猫真拳伝承者とりにてぃ撃破!残る四天王はあと二人!
疾風の如く通路を駆け抜ける5人と1匹の戦士達
タタタタタタタタタタタタタタタ!
突然であった。その場の空気が重苦しく変わったのを誰もが察知する
北城トオル 「うッ!このまとわりつくような小宇宙は!」
一体さん 「・・・来たか・・・殺気丸出しとはな。よほど自信があるらしい」
シンエモン 「まるで自分の存在をアピールしているようでござるよ
さあて・・・果たしてどんなヤツが相手でござろうか。ご免!」
ドパーン!
直線の通路を抜けて少し広いホールが見えた。大扉を蹴り開けて中に突入する一行
中に立っていたのはボロボロの黒い運動服に身を包んだ長身の男であった
40〜50くらいの中年・・・いやもっと上か。頭髪はてっぺんに申し訳程度に生えてるだけの禿頭。その容貌は中年と言うよりは壮年と呼ぶのに相応しい
北城トオル 「・・・一体さん!四天王です!」
一体さん 「ハゲ・・・お前が3人目か?」
??? 「ほう。あの超能力男と拳法猫を倒してきたのか
クッククク!こいつは礼を言わなきゃならないなァ」
一体さん 「・・・礼?」
??? 「アイツらは前から気に入らなかったんでね
いつか殺してやろうと思ってたが・・・いや手間が省けた」
のび犬 「何だと!Sパー伊藤は!」
だま 「とりにてぃは!正々堂々戦った立派なグラップラーだった!
それが倒された仲間に吐く台詞か貴様ぁあッ!」
??? 「クックックック・・・可愛いねェ。一戦交えたら仲良しこよしかい?
ならお前等もすぐにアイツ等のいるところに送ってやるゼ」
ざ・・・・!
憤るのび犬とだまを征して前に一歩出たのはメガドラであった
そのサングラスの奥には怒りの炎が静かに燃えている
??? 「ほっほ!アンタが俺の相手かい?
一目見てワカったよ。アンタが一番こっち側の人間だ」
メガドラ 「外道・・・殺す前に名を聞いておこうか」
男の口の両端がニィッと吊り上がった。なんと醜悪な笑顔であろうか
トモゾウ 「トモゾウだ。かかってきなボウヤ」
ゴシャアアッ!!!
トモゾウ 「おっ?怒らねぇんだな。不意打ちの一発くらいは予想範囲かい」
グラりと上体が揺れたが、すぐに踏みとどまりキッとトモゾウを睨みつけるメガドラ
名乗るなりトモゾウの前蹴りが飛んだのだ。仁王立ちしていたメガドラはまともに顔面でこれを受けてしまった
しかしメガドラは流れる鼻血を拭うでもなく、黙ってゆっくりと両拳を上げる。無敗の喧嘩殺法を支える攻撃100%の構え!
トモゾウ 「構えたねボウヤ。一撃に賭ける気かい?」
これを受けてトモゾウも構えを取る・・・む!これはッ!
なんとトモゾウもまったく同じ構えをッ!
驚く一体さん一行。喧嘩師・メガドラと真正面から殴り合うというのか!
北城トオル 「ッ!!なんだと!?」
シンエモン 「打ち合う気かッ!?あのメガドラと正面から!」
トモゾウ 「しかし奇遇だねェ、奇しくも同じ構えだ
俺の繰り出す無呼吸連打・・・
ボウヤに必殺の一撃を出させるかどうか・・・
試してみなッッ!!!」
ゴッ!
勢いよく飛び出したトモゾウ、まるで嵐のような連打を叩き込む!
両手両足フル稼働の人間削岩機。その様はさながら拳の弾幕である
メガドラは構えた腕をガードに回そうとはしない
顔面・ボディにいいように攻撃を受けながらも、腕は下げず一発のチャンスを狙っている!
これだけのラッシュである、そう長い時間は続かないはず。息が切れた瞬間が反撃のチャンス・・・
チャンスのはず・・・これだけのラッシュ、そうそう長い時間は・・・続くはずは・・・
!?
トモゾウの攻撃はまるで勢いが衰えない!いやむしろスピードが上がっていくかのよう!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
トモゾウ 『どうだいボウヤ?これが無呼吸連打だ
反撃のタイミングもクソもない!
相手が倒れ、骸と化すまで攻撃は終わらない!』
一体さん 「やる!あのハゲヤロウ半端じゃねえ!
あのラッシュはメガドラが倒れるまでは止まらんぞ!」
トモゾウ 「ハハハハハハハハハハハ!!!」
ついに壁際まで押し込まれたメガドラ。既に顔面は鮮血で紅く染まり、腰が次第に落ちていく
誰の目から見ても完全なグロッキーに見えた・・・が
この男の喧嘩はここからが普通じゃない!
のび犬 「・・・よく見てな皆。今から滅多に見れないモンが拝めるぜ」
のび犬がそう呟いた直後のことであった
グロッキー状態に見えていたメガドラの小宇宙がいきなり膨れ上がった
メガドラ 「誇り高く戦った戦士を侮辱した罪は重い・・・
お前には然るべき報いを与えてやる!」
トモゾウ 「!!」
一際大きく振りかぶった左ストレートに合わせ、初めてメガドラが前に出る!
グバッ!!
繰り出されたストレートを顔面で受け止め、そのまま渾身の一撃を!
ドパァンッ!!!
顔面にクリーンヒットォッッ!!
この勝負初めて決まったメガドラの拳は、身長2mはあるトモゾウを反対側の壁まで吹き飛ばした!
仁王立ちして血痰を吐き捨てたメガドラの背中に、すーっと何かが浮かび上がってくる・・・
なんと!その背中にハッキリと刺青が浮かび上がってきたではないか!
【怒粧墨】
中国は唐の時代、山東省の拳法家達が好んで入れた刺青の一種
体温の上昇によって浮かび上がる特殊な墨を用いて彫ってある
そしてその効用は相手をを威圧する事以上に、体表組織の密度を高め皮膚を硬質化させる事にあったという
民明書房刊 「肉体の神秘」より
一体さん 「怒粧墨・・・ッ!」
だま 「にゃーにゃにゃーにゃにゃー!!」
(は・・・初めて見た!これが噂に聞く・・・
侠客立ちの刺青か!!)
第十八話「侠客立ち」
壁まで吹き飛ばされて床に膝をつくトモゾウ
足に力が入らないのでなんとか片腕をついてブルブルと立ち上がる
トモゾウ 『ガハァッ!・・・・なんてパンチ・・・だ』
圧倒的攻勢だったトモゾウがたった一発のパンチで動きを完全に止めてしまった
トモゾウは打たれ弱いのか?否!仮にも紅華会トップ4であるEX級グラップラー
メガドラのパンチが強すぎるのだ
硬度9のサファイアをも打ち砕く鉄拳。その破壊力は四天王にとっても脅威の対象なのである
トモゾウ 「ッッ!?」
ぐわッ!
トモゾウが視線を上げたとき、既に目の前には腕を振りかぶったメガドラの姿が!
完全に不意を疲れたその電光石火の一撃、かわせるハズなし!
ドパァン!!
顔面にクリーンヒット!
鼻血を撒き散らして壁に叩きつけられたトモゾウ、意識が飛びそうになるも胸倉を掴まれて無理矢理引き起こされる
メガドラは顔と顔をスレスレにまで近づけて低く問うのだった
メガドラ 「まだやるかい?」
トモゾウ 「・・・へッ。げ・・・元気イッパイだz”グシャッ!!”
答えた直後に顔面に深くめり込む鉄拳。壁に後頭部をぶつけて跳ね返ってきたところを再びガッシと掴まれる
メガドラはさっきとまったく変らぬ口調でもう一度問う
メガドラ 「まだやるかい?」
脳震盪を起こして意識混濁状態。その問いかけがキチンと聞こえているのかどうか
ニィ・・・と口の両端がわずかだが吊り上がった
メキィッッ!!
容赦のない四撃目が顔面に突き刺さる。ごぽり、と口から鼻から血を流して白目をむくトモゾウ。これはもはや勝負ありか
メガドラ 「まだやるかい?」
トモゾウ 「も・・・もう・・・やめ・・・」
震える唇で言葉を紡いだ・・・・その瞬間だった。その場にいた誰もが予想だにしなかった音を聞く
ダキュンダキュン!ダキュン!!
拳銃ッ!
トモゾウがズボンに隠し持っていた拳銃でメガドラの足を撃ったのだった
まったく予想していなかった奇襲。メガドラの腰がその場に崩れ落ちる
のび犬 「メガドラァッッ!!」
シンエモン 「なんでござると!?おのれ卑怯な!」
だま 「にゃにゃーにゃにゃーにゃー!」
(野郎!フザけた真似しやがって!)
トモゾウ 「本当に甘い・・・・やはりボウヤだな
喧嘩(ファイト)じゃない。殺し合いなんだよ」
これはなボウヤ。喧嘩のように甘い世界じゃないんだ
俺達のような裏の世界に生きる者達にとって勝負とは
例えば!」
メガドラ 「ッッ!」
ダンダンダン!ダキュン!!
軽い口調で喋りながら再びトリガーを引く。更に4発の弾丸が両足に撃ち込まれた
苦痛に身を曲げたみぞおちに強烈な蹴りが入る。なんという卑劣漢!
トモゾウ 「お前と俺との全てを賭けた命の奪い合い
不意打ち・騙まし討ち・武器使用・・・何でもOK」
シンエモン 「黙れッ!!そこまでだ外道!」
のび犬 「てめえそこ動くな!ブッ殺してやる!」
トモゾウ 「バカが。貴様等こそ動くんじゃねえ!
コイツの頭がザクロみてーに吹っ飛ぶぜ」
激昂して飛び出そうとしたのび犬達であったが、トモゾウは拳銃をメガドラの頭に突きつけこれを牽制
足を撃たれて起き上がれないメガドラの腕をがっしと掴んで少しだけ起こすトモゾウ。何をするつもりなのか
この闘いの一部始終を見ていた北城トオル(25)は後にその様子をこう語っている
空間を作ったんですよ。床と頭の間に。これくらいのね
空手の試し割りでときたま使われるトリックと一緒ですよ
石と鉄床の間を少しだけ開けておくんです
そうして思いっきり叩くと素人でも割れる
結局鉄で叩いてるのと同じことになるワケですから
しかし・・・
それを人間の頭と
強化オリハルコニウム製の床でやるんですからねぇ・・・
スゴイ音がしましたよ。グシャっていうかドチャっていうか
え?
殺されるかと思ったか?
・・・って、メガドラがですか?
んー・・・やっぱり貴方達はよくわかっていない
メガドラえもんという人物を
そりゃ普通ああなってしまえば勝負ありですけど。普通はね
でも
これはメガドラえもんの話でしょ
がぼっ!
グロッキー状態のメガドラ、無理矢理引っ張り起こされると口の中に銃口を突っ込まれる
もう意識がないのか、その目はただ虚空を泳ぐだけであった
ニタリと笑ってトリガーに指をかけるトモゾウ。死ぬか!?死ぬかメガドラ!
のび犬 「やめろォおおおおッッ!!」
トモゾウ 「グッドラック」
ドンドンドォン!!
鳴り響く銃声
哀れメガドラは凶弾に倒れ・・・・・・・う!?否!
メガドラが動く!トモゾウが逃げる!
そして二人の間合いが詰まる!
こう・・・頬を真横に貫通するように撃たせたんですな
撃たれる瞬間顔を背けて。いやはやムチャクチャというかなんというか
馬乗りでしたね。ええ子供の喧嘩みたいに
トモゾウも最初こそ抵抗もしましたが・・・まぁ後は酷いもんでした
試し割りのトリック― 今度は自分がやられることになるワケです
私も元・紅華会ですから喧嘩師メガドラの噂は当然耳にしてます
しかし見ると聞くでは・・・鬼気迫るっていうんですか
ガンナーの私が言うのもなんですが・・・
憧れちゃいますよねグラップラーとして
単純に「凄い」って・・・
喧嘩が強いって凄い事だなって思いましたよ
そこはほら、ガンナーやってても男の本能っていうか・・・
何発ブッ叩いたのかな・・・もう勝敗は決したか?ってところでした
妙なことをしたんですよトモゾウが
遠くを見るような目をしてね、こう言ったんです
トモゾウ 「メガドラに 殺られる寸前 俺様ちゃん
トモゾウ心の俳句」
俳句。まったく突然の。ワケわかりませんでしたね
でもその瞬間、時間にしたらほんの1、2秒 メガドラのパンチが中断してしまった
その隙―
まさに電光石火といった感じでマウントから脱出、
素早く体勢を入れ替えてメガドラの背後を取ったんです
武器の使用を十八番にしていたトモゾウですが追い詰められて焦っていたんでしょう
最後の最後、もっとも信用できる武器として選択したのは己の肉体でしたよ
私達もグラップラーですからこれだけはワカります
完全に決まった裸締めからは絶対に逃げられない
いや、正確には 逃げられる技がない と言うべきですか
・・・ここであえて「技」という表現を使ったのはですね
あれは技じゃない
メガドラの握力って握力計では測れないんですってね
パンッッ!!!
桁外れの握力にモノを言わせて
人間の腕鋏み潰しちゃうなんてねェ
そりゃもう技とは呼べないでしょ
トモゾウも何が起こったのか理解できない顔してましたよ
握撃って呼ばれてるんですって?あとで知ったんですけど
一発で決まりました
あれは頭蓋骨粉砕骨折確定ですよ。はい再起不能です
ええ立ってましたよ。両足に13発の銃弾を受けていたのは確かです
それがメガドラえもんなんですねェ・・・・・
俺達は見た
本物のグラップラーを
本物の「侠客立ち」を
TO BE CONTINUED・・・
次回予告!
紅華会四天王も3人を撃破し、残すはあと1人
しかし最後の1人は紅華会最強グラップラーの肩書きを持つ凄腕の剣士だった!
対するは一体さん一行最強の剣士シンエモン。剣豪同士の究極対決が幕を開ける
次回!一体さん第19話
「剣の心」
心の刃で敵を斬れ!