紅華会四天王・エスパー伊藤撃破!
右腕を犠牲にして活路を見出したのび犬。まさに気迫が呼んだ勝利であった

メガドラ   「見事だのび犬!しかしその右腕は・・・!」
のび犬   「腕一本・・・勝利のためなら惜しくはない」
Dr国枝   「・・・フッ。まさか戦闘力で遥かに上回る伊藤を倒すとはな
        B54号。どうやらお前は私の作品の中でも最高傑作らしい」

のび犬   「俺が伊藤を倒せたのは改造人間としてのスペックのせいじゃない
        
人間の心の強さだッ!
        そして伊藤もその心を忘れずに持っていた!」
Dr国枝   「くだらんな。精神論で絶対的な能力差を埋められるものか
        だが・・・それを証明したくば私を倒しに来い。待っているぞB54号」

ザザザッ・・・というノイズ。それと同時に消えていく国枝の立体映像
右腕の止血を終えたのび犬はすっくと立ち上がり通路の奥を睨みつけるのだった

のび犬   「行ってやるさ必ずな。首を洗って待っていろ!」






ダダダダダダダダダダダダ!
かくして再び通路を駆ける青幇一行。強靭な生命力を持つのび犬はもう出血もほとんど止まっていた
EX級グラップラーは残り3人。首領室に辿りつくまで彼等の妨害があることは間違いない
全力疾走しながらも、全神経を研ぎ澄ませて敵の気配を探ることを忘れない各員

一体さん  「北城。四天王残りの3人てのはどんなヤツらだ?
        戦闘スタイルや能力は知っているのか?」

北城トオル 「いえ。彼等の能力は全て謎に包まれたままです
        Sパー伊藤の能力もさっき初めて知りましたが予想以上の戦闘力!
        おそらく残りの3人も彼と同等か・・・
        それ以上の力を持っていると思っていいでしょう」
シンエモン 「流石は紅華会最強ランクグラップラー・・・
        一筋縄ではいかんでござるか
・・・むッ!?何だ!!」

通路正面にちょこんと置かれてる小さな物体・・・・いやこれは・・・
猫!?
そこには1匹の猫が行く手を遮るように寝そべっていた。何故こんな所に?
動物好きのメガドラがそばに駆け寄る。戦闘に巻き込まれでもしたら大変だ

メガドラ   「なんでこんなトコに猫がいやがる。飼われてるのか?」
北城トオル 「ッ!?ダメですメガドラ!その猫から離れてッ!」
メガドラ   「なにィッ!?」

ボッ!!!
北城の叫びと同時に身を引いたメガドラ。次の瞬間!
凄まじい風圧を感じたかと思うと、その巨体が勢いよく吹き飛ばされ壁に叩きつけられた!

メガドラ   「ぐぅッ!なんてこった・・・まさかコイツが!」
北城トオル 
「ええ・・・紅華会四天王の1人
        
”野獣継ぎし者”とりにてぃ!

バ―――――ン!!!

とりにてぃ 「にゃーにゃにゃにゃにゃー
        
(猫だからってナメんなよ)」
のび犬   「猫のグラップラー!?こいつが二人目のEX級か!」
とりにてぃ 「にゃにゃーにゃにゃーにゃにゃー!」
        (フン。猫だからどうした?見せてやろう・・・
        北極熊をも屠り去る
猛獣の連撃を!)

ドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!
目にも留まらぬ猫パンチ!ミッキーロークばりにスナップの効いた打撃の速射砲だ
のび犬は前捌きで防ぐがその威力に耐え切れず後ろに飛び退く。腕はダメージでボロボロである

のび犬   「ぐうッ・・・ブロックした腕に骨にヒビが入っただと・・・!」
シンエモン 「散打の一つ一つが大砲の破壊力!なんてパンチでござる!」

一体さん  「
”猫真拳”・・・だな?実物を見るのは7年ぶりだ
        しかしあの拳法は一子相伝だったはずだ。先代はいつ亡くなった?」

とりにてぃ 「にゃにゃにゃーにゃー」
        (流石は閻王。我が師父を知っているか・・・
        オイ、そこの猫スタンド使いに一つ聞こう
        貴様は野良か?それとも飼い主がいるのか?)
だま    「にゃにゃにゃー」
       (・・・・・飼い猫だ。だがそれと何の関係がある)

とりにてぃ 「にゃにゃにゃーにゃーにゃー」
       (そうか・・・少しお前等に俺の過去を聞かせてやろう・・・)



















捨て猫だった俺は猫真拳伝承者ポプ・ザッブに拾われ

息子のなかったザッブは俺を実の息子同然に育てた

厳しい修行の毎日ではあったが・・・

それを辛いと思った事は一度もなかった


俺はどんな厳しい修行にも耐えた!

一つの技を体得した後、あの大きな手に

あの大きなぬくもりに抱かれる喜びのために




そして俺が3つになった時のこと・・・





ザッブ   『よいかとりにてぃよ・・・これからお前に敵が襲いかかってくる
       それを倒すのだ。これはお前にとって初めての真剣勝負
       しかもお前は目隠しをしたまま闘わなくてはならぬ
       これこそ伝承者の試練!真の伝承者への道に情などないのだ』

ゴロゴロピシャーン!!!

耳を劈く雷鳴





背後に気配を感じ取った俺は振り向きざまにその男を打ち抜いた







・・・・・致命傷の手応えだった







そして俺は目隠しを取って・・・・その男の・・・







男の顔を見た・・・・・・・

















とりにてぃ 「お・・・お師さん!」

ザッブ   「見事だ・・・とりにてぃよ」

とりにてぃ 「な・・なぜ!お師さんなら身を引けたはず!」
ザッブ   「いや・・・お前の拳が鋭すぎてかわすにかわせなかったのだ
       もうお前に教えることは・・・何もない・・・」

とりにてぃ 「うっうっ・・・お師さん!何故!どうしてこんな・・・!」
ザッブ   「泣くでない・・・猫真拳は一子相伝の秘拳
       伝承者が新たな伝承者に倒されていくのも我等が宿命
       わしはお前の瞳に極星”猫十字星”を見ていたのだ
       悔いはない・・・お前と過ごした3年間・・・楽しかったぞ・・・
       我が・・・息子・・・よ・・・」

すぅ・・・・・ガクリ

とりにてぃ 「お師さ・・・・な・・・なぜッ!
     
   うわああああああああああ!」












こんなに!





こんなに悲しいのなら!





こんなに苦しいのなら!










愛など・・・・









愛などいらぬ!!!!!














ピシャ―――――ン!!!




そのあまりの重さに場が水を打ったように静まり返る一体さん一行
猫真拳第48代伝承者とりにてぃの凄絶なる過去であった

とりにてぃ 「にゃにゃーにゃにゃー」
        (こうして師父をこの手で殺め伝承者となった俺は
        その時から愛を捨てた・・・いや帝王の血が目覚めたのだ!
        帝王には愛などいらぬ!歯向かう者には死あるのみ!)
だま     「にゃにゃにゃーにゃにゃー」
        
(愛深きゆえに愛を捨てたか・・・・
        
ならば俺は愛のために闘おう)





第十七話 「強くなる理由」






とりにてぃ  「ククク・・・貴様如きにこの俺が倒せるものかよ
        
滅びるが良い!愛とともに!」
だま     「愛は滅びぬ!俺はそれを貴様に伝えよう!」

ガシィンッ!!
激しくぶつかりあう両者。サンシャインは素早く砂に変化し、とりにてぃの両腕をホールドする!
このままガラ空きのボディに攻撃を叩き込めれば勝負あり
いきなり決定的な勝機を得ただまであったが、
直後驚愕!

とりにてぃ  「この程度の力で俺を止められると・・・?ぬるいッ!」

強引に腕を引き抜かれる腕を抑えきれない!とりにてぃのパワーは完全にサンシャインを上回っているのだ
ググググ・・・・・・ずぼぉっ!
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
北極熊をも屠りさる猛獣の連撃。サンシャインを盾状に変化させてこれを防ぐだま

だま     「くっ!流石は猫真拳伝承者にして紅華会四天王・・・恐るべき筋力!
        だが見ての通り我が砂の流儀
(モード)は防御においてその真価を発揮する
        サンシャイン・シールド形態時は硬度10
(ダイヤモンド)
        いかな貴様とてこの神技とも言える守りを打ち砕くことはできまい」

とりにてぃ  「クックク・・・クハハハ・・・・
フハハハハッ!!!
        まったくもって笑わせてくれる。その程度の守りが神技だと?
        教えてやろう。猫真拳の前にはどんな物も盾にはなりえないという事を!」



ザッ・・・
深く身を沈めて右拳を握り締めるとりにてぃ。なにか凄まじい必殺技でも繰り出すのであろうか
凝縮された気が右拳に集中していく
大技を予感しただまは再びサンシャインをシールド形態にして攻撃に備えた

とりにてぃ  「知っているか?中国拳法の格言にこういうのがある
       
  ”千招を知るより一招に通ぜよ”
        ヘタな技を千覚える事よりも、たった一つでもいいから
        自信を持って撃ち出せる技を身に付けよという意味だ

        有名な形意拳の拳士、郭雲深は全ての果し合いにおいて
        基本五行拳の一つ崩拳だけで勝ちをおさめたという
        彼は入門時代、崩拳たった一つだけを3年間撃ち続けたそうだよ」
だま     「・・・何がいいたい?」
とりにてぃ  「俺がこれから繰り出すパンチがそうだって事さ
        小細工はなしだ。まっすぐいって右ストレートでぶっ飛ばす
        行くぞ・・・死にたくなければその自慢の防御で防いでみせろ」

ゴバッ!
床に大穴をあけて飛び出すとりにてぃ。爆発的な踏み込みによる破壊である
精神力を集中させて全ての気を防御に回すだま。最強の盾と最強の矛の激突!
とりにてぃが渾身の力を込めて右拳を撃ち出した時、一体さんとシンエモンが思わず叫んだ

シンエモン 「いかんッ!!避けろだま!」
だま     「え?」

とりにてぃ 「もう遅いッ!!」


ドッ!!

サンシャインシールドに拳が触れた

”防げるッ”

だまはそう思った。すぐ反撃を叩き込んでやると!

思ったまま彼の思考はそこで止まった

彼は反撃に転じることができなかった






凄まじい衝撃が彼の胸を貫いていたのだ







ドオオォ―――――ン!!

メガドラ   「バカな・・・・だまッ!!」
一体さん  「爆発的に飛び出し、ただ思いっきりブン殴る。それだけの技だが
        スピード・タイミング・破壊力ともに人知を超えている・・・!つまり」
のび犬   「防ぎようが・・・ない!」

とりにてぃ 「終わりだ飼い猫・・・帝王の前に敵はない」


繰り出されたとりにてぃの強打は真正面からだまの胸を打ち抜いた
ハートブレイクショット
心臓への強い衝撃は相手の運動神経一瞬断ち切り、動きを止める効果がある
だがとりにてぃのそれは、だまの小さな心臓を停止させてしまうのに十分すぎる破壊力を秘めていた

北城    「だまさん!」
シンエモン 「だまッ!しっかりせい!!」
一体さん  「あの角度にあのインパクト・・・ダメだ・・・だまはもう・・・」
メガドラ   「そんな馬鹿な・・・あのだまが・・・!」
のび犬   
「だまぁあああああああああッッ!!」














誰かが俺を呼んでる・・・誰だろう

ダメだ・・・身体が動かなくて何も考えられない

なんだか眠いや・・・

このまま寝ちゃったら気持ちいいだろうな

でも・・・何だろこの感じ

むかーし感じたことがあるような・・・




ああそうだ俺がまだ赤ん坊の頃・・・







寒くて・・・・






お腹が空いて・・・





不安で・・・心細くて・・・






でも・・・・



ああそうか思い出したよ・・・俺は

俺を救い出してくれた兄貴達みたいになりたくて・・・

兄貴達みたいに強くなりたくてグラップラーになったんだ



ダラちゃん 「いいかいだま。どこかで泣く人あらば、自らが盾となってその人達を救うんだ
        それがグラップラーの使命ってやつさ。そのために日々の鍛錬を怠たるなよ
        悪い心を持つヤツにはやられっぱなしじゃいけない。自分が正しいと思うなら
        たとえ傷つき、地面に這いつくばってでも相手にそのことをわからせるんだ」
イグラちゃん「ハーイチャーンバブー!」
        (お前に正義の心があれば必ず勝てる!)


ドクンッ!



だま    「そうだ・・・忘れてたよ俺が強くなりたかった理由
       泣いてる人達を救うために強くなる。そう決めたんだ
       
たとえこの身が果てようとも俺は勝利を掴む!」

今まさに命尽きかけようとしていただまの炎が再び燃え上がった
くわっと目を見開くと、素早く後ろへ飛び退いて間合いを取る
突如息を吹き返しただまに、仕留めたと確信していたとりにてぃは動揺が隠せない

シンエモン 「生きておったか!信じていたぞだま!」
一体さん  「心臓マッサージ!だまの心臓は確かに停止していた
        それをあいつは・・・サンシャインで直接心臓を動かし
        地獄の淵から舞い戻ってきたんだ!」
メガドラ   「だま!お前ってヤツは!」


とりにてぃ 「この死損ないが!今度こそ死ねいッ!」

だま     「とりにてぃ・・・アンタは確かに強え・・・
        だがな・・・俺はここで負けるワケにはいかないんだ
        
サンシャインの本当の姿を見せてやる!
        
ジャケットアーマー・パージ!!」

ボシュンッ!!
だまの叫びとともにサンシャインから噴出す白煙
同時に身体を覆っていたぶ厚い砂の鎧が剥がれ落ちていく
自爆攻撃?
否!
白煙の中から現れたのは細く、美しく、それでいて力強い人型のシルエット!

高機動戦闘形態
サンシャインビルガー!

(BGM:第2次スーパーロボット大戦α 「ACE ATTACKRE」

とりにてぃ 「何ィッ!?」
だま     「ウイング展開!テスラドライブフルブースト!
        受けてみろ!
百舌の一刺しをッ!!」

とりにてぃ 『は・・・速い・・・ッ!!』

猛スピードで突進するサンシャインビルガー。とりにてぃはそのスピードに反応出来ない!
猫真拳三十八代伝承者の動体視力ででも、である。まさに神速。獲物に襲い掛かる猛禽!
ズドッ!
目にもとまらぬスピードでの交錯!すれ違いざまにサンシャインの翼がとりにてぃの胴を薙ぐ!
背中から生えたウイングはへりが刃のように研ぎ澄まされた斬撃武器だ

とりにてぃ 「ぐッ!!!」
だま     「まだだッ!敵に食いつけビルガー!!」

ズドッ!!
急旋回したサンシャインが今度は無防備な背後から斬りかかる
痛みに反り返るとりにてぃ。そして索敵されるよりも早く第3撃・4撃を叩き込むサンシャイン
ズド ドッ! ドッ! ドドッ!!
ドドドドドドドドドドドドッッ!!!

ビクティム・ビーク!!


だま    「将星墜ちるべし!」
とりにてぃ 「お・・・俺はとりにてぃ!猫星の将!
       
退かぬ!媚びぬ!省みぬ!
       
帝王に逃走はないのだ――ッ!!」

だま    
「・・・・うおおおおおおおおおおッ!!
       潘親分直伝!北斗有情猛翔破!」

       
ドコォッ!!

とりにてぃの胸にだまの鉄拳が深々とめりこむ
致命傷を負いながらも決死の特攻をしかけたとりにてぃ
しかしその最後の攻撃も、だま渾身の一撃の前に打ち砕かれたのだった

とりにてぃ 「ゴフッ!・・・なぜ苦痛を生まぬ有情拳を・・・
       貴様・・・この俺の死でさえ情で見送るのか?」
だま    「・・・・・」
とりにてぃ 「ふふ・・俺の負けだ。猫将の・・・帝王の夢はついえたか
       最後にお前に聞こうか。 愛や情は哀しみしか生まぬ
       それなのに何故哀しみを背負おうとする?」
だま    「哀しみや苦しみだけではない
       お前もあのぬくもりを覚えているはずだ」

とりにてぃ 「ぬくもり・・・・」





とりにてぃ 『ああ・・・覚えている。覚えているぞあのぬくもり
       あの大きな手に抱かれたくてどんな辛い修行も頑張った
       思い出したよ・・・俺が強くなりたかった理由・・・・
       誰よりも強くなってお師さんに褒めてもらいたかったからだ』

ゆっくりと瞳を閉じて少年時代を回想するとりにてぃ
その顔からみるみる険が取れて子供のような表情になっていく







お師さん今逝くよ・・・




そしたらもう一度・・・




あのぬくもりを・・・・





すっ・・・・






猫真拳第三十八代伝承者とりにてぃ 死亡











一体さん  「哀しい男よ・・・誰よりも愛深きゆえに」
だま     「無事に行けましたかね・・・」
シンエモン 「うん?」
だま     
「大好きな・・・師匠のもとへ・・・」


男は何のために強くあらんとするのだろうか
大切なものを守るため? その力で全てを支配せんがため? 好きな人に認めてもらうため?
あるいはその答えを探すために、男達は日々戦い続けるのかもしれない

TO BE CONTINUED・・・


次回予告!
紅華会四天王2人目を撃破した一体さん一行
次なる相手は武器使用、不意打ちなんでもありの悪行グラップラー
男の風上にも置けない卑劣漢にメガドラ怒りの鉄拳が炸裂する!

次回!一体さん第18話
「侠客立ち」

赤い光弾がキミを撃つ


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