― 西暦198X年・京の都 ―
草木も眠る丑三つ時、人々は誰もが幸せなまどろみの中にいた
だが哀しきかな、惨劇とは突然訪れる物
そんな平穏な夜を切り裂く恐怖の悲鳴があがる

男      「ぐあー!!や、夜盗だー!!」
夜盗団1  「金目の物と女は全て奪え!男は皆殺して火を放て!」
男      「た、助け・・・・ッ
ぎゃああ!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオ・・・
放たれた炎は瞬く間に燃え広がり、京の夜空を赤く染める
逃げ惑う人々の悲鳴と崩れ落ちる家屋。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図
許すまじ悪党供!このままのさばらせておかべきか
ドドドドドドド!と現場に颯爽と現れたのは武装した特殊警官隊だった

武装警察1 「動くな!貴様等はもう完全に包囲されている!」
武装警察2 「両手を上げておとなしく投降しろ!」

ライフルを構えた機動隊が降伏勧告を飛ばす
しかし次の瞬間
ゆらり、と動いたかと思うと凄まじいスピードで機動隊に向かって襲いかかる夜盗団
速い!慌てて発砲した警官隊であったが、奴等は右に左に素早く動き銃弾はカスリもしない
グラップラーだ!
狙撃手が敵の正体を理解したとき、既に大半の隊員は夜盗団によって倒されていた

夜盗団1  「ハッ!クズ供が。俺達を逮捕したきゃ核弾頭でも持ってくるんだな」

呆然とする狙撃手の胸を、夜盗団の手刀が深々と貫く
ごぼっと血を吐いて絶命した男を見下し、悪党供は高笑いをあげて悠々と逃げていった
死屍累々
一般人の悲鳴と慟哭、そして燃え盛る炎の音だけが京の夜空に哀しく響いていた




翌日 

〜 金閣寺 〜


玉座に座る若い男が大量の書類に目を通している
端整な顔立ちにサッとなでつけたオールバックがよく似合う、気品漂うたたずまい
一通り目を通し終わり、傍らにいた初老の男に書類をぞんざいに返す

大日本帝国第三代皇帝 足利溥儀 (23歳)

溥儀    「この一ヶ月の間に7件か・・・・これは深刻だな」
ターリブ老 「は。民草の不安と恐慌はもはや留め置けおませぬ
        一刻も早く対策を打つ必要があるかと存じ上げます」

溥儀    「いや。対策は既に出来ている・・・・・ターリブよ、
       シンエモンをここに呼べい」


半刻の後、溥儀の前に現れた1人の若い男
スラリとした長身に美しい金髪、透き通るような蒼い瞳を持つナイスガイである
背には身の丈ほどもある太刀を背負い、その立ち振る舞いは毅然としていて隙がない

溥儀    「シンエモン、ここ最近の夜盗の被害については知っているな?」
シンエモン 「委細承知しております。どうやら敵はグラップラーらしいという事で」
溥儀    「そうだ。駆けつけた警官隊はことごとく返り討ちにあっている
       残念な事だがグラップラーの相手はグラップラーにしか出来ぬ
       そこで・・・だ、朕は打開策としてこのような物を考えてみた」

金髪の青年になにやら巻物を渡す溥儀
くるくると巻物を広げて目を通した青年は、驚いた顔をしながら言葉を返した

シンエモン 「これは・・・グラップラーだけで構成された近衛兵団ですか?」
溥儀    「そうだ、少数精鋭のな。
       あらゆるグラップラー犯罪に対する武力行使権と判断権を与え
       将軍家直属の特殊部隊という位置付けとする
       予定メンバーはそこに記載された4名、彼等をスカウトしてほしい
       そしてシンエモンよ、お前にはその長となってもらう」

シンエモン 「これはなんとも・・・一癖も二癖もありそうな面子ですな」
溥儀    「ふん・・・お前ともあろう者が。束ねる自信がないか?」
シンエモン 「いえ」

将軍家剣術指南役 シンエモン (26歳)

シンエモン 「このお役目、しかとお引き受けしました
        必ずや最強の近衛兵団を結成してご覧にいれます」




一体さん外伝 其の二
疾風!溥儀禁衛隊!





 地獄の魔術師 (男爵ぴーの編)
 映し鏡の最強忍者 (ハッタリ半蔵編)
 ゲルマンのランボー (レオンハルト編)
 魔都の夜は紅蓮に染まって (あぶどぅる編)

エピローグ
疾風!溥儀禁衛隊!


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