―199X年



金閣寺
玉座に気だるそうに座る男は3代将軍足利溥儀。齢32を数え、その風貌にも威風が漂ってきた
数枚の書類に目を通しながら、溥儀は傍らに控えていた金髪の剣士にある話題を切り出す

シンエモン 閻王?・・・・・閻魔大王の意でござるか?」
溥儀     「そうだ。無論本名ではなく通り名だろうが・・・
        上海の巨大暴力組織をたった一人で壊滅させた凄腕らしい
        話を聞いたことはないか?」

シンエモン 「残念ながら初耳です。して、その閻王が何か?」
溥儀     「どうやらしばらく前から日本に上陸していたらしい
        ここ最近、頻繁に閻王の出現報告を受けている
        夜盗に襲撃された村を助けた、賞金首をひっ捕らえた・・・・
        そのすべてが良い報告だ」

シンエモン 「ほほう。地獄の閻魔大王は正義のグラップラーですか」
溥儀     「今のところはな。とりあえずこの件、頭に入れておくがいい
        ときに・・・奥方の具合はどうだ?たしか今6ヶ月だったか」
シンエモン 「ありがたきお気遣い。おかげさまで母子とも健康のようです
        結婚から16年でようやく授かった子ゆえに・・・
        とにかく元気に生まれてくれるのを祈るのみです」

そう言ながら、ひどく照れたようにはにかむシンエモン。16年目でようやく恵まれた子宝であった

溥儀禁衛隊筆頭シンエモン 34歳

 「グラップラー」は平たく言えば突然変異によって生まれた超人類である
そのため常人と比べ遺伝子が不安定で、なかなか受精がうまくいかないのだ
16年待ったとはいえ、無事に懐妊できたことはシンエモン夫婦にとって大変な幸運であると言えた





あくる日。シンエモンと溥儀は人里離れた山中にいた
否、いるのは二人だけではない
禁衛隊メンバー全員、そして更に軍から選りすぐられた精鋭の兵士達およそ100人余

大日本帝国陸軍の最強部隊とも言うべき編成である

目的はこの山中にそのアジトがあると判明した大規模グラップラー犯罪組織の壊滅
普通ならば禁衛隊だけ送り込めば済む相手だが、そこはそれ
一国をあずかる将軍たるもの、民衆に対するプロパガンダというものもある

『将軍様、自ら軍を率いて悪の枢軸を駆逐せり』
これほどわかりやすく、かつ民衆を元気づけるニュースは他にないわけだ
煌びやかな鎧兜に身を包んだ溥儀が先頭に立ち、颯爽と馬を走らせる

溥儀     「もうじき目的地か。敵の戦力はどうなっておる?」
ターリブ老 「A級が数十人、B級が百強余りの数と聞いております
        相当の戦力ですが禁衛隊だけでほぼ殲滅が可能でしょう」

シンエモン 「斥候に出したハッタリがもうすぐ戻ってくる頃かと
        敵布陣を確認した後、我々が突撃して大打撃を与えます」

溥儀に付き従い馬を駆る二人。その表情に微塵の不安もない
そう、これはどうということはない戦であった―そのハズであった




その頃、斥候のために1人で先行していたハッタリ半蔵は敵アジトを目前にしてその足を止めていた
百戦錬磨の忍者の動きを縛っていたもの・・・・それは驚くべきことにまだ年端もいかぬ少年だった
ツルツルの頭に僧衣姿。いったいどこの小坊主であろうか
だがこれだけはワカる
グラップラーだ
しかも”ハッタリ半蔵”が対峙して動けなくなるほどの―

ハッタリ   「・・・・・何者だ坊主。こんなところで何をしている」
謎の少年  「この道は通行止めだ。他をあたれ」




外伝其の参
伝説の始まり




いったい幾つほどであろうか?
ハッタリの目の前に立つグラップラーは、本当にまだ幼さの残る少年であった
だが
彼が只者でないことは全身から放つ小宇宙が物語っていた

ハッタリ  「・・・坊主、俺が将軍家のグラップラーと知ってのことか?」
少年    「あぁ知っている。アンタは六代目ハッタリ半蔵だな」

相手を威圧するためハッタリの小宇宙が急激に膨れ上がった
並のグラップラーであれば、これだけで泣き叫んで命乞いするほどのケタ違いの小宇宙である
しかし少年はなんら臆することなく真正面からハッタリを見据えて言葉を返す

”敵”か―

相手の識別を完了したハッタリが、忍者刀の柄にゆっくりと手をかけた

ハッタリ  「鬼夜叉党にS以上のグラップラーは居ないと言う話だったが
       諜報部も案外アテにならんな。お前みたいな化物がいるとは」

少年    「俺は鬼夜叉党じゃないぜ」
ハッタリ  「なんだと?ならば何故邪魔をする」

少年の意外な返答にハッタリの緊張が一瞬弛緩する・・・・

少年    「言っただろ。この先は通行止めだってな
       お前等団体さんを通すワケにはいかないんだよ」
ハッタリ  「・・・・・・フン。鬼夜叉党でなくとも・・・鬼夜叉党に与する者か
       そういう事ならば遠慮はいらんな。溥儀禁衛隊の名のもとに!
       
坊主、この場でキサマを排除する!」

ジャアッ!
忍者刀「サメムラZソード」が勢いよく鞘から抜かれた。その白刃が日の光を浴びて眩く輝く
宇宙統一忍者流正統ハッタリ半蔵!いざ参る!
左手で素早く九字を切りながら、電光のごとき速さで敵に向かって疾駆するハッタリ

ハッタリ  臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!
       
超忍法!十身分身の術ッ!!!

かつてシンエモンと闘い、敗れ去った奥義「分身の術」
あれから8年。ハッタリはこの術に磨きをかけ、ついに十分身を会得するに至った
地上と上空からの全方向包囲攻撃!
上下左右前後逃げ場なし。この絶技から逃れられるグラップラーがいるものか

しかし次の瞬間





少年が右手にかざした一枚のカード

それと同時に少年の腰に魔法のように出現する金属製のベルト

左腕に出現するコンソール端末のような不思議な機械




ドォッ、とハッタリの全身から冷たい汗が吹き出す
実際に本物を見たことはなかったが、話はウワサで聞いていた

古の幻獣達と契約を交わし、その力をカードに秘めて闘う伝説のクラスのことを

ハッタリ  「アドベンドカード!?ライダーか!
少年    「・・・闘いたくはないが。降りかかる火の粉ならば払うだけだ」

少年は静かに呟くと、左腕の機械にカードをスラッシュした

『アクセルベント』

少年の左腕の機械が乾いた電子音声を発した
そして。ハッタリの視界から彼の姿が忽然と消える
消えた?そう、まさしく消えたのだ
否、少なくともハッタリの目にはそう映っていた

ハッタリ   「なッ・・・消え・・・!?」
謎の少年  「いるぜ?ここにな」
ハッタリ   「うッ!?」

ドドドドドドドドドドッ!
すぐ耳元で声を聞いたのと、強い衝撃を受けて吹き飛ばされたのはまったく同時のことであった
10人のハッタリが地面に叩きつけられ、分身達が次々と姿を消していく
『やられた・・・・のか?』
一瞬の混乱の後、すぐに己の状況を判断したハッタリ
腹を押さえつつすぐに立ち上がるも、相当のダメージを負ったらしく苦悶の表情を浮かべている


はたして今の一瞬で何が起きたのか?ではスローVTRで見てみよう


その間 実にコンマ5秒!
「加速」のカード アクセルベント!
発現後10秒間、全ての動きが通常時の
1/1000秒のスピードで行えるという超絶のブーストユニットである
そのスピードたるやもはや肉眼で追えるものではない。それが例えS級グラップラーの動体視力であったとしてもだ

ハッタリ   「ぐくっ!お、恐るべき絶技・・・お前は一体・・・・?」
謎の少年  「本隊が来たようだな」

ハッタリの問いには応えず、その後方に視線を伸ばす少年
遠くに見える砂塵。馬の嘶きと蹄の音も高らかに近づいてくるのは、将軍溥儀率いる討伐軍本隊であった
少年はダメージを負ったハッタリに追撃を加えるでもなく、ただ仁王立ちで砂塵が近づいてくるのを待つ。その姿威風堂々

やがて蹄の音が一斉に鳴り止んだ
大日本帝国陸軍の精鋭部隊の前にたった一人立ちはだかる少年の圧によって
溥儀を守るように素早く前衛に出てきた4人の男達は、傷ついた同僚の姿にたちまち状況を理解した

シンエモン 「ハッタリ!おぬしその傷・・・・!」
ハッタリ   「筆頭殿お気をつけを!こやつ只者ではありませぬ!」

言われるまでもなく緊張の糸を張り詰める4人
ハッタリ半蔵の実力は同僚である自分達がよく知っている
彼にこれほどのダメージを与えた相手・・・・
そんじょそこらのグラップラーではない!

背中に巨大な砲を背負った巨漢が前に出る。同時に全身黒マントとシルクハットの男が宙へ飛んだ
まさに長年連れ添った阿吽の呼吸と呼ぶべきか。完璧なタイミングでの同時攻撃である

レオンハルト「シュツルム・ヴィント!」
男爵ぴーの 「ヘルズマジック・ゾリンゲンカード!」

巨漢の両腕から16発の弾頭が発射された。標的自動追尾性能付きのマイクロミサイルだ
空中から放たれた54枚のトランプカードは、へりが刃のように研ぎ澄まされた投擲凶器
隙間なく放たれたトランプの刃と自動追尾ミサイルのダブルアタック
たった今「加速」のカードを使ってしまった少年に回避手段はない。勝負あったか!?
※(カードは一度使うとチャージ時間が必要なのだ)
だがッ!
既に少年の右手には
2枚のカードッ!

(BGM 仮面ライダーブレイド「覚醒」)

『ソードベント』 『シュートベント』






『シューティングブレード』




シンエモン 「なッ!?」

謎の少年  
「空手裏剣ッ!!!

ザンッッ!!!
少年の両腕が空を薙ぐ
トランプとミサイルが音もなく空中で切り裂かれ、そのまま四散した
無数の真空の刃による空中迎撃である。シンエモンの一文字流烈風剣と似ている技だが、
大振りの一撃でしか繰り出せない烈風剣に比べ、刹那に60以上の刃を飛ばしたこの技。どちらが上かは説明するまでもないだろう

シンエモン 「ライダーか!だが今のは・・・・
        ダブルスラッシュの
コンボ攻撃!?
        ミラーライダーとライダーシステムの複合型だとでも?
        そんなグップラーの話は聞いたことが・・・・!
        名乗れ少年よ、おぬしは一体何者だ?」

驚愕に震えるシンエモンの問い
目の前に立つ少年は、今まで出会ったどんなグラップラーとも違う未知の闘法の使い手だった
伏せていた視線をあげ、少年は静かに言葉を紡ぐ。その返答は更にシンエモンを驚かせるものであった

閻王     「人は閻王と俺を呼ぶ」


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