「行け一体!」
ミスターX  「なッッ・・・一体!キサマもそれをッ!?」
一体さん  「言ったはずだぜオリパ・・・・
        
5年前と違うのはテメエだけじゃないってな!」

『サバイブ』

(BGM 仮面ライダー龍騎「Revolution」)
パアアアアアアアアアアアアアッッ
一体さんの身体がまばゆい光に包まれ、その小宇宙があり得ない勢いで増幅していく!
大地を揺るがし、大気を震わせ、発せられる光は更にその輝を増す。呆気に取られていた仲間達がようやく我に帰る

シンエモン 「うおおおッ!?一体さんの闘気が!」
のび犬   「こっ、こんな小宇宙がこの世にあるのか!」
メガドラ   「まったく俺達はとんでもねえ大将を持ったもんだぜ」
だま     「これが一体さんの・・・本当の実力・・・」
北城トオル 「”閻王”のふたつ名は伊達じゃなかったという事ですか」
Dr国枝   「ろ・・・68億、70億・・・74億・・・80億!?馬鹿な!
        まだ上がり続けてるだと!?こッ・・こんな事が・・・うお!」

ボンッ!スカウターは計測値の限界を超えて爆発してしまった。Dr国枝が後ずさりしてよろめく
その場にいる全てのグラップラー達は固唾を呑んでその成り行きを見守っている。ミスターXでさえ動くことができず、ただそれを眺めるしかなかった
そしてようやく光がおさまり大気の震えが止まる・・・・・・今、熱砂の大地に金色の超戦士が降臨した。その姿、威風堂々!

変身!一体さんサバイブ!

ミスターX  「こ、この力・・・お前は一体何者なんだッ!?」
一体さん  「待たせたなオリパ。今、北斗2000年の歴史に終止符を打とう」




第21話 「悪断つ光の拳」




燃え盛る炎と黄金の闘気と纏い、サバイブ体へと変身を遂げた一体さん
ミスターXがジリ・・・と2、3歩後ずさる。最強のサバイブ体へと変身した紅華会首領
その彼が退いた。おそらく意識はしてなかっただろう。恐怖で無意識に身体が動いたのだ

一体さん  「念仏を唱えろオリパ・・・お前ならもうワカるだろう
        
俺はお前の遥か高みにいる」
ミスターX  「こ、こんな・・・・こんなバカな!何故だ!どうしてこんな事が!?
        俺は紅華会首領ミスターX!地上最強のグラップラー!!
        なのにお前はッ!
お前は一体何者なんだァアアア!!」

『シュートベント』
恐れを振り払うかのように絶叫しカードを装填。右腕を眼前にかざすミスターX
指先から超高速で発射される矢。無論ただの矢ではない。スピード、硬度とも闘気により銃弾並みと化しているシロモノだ
ズバババババババババババババババババババババ!!!
それが恐ろしい速度で連射される。その数数百万本は下らない。瞬く間に空中を埋め尽くす矢!
北斗万条刺殺襲射!!

一体さん  「無駄だ・・・龍王火炎陣!」

『シュートベント』
ライダー本人のサバイブ化と同時に契約モンスターもパワーアップしている。その名も龍王・ドラグリンザー
口腔内に灼熱の火炎を蓄えるドラグリンザー。一体さんが閻王バイザーで狙いを定める!
狙撃ッ!
シ  ュ  ー  ト  ヒ  ム

ゴカァッ!!!!!
放たれた炎は指向性の熱エネルギーとなって一条に伸びる!
直線上の矢は全て消滅し、間一髪でこれを回避したミスターXが衝撃波だけで吹っ飛ばされた
ゴクリと唾を飲み込んでただただ立ち尽くすしかないギャラリー達。”次元が違う”とはまさにこの事
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ミスターX  「うわあああああああああああああッッ!!
        死ね!死ね!!死ねえええええええええ!!」

半ば錯乱気味に突進するミスターX。我が腕よ砕けよとばかりに渾身の連打を叩き込む!北斗百烈拳!
パパパパパパパパパパパパ!!
『あ・・・当たらないッ!』
音速を超える連撃を難なく全弾さばく一体さん。そしてガッシと無造作に拳を受け止める!

メシャアッ!!

ミスターX  「ぎぃやぁああああああああああ
    ああああああああああッ!!!」
一体さん   「何だこれは・・・?この程度の速さと力で・・・・
        北斗神拳正統伝承者にかなうと思っていたのか!」

ミスターX  
「ひィ!」

ボッ!!繰り出された一体さんの正拳!ミスターXは左手でこれをガード!
ドグチャッ!!!!

ズドォ!一体さんの拳は掌をまるで紙っぺらのように貫通し、その胸を正面から打ち抜いた

一体さん  「教えてやろう。お前がどれだけ弱いのか・・・
        
そして俺がどれだけ強いのかを!」

グルリと白目をむいて鼻から口から胃液を吹き出す。がくん、と膝を折って地面に手をつくミスターX。圧倒的な戦力差ッ!
勝利を確信していたDr国枝が青ざめた顔でただただ呆けている。まるで悪い夢を見ているかのようだ

Dr国枝   「バカな!私の16年の研究成果がまるでゴミクズのようにッ?」
シンエモン 「なんという・・・今の一体さんは人の姿に見えぬ・・・
        まさに北斗神拳は闘神の拳!」

ミスターX  「こ、これでも食らえ化物がァアア!!」

『ファイナルベント』
ついに最後の切り札を使うミスターX。否、使わざるを得ないのだ。これでダメージを与えられなければ敗北確実である
カード装填と同時に天空から猛スピードで飛翔してくるマッスルウイング。ミスターX、それに向かってジャンプ!
ガッシーン!とスクランダークロスするマジンガーZのように空中でドッキング!そのままドリル回転して標的に突撃だ!
ミスターXサバイブファイナルベント 
”北斗飛翔超電磁スピン”

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
凄まじい回転が生み出す空中摩擦で全身が帯電。超高速の電光となって敵を襲う。その電圧およそ数億ボルト!
更にパルスも伴い、進行方向の物体すべてを触れることなく崩壊させていくという恐ろしい攻撃である
その速度はマッハ7にも到達し、ひとたび発動すればいかなるグラップラーとて見切るのは不可能!
この恐怖の回転が止まるのは標的が塵と化した時のみ!さしもの一体さんもこの攻撃の前には・・・・ッ!?

ミスターX  「うおお!死ねい一体――ッ!!」

ドガァッ!!!
衝撃音が鳴り響き回転は止まった。一体さんはこの驚愕の必殺技の前に敗れてしまったのか!?
否ッッ!その場に居たグラップラー達全員が我が目を疑った。北斗飛翔超電磁スピンは
一体さんの右腕一本でいともたやすく止められていたのだ!

一体さん  「どうした・・・?回るんじゃないのか」
ミスターX  「あ・・・あぁ・・・・うぁぁああ・・・」

『ストライクベント』

一体さん  「見せてやろう本当の”力”を。そして己の非力を感じながら死ね」

ドゴオオオオオオオオオオオオオ!!

ミスターX  『な・・・何が起きた・・・・?まるで何も見えなかった・・・
        ただ数億の煌きが俺の身体を貫いて・・・ズタズタに引き裂いた
        光・・・?・・・・・こ・・・・光速の・・・・・拳!?』

ミスターXを中心に周囲50mほどの範囲が一瞬にして灰塵と化す
無論拳による衝撃波が生んだ破壊であるが、それを目で確認できた者はこの場に誰一人としていないだろう
ただ一瞬の閃光の後、ズタボロにされたミスターXが吹き飛ばされただけ。それがギャラリーの見た全てである
もはや勝負はあった。最大最強の技でカスリ傷程度も負わせることのできなかったミスターXに勝機はない
うおおおおおおおおおおおおおん!
紅華会戦争、青幇の完全勝利でここに終結!・・・・・その場に居合わせた誰もがそう思った
だがその時。ゆらり・・・と最後の力を振り絞ってミスターXが立ち上がった。既に瞳に力はなく足元もおぼつかない状態だ

ミスターX  「ふっ・・・ふふふ・・・やはり強いな一体。感動的なほど
        まさに闘神・・・人間はどう足掻いても神には勝てんらしい」
一体さん  「随分と殊勝だな。だがいくら命乞いしようと
        
俺が殺すと言った以上・・・お前は殺すぞ」

ジリ・・・と一体さんが間合いを詰める。するとミスターXは懐から何か取り出した
これは
小さな瓶と・・・注射器?

ミスターX  「ぐふふ・・・グハハハハ!!もう後戻りできんよ国枝・・・
        
一体よ!俺は人間をやめるぞぉ――ッッ!!」

それを見たDr国枝が途端に顔色を変えて叫ぶ
冷静沈着、普段何にも動じないDr国枝が声を荒げてミスターXの行為を制止した、この様子たるやタダ事ではない
しかしミスターXはその忠告を無視して注射器で液体を抽出。いよいよもって国枝が絶叫する

Dr国枝   「やめるんだオリパ!それは人間に制御出来る代物じゃない!
        理性までなくしてタダの化物になってしまうぞ!」
ミスターX  「ククク・・・上等。ならば化物として生きるまで・・・・
        一体!俺は負けんぞ!二度と貴様にだけはな!!」

ズッ!
国枝の絶叫が響き渡る。ミスターXは彼の制止を聞かず、薬品を動脈注射したのだ
途端に膝から崩れ落ちるその巨体。更にガクガクと全身痙攣を引き起こし、白目を剥いて盛大に吐しゃ物を撒き散らし始めた
一体この薬品は何だというのか。ワカる事はただひとつ。猛烈な苦痛が彼の身体を襲っているのだろう、という事だけである

ミスターX  「ぐ・・・がっ!・・・・ガハァアアアアアアア!!」
Dr国枝   『もうマックシングが始まった!やはり彼の肉体でも無理だったか
        イカン。1秒でも早くここから逃げねば・・・ほんの少しでも遠くへ!』

ミスターXの苦悶を確認するや否や背を向けて走り出す国枝。まるで「この場に居てはいけない」かのように
しかし姑息に脱出しようとした彼の前に、怒れる1人の男が立ふさがった。―そう、のび犬である

のび犬   「ようやく・・・・ようやくだな国枝よ。長かった・・・・
        キサマの研究のためになんの罪もない命を散らした同胞2千
        今その仇を討たせてもらう。覚悟はできているだろうな」

冷たく光るブレードが首筋にピタリとあてがわれる。国枝は冷や汗を流したまま一歩も動けない
しかし国枝は両腕を上げながら必至にのび犬を説得する。何か様子がおかしい。この焦りようは異常だ

Dr国枝   「B54号、私を討つのはいい。それがお前の望みだろう。だがな
        ここで私が死んでしまったらおそらく・・・この地球は滅亡するぞ」
のび犬   「はん・・・この後に及んで随分と苦しい命乞いをするもんだな」
Dr国枝   「命乞いの口実・・・? そのほうがいくらかマシだがね
        残念ながら言い逃れではない。あと数分もすれば・・・
        この場は阿鼻叫喚の地獄と化す。誰1人として助からん」
シンエモン 「のび犬、少し落ち着けい。まだこの男を殺してはいかんぞ
        ・・・・・一体どういうことか聞かせてもらうぞ、国枝とやら」

ただならぬ様子にシンエモン達も国枝を取り囲みながら問う。紅華会、青幇、両軍とも戦いを止め、国枝の周りに集まり始めた
一体さんは悶えくるしむオリパを見下ろしたまま、まだ動かない。やはり面食らっているようだ

Dr国枝   「オリパが投与したモノ・・・あれは私の研究の究極の形、
        
DG
(デビルグラップラー)細胞だ」
メガドラ   「DG細胞?それが世界を滅亡させるってのはどういう事だ」
Dr国枝   「まだ未完成なのだよアレはな。制御不可能なのさ
        DG細胞は3大能力・・・
自己再生・自己増殖・自己進化を有している
        理論上、1個の単体生命で永久的に生き続けられるという・・・」
北城トオル 「そんな小難しい能書きはいりませんよ。要するに出来損ないの
        「究極のグラップラー」とやらが理性をなくして暴走する・・・と?
        どれだけのモノか知りませんが一体さんなら楽勝と思いますがね」

Dr国枝   「お前達はアレの効果を知らんからそう楽観していられるのだ!
        実験に使ったマウスがどんな事になったと思って・・・む!?」

GUOOOOOOOOOOOOOOO!!!
突如その場に凄まじい咆哮が鳴り響いた。聞いた者の臓腑をえぐるかのような恐ろしい獣声!
振り返った男達の視界に飛び込んできたのは異形と化したオリパ!
肉体は異様に膨れ上がり、四肢の間接があり得ない方向へ捻じ曲がっている。身の毛もよだつ姿である

Dr国枝   「見ろ!DG細胞の生み出す負荷に肉体が耐えられず、
        もはやヒトの形状を維持することもできなくなっている。終わりだ
        もう理性も残っていまい・・・
来るぞ閻王!気をつけろ!」

ギュバアアアアアアアアアア!!!
突然オリパの身体から何かが飛び出した。・・・・・なんと皮膚を突き破って長く伸びた肋骨だ!
一体さんはこれを回避。しかし恐怖の肋骨の矛先はすぐさま近くで戦いを見ていた戦士達に向き直す!
ズドドドドドドドッ!!!
一瞬にして数名のグラップラーが次々と貫通。あっというまにグラップラーの串刺しの完成だ
そして次の瞬間、ギャラリー達はさらにおぞましい光景を目撃する
肋骨を引き戻したオリパの身体に
犠牲者の肉体が溶け込んでいくではないか!
決して目の錯覚ではない!本当に肉体が溶かされ、ズブズブと吸収されていくのだ!

一体さん 「何だ・・・これは・・・・」
Dr国枝  「食事だ!皮膚から分泌される強力な酸で相手を溶かし
       
そのまま身体全体で捕食するのだ!
       この時オリパは捕食した個体の能力を取り込み自分のモノとする
       そして無限に生命体を取り込みながら進化していくッッ!!」

ドッギャァア―――――ン!!!


TO BE CONTINUED・・・


次回予告!
DG細胞によって人外の力を手に入れた究極生命体オリパ
増殖する悪意は留まるところを知らず、まさに世界は窮地に立たされてしまう
対抗できるのはただ1人、一体さんだけだ!地球の命運を賭けて救世主が最後の戦いに挑む

次回!一体さん第22話
「その怨念を討て」

その涙怒りに変えて。立て!一体さん!


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