第八話「白銀の戦士!」(前編)




エクシードのび犬!
その底知れぬ力で紅華会の刺客・みなしごバッチを一蹴!
乗客の被害も最小限で食い止め、なんとか一安心・・・・・
と、思ったのもつかの間、シンエモンが首をかしげながら呟きます

シンエモン 「変でござる・・・・さっきから気のせいか
        機体が傾いて飛行しているでござるよ?」
メガドラ   「なんだと?」
シンエモン 「やはり傾いている・・・・ま・・・まさかッ!!」

異変に気づいた4人は急いで操縦室へ!
そしてその悪い予感は的中してしまう
舌を抜かれて地の海に横たわる操縦士の姿!

一体さん  「やられた・・・・あの蜂野郎すでにパイロット達を殺していたのか」
のび犬   「自動操縦装置も破壊されている・・・このままだと墜落するぞ」

”ガバァッ” 
そこへやってきた虫の息(文字通り)のバッチ!まだ生きていたのかッ!

バッチ    「ぶわっははははははは―――ッ!!
        
お前らはミスターX様の所へは行けん!
        例えこの機の墜落から助かったとてエジプトまでは1万キロ!
        その間、選りすぐりのグラップラー達が貴様らをつけ狙うのだァ!
        辿り着けるワケがぬぁ〜〜〜い!貴様らはエジプトへは決して
        
行けんのどあああああばばばゲロゲロ〜〜〜
        
・・・べちあっ

八つ裂きにされ、息も絶え絶えの状態ながら最後の捨て台詞
最後は
「べちあっ」と叫んで死亡です

一体さん  「・・・・どうだシンエモン、不時着できるか?」
シンエモン 「うーむ、軍用機なら経験あるのでござるが・・・・
        しかし一体さん、拙者これで
3度目でござるよ
        人生で
3度も飛行機で墜落するなんて、そんな奴いるでござるか?」

黙って顔を見合わせる一体さん、のび犬、メガドラの3人
一体さん  「・・・二度とテメーとは一緒に乗らねえ










香港沖35kmに不時着―







シンエモン 「これで空路を使ってのエジプト行きは不可能となったでござるな」
のび犬   「うむ。またあのような刺客に機内で遭遇したら今度という今度は
        大人数を巻き込む大惨事となるだろう・・・陸路か海路を使うしかない」

メガドラ   「俺は海路を行くのを提案する
        適当な船をチャーターし、マレーシア半島を回って
        インド洋をつっきる・・・・・ つまり海のシルクロードを行くのだ」
のび犬   「俺もそれがいいと思う
        陸は国境が面倒だしヒマラヤや砂漠があって
        もしトラブッたら足止めをくらう危険がいっぱいだ」

シンエモン 「拙者はそんな所行ったこともないので何とも言えないでござる
        お二人に従うでござるよ」
一体さん  「同じ」

香港繁華街―
中華飯店で今後の行動をミーティング中の一体さん一行
む!? そのテーブルに向かって一人の男が近づいてきましたよ

男      「ちょっとすいません 私は日本から来た観光者なのですが
        漢字が難しくてどうもメニューがわかりません
        助けてほしいのですが」

親切な一体さん一行は快く彼の頼みを聞き入れ、相席して注文を取ってあげることに
やがて運ばれてくる料理の数々に舌鼓を打つ面々でしたが・・・・・
男が料理を眺めながら突然切り出します

男      「手間隙かけてこさえてありますねぇ ホラこのニンジンの形
        
Xの形・・・・・な〜んか見覚えありますねぇ・・・・・そうそう
      私の知り合いの名前に・・・”X”が入ってたな


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



のび犬   「
貴様!新手の刺客かッッ!!

先手必勝!言うが早いか必殺の斬撃拳を見舞うのび犬!
”ガキィン”
しかし男は手にしていたジェラルミンケースで攻撃をブロック!
そしてッ

男     「宣戦布告と認識する!!
   当方に迎撃の用意あり!!」

まばゆい閃光!




男     「瞬着ッッ!!!」



男の叫びと同時にジェラルミンケースから飛び出した鎧のような物が身体に装着されていく!

光がおさまった後、一体さん達の目の前に現れたのは全身銀色に輝く戦士の姿!

覚  悟  完  了






強化外骨格 武威王(ぶいわん)


北城トオル 「紅華会S級グラップラー北城トオルです
        貴方達にはここでリタイヤしてもらいましょう」
シンエモン 「拳銃使いでござるか・・・」
北城トオル 「”銃は剣よりも強し”
        ンッン〜〜〜、名言ですねこれは
        ねえ、そうは思いませんか?そこのお侍さん」

シンエモン 「・・・拙者に言っているでござるか?」
北城トオル 「軍人将棋ってありますよねぇ・・・
 
        戦車は兵隊より強いし、また戦車は地雷に弱い・・・・
    
    ま、戦いの原則ってヤツです
     
    
私の得物は拳銃(ハジキ)拳銃に剣では勝てませんよ
 
       見るがいいッ!!

懐から6枚の金貨を取り出した北城、それを高く放り上げる!
直後に響く銃声!
ドコォン!!!
”ビシィッ” チャリンチャリン
地面に落下したコインにはすべて真中に穴が開いていた!なんという正確な射撃!

のび犬   「な なにィ―――ッ!
        野郎一瞬にしてコインのド真中に風穴を開けちまいやがった!
        だがどういう事だ?
        穴は6つ開いたのに
銃声は一発しか聞こえないとは!!

一体さん  「ぬうっ!アレこそは世に聞く
シックス・オン・ワン!
メガドラ   「知っているのか一体さん
!?」





〜 シックス・オン・ワン 〜

アメリカ合衆国開発当時 銃はその未開の地にあって開拓者達の生命や財産を守る重要な武器だった
そうした環境の中では当然のごとく射撃の腕が切磋琢磨され
決闘の場合などコンマ一秒でも早く引き金を引けるということは命を左右することであった
その早撃ちの極限とも言うべきものがこのシックス・オン・ワンであり
名の由来はあまりの早さのために六連発リボルバーの銃声がすべて重なり一発に聞こえたことにある

曙蓬莱新聞社刊 『撃って候早くてゴメン』 より





北城トオル 「ふ・・・さあ誰です? 最初に私の銃の餌食になりたい方は?
        もっとも4人全員でかかってきても私は一向に構いませんがね
        今まで貴方達が倒してきた連中は所詮ザコ・・・・
        
紅華会S級グラップラーの実力というものを見せてあげましょう」
一体さん  「フン・・・・言ってくれるぜこの着ぐるみ野郎」

拳をバキボキと鳴らしながら一体さんが一歩前に出る!
しかしその肩をつかんで間に割り込む男! そう
前回、前々回と出番を奪われ、フラストレーション貯まりまくり

溥儀禁衛隊筆頭・シンエモン!ついに出番がやってきました


シンエモン 「スマンでござるな一体さん 彼のご指名は拙者でござる
        剣が銃に勝てぬかどうか・・・キッチリ教えてやるでござるよ」 
北城トオル 「ククク・・・物分りの良い人は好きですよ・・・
        さて、ここで暴れては店に迷惑がかかる。外に出るとしましょうか」
   


北城の言うがままに店をあとにする一行
辿りついた先は観光名所として有名なタイガーバームガーデン


シンエモン 「ほう・・・これはまたなんとも不思議な・・・
        是非とも観光で来たかったものでござるな」

北城トオル 「ふふ・・・それは残念でしたねぇ
        では始めましょうか?いつスタートしてもOKですよ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
睨み合う両者!
互いの間の空間がその凄まじい闘気によって歪んでいく!


のび犬   「なんという小宇宙・・・あの北城という男、口だけではない!」
メガドラ   「一体さん、確かにヤツの言う通り銃と剣では勝敗が見えている
        ここは我々が助太刀するべきではないか?」

一体さん  「フ・・・いらぬ世話だぜ二人とも・・・
        ・・・閻王と呼ばれたこの俺が、この世でたった一人だけ
        
”コイツだけとはもう二度と闘いたくない”と思う男がいる・・・
        それはのび犬、アンタでもなければ
        紅華会首領ミスターXでもない・・・・・・


        
溥儀禁衛隊筆頭・
シンエモンだッ!!」
          
 
 


シンエモン 「いざ尋常にッ!
        
グラップラーファイトォオオオオオオオオオ!!」

北城トオル 「レディィイイイイイッ
        
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオゥ!!」



BGM 機動武闘伝Gガンダム 「明鏡止水〜されど掌は烈火の如く」

”ギャンッ!”

ドラゴンボールのキャラのようなスピードで飛び掛かるシンエモン!
北城、バックステップして遠距離を保ちつつリボルバーを構える!

両者激突!

北城トオル 「さあ踊れ!死のダンスを!
        まずは小手調べといきましょう・・・
SHOT!!!

ドコォン!!
”ガキュンッ”
放たれた銃弾はシンエモンの背後の彫像にヒット!
初弾回避成功!

シンエモン 「なんという正確な射撃!
        銃口の角度とトリガーを引くタイミングを読んで
        なんとか回避したでござるが・・・
        あとコンマ0.01秒身を翻すのが遅かったら
        
寸分の狂いもなく眉間を撃ち抜かれていた!
        ・・・・来るッ!第2射!」



ガオォン!

初弾と同じ弾道!?・・・・イヤ!
”ジキィーン!”
刀を抜いて眼前の弾丸を叩き落したシンエモン!
初弾の同じ弾道、それをかわした位置に撃ち込まれた3発目の銃弾であった


シンエモン 「ニ連射ッ!わかっていたとは言え、恐ろしい早さ!
        第一射のコンマ秒後には第2射が放たれていた・・・
        さっきの早撃ちを見ていなかったら死んでいたでござる
        ・・・・シリンダーに弾はあと3発!」
北城トオル 「ククク・・・素晴らしい!素晴らしい反射神経!
        貴方をカテゴリーS以上のグラップラーと認識します
        ・・・では見せてあげましょう
        
紅華会S級グラップラーの射撃というモノを!


ズキュゥン!
第4射!なんの変哲もない普通の弾道!
しかしそれを回避したシンエモンに戦慄ッ!


シンエモン 「今・・・確かにトリガーを二度引いたでござる!
        しかし2発目の弾はドコに・・・
        まったく見えないでござ・・・・
ぐぅッ!!!













”パァッ”














メガドラ   「シンエモン殿ぉッ!!!」


北城の第5射はシンエモンの腹部を貫いた!
ドシャッ
力なくその場に倒れ込むシンエモン!
見る見る溢れ出す鮮血!

のび犬   「バカなッ!?なんだ今のは
        
弾が消えた!?

一体さん  「いや違う・・・

        
弾が・・・・曲がった・・・!?」


北城トオル 「フ・・・名付けて

                          楕      円      の      狩      人
    エリプスハンター!!

            フロリダでのシャークハントで身に付けた必殺ショット!
        この絶技の前に敵はありません」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
恐るべし北城トオル!恐るべしエリプスハンター!
これが紅華会S級グラップラーの実力かッ!

北城トオル 「さようなら・・・勇敢なお侍さん
        さあ、次に死にたい方はどなたですかな?
        私は3人様まとめてでも一向に構いませんが」
一体さん  「フ・・・どういう意味だそりゃ?
        
誰が誰に勝ったんだよ?
北城トオル 「!?」


ジャリ・・・


北城トオル 「・・・バケモノですか・・・
        確かに致命傷ではありませんがその出血・・・
        そして今あなたを襲っている激痛たるや想像を絶しているはず」
シンエモン 「拙者を誰だと思っている
        溥儀禁衛隊筆頭シンエモン・・・・
        
かつて金髪の悪魔と呼ばれた男よ!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

北城トオル 「フン・・・いくら虚勢を張ろうがその出血・・・
        もうさっきまでのような機敏な動きは不可能でしょう
        この一撃でラクにして差し上げます」

”ジャキッ”
シンエモンの頭部にリボルバーを向ける北城。しかしこれはどうした事か
指が震えてトリガーを引く事ができないッ!
そして気付く!満身創痍のハズのシンエモンからただならぬオーラが出ていることに!

北城トオル 「バカな・・・・これは・・・恐怖!?
        この私が恐怖に震えてトリガーを引けないだと?」
一体さん  「シンエモン・・・あの力を解放するつもりか
        のび犬、メガドラ、丹田に力込めとけ。 
”気”に押し潰されるぞ」

シンエモン 「この力を使うのは何年ぶりになるか・・・
        そう、あの時一体さんと闘った以来でござる・・・

                   ド ラ ゴ ニ ッ ク オ ー ラ
        竜闘気ッ!!!」



ゴバァッ!!!
シンエモンの全身から凄まじい闘気が噴出す!
その強大な力に大地は揺れ、樹木はざわめき、大気が震える。
そしてついに男達は”それ”を目の当たりにする!

のび犬   「おお!シンエモン殿の手の甲に!」
メガドラ   「・・・まさか本物を拝めるとはな」
北城トオル 「そ・・・そんな・・・そんなそんなバカな・・・
        
竜の紋章・・・・・ッッ!!

バ―――――ン

一体さん  「そう・・・シンエモンは人間じゃない・・・        
        
人の姿に竜の戦闘力を宿し、千年に一度この世に生まれるという
        
伝説の竜の騎士!!
 
        

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

撃たれた腹部の出血は既に止まっている。驚異的治癒能力!
その圧倒的な小宇宙の差の前に、ただただ慄然として震える北城。
す・・・・
静かに太刀を持ち替え、ゆっくりと腰を落とすシンエモン。
黄金に輝く切っ先。剣先にまで竜闘気が行き渡っているのがわかる。

一体さん  「北城つったっけか? 死んだぜ・・・お前?
北城トオル 「うッ・・・・うう・・・うううッッ
        
うわああああああああッッ!!!

ズキュ――――ン!!
シンエモンめがけて銃弾が放たれる!
恐怖に怯えつつも、その照準はピタリと眉間を捉えている・・・・が!

シンエモン 「けえええええええいッッ!!!」

ぶぅおおおおおおおおおおおおおん
剛剣一閃ッッ!!!
真っ二つになって地面に転がり落ちる銃弾。
慌てて新しい弾丸を取り出し、急いで装填する北城!

シンエモン 「ムダでござる・・・・勝負はついた
        大地を斬り、海を斬り、空を斬り・・・そして
全てを斬るのが
   
 シンエモンストラッシュ!!

・・・ああッ!?

”ブシュウッ”
最初何が起こったのか気付かなかった。
不思議そうに地面に落ちたそれを見つめる北城。 
――――自分の腕!

北城トオル 「ぎゃああああああああッッ!!!」

直後ッ!
北城の背後の地面が轟音を立てて真っ二つに裂けていく!
そのあまりのスピードゆえ、衝撃波は剣閃が走った後に発生する!

これがッ!!

シンエモンファイナルベント

シンエモン・ストラッシュだッッ!!!
               






ズゴオオオオオオオオオオオオオオ・・・・


数秒後・・・・
まるでサテライトキャノンを撃たれた跡地のように荒廃したタイガーバームガーデン。
右腕を押さえてうずくまる北城。

北城トオル 「なぜ・・・トドメを刺さないのですか・・・」
シンエモン 「剣とは刃で斬るものにあらず
        
心にて斬るもの!
        お主の技には邪念がない。命を奪う理由など無いでござるよ」

北城トオル 「ッ・・・・・!」

一体さん   「ふっ・・・役者が一枚違うようだな」


チィインン・・・・・(太刀を鞘に納める音)
圧倒的戦闘力!!
溥儀禁衛隊筆頭シンエモンその力底知れず!


TO BE CONTINUED・・・


次回予告

命を救った北城からもたらされたとてつもない情報
情報の場所に急行した一体さん一行を阻む紅華会のグラップラー!
その先に待つは一筋の光明か、はたまた絶望の闇か?
哀しき伝説に一体さんの正義の鉄拳が幕を引く!



次回!一体さん第九話!
「鬼の哭く街カサンドラ」

来週も面白カッコいいぜ!


第九話へ

戻る