オペレーター「せんこーしゃ全機沈黙!戦闘宙域に残存機動兵器ありません
        ラストエンペラー、第1戦闘配備のまま哨戒に入ります」
溥儀     「うむ、よくやった。地上のほうはどうなっておる?・・・
        !? なんだアレは・・・左舷40°拡大モニター出せ!」
オペレーター「ラジャー。拡大画面出します・・・・・うッ!こ、これは一体!?」
溥儀     「紅華会の切り札だとでも言うのか・・・なんと禍々しい化物よ」

ラストエンペラーのカメラが眼下に捉えたもの
それはグラップラーを吸収し巨大な化物に変貌を遂げたオリパの姿であった

GUUUUUOOOOOOOOOOO!!
聞いた者の臓腑をえぐるかのような恐ろしい咆哮。ビリビリと大気が震えるのがわかる
オリパの身体は既に十数人のグラップラーを取り込み、身の丈50mほどの怪獣と化していた
四肢はその形状を留めずに巨大なイソギンチャクのようにウネウネと蠢き、
身体中どこからという事もなく無数に生えた触手はどこまでも伸びて次の獲物を追い求めている

一体さん  「こ、・・・・・・コイツは・・・・ッッ!」
      「おおオリパ・・・・なんという姿に・・・」

Dr国枝   「投与から僅か10数分でこの変態。予想範疇を超えたスピードだ
        このままではあと3日でエジプトは死の大地になってしまうぞ」

北城トオル 「そんな事はさせませんよ。我々がこの場で消滅させます!
        これだけ的がデカければ・・・受けてみよサイコガンの威力を!」

のび犬   「ブレイク・ダーク・サンダー
フルパワー!!」

だま     「いくぞサンシャイン!エンド・オブ・ワールドだッ!」

ドゴォオオオオバリバリバリ!ドバババババババババ!!
3人の超戦士が同時に放った必殺奥義。それはおぞましい化物を見事真正面から撃ち貫いた
ビチャビチャと肉片飛び散り、ドス黒い血液を派手に撒き散らしてのたうつ悪しき化物。大ダメージだ!
GUUUUUOOOOOOOOO!!
ズズウウ・・・ンと倒れたオリパにグラップラー達が歓喜の声をあげる・・・・・・が!

Dr国枝   「まだ足りない!一片の肉片とて残さずこの世から消滅させろ!
        中途半端な攻撃はヤツをパワーアップさせてしまうだけだ!」
北城トオル 「なんですって?・・・・・うッッ!?」

じゅばじゅばじゅば・・・・・グキグキグキミチミチィッ!
己が目を疑う北城。粉々になって吹っ飛んだ肉片が物凄い勢いで再生を始めたのだ!
あれよあれよという間に元通り・・・否!攻撃を食らう前以上に凶悪な姿に復元するオリパ

Dr国枝   「DG細胞3大理論の一つ、自己再生・・・・そして・・・」
だま     「にゃー!き、気持ち悪いッス!今度こそ死ねっすー!
        サンシャイン!エンド・オブ・ワールドッッ!!」

だまの命令とともに再び火器乱射の奥義を放つサンシャイン。だが!
ギンギンギンギンギン!ギギギギギギギギギギィンッ!!  
なんと銃弾は全てその硬い表皮によって弾かれてしまった!さっきはたしかに通用したのに!?

Dr国枝   「同じく3大理論の一つ、自己進化
        一度食らった攻撃を細胞が記憶、再生時により強固な形態に変化する
        つまり攻撃を与えれば与えるほどアレは完璧に近づいていくのだ」
シンエモン 「つまり一撃で消滅させない限り、何度でも蘇ると!?」
Dr国枝   「そうだ。そしてこの中でそれが可能なのはおそらく閻王だけだろう
        しかし逆の言い方をすれば・・・もし閻王にそれが出来なかった場合
        
地球上の生命体はすべて死滅するという事になるがね」

ドッギャァア――――ン!!!
恐るべしDG細胞の能力!世界の命運は一体さんの攻撃力に委ねられてしまった
ふうううう・・・・・と深呼吸をした一体さんがカードを抜いて一歩踏み出す・・・しかしその時!
オリパに変化がおきた!

オリパ    「ググググ・・・・国・・・枝ァ・・・!
        素晴らしい・・・・・ぞ・・・・この・・・・力・・・・!」

メガドラ   
「しゃ、喋った!?」

Dr国枝   「わ・・・私がわかるのかオリパ?!自我を失っていない!?
        くっ・・・・くっくっくっく・・・・・クハハハハハハハハハハハ!
        素晴らしい!素晴らしいぞ!私の研究は今、ここに成った!
        
究極生命体アルティメットシイングオリパの誕生だー!!」

まさに悪魔の所業!紅華会首領・オリパの肉体と精神力はDG細胞をもねじ伏せたのか!?
狂喜する国枝は血走った目つきで青幇グラップラー達を睨みつけ、高らかに叫ぶ

Dr国枝   「さあオリパ!群がる青幇どもを片付けようじゃないか!
        閻王を倒し、キミが唯一絶対の地上最強生命体となるのだ!」
オリパ    「すべて・・・のグラップラーを吸収・・・し・・・俺が
        俺だけが唯一・・・・・最強の存在に・・・・・・・国枝ァ・・・・
        まずは・・・・・・
お前のその頭脳を俺にくれェ!!」

ぎゅばあああああああああッ!
ッッ!!?

言うが早いかオリパの触手が国枝を捕らえた。軽々持ち上げられて本体に運ばれていく
青幇グラップラー達も予想外の出来事にただただ驚くばかりである
何が起きたのかワカらなかった国枝だったが、すぐに状況を理解すると張り裂けんばかりに叫ぶ

Dr国枝   「お、オリパッ!オリパァッ!悪い冗談はよせ!
        私とお前の仲だろう?私がお前を!紅華会をここまで!
        うわあああああ!たっ・・・・・助け・・・・・・・
        
あぎゃあ!あぎゃあぎゃあああああ!!」

のび犬   「くっ、国枝ァッ!!」

バキバキリボリボリッ!バキョッ!メキメキッ・・・・・!
身の毛もよだつ断末魔とともに、紅華会のブレイン・Dr国枝はオリパに取り込まれた
己が研究のために幾千もの命を弄んできたマッドサイエンティストの最後である
のび犬は目を背けた。殺したいほど憎んでいた相手の最後・・・・しかしそれを直視することが出来なかった
その光景を見ていた全てのグラップラー達が慄然として恐怖に震える。こんなに恐ろしいモノがこの世に存在していいのだろうか
オリパは化物になっても自我を失っていなかった。だが意思のあるなしに関わらずヤツは貪り、食らい尽くす!
それが青幇だろうと!紅華会だろうと!

一体さん  「オリパ貴様は・・・ッ!」
オリパ    
「一体ィ・・・・・早くキサマを食いたいぞォ・・・・・」





第二十二話 「その怨念を討て」





のび犬    「なんという・・・この手で同胞の仇を討てなかったのは残念だが
         ある意味お前に相応しい最後だったかもしれんな・・・・国枝・・・・」

紅華会の頭脳であり、盟友でもあったDr国枝を躊躇する事なく捕食した究極生命体オリパ
理性を維持しつつも本能の赴くままに行動する様はまさにバケモノ。彼は身体と一緒に人の心まで捨ててしまったのか
一体さんがカードを抜いて歩み出る。 オリパ・・・いや、邪悪な心を持つ怪物よ―お前を消滅させる!
ざんっ!
閻王!閻王!閻王!閻王!うおおおおおおおん!
オリパの周りを取り囲んでいたグラップラー達が道をあける。見せてくれ救世主の最後の攻撃を!

シンエモン 「一体さん!」  のび犬 「一体さん!」 
メガドラ 「一体さん!」  だま 「一体さん!」 
北城トオル 「一体さん!」  ダラちゃん 「一体さん!」 
イグラちゃん 「一体さん!」  「一体!」 
男爵ぴーの 「閻王殿!」 忍者ハッタリ 「閻王殿!」
レオンハルト 「閻王殿!」 あぶどぅる 「閻王殿!」
一体さん 「アイタ・ペアペア!(気にしない気にしない)
全員さがれ!近くにいると巻き添えを食うぞ!」

オリパ    「グフハハハ!来ぉい一体ィ!俺はキサマの力も取り込み・・・
        神をも超えた究極の存在となってこの地球に君臨するのだァ!」
一体さん  「貴様はッ!その怨念で何を手に入れたァッ!」
オリパ    「狡猾さと力だ!さすれば勝つ!」
一体さん  「俺は人は殺さない!その怨念を殺す!!」

カード装填!
『ファイナルベント』
口から凄まじい光線を発射するドラグリンザー。しかしこれは攻撃ではない。命中するや金色の光がオリパを捕縛!

深く身を沈めた一体さんの足元から不思議な紋章が浮かび上がる!そしてすかさず天高くジャンプ!
動きを封じられ身動きできないオリパに向かって急降下だ!

一体さん  「うおおおおおおおおおおおおッッ!!」
オリパ    「GUUUUUOOOOOOOOO!!!」

一体さんサバイブ ファイナルベント
シャイニングドラゴンスマッシュ

バシュウウウウウウウウ!!!
インパクトの瞬間、真紅の異相空間が形成されその中を光の粒子と化した一体さんが突き抜ける!
一体さんが貫通し、その巨体に大きく空いた風穴。パキィーン!という音とともに「一」の紋章が浮かび上がった

同時に蒼い炎を噴き上げて燃えさかる醜悪なる巨体。見る間に灰になり、バラバラと崩れ落ちていく

ざわ・・・・固唾を呑んで見守っていたグラップラー達がどよめく。やったのか?これでヤツは倒れたのか?
すっくと立ち上がった一体さんが皆を振り返り、右手を力強く前に出す。
勝利のサムズアップだ!
ワアアアアアアアアアアアア!!!
熱き砂の大地に男達の歓喜の声が響き渡った。世界は救われたのだ。この小さな救世主の手によって
わっと一体さんに向かって駆け寄るグラップラー達。そして―





















そして英雄は
























口から鮮血を噴出してその場に倒れこんた


男達の歓喜の声はすぐに絶望の嘆きへと変わる


オリパ  「GUUUUUOOOOOOO!!!」

「・・・い、一体さぁあああああああああん!!!」

嘘だ

これは悪い夢だ

こんなバカな事が起こるはずがない

目の前で起きた出来事を信じられずにただただ狼狽するグラップラー達
世にも恐ろしい光景が展開されていた。全身灰になって消滅したと思われたオリパが猛スピードで再生を始めたのだ
そして蘇ったバケモノの最初の犠牲が・・・・・まさか一体さんであろうとはッ!
GUUUUUUUOOOOOOOOOO!!
見る見るうちに元通り・・・否!灰になる前以上に凶悪な姿に再生していくオリパ
うつ伏せに倒れてピクリとも動かない一体さんに無数の触手が伸びる。捕食するつもりだ

      「一体!しっかりしろ!一体ッッ!」」
だま     「だ、ダメだにゃあー!完全に意識を失ってるッス!
        もしかしたらもう・・・・し、死ん・・・」

のび犬   「バカヤロウ!あの人があの程度でくたばるもんかよ!」
メガドラ   「ぐッ!この距離ではもう間に合わん!一体さぁーん!」

取り巻きのグラップラー達は距離が遠すぎる。助けに行こうにも間に合わない。絶体絶命!
ギュバアアアアアアアアアアアアアアッッ!!
オリパの触手が一体さんに迫る!全員が目をそむけたその時、1人の男が稲妻の如き速さで飛び出していた

シンエモン  「一文字流岩斬剣!!」

ドパァッ!!!
間一髪。眼前に迫る無数の触手を斬り落としたのは溥儀禁衛隊筆頭シンエモンだった
倒れている一体さんに駆け寄り、心臓音と脈を見る・・・・・・生きている!人類の希望の灯はまだ消えていない!
一体さんを抱きかかえようとその場にしゃがみ込んだ次の瞬間
鈍い衝撃が彼を襲った
ドスドスドスッ!

シンエモン 「ぐ・・・・お・・・ッ!」

鍛え抜かれた腹筋に突き刺さるそれ。砂の中から突然飛び出したオリパの触手だった
反射的に振るった剛刀で触手は斬り落としたものの傷は深い。竜の騎士だとて深刻なダメージである
ごぼりと血を吐き出し、思わずシンエモンは手で口を塞いだ

北城トオル 「筆頭殿ッ!!」
シンエモン 「・・・・・ッ!なん・・・・のこれしき・・・・!
        一体さんは・・・
やらせないでござるッ!」

ババッ!
一体さんを小脇に抱え、シンエモンが走る。この救世主をここで失うわけにはいかない!
背後から猛スピードで迫る触手。全力で疾走しながらも何回と振り向きつつこれを斬り捨てる!
1本!バスッ!2本!ドシュツ!!3・・・・!?
足を取られて態勢を崩すシンエモン。宙に投げ出された一体さんを襲う黒い槍


”ドスッ!!!”












「シンエモンさぁあああああああああああああん!!」

一体さんをかばう為に身を投げ出したシンエモン。その凶刃は分厚い胸板をたやすく貫いた
更に地中から何本もの触手が飛び出し、身体に突き刺さる!
ドッ!ドドドドドッ!!!
シンエモンはその場を一歩も動かなかった。一体さんの盾となり仁王立ちでこれを全て受け止めたのだ

のび犬   「うわあああ!シンエモンさん!シンエモンさん!」
メガドラ   「そんな・・・・・・シンエモンさんッッッ!!!」

シンエモン 「一体さんはやらせないと・・・・
        
言っているぅぅぅッッ!!」

ドバァン!!!!!


シンエモン 「溥儀禁衛隊筆頭シンエモン・・・・これが・・・・
        この世で最後のシンエモンストラッシュでござ・・・る・・・!」

北城トオル 「筆頭殿!」 
男爵ぴーの 「筆頭殿!」 忍者ハッタリ 「筆頭殿!」
レオンハルト 「筆頭殿!」 あぶどぅる 「筆頭殿!」
溥儀 「シンエモ―――ンッ!!!!」

GUUUUUUUUOOOOOOOOOO!!!!
シンエモン渾身の一振りは真正面から邪悪なバケモノを切り裂いた。轟音立てて砂に沈む巨体
しかし早くもその断面はウゾウゾと蠢き再生を始めている。このバケモノを倒す術はないのか!?
ヨロヨロと足を引きずり一体さんの手を強く握るシンエモン。一体さんには意識がなく、なんの反応も返ってこない
ふ・・・・と笑みを浮かべ、ゆっくりと瞳を閉じると一際大きく深呼吸をした

シンエモン 「僅かな時間を稼げれば充分・・・・・
        我が究極の・・・究極の奥義・・・一体さんに捧げる

            継いでくれ一体さん!拙者の意思をッ!!
        究極!
    
深仙竜闘気疾走ディーパスドラゴニックオーラオーバードライブ

シンエモン 「フフ・・・拙者のイノチ・・・
        一体さんに全て託したでござる・・・・よ・・・」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
己の全生命エネルギーを一体さんに送り込み、その場に倒れたシンエモン
半ば魂の抜けかかった彼を力強い腕がガバッと抱き起こした
起こしたのは今まさに目覚めたばかりの一体さんであった。その胸の傷は既に塞がっている

一体さん  「シンエモン!このバカヤロウがッッ!」
シンエモン 「ふ・・・拙者としたことが・・・とんだドジを踏んだでござるな」

駆け寄ってきた仲間達が二人を取り囲む。誰も言葉が出ない。シンエモンの小宇宙は今にも消え入りそうだった
シンエモンは全員の顔をゆっくりと見渡しながら穏やかな顔で話し続ける

シンエモン 「おのおの方・・・・ヤツは確かに恐ろしいバケモノでござる・・・だが
        人間を捨て力を得たオリパ。それは所詮まやかしの強さでしかない
        ならばグラップラーの・・・否、人間の真の強さとは何でござろうか?
        一体さん、今のおぬしならその答えがワカるでござろう」
一体さん  「ああ、今ならわかる・・・俺は絶対に負けない」
シンエモン 「フフ・・・・必ず勝てるでござるよ・・・一体さんなら。皆なら
        最後に・・・拙者の剣に刻まれているこの言葉を皆に贈ろう
        
LUCK!(幸運を!)
        そしてヤツを倒すために!これを持っていけ!

        PLUCK!(勇気をッ!)

一体さん  「シンエモンッッ!」
シンエモン 「何も悔いはない・・・一体さんは拙者の希望・・・
        まるで親友と息子をいっぺんに持ったような気持ちでござる
        そして拙者はこれから一体さんの中で生きていく・・・
        
        上様・・・・まこと申し訳ありませんが・・・・
        禁衛隊筆頭シンエモン。これにて失礼・・・・つかまつ
・・・・る      





























サアアアアアアアアアアアアア・・・・・

そのとき一陣の風が吹いて砂が吹き上がった。戦士を送り出す花吹雪のように
男達が無意識のうちにとったのは「敬礼」のポーズであった。涙を流している者は1人としていない
別れの涙は彼の望まぬものだと誰もが知っていたから。ただ天に還った戦士を敬意をもって送り出そう

そこには戦士の友情があった。男同士の唄があった





GUUUUUOOOOOOOOOOOOOO!!!
地の底から響くような恐ろしい咆哮とともにオリパが蘇る
シンエモンに両断されたはずの傷は、どこが切口だったのかわからないほど完全に治癒していた

オリパ   「グァハハハ見たかこの再生能力!一体のファイナルベントも!
       ヒゲ仮面最後の一撃も!この俺には傷一つ負わせることはできん
       悪足掻きはやめて観念しろ。そして我は世界中の人間を吸収し
       完全な一個の生命体となって地球上に恒久的に君臨するのだ!
       どうだ?素晴らしいことだとは思わんか?」

しかしバケモノを見据える男達は誰一人身じろぎしない。その目に恐怖の色など微塵も見えない!
そう、今ならわかる。シンエモンが最後に残した謎かけの答え

こんな偽りの強さに!
俺達の強さが負けるものか!
  

一体さん  「ふざけんじゃねェ・・・そんな化物になんかならなくたってな
        
人はひとつになれるんだよ! なァ・・・・・

        そうだろシンエモンッ!!!」






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一体さん FINALBATTLE


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