・ネ・・・ル」

のび犬     「・・・安らかに眠れ。もうお前は闘わなくていいんだ」

シャッ
のび犬は彼を救ったのだ。 ―倒すことによって
なんという皮肉な運命
救うために倒さねばならないとは
許せないのはそれを生み出す紅華会!

その時だった。通路の奥からカツカツと近づいてくる人影が
白衣を着た学者風のその男を見た瞬間、のび犬の全身の毛が逆立った
例え親の顔を忘れてもコイツの顔だけは忘れない!
コイツは!コイツだけはッッ!!

のび犬    「国枝ァああああああッ!!

Dr国枝    「クックック・・・今の戦いモニターで見させてもらってたよ
         四肢から伸びるブレードと背面触手、そして放電能力・・・
         久しぶりだ
被検体B54号
         お前がラボを脱走した7年前以来の再会だな」

シンエモン  「ッ! そうか・・・のび犬殿の肉体の秘密は・・・」

メガドラ    「そう。青幇の中でも知っているのは俺だけ・・・
         のび犬は紅華会バイオグラップラーの被検体だったんだ」

一体さん   「・・・・・」

のび犬    「お前だけは許せねえ!俺達はお前のモルモットじゃない
         それを証明するために俺はここへ戻ってきた
         死んでいった仲間達のため・・・お前をこの手で葬る!」
Dr国枝    「ううむ・・・何故兵士達の意識は苦痛を感じ命令を拒む?
         まぁ脳の弄り方がまだ足りんという事か・・・イヤ・・・
         最初から全てこそぎ出して1から作ってやるべきだったか
         ただのタンパク質の塊などでなく・・・な」

のび犬    
「キ・・・・サマアアアッッ!!」
Dr国枝    「ふん。なんだその剥き出しの感情は
                               出   来   そ   こ   な   い
         このミスクリエイションめ」

素早く飛び上がったのび犬、電光石火の斬撃を国枝の首に叩き込む!
国枝の首は胴との永遠の別れを・・・・イヤこれは!?
すぅ―――っ フッ
ゆらりと揺らいで蜃気楼のように消えるその身体
ホ ロ グ ラ フ ィ
立体映像である

のび犬    「ちッ!」
Dr国枝    「フフフ・・・焦るなB54号
         お前達に相応しい対戦相手は用意してある」

ガコォン!
通路脇の隔壁がゆっくり開いていく
中から現れたのはグラップラーには見えない細身の男だった

Sパー伊藤 「ようこそ来訪者」

およそグラップラーには見えない痩身の男
しかし一体さん達歴戦の戦士は男の発するただならぬ気配を感じ取っていた

北城トオル 「Sパー伊藤!?こ、紅華会四天王ッ!
一体さん   「四天王?知っているのか北城」
北城トオル 「つ・・・通称EX級グラップラー。S級の枠に収まりきらない
        戦闘力を持つ紅華会最強のグラップラー達です!
        私など遠くから姿を見た事が数回あるだけで・・・・・」
のび犬   「ふん面白い・・・その力見せてもらおうじゃねえか
        俺の名はのび犬!
義侠の雷鳴・野比のび犬だ!

まずは先制攻撃を仕掛けて様子を見る!のび犬の髪の毛がザワザワと逆立つ
のび犬・シューティング・ビースス・スティンガー!
針状に高質化した髪の毛が高速で敵を襲う。ゲゲゲの鬼太郎のような技である
無数の針は確実にSパー伊藤の急所を捉えて・・・・
何ィ!?

サァ・・・・・
Sパー伊藤が静かに手をかざすと、触れてもいない針が一瞬で砂のように崩れ落ちた
一体何をした?氣功術?答えは否!

Sパー伊藤 「無駄だ・・・何者も私を傷つけることはできん」
Dr国枝   「くっくっく。驚いたかね?この伊藤は
        
物質の分子を振動させることができるエスパーなのだ!
        機械だろうが!石コロだろうがッ!」
Sパー伊藤 「物質はすべて塵に帰る。青幇・・・お前達もだ
        いくぞ・・・
分子空動波!たりくぅ〜また!」

ぴしぃっ!
説明しよう!Sパー伊藤は「たりく・また」の掛け声と同時に
身体の一部で120度を作る事によりエスパー技・分子空動波を発動するのだ!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
伊藤の腕から放たれた見えない攻撃。直線上の物体の分子を振動・一瞬にして融解させる恐るべき技である
のび犬には相手が何をしたのかわからない。しかし敵の視線と薙いだ腕の角度から攻撃を大げさに回避
グラップラーの直感が「避けろ」と彼を突き動かしたのだ
ゴボゴボゴボゴボゴボォッ!!!
頑丈な隔壁がまるでシチューのように沸騰して蒸発した。かすりでもしたら命はない威力だ

のび犬   「なんて攻撃!四天王の名は伊達じゃねえか
        だがな・・・・そうやっていつまでも
        人見下したトコにいれると思うなよ!
        
ヒーローは俺だぜ!」
Sパー伊藤 「ヒーロー?フッ・・・ふざけたことを
        自分と私の戦闘力の差がわからんワケでもあるまい?」
のび犬   「・・・アンタは俺より高いとこ飛ぶグラップラーだからよ・・・
        その背中に乗せてもらって
俺も飛ぶ」
Sパー伊藤 「せいぜい振り落とされないように気をつけろザンギリ頭
        
分子地動波ッ!つーつーれろれろ!」

ぴしぃっ!
説明しよう!Sパー伊藤が「つーつーれろれろ」の掛け声と同時に
身体の一部で180度を作ることによりエスパー技「分子地動波」を発動するのだ!

ゴボゴボゴボゴボゴボォッ!!
通路の床が伊藤の足元から融解。まるで生き物のようにのび犬に向かって突き進む!
のび犬は通路の端に向かって横っ飛び。しかしその行動は既に伊藤の手の平の上であった
グボンッ!!

のび犬   「何ィッ!?これは!」

壁に手をついて素早く伊藤に飛び掛ろうとしたのび犬。予期せぬ感触に驚く
なんと左腕が肘まで壁に埋まってしまっているでないか。壁は既にドロドロに溶かされてていたのだ!
慌てて引き抜こうとするが急速に固まった壁からは簡単に腕は抜けない!
背後からゆっくりと近づいてくる伊藤に対し、のび犬は振り向きざまに最大の大技を放つ

のび犬   「うおおおおおおおおおおッ
      ブレイク・ダーク・サンダーッ!!!」

バババババババババババババババババ!!
60000ボルトの放電!!この攻撃なら伊藤にもダメージを与えられるはず!
だがッ!伊藤は何食わぬ顔で歩を進めてくる!電撃が効かない?
いや違う!
のび犬の電撃は伊藤に届いていないのだ!何故ならッ!

シンエモン 「ど、どうしてヤツには電撃が届かないでござる!?」
一体さん  「なるほどな。動きを封じ込めるためだけの壁縛りじゃなかったか」
Dr国枝   「くっくっく・・・流石は閻王。気付いたかね・・・そう
        今のB54号は伊藤に電撃を浴びせることはできん。何故なら
        
あの状態での電撃は空中に放電される前に
        
すべて鋼鉄製の壁に流れてしまうからだッ!」

ドッギャアアア―――ン!!
巧妙な戦術により完成した伊藤ののび犬殺し!
高い戦闘能力に頼るのみならず、策をもって完全なる勝利を期す。これがEX級グラップラーの戦いだ
目の前まで近づいた伊藤がのび犬に対し口を開く

Sパー伊藤 「さぁどうしたのび犬・・・そこまでか?
        どうしたよヒーロー・・・?
        ヒーローなんだろう・・・・?
        
・・・飛ぶんだろうがァッ!!」
のび犬   「・・・あんた・・・」

Sパー伊藤 「のび犬よ・・・ある種の事柄は死ぬ事よりも恐ろしい
        
私もお前も同じだ・・・”化物”だ!
        お前のその因果断ち切ってやろう・・・同類の私の手でな」

すっ・・・と腕をかざす伊藤。まさに絶体絶命の状況
しかしのび犬は彼の瞳を正面から見据えてこう答えるのだった

のび犬   「あんた・・・あんたも辛いのかい」
Sパー伊藤 「ッッ!!」

ドシュッ!!!
飛び散る鮮血。伊藤の眼前が真紅に染まる
見るがいい!これが義侠の雷鳴!野比のび犬の喧嘩だぜッ!!

メガドラ   「のび犬!」
だま     
「にゃー(のび犬しゃーん)!」
Sパー伊藤 
「ぬううッ!なんと!
        
自ら腕を斬り落とすとは!」

のび犬   「ブレイク・ダーク・サンダー!」

バババババババババババババババババ!!!
60000ボルトの電撃!防御障壁を張ってこれを防ぐ伊藤だがダメージは防ぎきれない!
意識が飛びそうになるも、目をむいて歯を食いしばりながらこれに耐える伊藤。EX級グラップラーの意地である
スパァ―――ン!!
伊藤の四肢をのび犬の指拳が貫いた。野比流斬撃空手『紐切り』!

勝負ありッ!

Sパー伊藤 「くかッ・・・!
のび犬    「人間だよ・・・あんたも・・・俺もな
       
  俺は国枝を、紅華会を倒してそれを証明してみせる」

Sパー伊藤 「ふふふ・・・私の完敗だ・・・
ヒーロー・・・」

ドシャッ!!
意識を失って崩れ落ちる伊藤。その顔には安らかな笑みが浮かんでいた


TO BE CONTINUED・・・


次回予告!
紅華会四天王の一角を撃破したのび犬
先をいそぐ一行の前に第二の刺客が現れる
立ち向かうは白き義勇の戦士だま。超絶のスタンドバトルが展開される!

次回!一体さん第17話
「強くなる理由」

ぶっちぎるぜェ!


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